勇者の記憶を封印された超貧乏使用人少年、万能武器をもらい冒険に出る
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 勇者の聖剣が光り、唸る。


「な、何⁉」

「ギャアア‼」


 魔物が叫び、一閃の元に倒れる。

 勇者である15歳の少年は、悪人のアジト、サブラアイムの城で戦っていた。


 そして世界を救った。


 その後王位を継承され、支配や私欲ではなく弱者が救われる世界を作った。


 しかし、これは現実ではなく、ある少年の頭によく浮かぶ白昼夢のような架空の映像である。

 モノクロだが非常に鮮明で事実の映写のようである。 

 空想、妄想ではなく不可抗力で夜の夢だけでなく昼も浮かぶ。 

 

 しかし残酷にも夢は醒め、現実に引き戻された。

そう、非常に残酷な現実に。

 

 ここは我々の人間界とは次元の違う異世界の一国、デュプス王国。

 サブラアイムと隣に位置する大きな国である。 


 ある貴族屋敷の狭く汚く質素な住み込み部屋。

 壁にひびやはがれ傷が多く補修もしていない。

 

 屋敷の外見や他の部屋の荘厳さ、華麗さに比べ同じ建物内部と思えない、屋根裏の一人部屋である。


 彼はいつもついていない。


 運悪くコロコロと1枚の銅貨が転がりタンスと壁の間に挟まってしまった。


「しまった!」


 ぼろぼろのつぎはぎの亜麻布のコットやブレーを着ている、とても身分や育ちが良さそうに見えない、夢の中の勇者に良く似た少年は、急いで何とかタンスと壁の間に手を突っ込み必死で取ろうとした。


「僕の今月の全財産が」


 必死かつ切実だった。

 しかし嫌な事に中々取れない。


 伸ばした腕が痛い。

 コインとタンスに意地悪されてる気分だった。


「うーん、はあ!」


 痩せて筋肉の落ちた手を思い切り伸ばしようやくコインは取れた。

 少年は嘆息した。


 まるで命より大事な物が見つかったような安堵でため息をつき胸をなでおろした

 しかし安堵の次はしみじみコインを見つめ現状への不安と不満を漏らした。

 錆びたコインが自分の人生を象徴するかのように。


 再度ため息をつく。

 怒りよりも辛そうな話し方をする。

「もう今月これしかないよ。いつまでこんな安賃金の使用人を続けなきゃならないんだ。孤児はつらい。つらいよ。浮浪児はもっとつらいけど」


 銅貨一枚はせいぜい飴玉一個程度の価値だ。


「全財産の銅貨様アーメンアーメンハレルヤハレルヤ」

 と少年は銅貨を神の様にして手を合わせ祈った。

 祈り方がとても切実だ。


 蜘蛛の糸を掴むような。

 無力な者が大きな者に必死にすがるようである。


 溺れる者は銅貨をもつかむと言う感じか。

 デュプス王国は宗教国家で信心深い者が多い。

 それは身分に関係ない。


「孤児で窃盗の罪があった僕に今があるのは神様と教会のおかげだ。宝箱に入れておこう」

 と銅貨をそこまでするかと言う程大事に貯金箱に入れた。


 彼は経歴書を見た。

「窃盗、ひったくり、たかり、暴力〇回……」 


 彼は実は昔窃盗経験があった。

 しかも集団である。


 昔のイギリス貴族の使用人の給与は日本円に直し年20〜40万だがそれよりかなり厳しい。

 使用人には格付けがあるが彼はランクで言うと従僕以下だ。


 部屋には少し錆びた銅の剣があった。

「貯金箱とこれと釣りざおが俺の所有物、ふん、ふん!」


 おもむろに剣を振るが、あまり筋は良くない。


「孤児院で習ったけど伸びなかったなあ。剣術は嫌いじゃないんだけど。下手の横好きって感じで」


 後はコップ、ランプ、枕、バッグなど数える程しか物は置いていない。

 教育の為の本などは一切ない。

 またつぶやいた。


「孤児はつらい」

 と同じ様に苦労していた孤児院仲間の顔を思い出し天井を見上げた。


「お金はない、親はいない、頼れない、教育は受けられない、遊べなくて働きづめ、愛してくれる人はいない、差別される、いつの、いつの時代だってそうだ」

 

 少年は続ける。

「俺は今は貧乏な使用人、だけど時々白昼夢の様に過去の俺が勇者の様な格好をして悪と戦ってる映像が浮かぶんだ。まるで封印された記憶みたいに。でもそんなわけない、俺の頭が少し病気なのか」


 腹の音がぎゅーっと鳴った。

「腹減って鳴ってるだけでなくズキンズキン痛い。嫌な事ばかりで胃とメンタルをやられてる。でも僕は孤児。ここをやめたら行く所がない。親が病気だったり、親戚を追い出される子もいるんだ。そういう人達を見て来た」


 出生を回想した 

「僕は親の姿も名前も赤ん坊の頃の自分の姿も家も出身地も知らない。ただ5歳位の姿で孤児院の近くの町中にいたんだ。理由もそれまでの過去も知らない。手掛かりはこの付けていた指輪だけだ」


 少年の薬指の指輪にはどこの国の言語でもない文字が彫られている。

 それは記憶の初めから指についていた。


 そして右腕にも同じ刻印がある。

 これは彼にとって大きな手掛かりでかつ謎になっている。


 少年クラビ・ハートネットは孤児だ。

 何故か4歳以前の赤ん坊の頃や親の記憶はないが、5歳の時何故か孤児院に来たというか、いた。


 生まれた記憶もないのに、5歳児の状態で何故か道を歩いていた。

 そして職員に手を引かれ孤児院に行った。


 「そこに置かれた様に」前触れもなく誰かに連れて来られた様に道にいたのだ。

 そして前述した本人も知らない読めない文字の彫られた指輪をつけていた。


 その孤児院で9年過ごし14歳の時巣立ち、今の貴族屋敷の住み込み使用人となり現在17歳。

 体型はろくに食べていないため、痩せて贅肉があまりなく、顔も少しこけていて髪型もあまり整っていない。さっき伸ばした腕も筋肉が落ちている。


 疲れた人生を送ってきた跡が顔に見える。

 白髪が目立つ。白く染めている様に。


 親戚を連れまわされ虐待された経験や、親の離婚や死に直面した経験はないのだが。

 親との不和経験もなく、親の顔自体知らない。

 記憶が何故かないのだ。


 清潔とは言えない。

 入浴はしているが。

 この時代の風呂に入れない農民よりいくらかましだが。


 食事は住み込みの為一応だが1日2回は出る。

 小さなパン1個と空豆位だ。


 奴隷と大差はない。

 少し具の入ったスープは時々出る。

 と言うかクラビだけ出ない。


 肉はほとんど食べられず、農民より少ない。

 カロリーは穀物から摂った。


 狩猟は主に貴族がする。

 この時代まだ農民は皆貧しく、アルバイトを領主の館でしたり収益の約5パーセントの貨幣の年貢を払う。 中央集権的でなく隷属的関係の時代である。


 タイユもある。居住地からの移動も厳しい。

 村落共同体はある。

 クラビは農民や従僕よりも身分が下の極めて奴隷に近い立場なのだ。


 しかし、顔を見ると、瞳が何とも純粋で穏やかで透明感があり、逆境でもやさぐれていない印象を受ける。あまり怒りに震えている印象も受けない。


 どんなに辛くとも漠然とだが希望を失わず生きようとする様な、何かを信じる一途さが感じられる。

 

 あまり人を恨まなそうな。

 口元が自信なげな動きをしている。

 やたらと健気だ。


 彼は夢がある。 

「いつか王になり平和な国を作る、孤児には無理っぽいけど」


 孤児院時代の回想に入る。

「はい! 僕の夢は王様になって平和な国を作る事です!」

 少し間を置いて皆大笑いした。


 最初何故笑われているのか分からないクラビだったが恥ずかしそうだった。

「孤児じゃちょっと無理だろ」 

 同級生が言った。


 回想を終わる。


 少々弱気に宣言する。

「そのためゴミ拾い1つでも第1歩と思ってしっかりやるんだ」


 そして、孤児らしからぬ、とても人の好さそうな雰囲気と高潔さや誇りを何故か感じさせる。


 例えると国の皇子が捨てられたが生まれついての高貴さ、人の好さを残しているような。

 いつも控えめでヘこへこしてそうな、端っこで縁の下の力持ちをやっている人柄に見える。

 リーダーなどはやらなそうだ。


 とは言え彼は聖人ではない。

 確かに「千里の道も一歩」「王様になって平和にする」等と誓うのは嘘ではない。

 平和を願う事も。


 しかしその一方で低すぎる賃金や粗雑な扱い、きつい仕事などに不満を持っていて「はーっ」とため息をついたり少し動きが鈍ったり目に嫌な気持ちが出てそれが伝わってしまう事がある。  


 また今までの孤児としての人生の疲れの蓄積が憂鬱な気持ちを生んでしまっているのだ。


 クラビの住むこのデュプス王国には孤児院や貴族と繋がる特別な教会があり、13、14歳にもなると一旦教会に引き取られ仕事の世話をしてもらえる。


 実は孤児院の職員の異動で悪い人になった時皆がぐれて、追い出されたあげく教会に行く事になったりした。皆暴力や窃盗をしたりしていた。 


 教会庇護民の様な物だ。

 だから基本は信用できる縁故採用しかしない貴族の使用人にクラビはなれたのだ。


 しかし、だからと言って道は平坦ではなかった。

「クラビ、何やってる!」


 今日も先輩使用人、料理人にしかられた

「ここに汚れが残っている!」

「すみません!」

「もっと物は慎重に運べ!」


 しかしクラビは不真面目にやっている訳ではない。

 大真面目だ。少し不満はあるが。


 一つ一つ気を抜かず大事に責任を持ってやっている。

 夢も信じている。


 勿論不満はあるが、どんな小さな事でも「千里の道も一歩から」を信条にやる。

 しかし何故か彼は真面目にやっているのに伝わらないやる気なげにも見える独特の雰囲気があり他者に誤解される。 


 またどんなに我慢強くても不満や気の抜けが出ない訳ではないのだ。

 自分では気づいていない事も多いが、知らず知らず面倒くさそうに動いたり溜息をついたり顔に嫌な気持ちが出る事がある。

 

