君のパン、積みたいな
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 ……えっと、先輩? もう一度言ってもらってもいいですか?
 私の聞き間違いでなければ……その、……「パンツを見せて欲しい」って聞こえたんですけれど……違いますよね……?
 ……あ、そうですか、合ってますか。そうですか……。先輩、ちょっと失礼しますね。(ピッ)
 もしもし警察ですか? 今目の前にヘンタ……ムグッ!? むー!? むー!? ん……っ!? む……ん(コクコク)。
 ぷはっ……。もう! いきなり何をするんですか!? 放課後の人気のない空き教室で後輩の、しかも女子の口を塞いでスマホ取り上げるとか! そのまま押し倒されるんじゃないかと思いましたよ!
 もう、「警察に電話するからつい」、じゃないですよ。
 はぁ……。いいですか、先輩。ちょっと落ち着いて冷静に考えてみて下さい。女子にパンツを見せてくれ、なんて言う男子は世間一般的な見地や価値観に照らし合わせると、どう贔屓目に見ても『変態』と呼んでも差し支えないと思うんですよ。
 いや、あの、そんな堂々とそんなことは分かってる、って言われても私、対応とか返答に困っちゃうんですけど。
 ところで先輩。そろそろ私のスマホ、返して頂けませんか。心配しなくても警察に電話なんかしませんよ。大体、さっきも警察なんかに電話していませんし。
 牽制というか、防衛のためのフェイクですよ。かけてるフリ、です。いくら私が女子高生、花も恥じらうJKでスマホの扱いに長けてるといっても、さすがに一瞬で110番はできませんよ。スマホはケータイと違ってセキュリティありますから、その分のロスタイムがありますし。だから早くスマホを……?
 うわ、そうきますか。スマホを人質に、いえ、物質(ものじち)にしてパンツを要求しますか。なんかもう、ここまでくるとゲスいと思うよりその必死さに軽く引いちゃいますね。
 そもそもどうしてそんなにパンツが見たいんですか? 理由くらい教えて下さいよ。
 はい。確かに先輩は三年生ですからもうすぐ卒業ですね。この前の模試はどうでした? 先輩、結構偏差値高い大学受けるんですよね。あ、第一志望のボーダーはクリアーしたんですか。それはおめでとうございます。先輩、性格はちょっとアレですけど、普通に頭はいいし運動も出来るし何気にイケメンなんですよね。……はあ、もう少し先輩の成績が悪ければ、私もこんなに苦労しなくても良かったのに……。いえ、何でもありません。ちょっと自己嫌悪しただけです。
 それで卒業がどうしたんですか? はあ、卒業するまでに、高校生のうちに一度でいいから女子のパンツを見てみたいから、ですか。
 ………………………………。
 ……呆れて言葉が出ませんよ。じゃあ、なんで私なんですか。……頼めば見せてくれそうだから、って……はあ、なんだか今日の先輩には幻滅です。私、先輩にそんな都合のいい安い女だと思われてたなんてがっかりです。ショックです。
 すいません。他の人を当たって下さい。先輩は女子のお友達も多いんでしょう? 土下座でも何でもして頼み込めばどなたか一人くらい見せてくれるんじゃないですか?
 だからって私に土下座してもダメですよ……って、ちょ!? なに下から覗き込んでるんですか!? 全く、先輩は油断も隙も、恥も外聞もないんですから。
 そのまま床に座り込んで頬を膨らませてすねても全然可愛くないですからね。
 もう外も大分暗くなってきました。真っ暗にならないうちに帰りたいので私のパンツは諦めて下さい。明日から私以外の女子にお願いして下さい。百人くらいに頭下げたり交換条件出して交渉すれば誰かは見せてくれると思いますよ、多分。
 ……誰かじゃダメなんですか。見たい女子のパンツを見たい、って、はあ、先輩はわがままさんですね。そこは目的のために妥協するのもありかと思いますけど。ちなみに、先輩の見たい基準って何ですか?
 はい!? え、ちょ、そんな、え、え、え、えーっ! 
 すいません先輩、すいません。ちょっと私、パニくってます。顔は熱くてうまく頭が回りません。
 あ、ああ、そ、そうですね。こういう時は深呼吸ですね。わ、分かりました。で、ではいきます!
 ヒッ・ヒッ・フー。ヒッ・ヒッ・フー。
 あああぁぁっ! ち、違います違います! これはラマーズ法でした! ああ、もう……。何をやってるんでしょう、私……。
 もう! これは全部先輩が悪いんですからね! あ、あんなこと……み、見たい基準が彼女にしたい女の子だなんて言うからですよ!
 まあ、確かに好きでもなければ付き合いたいとも思わない女の子のパンツを見ても面白くないし意味も無いと言う先輩のお気持ちは分からないでもないですが…………ん? あれ?
 あのぉ、先輩? 私、たった今気付いたことがありまして。確認したいのでお聞きしてもいいですか?




