人はみな共に生き、共に死ぬ
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「この苦難を嘆いてはならない……」
 狭苦しい、薄暗い空間の中に、格調高い声が轟きわたっている。誰一人、それに抗うものはいない。
 優しく、厳しく、まさにその中間であるからこそ。
「あのお方が数百倍の喜びによって報いてくださるのだから。さあ、そのような暗い顔つきではいけませぬぞ?」
 彼の言葉は神であった。誰もが彼の言葉と共にあった。
 力を失った群衆の中に、あだ年端もいかない少年の姿。ぼろ切れにくるまって説教を聴いている。この聖人とは、まるで親子のように親しかった。
 聖人の声だけが心を静めてくれた。自分を生んだ父母よりも、深くその悩み、苦しみを理解してれた。もはや、この人以上に愛することのできる人間を、少年は見つけえなかった。

 だがもはやその聖人とも別れが近づいている。だが、ちっとも悲しくはない。もう一度、会える時がすぐ来るのだから。


 人類の滅亡が近づいている。
 かつては数年に一度はやる、ありふれた病原菌としか思われていなかったそれは、またたく間に各地に広まって多くの生霊を黄泉へと送っていた。
 神への裁き? そんな世迷い事を。これはただの不都合な事実だ。人間の長い歴史の中でたまによくある一節に過ぎない。
 そんな風に吐捨てる人間の方が最初は多かった。だが時間がたてばたつほど、これは単なる一時的な不幸に過ぎないと思う人は消えていった。

 人間の『歴史』というものが明らかに終局を迎えていた。
 人間の築いてきたものが、ことごとく消去る瞬間が。

 なぜ我々はこれほど苦しむのだ。人間に苦しめられるのではない。偉大な神の采配によって苦しめられるのだ。
 人が人を苦しめるのであれば、抗うのが当然。しかし神が人を苦しめるのであれば、抗うなどとんでもない。運命には従順にならなければならない。運命に逆らえば、ますます苦しむだけではない。あるべき命の姿に反することになるのだから。

 結論。これは苦しみではない。救い。ただ苦痛からまぬがれられるから救いなのではない。すべての人間が神の御許でねぎらってもらえる、真の救いなのだ。

 町からほど遠く離れた、地下のシェルター。コンクリートが天地に広がる狭い宇宙。
 今ここにはわずかな生存者がいる。数か月間も身を寄せ合ってぎりぎりの境遇を耐え忍んできた。だが、それにもそろそろ限界が近づいている。
 もしこれ以上耐えなければならないとしたら、少年でさえも狂ってしまいそうだった。だが彼は知っている。

 その日ばかり、少年の気持ちは高揚していた。

 彼らを統率するのは、十分男盛りを迎えながら、それほど老いているわけでもない、精力的な顔をした一人の人間。
 聖堂の住民にとって彼は『聖人』だった。当然、少年にとっても聖人だった。少年は災害から逃れ、道端で生き倒れていたのを拾ってもらったのだから。
 この災厄によって全てを失い、家族にもはぐれ、秩序を失った衆生にもつけ狙われ、もう何物も信じられなくなっていたころに。
 聖人は、少年にパンと水を与えた。そして、家族も、友人も失った悲劇のため慰めを与えた。
 聖人の言葉は、全てが神がかって聞こえた。たちまち、少年は彼の虜になってしまい、その善意に疑いをさしはさむなど、考えられなくなっていた。

 口の放つことごとくが、神と来世に関する言葉に満たされていた。それ以外についてはまるで言いたくもないかのように。
 聖人が自分の出身や尋ねられると、いつも困った顔で、
「私がどこから来たかなど、どうでもよいではありませんか」
 と茶を濁す。むしろ、彼の関心は、空の遥か彼方。
「それより上をご覧なさい。何という苦しみに満たされていることか……もし彼らの前に出れば、たちまち俗世間の穢れにあふれてしまうでしょう」
 凄まじいばかりに、聖人はこの世界のはかなさに打震えていた。
 少年は、聖人を最初面白い人間だと思った。食糧と水に限りがあるのに、むしろ神とか天国の方が大事なのか。もっと自分がどうなるか分からないという現実に不安がるべきではないのか。
 聖人の現実離れした言葉に対する不満を、他の人にぼそりとつぶやいてみたことがある。するとその人は怒りだして、
「あのお方にけちをつけることは私が許しません!」
 そういう風に叱った。もうほとんどの人間が、聖人の言葉にすっかり魅了されている様子だった。最初は、その様子が嫌で嫌で仕方なかった。
 だが、後から考えれば、と少年はもう納得している。それはただ、聖人の受難に対して共感できていないだけだったのだと。