 気づいていない為に自己認識と他人からの目に差が出る。

 何故やる気がなさそうに映ってしまうのか本人は分からず疑問に感じている。

 

 不器用で、かつ不満が透けて見え、仕事も謝り方が何故かいい加減に見えてしまい他者を苛つかせてしまう損な人なのだ。

 ここに彼の損な人ぶりがある。

 

 また、怒られ過ぎで、なれてしまったようにも見えてしまうのだ。


 貴族クレゴス3世は当主であるが、クラビにはいつも苛ついていた。


 彼は一見高貴そうで人当たりも良く人望のありそうな顔に見える。

 温厚且つ精悍だ。

 

 事実多くの有名人、有力者を家に招く。

 しかし実際はそんなに高貴でも高潔でもなかった。


 屋敷は他の場所はクラビの部屋と比較するまでもなく綺麗だ。

 外観はハーフティンバー、天井に「クレゴス?世」の文字がある。

 玄関はバロック。

 

 壁の美しい彫刻。

 大広間、高い天井、大きな書斎、寝室、応接間、インテリア、3メートル程のギャラリー、部屋数40、階段は晩餐会を彩る。


 大きな書斎でクレゴスは使用人名簿を出していた。

 するとそこに従僕よりさらに下ランクで「最下層、奴隷クラビ」と書いてあった。


 クラビはコーヒーを運んだが足取りが怪しい。

 見るからに不安定だ。


 実はクラビは図書館の様な本の多いクレゴスの書斎に憧れ読んでみたかった為少し気が浮いていた。クラビは本を持っていない。孤児院で読んで以来だ。

 そして揺れクレゴスの書斎で転んだ。


「あーああ!!」

「あっ‼」


 クレゴスは怒鳴った。

「何て事をしてくれるんだ! 書類がずぶぬれじゃないか! 全くお前と言う奴はいつもいつも」

「す、すみませんすみません」


 それは有力者との付き合い時の上品さはなく、自分より下の人間の前で見せる本性だ。

 クラビは心から謝っていた。


 くびになるのが怖いからではなく素直に人に迷惑をかけたと反省しているのだ。

 自分が悪いと思った時の謝り方と申し訳なさぶりがすごい。


 しかし内面が上手く顔に出ない。

 また少しやる気なさげでいい加減に謝っている様にクレゴスには見えた。

 その為クレゴスには半分も伝わっていなかった。


「全く早く親が見つかって引き取って欲しいよ。貴様のような役立たずはその内食べ物も無くなる。どうせお前の親など禿げたうだつの上がらない底辺労働者だろうが」

 くっ、ととても自制心の強いクラビもこの言葉には動揺した。


 さらにクレゴスの17歳と16歳の息子と娘、キーマとレザリーも嫌味を言った。

「バーカ! またミスしてんの!」

「早くお父様も首にしてしまえばいいのに」


 しかし3人に嫌味を言われてぴくぴくしながらもクラビは抑えてその場を去った。

 彼は仕事も謝罪も真面目にしているのをあまり理解されていない。

 だから他の使用人からも評判が悪い。


 クラビが去った後に妻・ヴォル夫人はやって来てクレゴスに聞いた。

 夫人は料理など使用人教育もする事がある。

「全く、何であんな役立たずの子雇ったんですか? いつもいつもへまばかり。まあ従順ですが」

「あっせんした教会の頼みを断ると印象が悪くなる。今の時代は教会にとって貴族は重要な供給元でありそれにより密接な関係が生まれる。それもあるがあいつはいつもぺこぺこしていて反抗的でない。ある意味使いやすい。きつい仕事も押し付けられるしはけ口にもなる。またあいつがいる事で他の使用人達も『あいつよりはましだ』と思える効果があり離職率が減る。あいつは奴隷と同じだ」


「ああ、そう言う効果もあったんですか」


 キーマは言う。

「親父も罪な人だなあ」


 クラビは思った。

 孤児院はそれなりに良かったな、問題もあったけど。


 つらい思い出もある。

 本当に色々な子がいた。


 子供の暴力や大人への不信感。


 差別されたと荒れる子。人の分まで食べる子、喧嘩する子、連れ戻されたり戻ってくる子、引き取られた親せき宅で冷たくされる子、パニックになる子、万引きする子、親や親せきに死ねと言われた子、大人に殴られ使いっぱしりにされる子、帰りたいと泣く子、職員の虐待、病院に行きたくても行けない子、どこの馬の骨かわからないと言われた子、泥棒呼ばわり、目が見えなくなった子、はさみを向ける子、母が家出した子、親のない自分は誰なのかと存在を疑問視する子、精神疾患の親を持つ子らがいてクラビは思い出していた。


 しかし職員の導きで巣立っていった子も多くいる。


 繊細に傷つき、暴れる子達。

 しかし職員も懸命に努力していた。

 

 人の繋がりは分かっている。

 回想を終わる。 


 しかし、この時代孤児院に行けなかった子等はもっと壮絶だ。 

 浮浪者たちのたまり場は排泄物と残飯で異臭がした。

 汚水と寄生虫もいるスラム街の様な世界。


 死体が拡がる水準最低の生き残り社会

 呼売商人、土方、泥棒、詐欺師、客引き、逃げた小作農等が住む。

 社会から疎外され、住まいも安定した収入もない人達。 


 病気と犯罪の巣窟で警察が活発化すれば逆に物乞いは多くなった。

 救貧院もある。

 最初は食べ物をくれる大人もいた。


 差別に激しく怒る子。

 国の援助がない子。

 人間扱いされない子。


 孤児は生きて行くだけで必死で教育も受けられない親がいない苦しみが一生続く。

 物乞いをする子供は上手い人と下手な人がいるがやがて食糧難で大人は冷たくなった。

「親戚だからといって何でよその子にあげなきゃいけないの」


 女の子はかっぱらわれた。

 飢餓、栄養不良からの内臓疾患。

 

 自殺未遂で手首に傷のある子。

 寝るときは冬でも毛布1枚。


 寒い中身を寄り添い体温で暖めた。

 明日食べられるか。


 炊き出しはあったが中止になった。

 猫やザリガニを食べた。

 闇市がにぎわう。


 クラビは心の中でつぶやく。

 俺が耐えられたのは何故か4歳から前の記憶が無くて親の面影もないから。

 思い出す事もないから。


 形見らしい指輪は持ってたけど。

 この指輪何ではめてたんだろ。

 どこの国の文字なんだ?


 今まで幸せは金だけじゃないって気持ちで頑張ってきた。

 やっぱり職員さんが言ってたけど愛が必要なんだと思う。


 でもお金がなくてもいいわけじゃなく教育を受ける事も必要だ。

 10代半ばから働きづめの人達。 

 幸せが金だけじゃないと思えたり、弱者が裕福になれる世の中になってほしい。


 俺が王様だったらそう言う国を作りたい、孤児院でも言った様にそれが夢だ。

 そう、そうだな、いつかそんな事が出来る様になりたい。信じて頑張ろう!

 無茶無謀でも。根拠がなくても、無計画でも人に笑われても。


 でもこんな事言うと頭おかしいと思われるかも知れないけど、俺は何かから生まれ変わって5歳児になった様な気がする。

 

 時々15歳位の剣を持った俺が巨悪と戦ってる白昼夢を見る。

 あれは何なんだろう。

 何か勇者みたいな。

 

 あまりにも夢、幻覚にしては鮮明過ぎる。

 今日は勇者が勝つ夢を見たけど、日によって敗北して死ぬ映像も出てくるから結末がこんがらがってる。


 本当は勝ったんじゃなくて負けたのかあの夢。

 呟きは終わる。


「こら! ぼっとするな!」

 と怒鳴ったクレゴスの顔に何のまえぶれもなく、17歳位の少女があまりにも突如出現し蹴りを食らわせた。 

「な⁉」」


 妖精のような恰好をしていた。

 髪は長く黄色だが明るく金髪気味。


 あどけない目だが憎しみでクレゴスを睨んでいる為すわった怖い感じだ。

 クレゴスは驚き大声を上げた。


「何だお前は! 不法侵入者だ! 捕まえろ!」

 使用人たちは追いかけたが少女は逃げ全く姿を消した。


 少女は結局見つからなかった。


 クラビはもう3年になるがきつく怒られたり意地悪されても切れたり辞めたり涙も流さない。


 今日も頭を下げひたすら耐える。

 汗が流れ落ちる。


 しかもミスが多いのをカバーする為多くの用事をこなしたりする。

 人から見ると愚直なまでに。


「これ持っていって」

「これもね」


 クラビは周りを考え主張を抑えるせいか、最初孤児院で地味で友人があまりいなかった。

 それがだんだんと理解されて行った。

 

 クラビに孤児院時代の仲間から手紙が来た。

 マークレイと言うリーダー格の少年だ。


「元気か? 皆今は国の悪い部分を直そうとする活動に明け暮れてるよ。いつか平等で弱者も笑える世の中にするにはきれいごとは言っていられない。俺達元窃盗団だしな」


 クラビは心のなかで、いつか会おう、と呟いた。

 俺は幸せになる様に生きる。と。


 呟きは続く。

 でも幸せは金だけじゃないって思ってたけどそもそも俺って人間関係とかにも恵まれてない。


 だから信念が曲がりそうでくじけそうになる。

 心の呟きは終わる。


「やっぱり辞めたいよ」

 そして不意にぽつり口から弱気が出た。


「千里の道も一歩、王様になりたいって言ったけど嘘じゃないけどこんな所、つらい、疲れた、何も変えられない人生と毎日。もう疲れた、いくら頑張っても報われないし辞める事も出来ない」