 もしかして私――先輩から告白されてますか?




 あ、ああ、やっぱり。ですよねー。というか先輩、わっかりにくいですよ!? 遠回りにも程がありますよ!?
 今だから言っちゃいますけど、卒業間近の先輩から放課後の空き教室に呼び出された時はそういうことかなぁ、って思っちゃってましたよ!? ええ、ええ! 思ってましたとも!
 それが来てみれば「パンツを見せろ」ですよ!? その時の私の気持ちが分かりますか!? 期待してた私がバカみたいで、悲しいやら恥ずかしいやら情けないやらで内心泣きたい気持ちでいっぱいだったんですからね!
 ストレートに告白するのが恥ずかしかったから、って、乙女ですか! 照れ隠すならもっと分かりやすく照れ隠して下さいよ!
 ホントにもう、先輩は頭いいのにおバカなんですから……。
 ? なんですか? 私のことをじっと見て……? 
 あ、ああ。そ、そうですよね。返事、ですよね。しなきゃ、ですよね。
 ………………ぅぅ………………。……ぇぅ…………………………えっと。



 わ、私のパンツでいいなら……どうぞ、見て下さい……っ!



 うわっ! なんですか先輩、その喜びようは! よっしゃーっ! って。ゴール決めたサッカー選手みたいに踊るの止めて下さいよぉ!
 なんですかなんですか。先輩はそんなにもパンツが見たかったんですか!?
 うわあぁあぁぁっ! ものすごくイイ笑顔で思いっきり力強く頷かれましたぁーっ! しかも「これで堂々とイチャイチャできるぜー!」とか叫んでますよぉーっ!
 い、いえ。そりゃあ、嫌じゃないですけど。先輩とイチャイチャ――いいえ、気兼ねなく甘えられるのは嬉しいですけど……。
 どうしました先輩。そんな居住まい正して背筋を伸ばして正座して。
 あ、ああ、パンツ、でしたね。パンツですね。パンツ。
 ………………ぅ…………ぁ……。 
 だ、大丈夫です! お手伝いとか必要ないですからっ! だからそのスカートへ伸ばした手は引っ込めて下さい!
 あの、ですね。先輩。ひとつご相談があるんですが……いいですか?
 ほら、もう外は真っ暗なくらいじゃないですか。電気も点いてますし、ここは一階の教室ですから、外から丸見えだと思うんですよ。カーテン閉めれば大丈夫とかじゃなくてですね。最終下校時間ももうすぐですし、見回りの先生が来るかもしれません。
 ですから、ですね? 場所と日時を改めて、ってことにしませんか? ほら、ちょうど明日はお休みですし。……って、即答で嫌だ、ですか。先輩は本当にわがままさんですね。
 ……その理由はさすがの私もちょっと引きますよ。制服から見えるパンツが最高なんだよ! とか力説されてもちっとも共感できませんし。
 先輩が変態チックなのは知ってましたけど、まさか本当に変態さんだったとは……。ああ結構です結構です。そういうフェティシズムっぽいのを熱弁されるのは。
 ……はあ、分かりました。では、こうしましょう。先輩。明日、私の家に来て下さい。
 いえいえ、親への挨拶なんかないですよぉ。私、一人暮らしですし。あれ? ご存知ありませんでした? えへへ、そうなんです。こう見えて私、炊事洗濯朝飯前、家事ならなんでもできちゃうしっかり者なんです。
 私の家でしたら誰に気兼ねすることも遠慮することも他の人に見られることもありませんし、堂々と伸び伸びとお見せできますよ。制服でも私服でもよりどりみどり、です。
 それで、ですね? その後、一緒にお出かけと言いますか、デ、デートできたらなあ、なんて考えてるんですけれど……どうでしょうか?
 あ、私、お弁当作りますからピクニックもいいですね。
 わあ、遊園地! それはステキですね! ぜひぜひお弁当持っていきましょう!!
 もう。先輩は分かってませんね。おっしゃる通る、私の家から一緒に行くのですから、ご飯を食べてから遊園地に向かうのも方法としてはありだと思います。でもでもそれじゃ夢がないじゃないですか。もったいないじゃないですか。
 せっかくの初デート、しかも遊園地ですよ? 芝生でお弁当食べて日向ぼっことかしたいじゃないですか。先輩がお望みなら膝枕もやぶさかではありません。そういうの、憧れだったんですよぉ。それぐらい叶えてくれたってバチは当たらないと思うんですけど。
 いいんですか? あ、ありがとうございます、先輩! 私、とっても嬉しいです! 
 ではでは、話も決まってまとまったことですし、今日はもう帰りましょう。
 送ってくれるんですか? ありがとうございます。では歩きながら明日の打ち合わせをしましょう。私の家までの道もお教えしますね。意外に学校から近いんですよ。
 あ、そうだ先輩。ちょっと待ってもらってもいいですか。
 えいっ!
 えへへー。実を言うと私、こうして先輩に抱きつくのが夢だったんですよ。抱きつき癖があるといいますか、その……す、好きなものができると、それを抱きしめてみたい、って思っちゃうんです。ごくごく普通のスキンシップ、愛情表現ってやつです。
 それで、先輩。せっかくなのでそのどうしようかと迷ってるように遊ばせてる両腕で私の肩を抱いてくれませんか? こういう場面なら自然にそうするのがセオリーと言うか礼儀と言うか義務だと思うんですけれど。全く、先輩はヘタレでチキンですね。経験値が足りないとか言い訳は結構です。そんなのは想像力で補って下さい。
 ああ、夢が叶って私、嬉しいです。しかも先輩に告白までされて私、本当に幸せです。先輩、ありがとうございます。
 先輩、大好きです! 
山城時雨 