 寝るときも、聖人は必ず少年の所に来て言葉を交わしてくれた。少年が宗教めいた話を嫌がっていることすら、感知せずに、穏やかな言葉で、
「私たちは、必ず救われます」 聖人は何度も同じ言葉を繰返した。
「必ず助けてくださる方が現れますから」
 最初は、信じられなかった。自分たちがこんな苦境に立たされているのに、そんな現実から遠く離れた、理想を語るなんて……。それでも聖人は本気だった。あまりにもその語り口が熱心で、寸分の疑いも感じさせないために、少年はだんだんその言葉を鵜呑にしたくなっていった。たとえ出鱈目であったとしても、少なくともかりそめに受入れた方が、まだ前向に生きられるのではないかと。
 そしてその願望が、もういつの間にか少年の現実にすり替わっていた。
 もしかしたら、この人には他の誰かには見えない、素晴らしいものが見えるのかもしれない。少年はそのために信じてみたくなってしまった。彼に対する尊崇の念はもう止まらなかった。気づかないうちに、聖人は少年にとって、もっとも崇めるに足る人間となった。

「今日はこの預言者の誕生日、明日は……」
 地下世界では、毎日が祭日だった。祭壇や儀式のための道具を、他の住人たちと共に洗わされた。そんな作業を淡々とこなしていく中で、少年はようやく、こちら側から話す気になった。この非現実的な現実に馴れたためか、あるいは救いを求めるためか。
「助けてくださる方とは、どんな人……ですか?」
 少年は、おそるおそる古びた本を、目をつむって暗唱している聖人聞いてみた。
「神の使いです!」 何の疑いもなく、即答。
「そこでは天使たちが光る衣に身を包みながらラッパを吹き、その目の先には神の住まう純白の神殿があります……その高さは……」
 あまりに説明が長く、現実味にとぼしいと思った少年は、一瞬その真実を疑った。人に天国というものが分かるのか?
 少年にとって知りたかったのは、天国ではない。地獄だ。
 もしこの聖なる苦難にくじけ、神に認められなかったらどうなる? 神がそれを許すほど寛容であるとは思えない。
「もし救われなかったらどうするのです……?」
 聖人は不安に眉を震わせ、
「それを拒めば、待っているのは炎と剣」
 それ以上は語ろうともしない。だがもう十分。
 少年は、恐怖を感じた。それは単なる事実であり、この世のどこかですでに地獄に落ちた人間が存在していることを理解した。いや、目の前に見えてくるようだった。

 そんな人知を超えた次元にあこがれつつも、最初こそは、いつか地上で生き生きと暮らすことを少年は夢見ていた。だが、地下でいつか来る日を待望み、神を仲間たちと共に礼賛する中で、ひたすらもはや来世で生きることが唯一の目的となっていた。

 そして、もう何度目になるか分からない礼拝の日。この日に、聖人はあることを約束していた。それが何かは決して言わない。それでもすでに、少年に検討はついていた。
 ついていたからこそ、もう気分は高まり、落込むことなどなかった。この日を以て、今までの味わってきた苦しみの数々は終わりを告げる。

 聖人は話し出した。
 誰も食事を取らずに──取ると眠くなるし、体力を消耗するからだ──彼の説教を聴いていた。そもそも、飯なんてものはもう尽きていた。
 聖人が話すのは、かつて神が人の姿となって地上に降りたときの話。それも、もうすぐ地上での生を終え、冥府に下らなければならない時が近づいていた時の話だ。
 この時ばかりは、まるでその神が自分自身であるかのように少年には思えた。
 神と同じように、自分もまた、しばらくの間の休息を得るのだと。

「弟子たちと晩餐を開き、神は言いました。『この後私を、裏切るものがいる』と。果たして神は捕らえられ、辱められ、その肉は十字架に磔となったのです」

 昔だったら、単なるおとぎ話として聞き流していた所だ。
 だが、少年はもう涙を流している。この物語の意味を、ようやく理解することができたのだ。
 この時を迎えるためだったのだ……。それもほかならぬ自分たちが、
「私たちがもはや神に身を捧げる時が来ました。これは教えを損なう人間に抗うためでもなく、身勝手な名誉を得るためでもない。私たちが、この信仰の歴史を完結させるためなのです!」
 少年は、横で一人の男が口をゆがめるのを見た。元から他人と口をきくことも少なく、何を考えているか常にはっきりしない人間だった。
 彼の口は、笑っているようでもあり、怒っているようでもある。聖人の言葉を信じている様子では明らかになかった。ますます心の中で、現実への絶望と信仰心が高まっていく気が。
 だが少年はもはや男の顔を見続けなかった。それは、今同胞が直面していることに比べれば、たいした異常ではないのだから。いや、その以上に目を向けるなど罪!
「なぜなら! この苦難は、私たちがより高い次元に上るために必要だったのです!」
 自分たちが苦痛を味わえば味わうほど、その魂は浄化されていく。天国に入るためにふさわしい身体になっていく。