 ところで、今日は奇しくも我々の人間界で言えばクリスマスに当たる1年に1度の神を祝う祭りだった。貴族たちは勿論パーティをする。


 使用人たちは喜んでいた。

 何故ならこの日だけは豪華な料理やケーキを貴族から大盤振る舞いしてもらえるからだ。

 そして使用人達は集められ、クレゴスやキーマ達は料理を持って来た。


「うわーうまそう!」

「今日だけは日ごろの疲れを癒しジャンジャン食べてくれ」

「ありがとうございますクレゴス様!」


 クラビも食べようとした、ところが

「あーお前は駄目」

「えっ⁉」


 クレゴスはクラビに冷たく言った。

「お前はいつもミスばかりするから駄目だ。いつもの様にぼろいパンだけだ」

「そ、そんな!」


 キーマがさらに言う。

「もし、お前が大事にしている親の手掛かりの指輪をくれたら食べさせてやってもいいぜ」

「そ、そんなこれだけは!」


 断られるなりキーマは冷たく言った。

「嫌なら街へ出て行って物乞いでもして来いよ」

 レザリーは「ふふっ!」と笑い

「お祝いなのにみすぼらしい」

 と言った。


「そうだそうだこの足手まとい」

 料理人が言い、他の使用人も笑った。


 くっ! とクラビは怒りの沸点まで来ていた。

 キーマは挑発した。

「何だその目は? やんのかよ」


 しかしクラビは何とかこらえて外へ出て行った。

 その様子を皆は笑った。


 20分後、クラビは寒い町中をとぼとぼ歩いていた。

 しかしパーティをやっている家庭が多く雰囲気は明るかった。

 大聖堂では聖職者が行列する。お祭り騒ぎが起きている。


 前日降った雪のおかげで雪景色がなかなか良い。

 しかしクラビは暗かった。

 あいつら、俺が絶対怒らないと思って馬鹿にしやがって……


 もはや感情制御の限界に来ていた。

 クラビはあまり運命と他人を恨まない。

 何とか希望をみようとする性格だ。


 しかし前述したように彼は神でも聖人でもない。

 人や世を恨みたくなる事も当然の様にあるのだ。

 今日はその最たる日だった。


 涙はなく恨みと憎しみ、僻みだった。 

 自分が何故記憶がないのかの謎より、ただただ自分を捨てた親への恨みだった。



「俺には帰る家や家族もいない。いつ以来だっけおれが感情むき出しにして怒ったの。我慢しすぎて怒れなくなっちゃった。他人もだけど自分の運命を恨むよ。俺の親どこで何やってるんだろうな。どこかの家で俺をのぞいて楽しんでたら本当に恨むよ」


 路上生活、食べ物の取り合い、たかり、かっぱらい、食べ物を恵んでもらおうとして追い出されたり闇  米配達の手助けをした事などが思い起こされた。 


 そしてクラビの耳にそれと反対な暖かい家庭から笑い声が聞こえて来た。

 クラビの胸に怒りと妬みがたぎる。

 あいつらいい暮らししやがって、と珍しく露骨に荒れた。


 クラゴスやキーマの意地悪でもう自分が何なのか分からず放心気味だった。

 そこへ偶然ケーキ屋の前に来た。


 それがクラビの目と心を激しくとらえた。

 そんな大きなケーキは生まれてから見た事もなかった。


 誕生日も知らないので誕生日パーティもない。

 欲望、他者への憎しみ、嫉妬などが絡み合い増大する。


 目が獲物であるケーキをとらえ凝視し、飛び出さんばかりだった。

 掴もうとガラス越しに怪しい手つきで手を伸ばす。


 まるで女性を襲おうとしている変質者の様に見え、道行く人たちはどよめいた。

 そしてついに。


「あ、あああ!」

 クラビは自我と自制心を失った。


「お客さん、何を!」


 クラビはケーキ屋のガラスを割って盗もうとした。

 もう何が何だか分からなかった。

「通報だ!」


 翌日この件でクラビは屋敷で呼び出された。

 当然グレコスは怒った。


「全く何て事をしてくれたんだ! 私の力で事件にだけはならないようにしてやるが、今日でお前は解雇だ! わかっているな⁉️」

「すみません……」


「すみませんですむか! ついに貧乏人の本性を出して暴れたな、もう貧乏で最悪犯罪者にでもなっている親の元へ帰れ」

 これにさすがにクラビは下を向きながらも目と腕がピクピクした


「お……」

「切れるか……」


 キーマは思ったが結局クラビは背を向けとぼとぼ去った。

「お世話になりました」


 キーマは後ろ姿を見て思った。

 あいつ…褒めるつもりじゃないけど、特に親の悪口まであそこまで言われてよく抑えられたな……


 怒った事あんのかな? 自制心すごい強いな……

 クラビは泉で釣りをしていた。 


「はあ、結局無一文だよ。もう帰る所もないし野宿しかない。今真冬だよ凍死しちゃうよ。とりあえず釣りで今日の食料を確保しよう」


 クラビは泉の淵に腰掛けじっと獲物が引っかかるのを待った。

 すると竿がぴくぴく動きだした。

「おっ!」


 大きな魚がかかった手ごたえがあった。

 しかし重い上に抵抗している。


「う、うーん!」

 クラビは必死に釣竿を引いた。しかし転んでしまった。


「あっ!」

 この拍子に竿は泉に落ち沈んでしまった。


「なんてこった唯一の食料の元が、どこまでついてないんだ! 唯一の趣味でもあったのに!」

 クラビは激しく地面に頭をぶつけ悔しがった。


 すると泉のちょうど竿を落とした辺りがぴかりと光った。

「えっ!」


 そしてそこから1メートル程の光に包まれた球体が現れた。

 そしてそれは徐々に人間の姿に変わっていった。


 そして現れたのはあの屋敷で飛び蹴りを食らわせ不法侵入した妖精の様ないでたちの少女だった。

「あなたは!」

「ふふ」


「何がどうなっているんだ」

「はじめまして。私は女神。天から地上を見守る女神です。大人も子供も強者も弱者も。だから貴方の様な弱い立場の人も救おうとずっと見ていたわ」


「信じられないけど事実……」

「貴方にはもう何もなくなってしまった。だから生きる為に必要な物をあげるわ」


 それは金貨10枚と銀貨20枚だった。

「良いんですかこれ⁉」

「貴方は本当に控え目ね。貴方は散々苦労したんだからこれ位は受け取る権利はあるわ」


 クラビは心から感謝し満面の笑みを浮かべた。

「ありがとう! この恩は一生忘れないよ!」

「あっ、それだけでなくもう1つ大事な事を伝えに来たの」


「え?」

「これから旅に出て隣の国で正体を隠して暴れている国王を倒して欲しいの。勿論仲間を何人連れてもいいわ」


「えっ?」

「貴方も知ってる隣国サブラアイムの国王アンドレイ・デーニスは実は人間じゃない魔界の住人なの。国王に化けて民に重税を課してこき使い他国に攻め込むつもりよ。この国も攻めこむ体制が出来てる。だから貴方に倒して欲しい」


 急に弱気になった。

「そ、そんな、僕そんな強い人じゃないですよ。剣の腕も弱くて孤児院で女の子に負けてそれがトラウマになってるし、いつもぺこぺこ頭を下げるしか能がない一使用人だから」


「貴方は控えめね。でもそれこそが強さ」

「そう言えば孤児院でも言われた」


「それだけじゃない。驚かないで欲しいけど、貴方は実は伝説の勇者の生まれ変わりなのよ」

「えっ⁉」


「普通の人間ではないわ。貴方は天の国に選ばれた勇者だったの。でも前世で15歳の時に旅に出てさっき話した国王に化けた魔界の住人を討伐しに行ったの。でもそこで敗北してしまい、記憶を封印され殺されたわ。でも私の上司の天の神様は何とか貴方を助け5歳児の姿に生まれ変わらせて孤児院に送ったの。でも魔力が強すぎて封印された記憶までは戻せなかった。そして貴方のつけている指輪が『神が蘇らせた勇者』の証明なのよ!」