2022年11月22日(火)00時07分 公開
■この作品の著作権は山城時雨さんにあります。無断転載は禁止です。

■作者からのメッセージ
少し時期は早いですけれど。


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2022年11月23日(水)23時05分 リビアヤマネコ  +20点
こんにちは。

作者コメントにあるように、卒業シーズンの内容なので季節外れではありました。最近書いた作品ではなく、以前に書いたストックを出したものでしょうか。どうせストックを出すならクリスマスネタのものを出せば良さそうなものですが、逆に鉄板すぎてクリスマス作品でちょうどよいのが見当たらないということもあるのかもしれません。

作品そのものは、とても読みやすい文章で、最後まで一気に楽しむことができました。

読み始めてすぐに目につくのは、小説の場合当然文章なのですが、その文章がとても上手かったです。

一人称。それもずっとヒロインのターンで、先輩のセリフすら登場しない徹底ぶりでした。視点のブレや行動や台詞の主体が誰か分からず迷う、ということが無く、快適に読める作品でした。それができるだけで十分偉いです。

実際に下手な人が書いた文章だと、作者本人は三人称一元視点で書いているつもりが、書き切れていなくて、三人称神視点の成り損ないになっていたり。カメラが映す対象があっちこっちに動いて落ち着かない、などあるのですが、。本作品の場合はずっと後輩から見た先輩ということで安定していました。

文章についてはお手本といってもいいくらいなのですが、ならば中身はどうかというと、つまらなくはないのですが、ありがちな掌編ラブコメといった感じで加点要素も少な目でした。

掌編ラブコメは定番といえるもので、男子と女子を出してやりとりをさせれば成り立つものですので、あまり上手じゃない人でもそこそこの作品が書けてしまうものです。なので、一発ネタ以上のものにはなかなかなりにくいです。

特にこの作品はヒロインの一方的な一人称で、先輩は台詞すら出てこないという形式の面白さこそが一番のみどころでした。

ですが、ヒロインのパンツを見ることができるのか、という部分で読者の興味を引いて引っ張るところと、中盤の展開でやりとりの意味合いが変化するところなどは、短い中にもしっかり作者の技術が見えたところで、上手いです。

作者はチャレンジ精神のある方のようですので、三人称一元視点などにもいずれ挑戦していただきたいです。

今後の執筆頑張ってください。


15

pass
2022年11月23日(水)09時31分 金木犀 gGaqjBJ1LM +30点
面白かったです!

なんも考えず読んでヒロインのパンツを見れました!
ありがとうございます!
14

pass
合計 2人 50点


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