 やや老けた顔に銀髪、黒いスーツ。だが表情は他の人間にもまして強く、勇ましい。さすがに、この牢獄のような生活を敬虔に生き抜いた肉なだけある。
 聖人は壇の上に立って、話し続けている。
「我々こそが永遠の幸福の世界に選ばれた者なのです!」
 聖人が一体何者なのか、少年はほとんど知らない。知らないからこそ、聖人としてその神々しさを認めることができるのだ。

「この命はどこまでも偽物の命なのですから、私たちはまた必ずここにかえってくる。その時こそ、私たちの選択が正しいものだと証明される時なのです」

 聖人はそこまで言うと、壇から降りて、聴衆の後ろにあった場違いに瀟洒な古い机に近寄る。
 小ぎれいに磨かれた皿の上に、小さなワインが並べられている。水面は赤く、かぐとすぐに気分が高揚しそうなまでに深い色。
「かつて神は言いました。『これは私の肉であり、血である』と。これは我々が神と共にあることの証拠です。我々に永遠の救いが確約されていることを証明してくれている……」

 この苦難を何一つ知らない人間からすれば、いかにも汚ならしいワインに見えるかもしれない。にごった液体に見えるかもしれない。
 だが人々にとってそれは神聖な存在だった。神の国への入口を刻んだ、数少ない鍵。

「さあ、皆さんでこれをわかちましょう。私たちがその世界に行くための唯一の道しるべ!」
 たった一人を除いて、ワインを飲干す一同。この時ばかり、全ての表情が恍惚としていた。
 もはやこれ以上、死ぬべき肉に囚われずに済むのだから。
 少年は吐き出しそうになった。のどがかきむしられるように痛かった。だが済んでの所で耐える。
 聖人ですら、痛そうな顔だった。痛いどころか、辛いと言っているような。けれどもはや誰もそれに対して驚き、悲しむものはいない。自分の救済だけがもはや関心の的だった。

「ふざけるな……」
 だが、一人の人間が突然食べるのをやめて、逃げ出そうとした。聖人は、それをとがめた。
「やめなさい。もはや私たちは運命を受け入れなければならない……」
 拒んだ者は、救済を拒み、聖人の虚ろな瞳をぎろりとにらむ。
 まるで、聖人のなし遂げたこと全てが、無意味だと言い切ろうとしているみたいに。
「もう、ごめんだ。お前みたいな嘘つきの言葉を黙って聴いているのは……!」
 叫びながら、聖人の頬を叩いた。
 少年は傷ついた。
 まだ、そんなことを言っているのか。折角、自分たちの偉大な計画が実行されようとしているのに。
 やはり、人は自分の弱さにはあらがえないものなのか。
「あなたも私と同じ運命をたどるのです!!」
 聖人は怒りに満ちた声をあげて、ワインのグラスを怒りに震える口へ。
 顔に血が流れ、暴漢は呆然とした。
 少年はその光景をわずかにのぞき見て――気づいた。
 これが、救いへの道か。救われるとは、これほどの苦しみを伴うものなのか。
 苦しみがあるからこそ、人間は愛し合うことができる。前に進むことができる。この感情すら、その瞬間を迎える素晴らしい道、だというわけなんだな。
 急に、目の前が輝いて見えてきた。急に腹からわいてきた激痛ですら、その感激にふたをすることはできなかった。
「ああ、神が見えまするぞ……だが、それは――!」
 聖人は吐血し、そのまま地面に倒れこむ。その寸前に、自分を殴りつけた男の肩にかみつき、そのまま地面へ押倒した。
 少年はそれを視て、急に体が動かなくなっていく。
 だんだん痛みがのどからこみ挙げてきて、腹から何かを吐き出した。
 見事に、赤い血潮だった。残酷だ……しかし、もう絶望はない。
 もう、その運命が間直に迫っていることの、その色は証左だったのだから。少年もまた、冷たい地面に身を委ねる。