「そうか! 俺に4歳以前の記憶や親の記憶がないのはそのせいなんだ。それに魔界の住人は俺の因縁の相手って事だね」

「そう。だからこそ貴方が倒すべきなのよ。貴方は時々前世の姿の夢を見ない?」


「そう言えば15歳くらいの俺が剣を持って悪と戦ってる夢を時々見る」

「それは12年前の貴方の記憶なのよ」


「そうだったんだ」

「で、だからこそ魔界の男アンドレイ・デーニスを倒す旅に出て欲しいのよ」


「わ、わかる事情は。でも僕は剣だけでなく心も弱虫だし」

「いいえ、自信を付ける為に今から記憶の一部を引き出すわ」


 女神に頭に手を当てられクラビはぼうっとなった。

 すると転生して少し後の5歳のクラビが孤児院の近くを歩いていた。


 その時道端に箱を寝床にしている4歳位の子供がいる。

 クラビはその子供の前に行き、パンをあげた。



アジトの死闘
クラビは銅の剣を装備していた。

「はっきり言って剣で実戦するのかなり久しぶりだ。通用するのか不安だ」

《クラビステータス》


 レベル3 腕力7 体力7 素早さ8 頑丈7 魔力9 魔法耐性8


 はっきり言ってこの数値は、才能があるわけでない人が剣道を2か月位やった数値だ。


 キーマは怯えた。

「お、おい何かいかにも魔物が出そうな場所じゃないか?」

「仕方ないよここまではずっと平原で目印がないし」


 恐る恐る2人は森の中を探り覗き込んだ。するとかさかさと音が聞こえた。

 生物が動く音だ。2人は嫌な予感がした。


「今グルルって音が聞こえなかったか」

「狂暴そうな声が」


 すると木の影から虎らしき怪物が現れた。

「げーっ! サーベルタイガー! 森の中に何で!」


 サーベルタイガーはこちらに気づいていたがすぐには襲ってこず睨んでいる。

 タイミングをうかがっているようだ。獲物が射程距離内に入るのを待っているのかもしれない。


「やばいよこいつ凶暴だし! アンカーで何とかならないか?」

「これ使うの初めてなんですよ。戸惑っているうちに襲われたら」


 サーベルタイガーは苛立っている。

「ああ、寄って来た」

「こうなれば」


 クラビは背を向けた。

「逃げろーっ!」

 2人は一目散に逃げだした。


 しかし人間と虎のスピードは雲泥の差だ。追いつけと言われてる様なものだ。

「やばいもう駄目だ!」

 その瞬間、2人の前に人影が立ちふさがり、蹴りでサーベルタイガーを吹き飛ばした。


 倒れたサーベルタイガーをその人物は剣でけん制する。

「久しぶりだな。クラビ」

 起き上がり怒り狂ったサーベルタイガーの突進をかわした少年は剣を構え切り込んだ。


 サーベルタイガーが肩から出血し動きが弱まった。

 キーマは突如現れた人物に怯んだ。


「えっ誰?」

 少年は自己紹介した。

「クラビさんの第一子分、ボジャックさ!」


 にやりと得意げに笑った。髪型がワイルドで積極的そうな、自分で人生を切り開く意欲に満ちた、且つ自信もある顔をした少年だ。黒目の服を着ている。


「子分⁉」

 子分と言った事にキーマはとても驚いた。

 クラビは言った。

「子分じゃないだろ仲間だろ」


 キーマは驚きっぱなしであった。

「貴方クラビのお友達なんですか⁉ こんな強い仲間がいるなんて知らなかった」

「紹介するよ。元雇い主のキーマさん」


「ボジャックです。宜しく」

「よ、宜しく」


 その時陰に隠れていたもう1匹のサーベルタイガーが襲い掛かって来た。

 そこにまたもや人影がかばう様に現れ、剣の一閃をサーベルタイガーに食らわせた。


「えっ? 今度は誰」

 そこへかなり細身の目が切れ長で長い髪で目を隠した少年が現れた。


「お久しぶりっす」

「ゾゾ!」


 少年はクラビに言った。


「ボス、大丈夫ですか?」

 またキーマは驚いた。

「えっ、ボスってクラビの事ですか? 何がどうなって」


 ゾゾは自己紹介した。

「俺はお2人の後輩なんです。クラビさんをボスとしてとっても尊敬してます」

「ええ? 皆さん元孤児院のお仲間?」 


 ボジャックが説明する。

「正確に言うと『孤児院窃盗団』の仲間だな。勿論クラビも」

「窃盗団⁉ クラビが⁉ ま、まさか」


 クラビは照れた。

「一応本当なんだけどね」


 キーマは思った。

 だけどこの2人マジで強い。剣筋も体裁きも、クラビも同じかそれより強いのか? てっきりぺこぺこしてばかりいる戦いなんて出来ない奴だと思ってた


《ボジャックステータス》


 腕力18 体力19 素早さ22 頑丈20 魔力8 魔法耐性7


 保持スキル「怪力」「超怪力」


《ゾゾステータス》


 腕力17 体力17 素早さ24 頑丈19 魔力10 魔法耐性9


 保持スキル:「高速移動レベル1」「気配消去」

 

 2人共クラビより大分強い。

 ボジャックはリードするように言う。

「じゃあ、早い所森を抜けて洞窟に行こうぜ」


 そして4人は走りながら洞窟へ向かった。

 同時に敵がいないよう祈りながら。

 敵とも遭遇したが蹴散らした。


 そして400メートル先の洞窟の前に来た。

 ごつごつした岩でできた、天然の洞窟で入り口は高さ2.5メートル位でそこにトンネルを掘り進めて先に進める様にしたらしい。


 天然な部分と人口の部分があり気を付けないと頭をぶつけそうだ。

 キーマは様子を伺う。

「見張りはいないみたいだな」


 キーマは続ける。

「この情報自体相当厳重だからな。知ってる人は少ないだろう」


 ボジャックは答えた。

「でも罠があるかもしれない。気を付けて入ろう」


 4人はゆっくり石橋を叩いて渡る様に慎重に歩を進めた。どこかに兵が隠れていないか。

 そして7メートル程進むと足に何かが引っかかった。

 途端に音がなった。




 罠のブザーだったのだ。

 即座に奥から6,7名の敵兵が来た。


「貴様ら誰だ! 何をしている! 何故ここが分かった!」


 「やるしかないのか」

 と言い、ボジャックとゾゾは戦いなれしていて動じず構えた。

「ガキだからって舐めるな」 

 とゾゾは言葉使いが変わった。


 ボジャックは言う

「師範に習った剣術を見せてやる」


 大人の兵相手にも引かない。

 しかしクラビも剣を構えたが、怖く腰が引けた。


 クラビははっきり戦う事と状況に震えていた。

 彼はしばらく剣術の実戦はしていない。


「訓練された兵が相手じゃ俺の力じゃ勝てそうにない。たしなみていどの剣術しかないんだ」

 

 さらにつぶやいた。

「女の子に負けた俺なんかじゃ……」


 恐れで心臓が高鳴る。

 周囲の臨戦態勢の雰囲気に付いて行けてない。


 クラビはまた呟いた。

 「あの2人は強くなったけど、俺は孤児院で修行したけど強くなれなかった。だから好きな女の子からも身を引いたんだ。今まではぺこぺこ頭を下げてればよかったけど」


 その時弓兵がそんな気も知らず、冷淡に正確にクラビ目掛け弓を引いた。

「あっ!」

 

 クラビが叫ぶのもつかの間、鋭く矢は発射された。

 チャリーン!




アジトの死闘2
ところが、飛んできた矢に反応するように突如、クラビの右腕からアンカーが飛び出し、盾のように矢を振り払った。

「な、何だあれは!」

 と弓兵達はどよめき驚いた。


 もちろん地上にこんな武器はない


 そしてクラビの意志とは関係なく自動的に猛スピードで重い鐵具が弓兵の元にアンカーが飛び、あっけに取られる間もなくがんと巨人に殴られた様に吹き飛ばした。


  

「え?」

 あまりの威力に兵は驚いてひるんだ。

 クラビも戸惑いっぱなしだった。


 キーマは喜んだ。

「すごい! それが新しい武器なんだな!」

「いや俺は何も」


 女神は言った。

「貴方が動かしたんじゃなく持ち主の危機に自動的に動いたのよ」


 ボジャックは指示する。

「よし! 剣兵は俺達が何とかする。クラビは弓兵4人を頼む」

「えっ!」


 ちょっと無茶なお願いっぽかった。

 別の弓兵はクラビを危険視し狙った。


 2本の矢が高速で飛ぶ。


 しかしまたもアンカーが自動で防いだ。

 女神は言った。


「新しいカードを使う時よ! 『速』と『鞭』を」

 クラビは言われるままにカードをセットした。

「よし! 行けっ!」


 するとアンカーは並んでいる弓兵に向かってうなりを上げ向かって行き、鞭のカードのとおり横に兵達を一気に薙ぎ払った。


「すごい!」


 一方ボジャックとゾゾは戦っていた。


「こいつらガキの癖に!」

 と兵達はてこずった。

「俺は騎士階級じゃないけど少なくとも孤児院じゃ誰にも剣と強さへの気持ちは負けない」


「てめえらよ、バラバラに肉を切り裂いて殺してやっからよお」

 ゾゾの声が一段低くなった。


 ボジャックは言う。

「おっ、普段は従順なゾゾが戦いで人格変わったな」

「俺には人殺しても悲しむ親はいないからな」


 ゾゾは戦いになると時折人格が変わる。

 敬語も忘れる程だ。


 凄まじい目つきで敵兵を切り裂くゾゾ。

 その時、奥から魔術師の様な50代の男が現れた。

「何だ貴様らは」


「あ、あんたらこそ何をここでしているんだ」

 キーマは震えた。


「私の名はアンドレイ様の忠実な司令官ザーゴン。我々は侵略の下ごしらえとして魔法性爆弾をここに設置しているんだ」


 キーマは言った。

「やはり侵略の噂は本当だったか」


 ザーゴンはクラビを見た。

「小僧、お前はおかしな道具を持っているな。それを渡してもらおう。何なら小僧ごと連れて行って調べてやる。他の3人は殺すが」


「行けっ!」

クラビはアンカーを発したが、同じ位の強さの光の魔法で迎え撃ち相殺した。


「確かに見た事のない不思議な武器だ。だが私の魔法は破れまい」

 ザーゴンは詠唱し、手からすさまじい炎を出した。


 ごうごうと周囲が火に包まれる。

 キーマが叫ぶ。

「すげえ火! 近寄れない!」

 

 女神が助言した。

「今度は氷のカードを入れて!」

 するとアンカーが冷却され氷の属性となり、激しい冷気を発して炎とぶつかり相殺した。


 ザーゴンは動揺した。

「何だその武器は⁉ こうなれば持ち帰って報告せねばならん。意地でもいただくぞ」

 と今度は氷の魔法を放って来た。


 女神は叫んだ。

「今度は火よ!」


 火の文字が書かれたカードを入れると今度は激しい火が出て敵の氷を防いだ。

「おのれ! ならこれでどうだ!」


 と暗黒の闘気を放って来た。

「ああ、あれに対抗できるカードは今はないわ!」

「ぐわ!」


 その時クラビの目が光り、光の闘気を発した。

「何⁉」


 光と圧がザーゴンを襲う。

「今のもアンカーの力?」


「違うわ。これは勇者にしか出せない光の闘気。これがまさか勇者の力の片鱗?」 

「ぐあ!」

 光の闘気が遂にローブを傷つけ貫く。

 これにザーゴンは怒った


「お、おのれかくなる上は!」

 と地面と岩壁に重力魔法を放ち、地割れと落石を引き起こした。


 パニックになり慌てる一行。

 キーマは半径50センチ近くの割れ目にはまり上半身だけ地上に出る状態で下半身がすっぽりはまり動けなくなった。


「くっ!」

 ザーゴンは嘲笑った。

「馬鹿貴族がはまったか! 大して偉くもないのにデカい顔をする貴様に相応しい死に方をさせてやる!」


 キーマの真上に直径2メートルはある巨大な岩が落ちた。

「わああっ!」


 しかし何とそれを下からクラビが受け止めた。

「クラビ!」


 ボジャックは驚いた。

「あいつ、あいつにいじめられてたんじゃないのか?」


 キーマも驚いた。

「な、なんで、散々意地悪したのに」


 クラビは答えず支え続ける。

 クラビの体が光る。


「勇者の力……」

 女神はつぶやいた。


 クラビは声を絞り出した。

 手が負荷で震えている。


「は、はやく逃げろ」

 ザーゴンはまた嘲笑した。

「父親も大して偉くもないがこのバカ息子はそれ以下だ! 1人じゃ何もできやしない! はまったまま無様に死ね!」


 クラビは歯を食いしばる。

 ボジャックは言う。

「クラビ、止めろ、お前が死ぬぞ」

「うおお!」


 クラビは岩を投げ捨てた。

「はあはあ」


「くっ、あのバカ息子を殺せ」

 ザーゴンが命ずると生き残りの弓兵が起き上がり、キーマを撃った。


 矢は心臓に命中した。

「‼」


 キーマはばったりと息を引き取った。

「はーっははっは! 下半身が埋まったまま無様に死におった。バカ息子にふさわしい死に方だ!」



 クラビの中で何かがはじけた。

「くそ野郎……人を殺しやがって」

「何? 言葉遣いが変わったな二重人格か?」


 クラビは爆発した。



アジトの死闘3
「人が死んで何も感じない、キレない人間がどこにいるんだこのクソヤロー!!」

「なっ!」


 そして手から闘気をだすとザーゴンを直撃した。

「うおおお」


 クビはまさしく無敵状態になり火炎もはじき返した。

「馬鹿な!」


 クラビのアンカーがザーゴンに重く食い込んだ。

「あぐ!」


 さらにクラビは大岩をアンカーで吸い付け、振り回した。

「ああ!」

「死んじまえ!」


 その時キーマの意識が戻った

 い、生きてる、急所を外したんだ、それにしてもクラビ、俺の、俺なんかの為に怒ってくれてるのか、俺は何て馬鹿でひどい奴だ。


 岩は激突し砕けた。

「おのれ、この借りは返す。秘密を知った上我々を敵に回して生き残れると思うな」

 とザーゴンは足早に逃げ、手下が道を塞ぎクラビ達が追えないようにした。


「はあはあ、キーマ! 生きてたのか!」

「何とか」

「良かった」

「これ緊急傷薬だ。すぐ病院に運ぼう」

「すまない、クラビ」



 一旦皆クレゴス家に帰った。

 クレゴスは非礼を詫びた。


「申し訳ない、何て謝っていいかわからない」

 キーマも頭を下げっぱなしだった。

「約束通り冒険に帯同してくれたお礼だ」

 キーマが宝袋を渡した。


「じゃあ俺達はこれで」

 キーマは叫んだ。

「クラビ、家に戻ってくれ! 待遇は全部変える」


「いや、俺達旅に出なきゃいけなくなったから」

「いつでも我々を頼ってくれ」

 クレゴスは頭を下げた。


「すまなかった、すまなかった!」

 キーマは涙を流した。


「いいよ」








 一方その頃、傷ついたザーゴンが王宮に入った。



狩りと過去
一方その頃、傷ついたザーゴンが王宮に入った。

 そのぼろぼろの姿に兵達はどよめき怯えた。


「えっ、ザーゴン様が深手を? 何があったって言うんだ」


 兵士は駆け寄った。

「ザーゴン様手当を!」

「いやいい、それより閣下に報告を」


 と言い王の間によろよろと向かった。

 扉を開けると女神の言った人間に化けた王らしき人物が座っている。

 彼こそ国王に化けたアンドレイと言う男だった


 45歳くらいのやや太め、がっしりとした体格の男だ。

 兵は皆傷ついたザーゴンを見て何事かと言うが、アンドレイ王は厳しい目を崩さず冷静だった。

 

 アンドレイ王は重い口調で口を開く。

「どうした」


「ご、ご報告いたします。洞窟での作業中、おかしな4人組が現れ、兵は全滅、私もこの様です。も申し訳ありません」


「4人組?」


「その内の1人は貴族クレゴスの息子でした。そいつは殺しましたが、他に3人、10代のガキとは思えない腕の立つ剣士がいまして、兵達がやられました」


「……」


「中でもそのガキの1人におかしな武器を使う者がおり、そいつの能力でやられました。

「おかしな武器?」


「は、手に付けた腕輪から紐でつないだアンカーを発射してくるのです。非常に速く重く、しかも火や氷を出したり岩を持ち上げたりしてきます」


「ぬ? それは地上の武器ではないな。それにそのガキとやらは何者だ」


「クラビとか呼ばれていたのですが、あまり戦闘的な外見でも名の知れた剣士でもありません」

「クラビだと⁉」


 アンドレイは強く聞いた。

「そのガキ、何かおかしな能力を使ったりしなかったか」

「は、手から属性不明の光線を出したり体がまばゆく光り始めました」


 アンドレイは考え込んだ。

「考えたくはないが、そいつは私が12年前に殺した伝説の勇者だ。名前が同じなのは偶然なのかと思ったが、そいつの能力や地上にない武器等、おそらく同一人物だ。間違いない」


「勇者」

「だが完全に息の根を止め記憶も封印したのに何故だ。人間に人を生まれ変わらせたり私の記憶縛りを解ける者などいない。とすれば、天界の神が何かしたのか」


「……」

「もしそうであればうかうかしておれん。何らかの理由により勇者がよみがえったのだ。なんとしてもここで潰さなければならん。直ちに追っ手を差し向けろ」


 ザーゴンは無理を言った。

「私が行きます」

「しかし、その怪我でか」

「こんな怪我など」


 その時別の司令官スタグラーが来た。

「私に行かせてもらえませんか」


「貴様の手など」

 とザーゴンは拒否した。


 しかしアンドレイは答えた。

「良いだろう。では2人で兵を率いて行け。ザーゴンは特にこれが最後のチャンスと思え」

「はっ!」



 一方、ボジャック達は道で旅を続けながら話しあった

「今後の方向としてまで何日かかるかな、馬車ないし。とりあえず最短距離を行くようにするのがベストか」


 クラビが答える。

「ただ最短距離は魔物が多く出る所に出る可能性もある。それと、もう1つはアンカーに入れるカードって地上に散らばってるんですか」


 女神は説明する。

「ええ、近くに来ればアンカーが反応して音と光を出すわ。古代文字カードを増やさないとアンカーの力を引き出す事が出来ない。これから先どんな敵が来るかわからない。その為には最短距離ではなくカードを集めながら行く必要があるわ。それともう1つは貴方自身が勇者の記憶と能力を引き出す努力をしなければならない」


「えっ?」


 女神は続ける。

「私たち神の力でも出来ない。方法は分からないけど貴方が努力をして少しずつ勇者の力を引き出せるようにする必要があるのよ。昨日の戦いでは急に技が出せる様になったけど、きっと感情とか何かが引き金やきっかけになってるのよ。だからこれから肉体や剣術の修行をして使いこなせるようにしていく必要があるわ」


「昨日、何で使えたんだろ」


「わからないけど、他人を救う為とか悪を許さないとかそういう感情が引き金になり体の1部1部が覚醒して行ってるんだと思う。肉体の努力と感情のコントロールとかで何によって力が引き出されるのかこれから考えて行かなければならないのよ。あと万能アンカーは貴方の魔力を消耗する。1日に何度も使える訳じゃないわ」



 旅は徒歩で続いていた。

 ボジャックとゾゾが言う。


「しかし大変だったな昨日は。クラビの隠された力見れて良かったけど」

「俺もびびりましたよ」


 クラビは思い出した。

「自分がそうしようというより何かに動かされてたみたいだった」


 ボジャックは言う。

「でもあいつずっとお前をいじめてたんだろ? それなのにあんなに怒るなんて」

「やっぱりすごいすよ、昔からクラビさんは度量っていうか。やっぱり孤児院の時から王様になりたいっていっただけあります」


 孤児院時代の回想に入る。

「はい! 僕の夢は王様になって平和な国を作る事です!」


 少し間を置いて皆大笑いした。

 最初何故笑われているのか分からないクラビだったが恥ずかしそうだった。


 しかしゾゾは拍手した。


 ボジャックは言う。

「あの時、只者ではないと思った」

 

 クラビは言い返した。

「本当かよすましてたじゃん」


「半分はね。どうやって孤児で王位に就くんだって。でも何か本当にやりそうな気もした。出来ない、出来るが7対3位の割合で」 


 ボジャックは懐かしみ嬉しそうに言う。

「でも何か月ぶりだっけ3人揃うの。1年近くか。でもまさか悪党退治の冒険の旅に出るとはね。いつまで使用人やるのかと思ってたけど運命って本当不思議だよな」


 クラビは笑顔で答えた。

「そりゃそれを担ってる女神様がここにいるんだから」

「別に担ってると言うか救う感じね」


 ボジャックは前向きに言う。

「この先に何があるか不透明だしさっきまで大騒ぎだったし不安と言っちゃ不安だけど、でも俺はようやく日の光を浴びられた気分さ、開放感って言うか。お前も暗いクールな顔直せよ」


 ゾゾは言う。

「俺は元々こういう顔っすから」


 ボジャックは回想した。

「孤児の頃暗かったよな。俺も耐えて笑顔作ってる内によく笑う明るい人なんて言われる様にもなったけど俺は黒い部分ばかりさ」


 クラビは言った。

「パワフルで積極的じゃないか」


 しかしボジャックは言う。

「ポシティブで積極的で負けず嫌いだけどその反面恨みや憎しみの感情が渦巻いて影の部分が黒いのさ。そうなっちまうよ。窃盗団の頃は老人や女からもひったくっていた。生きる為には仕方ないって建前で」


「そうだね。俺は無理やりやらされてたけど一応ボジャックは自分の意思でマークレイ達と一緒に窃盗やってたんだろ」

「……」

 