 ……なぜ、まだ生きているのだと自問する。
 誰もが、神の元に招き寄せられたのだろう、と思うような静寂。聖人の体が見えた。顔は分からない。だがもうあの威厳はどこにもなかった。急にしぼんでしまった花のように。
 急に、少年は孤独を感じ始めた。これが、正しい選択だったのかどうかすら分からない。あまりにも神への愛が高じた結果、たとえ地獄に落ちようとも構わないはずだったのに。
 疑ってしまう。信じる心を疑う自分がいることを、認めずにはいられないことは、大きな罪。
 神の元に赴けないのが、これほど苦しいほどだとは。
 だが、遅いと思った瞬間、まさにその時はいつでも、必ずやって来る。

 聴いたことのない音色で一つの下っていく言葉。
 闇に閉ざされた世界に、光が差しこんでいく。
「おい、大丈夫か……!?」
 ああ、これが天使たちの招く声か……。それは確かに人ではなかった。鈍く、暗い色の鎧に身を包んだ、異形の者が見下ろしてくる。そして、少しずつ足を踏み鳴らしながらこちらへと近づいていく。少年はどこか安心した感情を胸に抱きながら意識を、全ての命がいつか帰りきたる場所へと没入させていた。
 父だったか……母だったか……どこかで聞いたことがある。神や天使の姿を直で見た人間は死ぬのだという。それは現世では決してかなわぬことなのだ。つまりもはやここは現世ではなく……。

 あとは、ただ誰も認識しえない虚空があるのみ。
鱈井元衡 
http://mypage.syosetu.com/453129/
2020年05月07日(木)11時38分 公開
■この作品の著作権は鱈井元衡さんにあります。無断転載は禁止です。

■作者からのメッセージ
この作品には特定の宗教を揶揄する意図はありません。神を頭ごなしに否定する思想にも賛同しません。宗教を調べれば調べるほど、信じることって必要だよな、少なくとも信じる人間の本気は理解しなきゃならないなという気分になりますね。


この作品の感想をお寄せください。

2020年05月18日(月)17時02分 神原  +10点
こんにちは、感想返しにきました。



まず、ちょっと文章的におかしい処を二三ピックアップを。

≫誰一人、それに抗うものはいない。
 優しく、厳しく、まさにその中間であるからこそ。≪

ここは倒置法。優しく、厳しく、まさに中間であるかこそ、誰一人それに抗うものはいない。が本来の文です。つまり

誰一人、それに抗うものはいない。←ここで改行してはいけません。

誰一人、それに抗うものはいない。優しく、厳しく、まさにその中間であるからこそ。

と文章が続くのが普通です。見た目の良さでそうしたのかな、とは思います。


≫もはや、この人以上に愛することのできる人間を、少年は見つけえなかった。

だがもはやその聖人とも別れが近づいている。だが、ちっとも悲しくはない。もう一度、会える時がすぐ来るのだから。≪

だがは逆接です。最初の「だが」は何に掛かっているのでしょう? 空行を挟んで一個上にかかっていたとしても少しおかしいです。ここは最初の「だが」を消してもいい部分かもしれません。



≫この災厄によって全てを失い、家族にもはぐれ、秩序を失った衆生にもつけ狙われ、もう何物も信じられなくなっていたころに。
 聖人は、少年にパンと水を与えた。そして、家族も、友人も失った悲劇のため慰めを与えた。≪

ここは、信じられなくなっていた頃に。と改行を挟んで聖人は少年に、と繋がっています。繋がっている文章は一つの段落でくくる物なので、改行しない方が良い場所です。

なお、上記では減点はしていません。

_____________

読み終えた後に、もしかしたらこの少年は第二の聖人になるのかな? と考えました。少年が考えを改めていないから。それと天国に行く事を渇望している終わりになっているように感じたので、聖人の後をたどっていくのかもしれない、と思えました。

私以外に倒置法をよく使う人を初めて見たかも。ただ、その頻度をもう少し抑えた方がいいかもです。この表現は読者の目を止めます。なので、ここぞと言う時とかに使うといいと思います。強調したい時とか。これに関しては私も人の事を言えませんが。

それから「だが」の多様が気になります。読み進めると頻繁に表れるので、出来るだけ違った表現を用いた方がいいです。

以上から私は少し良かったです。を置いていきたいかな、と思います。これからもがんばってください
11

pass
2020年05月15日(金)23時27分 サイド  +20点
こんにちは、サイドです。
作品、読ませていただきました。


最後まで興味深く読むことができました。
いろいろな解釈のできる作品ですね。
正解はないと思うので、直感で思ったことを書いていきます。


まず少年について。
立ち位置的には世界観や思想のわからない「読者」役だったのかな、と。
辛い生い立ちであり、それだけに救いに関する言葉に敏感で貪欲だったのかもしれませんね。
溺れる者、わらをもすがると言いますが、それとは正反対の確たる形の救いを求めていたような気がします。
わらのような頼りないものではなく、がっしりとした父や母を求めていたような印象があり、それらの描写はないものの、聖人をよく見ている辺りに、少年の愛情に対する無意識の飢餓を感じました。
ただ、彼が知りたかったのは天国ではなく地獄であった部分に、今まで生きてきた世界が地獄だから、行き先も地続きの地獄のはず、という無常観もあるように思います。