「マークレーがサブリーダーでひったくりすんの。マークレーから手紙来たよ。国を良くする活動するって」


 ボジャックは冗談交じりに言った。

「国家転覆計画でも立ててんのか」


 クラビは目標を説明した。

「マークレー達と合流するのが目的だ。仲間に加える」


「まてよそのルートだと孤児院通るよな」

「あ……」

 クラビはまごついた。


 ボジャックは言う。

「彼女と再会出来るじゃん」


 クラビは慌てた。

「別に好きじゃないよ」


「マークレーは強いけど無敵のリーダー様には逆らえなかったからな。あの人健在かな」

「元々何を考えてるか良く分からないからね」


「俺はさっきお前が言う様に自分の意思で窃盗仲間に入ったと思ってるだろうけど、本当は嫌な気持ちが半分以上あった。要するに半分逆らえず言いなりにされてたのさ」


「そうだったのか」


「俺よりマークレイ達の方が腕っぷしが強いだろ? だから強く言い返せなかった。そういう雰囲気だった。マークレイやベルスの強権が幅を利かせてたから。あいつらは俺やクラビの事を『仲間』と言いながら子分扱いしているのさ。そんな時『自分はやだ』と言えなかった。そんな自分がやだった。だから強くなろうとしたんだけど」



 ボジャックは14歳の頃の孤児院の様子を思い出した。

 

 〜一旦場面は回想の中に入る〜



 孤児院の簡易会議室に8人程の孤児の少年がテーブルを囲んでいる。

 勿論、クラビ、ボジャック、ゾゾも席に付いている。


 中心付近にサブリーダー的にマークレイ、その隣にひょうひょうとしてるような威圧的なような不思議で異様な雰囲気の少年・リーダーのミッシェルがいた。


 彼に気を使っているようだ。

 本人はリラックスムードだが。

 マークレイも堂々としているがどことなく彼に気を使う様にちらりと目をやる。


 マークレイの対角線上に彼と仲の悪そうなベルスと呼ばれる少年がいる。

 マークレイが司会で始まった。


「じゃあ、今夜の俺達の窃盗計画について。まず派手にやりすぎると有名になったり大事になってこの付近の警備がきつくなる。迅速に隠密にだ。誰か何か意見は?」


 ベルスは冷淡な意見を言う。

「まず、獲物は老人と女が良いだろう。力が弱く金持ってるやつが」


 物騒だな、とクラビは思っていた。

 ボジャックは賛成反対半々の様な気持ちだった。


 しかしマークレイは諭した。

「お前、誇りって物がないのか。弱いものばかり狙うって卑小だと思わないのか」


 ベルスは反論した。

「じゃあ逆に屈強な男達を狙うってのか? 時間がかかるわ強いわ、最悪こちらがやられる可能性だってあるぞ」


 マークレイは答えた。

「わかってる」


 ベルスは自分を正当化した。

「俺達は金や食べ物が無くなれば自殺かゴミ箱をあさるかいじめられぬくか強制収容だぞ」

 ベルスに同意する少年も言った。


「俺も、強い若い男を狙って窃盗するなんてリスクとデメリットが大きすぎる」

 中立的な少年が言った。


 様々な意見が飛ぶ。

「確かにまあ卑怯さは落ちるわな」


「駄目だよ絶対的弱者だけ狙うのは。やってて虚しくなるぞ」

「俺もそう思うよ」

 とマークレイに同意する少年が言う。


 ボジャックは言った。

「何て言うか利害と自尊心のバランスじゃないかと思う」

 しかしボジャックの意見はどこか中途半端で皆を動かしたり反応がない。


 これは本人も自覚していた。

 だから俺はリーダーになれないんだと。

 気の強さも体の強さも行動力も中途半端で中庸だと。


 クラビよりましだけど。

 と内心思っていた。


 この頃は実はボジャックはクラビを少し見下していた。

 皆と違い気が弱くてはっきりしなくて平和主義者で、と見ていた。


 マークレイ派の少年が言う。

「弱者ばかり狙うほど腐ったら終わりだぞ」


 ミッシェルが言う。

「じゃあこうしよう。獲物に優先順位を付ける」

「え?」


「?屈強な男のグループ?屈強な少数の男、?中年の男、?少年、?老人、?女、の順でターゲットにするんだ」


「優先順位かあ」

「それで良いかな?」

「は、はい!」


 孤児院は人間界の学校と同様、能力、強さ、気の強さ、カリスマ性、外見などで力関係が決まるが、どうもクラビのいた孤児院はそれに加え「生まれの暗さ」「どれだけ苦労をしたか」等が密接に力関係に加わっていた。


 職員は言っていた。

「どうも子供達には苦労をした数により関係が決まるようなルールがあるらしい。例えばボジャックは親がいた時期があるが行方不明になったわけだが、生まれつき親がいない子の方が偉いと思われ、親に捨てられた等の事情がある子は「お前はまだ親に愛されてる、俺の方が不幸だ、たくましいんだ、等と植え付けられる節がある」



 マークレイは外で屈強な若者に襲い掛かりカバンを取ろうとする。

 当然相手は反撃してくる。

 こういうタイプは悲鳴を上げたり助けを呼んだりしない事が多い。


 もみ合いになった。

 しかしマークレイはパンチで吹っ飛ばし逃げた。


 そして追って来た若者にリーダーであるミッシェルが立ちふさがり凄まじい威圧と手の波動だけで吹き飛ばした。

「ひええ、リーダー桁違い」

 そしてゾゾは当身で別の男を気絶させた。


「今日の稼ぎこんだけか」

「逆に金持ちだけを狙ったらそれもきたねえ感じがする」

 とマークレイ達は数えた。


 孤児院にはいじめのような物はないのだが「力関係」や「格差」は見えない様にある。

 ミッシェル、マークレイ、ベルスがリーダー格である。

 何となく腕力と気の強さ順に下が続く。

 

 マークレイは基本いじめをせず皆を守る役だが親分顔をする事もある。

 少し仲の悪いベルスは相手を言いなりにする事がある。


 クラビはいじめられていないが、剣の腕も腕っぷしも弱く、「評価外」の様な扱いで見張り役等をやらされていた。

 

 ボジャックは少し違いそこそこ気も力も強いがナンバーワンではない。その為メンバーの主でもなければ言う事を聞かされたり中途半端なポジションに居た。

 

 彼はその中途半端ぶりが嫌だった。

 言いたい事を言えない様なのがクラビのおかれた場所よりある意味不満だった。


 ボジャックは思った。

 悪い事をしてるのは百も承知だった。

 生きるために他人を狙うなんて理由にならない事は分かっていた。ゴミ箱の残飯あさりがいやだから。

 

 孤児院の職員が異動で人が変わり冷たくなって嫌になって来た。


 飢えと欠乏で自分の正気が失せて行き倫理観を無くした。

 親がいれば怒ってくれたろう。


 でも俺は分かってたんだ悪い事だって。金がないから人から盗んだりひったくるなんて。

 自分が怯えて言い返せないのを「生きる為」なんて言い訳してた。


 クラビは言った。

「窃盗止めよう」 


「い?」

 ボジャックはぎょっとし、皆しーんとした。


 しかしボジャックは思った。

 俺も思ってたけど言えない事なんであいつは言えんだよ。殴られるぞ下手したら。


 しかしクラビは怯えながら続ける。

「止めよう」


 その姿にボジャックは感嘆した。

 

 俺は中途半端だ。クラビは最初から一貫して反対の姿勢だった。

 俺も半分は反対だったけど、そうしなきゃ生きて行けないって言い訳してしかも皆に反対するのも怖かった。


 自分の良心から逃げてたんだ。


 そして彼の心に「断る決意」が芽生えた。

 それはそれまでになくクラビに感化され後を押された。


 ボジャックは怯え言った。

「み、皆、窃盗何て良くない、ぜ」


 さっきと同じ位にしーんとした。


 ベルスは睨んだ。

「仲間を抜ける気か。それとも俺達全員にやめろと?」


「そうしてもかまわない」

 ベルス派の少年たちはボジャックをにらんだ。


「よせよベルス、あまり強要すんな。平等な仲間じゃないみてえになっちまう」

 マークレイがボジャックをかばうとベルスはにらんだ。

「俺達は縦の関係みたいなもんだろ」


「お前が決めるなよ」

「何?」


「時代が貧しいから仕方ねえとか言い訳にするのは今後やめたい。俺が一番の弱虫さ」


 

 だから剣の孤児院に来た時真っ先に手を挙げて弟子入りしたんだ。

 誰よりも早く。


 その後しばらくして出来た教会に一時的に引き取られ俺達は魂を清め悪い事をもうしない様祈った。その後各貴族に引き取られた。しかしそこでも生活は厳しくまた人を恨みそうになった。


 「俺は今でも王様になって平和な国を作ろうと思う。皆孤児院時代は笑ったけど」


 ボジャックは言う。

「俺も孤児院で初めてお前の夢聞いた時何だって思った。でも今は分かる気がする」


 ゾゾは言う

「すごい夢だと思いますよ。全力で応援します」


 〜回想は終わる〜


 

 場面は現代に戻りボジャックは言う。

「でもさ昔のクラビってどう見ても窃盗団って顔じゃなかったよな。マークレーが無理やり入れたようなもんだけど」


 クラビは謙遜した。 

「良くいる見張り役だよ。俺は弱いし、引っ張れないし、マークレー達の方がはるかに強かったし」


「マークレー頼りになるよな。俺は獲物を見つける先導役だったけど。あっ獲物っていえばさ狩りしないかモンスターを」

「いいすね」


「そのアンカーを使えばお宝を持った強いモンスターとも戦えそうだ」

「あっでも、あまり私利私欲の為使うとまずいそうなんだ」


「そうなの? 女神さん」

「うん、でもまあ少し位はいいわ、貴方達とっても苦労したから」


 ボジャックは思いついた。

「じゃあやろうぜ。クラビも上手い者食ったりしないとまたケーキ事件みたいなの起こすかも知れないぞ」

「じゃあやろうぜ。クラビも上手い者食ったりしないとまたケーキ事件みたいなの起こすかも知れないぞ。それにアンカーの威力がどれくらいか把握しておきたいから」


 こうして3人は狩りを始めた。

 「最初は肩慣らしに弱いモンスターから」

 まず犬と大ウサギ、サイの怪物のグループに出くわした。


「あのサイだけ注意だな。デカいし突進とか」

 ゾゾとボジャックは弱い犬と大ウサギはすぐに倒せた。 


 そして巨大なサイの怪物をアンカーで倒した。

「この『サイゴン』ってモンスター、皮膚と角が高く売れるらしいぜ」



 そして今度は巨大なゴリラの怪物に遭遇した。

 クラビはアンカーを試し、まず射出して当てひるんだ所に岩をいくつかぶつけた。

 弱った所をゾゾが倒した。


「こいつ毛皮が売れるらしい。大収穫だ。一気に金持ちだ」

「あまりお金儲けに走らないでね」

 

「こういう時抑えてくれたのがクラビなんですよ。いつも盗みをためらって皆を止めようとしていた」

「最初は自信なげだったからはねられちゃったりしたけど」


 ボジャックはクラビに感謝し褒めた。

「でもお前は盗んだ物返しに行ってたんだろ」

「ん」


 さらに褒めた。

「だから尊敬させるんだよ」

「クラビさんてじわじわいい所が伝わる人すよね」



 しばらくして今度はトロールに遭遇した。

 「今度は結構デカいな」

「『重』と『投げ』のカードを!」

 女神が指示し、素早くクラビはインストールする。


 対峙している3メートルはある巨人の魔物、トロールは怪力に任せて岩を投げた。

「木を引っこ抜いた時と同じ要領で!」


 アンカーを飛んで来る岩に吸い付け動きを止めた。そして落ちた岩を持ち上げ振り回した。

クラビは自分の体が自分で無い様だった。

「すげえ!」


 そして岩を投げ返した。惜しくも命中せず避けられてしまったがトロールを動揺させるに十分だった。

「高速移動」をゾゾが使い、華麗な動きでトロールをかく乱する。


 そして隙をついてボジャッも切り込む。悲鳴を上げたトロールの顔面に「重」のカードを入れ攻撃を重くしたアンカーを当てると流石に倒れた。


「よし、やったぞ!」

「次の魔物に行こう。経験と金を集め、俺達のコンビネーションもアップさせないと」



 今度は大きな熊だった。

「こ、今度は狂暴そうだぞ爪に気を付けろ!」

「良し」

 

 クラビは火のカードを入れアンカーを振り回す。火に怯え立ち尽くす熊の怪物。そこから奇襲的に火炎放射を浴びせると見事に利き腕に命中した。


 この為熊の特異な爪攻撃は使えなくなった。

「よし行ける!」


「怪力」のスキルをかけ攻撃力をあげるボジャックはすかさず切り込み熊の熱い肉を切る。

これが致命打になった。


 ボジャックは言う。

「アンカーの威力はやっぱすげえよ。今のレベルじゃ勝ちにくい魔物でも勝てる。経験が多く入るぞ」


「よし近くに魔物の気配が無くなったしここで一旦特訓しよう」


「アンカーで俺達を攻撃してくれ!」

 言われたクラビはまず「高速」の状態にしスピードに自信のあるゾゾを攻撃した。


 素早い動きで伸縮するアンカーをかわすゾゾ、何発かかわして見せたが、汗が出始めた。


「速い……」

 剣で上手く防ごうとしたが弾かれてしまった。


「よし次は俺だ。『怪力』のスキルをかけた状態でアンカーを正面から受け止める」

「大丈夫か?」

「重くきついものを持ち上げて耐える程レベルアップが早くなるんだ」


 頼み通りクラビはボジャックめがけアンカーを放った。

「くっ!」

まるでドッジボールの体勢である。

「ぐぐ!」


 両者が踏ん張る、そして、何とかボジャックがはじいた。

「はあ、はあ、弾いたのはいいけどもう力がない」


「そう言えばお前の努力とかでアンカーの威力上がるのか?」

「ええ、努力、鍛錬によって勇者の力を引き出す事によりアンカーの力が上乗せされるわ」

「じゃあ剣の特訓をしよう」


 ボジャックは疲れた。

「はあ、疲れた。そろそろ食事だからお金を「持ってそうなモンスターを狙おうぜ」

「それがね、あまりお金儲けに使うと駄目になったりするのよ」


 と言いながらボジャックはお金を持っている有名なモンスターゴールドシェパードを狙った。

「やった!これで儲かるぞ」

「あっアンカーの光が消えちゃった」

「アンカーを欲望で使うとしばらく機能停止したりするの」


「すこーし贅沢したかっただけなんだけどなあ」

「しかし、アンカーが使えないんじゃ強力な魔物が出るとまずいすよ。早めに宿に行きましょう」

「案の定アンカーも調子がおかしくなってきた」


「ん?」

クラビ




ジェイニー
モンスターか?」

「いや、これは悪意を持った人間の気配です」


 その時兵が前後を塞ぐように現れた。

「追っ手か!」


 兵は答える。

「貴様らは軍の秘密を知った。それだけではない。貴様は勇者の生まれ変わりだと言う疑いがかかっている。よって捕らえアンドレイ閣下の元へ連れて行く」


「何だって⁉」

「何であいつらがそんな事を知ってるんだ」


 新しい司令官スタグラーが言う。

「ふふん、アンドレイ様もそうだが、私は勇者の力を感知する力があるのよ」


「新しい幹部か」


 スタグラーは続ける。

「君は殺さず捕らえてやる。他の2人は知らんが」

「くっ、やるしかないのか。でも今アンカー使えないんだろ」


「俺とボジャックさんは戦えてもクラビさんは危ないすよ」


 ボジャックはクラビに言った。

「お前先に逃げろ。あいつらは俺達はそんなに重要視していない。お前が一番目を付けられてるんだ」


 ボジャックとクラビは揉めていた。

「しかし、俺だけ逃げるなんて!」


 ゾゾもボジャックに共感した。

「女神様からも人間からも、クラビさんは未来の希望になる人なんですよ。ここで何かあったら」


「弓兵が3人もいる。厄介だな」

「くそ、アンカーが使えれば遠距離攻撃出来るのに


 弓兵はクラビを狙った。

「危ない!」

 ボジャックは素早くクラビをかばい飛んだ


「うおおお!」

 倒れた2人に兵が襲い掛かると、ゾゾが立ちふさがり剣で防いだ。


「すまない!」

「ふーん」


 相変わらずスタグラーは余裕綽々だ。

 ゾゾは感情的になった。


「俺はお前ら何かには負けない」

「何⁉ ガキのくせに!」


 スタグラーが兵を止めた。

「じゃあ、私と勝負してみるか?」

「?」


「え?」

「はああっ!」


 ゾゾが沈黙を切る様にきりかかったが軽くかわされてしまった。


「速い!」

「ふん」


 とスタグラーは鼻で笑った。


「くそ!」


 と珍しく熱くなったゾゾは再度切りかかるが軽くかわす。


 あいつ強い、剣には大して習熟していない俺にも伝わってくる。それに余裕綽々で戦いを楽しんでるみたいだ。それに勇者の力が分かるってあいつ一体」


 スタグラーは一通りゾゾの剣をかわし、剣ではなく蹴りでダウンさせて見せた。


「ゾゾ!」

「お2人とも、俺に構わず逃げて下さい」


「そんな事!」


「うおおお!」


 突如クラビは飛び出した。使い慣れない剣で。


 スタグラーは言う。


「おお、勇者の力が見れるかな!」

「ゾゾから離れろ!」


 とクラビは切りかかったが、軽くかわされ同様に蹴り倒されてしまった。


「どうした、この程度かな」


「くそ!」


 何とクラビは剣を捨て素手で殴りかかった。

「なっ!」


 スタグラーは動揺した。

「貴様どういう事だ剣を捨てて素手とは」


 クラビは答えない。

 あいつ逆上して冷静さを失ってる。

「面白い奴だな。それとも勇者の力を見せるのか?」


 その時火炎弾が飛び地面に当たって燃えた。


「誰だ!」


 そこにはクラビ達と同じ17歳程の少女が立っていた。


 耳にかかる部分もあるショートヘアのであるが、クラビ達と違い貴族的な良い服を着ていた。


 スタグラーと兵は少女を睨んだ。

「魔法使いか」

「貴様も仲間か」


「いいえ、通りかかっただけよ!」


 その時アンカーが光り作動可能になった。


「よし!」

 素早くカードをセットし火炎を放った。


「ぐあ!」


 さらに少女も火炎弾を放ち周囲に火が拡がる。

「くそ!」

「今の内に逃げましょう!」


 少女のリードで4人は森を駆け抜けた。

 少しして兵達は追いかけて来た。


 突如クラビ達は透明になり姿が消えた。


「何? 消えた?」


 そして大きな火炎弾が飛んできて兵達を蹴散らした。

 少女はそこにいた魔法を使ったらしい貴族に言った。

「お父さん!」


「えっ、親?」


「皆、逃げるんだ!」

「こっちよ!」


 一行は必死に逃げた。


「助けてくれてありがとう。僕はクラビ」

「俺はボジャック」

「私はジェイニー、宜しく」

 そして父と呼ばれた男も来た。


「兵士達に幻覚魔法をかけておいた。これで見失うだろう」


 しかし、あの司令官凄まじく強い……また追って来るだろうか。


「案内するわ私の家へ」



 そこは貴族の屋敷だった。

「大きいなあ」

「さっ、入って」


 そして案内された。

「私は父親で当主のパルマ―だ」

「ありがとうございます」


「娘と魔法修行をしていたらおかしな気配を感じてね。間に合って良かった。じゃあ昼食にしよう」


 大きなテーブルについた。


「嬉しいです」

「助けてもらったのに食事まで」


「気にしないでくれ。これも何かの縁だろう」

「いただきます」


「君達、家は?」

「僕は住み込み使用人だったんですが追い出されました」


「ええ?」

「で、今は旅を続けています」


「どこへ向かってるの?」

「えっとに調査に行く任務があってそこで友人と合流します」


「泊まる場所は?」

「お金は一応あるんで宿に泊まります」


「大変ね」

 パルマ―は寛大に言った。

「今日は泊って行きなさい」


「本当ですか?」

「嬉しいです! しかしこの肉おいしい! 初めて食べました」


「えっ、肉食べた事ないの?」」

「ジェイニー!」

「ごめんなさい」

「無神経な事を言っちゃいかん」


 ボジャックは言った。

「俺は小さい頃は肉食べた事があるけどね」

「?」

「6歳まではそこそこ裕福な商人の出だった」


 ジェイニーは少し間を置いて聞いた。

「調査の旅って? それに何で追われていたの?」


「アンドレイ王を調べて倒して欲しいって依頼なんです」


「誰からの?」


「め、女神様」


「ええ」


 本当の事を言うクラビをボジャックは助けた。


「ああ、こいつ少し変わってるんですよ」

「嫌、本当の事を言おう。あと証拠を」


 と言って女神が入っている瓶を開けた。

「えっ? 軍と戦って命を狙われてる?」


「はい、だからすぐ去ります」

「でも3人だけで大丈夫なの?」

「あんまり大丈夫じゃない」


 ジェイニーは不意に言った。

「私、旅に同行していい?」


「ジェイニー?」


 ジェイニーは言う。

「突然ごめん、でもとても大変な任務で国の人達の事もかかっているんでしょ? 私も力になりたい」


「ええ、ああ」

 ボジャックは思いつめたように無言でいる。

「嬉しいけど、結構危険かも」


 そして冷たく言った。

「断わる」

「え?」


 ボジャックは続ける。

「そりゃ助けてもらって食事までもらってとっても感謝してます。ただジェイニーさんが同行するって言うのは話が別です」


「私じゃ力不足かしら?」


 ボジャックは説明する。すっかり

「いや、その、魔法使いとしての力は申し分なさそうなんだけど、何て言うか、はっきり言うけど、あんたはお金持ちで育ちが良い貴族のお嬢さんだ。だからはっきり言うと育ちの良い貴族の女なんて旅の足手まといになる」


「……」

「はっきりいうわね、私が何も出来ないみたいに」


「雰囲気やばい」

 と感じたクラビはフォローした。

「いや、こいつは女の子を巻き込みたくないんだよ、こいつ素直じゃないから」


「うるせえなそんな理由じゃねえよ。例えば俺達は食べ物が無くても我慢できるけど彼女だけ我慢出来なくなるかもしれないだろ。それに野宿するかもしれないし」


「我慢するわ」

「やった事あるの?」

 嫌な言い方をボジャックはする。


 ゾゾは言う。

「俺も反対です」


「温室育ちで俺達みたいな野良犬とは違うから駄目っぽいよ。それにあんたは無理して同行する必要性もない」


 ジェイニーは言う。


「何でこういう事はやったことないって知った様に言うの? 私の人生何でも知ってるって言うの?


「うっ!」


 何て口喧嘩の強さ……


「もういいわ!」

「あーまったまった」


 ジェイニーは席を立った。

 パルマ―は抑えた。


「まあ気にしないでくれ」


 何よ馬鹿にして、私が女だからって言うのもあるんじゃ……


 ジェイニーは悔し涙を流しながら自室にこもり明かりを消し机に座った。


 ボジャックに言われた事で過去の辛かった記憶が思い起こされた。


 ジェイニーの回想に入る。


 ジェイニーが13歳の時学校旅行で島に行ったがそこでジェイニーの班だけはぐれてしまった。


 捜索隊も来ない。何とかメンバーたちは集まって助かろうと知恵を絞った。


「救難信号を送れないか」

「思い切っていかだ作るとか」

「ああ、俺達の無力さを知らされるよ」


 ジェイニーは言った。

「そんな、無力なんかじゃない、みんな必死に考えてるじゃない」


「で、ジェイニーは何か案ない?」

「えっ、私は……」


 男子生徒達は溜息をついた。


 ジェイニーは自分が一番何も出来ないような気持ちになった。


 次の日ある男子生徒が言った。

「食料がない。生きる為にはトカゲや蛇も食べなきゃいけないかも」

「えっ⁉ 嫌よそんなの!」


「仕方ないよ」


 男子生徒の1人が言った。

「これだから育ちのいい女は……」


 これがぐさりとジェイニーを傷つけた


 女子生徒は3人、男子生徒は4人だった。

 その夜男子生徒達は女子の所に来た。


「ねえ、毛布とか貸してくれないか?」


「えっ?」

「女の子を野宿させる気?」

「力仕事とか俺らがやってんだぜ。じゃあやってみろよ」


 次の日ジェイニーは薪割りをやろうとしたが上手く出来ない。


「貸して見な」

 男子生徒はそっけなく言った。


 「じゃあ、火を起こして」

 これも上手く出来ない。


 また怪我をした生徒の応急処置も血を怖がって上手く出来ず他の女子生徒が行った。


「駄目だなあ、だから育ちの良い女は駄目なんだよ」


 彼らの言葉にジェイニーは傷つき、夜寝床で泣いた。

 結局男子生徒達の工夫で救難信号が届き全員無事に帰れた。


 しかしジェイニーの心にしこりは残った。


 回想は終る。



 再びジェイニーの自室。


「育ちが良いとか、女だからとか2重の意味で馬鹿にされた上に皆の足を引っ張った。あれから自立出来るよう、言われない様様々な努力をした。そんな気持ちも知らないであいつ」


 そこへノックが聞こえた。

「ジェイニーさん、いい?」


 そこへクラビが来た。

「クラビさん」


「あの、大丈夫? ボジャックがきつい事言ってごめん。俺から謝るよ。あまり気にしないで」


「クラビさん、優しい〜」


「あ、いや、ボジャックも優しいんだよ。あいつは本気で心配してる時しかあんなに言わない。女の子を巻き込みたくないからかも」


 ゾゾは部屋の外ですました顔で聞いていた。


 ジェイニーはクラビに言った。

「貴方達の過去、よければ少し聞かせて?」

「あまり聞かない方が良い部分もある気が」


 回想に入る。


「おら、金出せよ」

「ぐっ」


 マークレイは同世代の孤児院の外の少年を恐喝した。


 もっと年上の男もだ。


 そこへリーダーと呼ばれる飄飄した少年が来た。


「あーマークレイ、女と子供と年寄りとあまり体の弱そうな人にはやっちゃだめだよ」

「はい」


「クラビお前もやれ」

「はい」


「お、お金をくれませんか?」

「は? 物乞いしてんの」


 マークレイ達他の少年たちが来てクラビを怒った。

「馬鹿野郎! それじゃ恐喝じゃねーだろ! もっと強く言え!」


「わ、わかった」


 クラビはいきなり他の若者を殴った。


「ぐあ!」

「金を出せ」

「それで良いんだ」


 回想は終わる。



「そんな事やってたの?」


「実はね、最初孤児院はそんなに雰囲気悪くなかった。だけど職員が変わって変な人が来てやな人になり皆荒れだしてこういう事をやりだし、皆追い出されたんだ。その後教会に拾われた。今は職員さん良い人に変わったらしい」



「すさまじい、確かに私そんな経験してないわ。ボジャックの言う事もわかる。クラビさんが暴行なんて」


「でもね、こっそりその人に返したりしてたんだ」

「あははっ、優しい!」


「ボジャックもやりたくなかったんだ」

「クラビさんていつもボジャックをかばうよね。素敵なお友達」


 その夜ジェイニーが寝てから外で声や物音がしてジェイニーは恐る恐る窓の外を見た。


 するとボジャックとゾゾが剣の手合いをしている。

「こんな遅くに? しかも他人の家に泊まった日まで……」


 翌日パルマ―は言った。


「ああ、ちょっと考えてる事があって、もう1日だけここに泊まってくれないか?」


「え、あはい」

 

 ボジャックはジェイニーの部屋に行った。

「すまんです」

「え?」


「さっきは強く言い過ぎた」

「……」


「ごめん泣かせて」

「えっ?」

「さっき泣いてるのを見ちゃったから」


「いいわ、怒ってないから」


「俺に魔法を教えてくれないか?」


「え?」


「俺遠距離攻撃できないから」


「でも1日じゃ」


「1日でがんばるだけ頑張る」


「良いわ、教えてあげる」



元々島の人 

2022年10月05日(水)10時39分 公開
■この作品の著作権は元々島の人さんにあります。無断転載は禁止です。

■作者からのメッセージ
すみません。前回投稿した際は序盤以降がぐちゃぐちゃしており台詞も誰のかわからなかったり汚かったため推敲して清書しました。


この作品の感想をお寄せください。

2022年10月07日(金)09時26分 元々島の人  作者レス
読みにくいかたはこちらでお読み下さいhttps://www.alphapolis.co.jp/novel/405248955/586680304

pass
2022年10月06日(木)19時50分 元々島の人  作者レス
すみません。この文スペース多くて読みにくいですよね。
しかしなろう運営に問い合わせ原因が分からないのですが、執筆中小説かワードに保存した物を
コピペすると自動的に2,3行空いてしまう変な現象が起きているのです。
私のパソコンに何かあるせいで大変読み辛くなりすみません。

pass
2022年10月06日(木)00時20分 元々島の人  作者レス
お読みいただきありがとうございました。
創作相談掲示板でですか、は、はいありがとうございます。
私も実は作品にやや自信がない点もあります。
それでは宜しくお願いいたします。

pass
2022年10月05日(水)21時58分 金木犀 gGaqjBJ1LM
ちゃ。
実は長編の間も読んでました。

一つ提案があるんですが、この作品の感想を創作相談掲示板に投稿させていただきたいと、おもいました。

この作品の長所と短所、改善点を書くつもりですが、
どうしたらより実力が得られるのか、鍛錬できるのか、
より多くの人から意見をもらったほうが良いのではないかと思いました。

僕が相談するという形になりますが、
いかがでしょうか。

24

pass
2022年10月05日(水)19時46分 元々島の人  作者レス
運営に聞いたところ調査中らしいのですが、コピーペーストすると2,3行も空いてしまう不具合が起きていて読みづらくなっておりお詫び致します。

pass
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