また、パニックもの、密室もののハリウッド映画で、殺し合い、最後に生き残るのは無垢な人間だった、みたいな雰囲気がありますね。
まあ、生き残る為なら密室殺人上等、死ぬまで殴ろうぜ! みたいな世界観だと別ジャンルになってしまいますが。(笑


勝手に僕が感じたものですが、そういう背景や舞台があるのだから、少年と聖人のエピソードを増やし、説得力を持たせていたら、もっとよかった風に思います。
また、短編なので尺を使えるわけですし、「少年」「少女」「聖人」「老賢者」「聖母」「道化」「裏切り者」などの役割を持った存在を出して、行動をぶつけあえば、より顕著に個性が出るのかも、と思ったり。
や、勝手を言ってしまっていますが……。


聖人については、さじ加減が難しかっただろうなあと思いました。
途中でも語られていますが、彼の生い立ちを探るのはNGで、背景を知らないからこそ、彼の抽象的な言葉に説得力と、うさん臭さが出るのだと思います。

>知らないからこそ、聖人としてその神々しさを認めることができるのだ。
  ここですね。

なまじ100パーセント外れた言葉でもないので、どうにも受け取り方に迷うんですよね。
信じてもいいような……どうでもいいような……と。
それが活きているのは地下という世界だからなんでしょうね。
今のコロナでも思いますが、閉鎖感というのは強いストレスになるので、それを解消してくれるものがあるなら、手に入れたいと思うのは当然だと思います。

あと気になったのは、

>聖人ですら、痛そうな顔だった

ですね。
なんか普通の人間みたいに生々しくて、「あれ? やっぱうさんくさい。喜びじゃないんだ」と思いました。
この辺りは書き方の妙ですね。


たくさん気になるフレーズがあっただけに、具体的なエピソードがなくて、やや説得力に欠けているところがあること、また、他の方もおっしゃっていますが、話が進まなくて読みづらいところはありました。
でも、その辺りはどうとでもできるのかな、と思います。

執筆、お疲れさまでした。!
9

pass
2020年05月14日(木)15時45分 鱈井元衡  作者レス
・Yes様

>個人的には好きなタイプの作品で、世界観もいいのですが、こういうジャンルがおそらく一般受けはし難いと思うので、冒頭は入り口をもっと広げて読者を誘い込むような工夫がもう少し必要かななんて読みながら思いました。ちょっととっきにくい書き始めでした。

ですね。多分映画みたいなイメージで小説を書く癖があるから、地味になってしまうのかもしれません。考え直してみます。

・ぐるぐるランド様

>たくさん文章読ませてくれるけど、あんまり物語が進まない感覚。
たくさん説明してくれるけど、明快なイメージを持って進めない感じ。

元々『堅い』ことを目指して書いた作品なのでやはり時間がなかなか進まないというのは呪縛みたいなものですね。

>パパッとキャラを動かしたら、読者が読みやすくなるかもと感じた次第です。

キャラを描くというより、人の動きの意味を考えるって体裁なので……

>地下で自由になりたいと願う人間は魅力的に見えますし、ちゃんと救われるラストも素敵です。
伸びしろがたくさんある作品だというのは間違いないと思いました。

救いねえ……その解釈は新鮮でした。僕はどうしても暗めの雰囲気を投影していたものですから、意外です。多くの人間は生きているかもしれないが、地下の人間は死んでしまったって所で。大多数の安全を気にするのも一つの手ですがね。

pass
2020年05月13日(水)20時11分 ぐるぐるランド  +10点
拝読しました!ぐるぐるランドです。
先日は感想をありがとうございました。私もお返しに伺った次第です!

まず全体を通して思ったことは、世界観は面白いけれど!というものです。
何らかの病原菌から逃げる形で、地下に楽園を求めた一族。
そこでは地上の世界とは異なった文化や暮らしが形成されていて、
今作はその中でも、宗教にスポットライトを当てたものといった感じでしょうか。
確かに。閉鎖的な思想とか、少年が洗脳されていく様は一定以上の描写が出来ていたと思います。
文章自体も誤りや変な表現がなく、真剣に書いた感じが伝わってきました。

ただ。短所の話ですが、色々と堅い印象がありました。
地の文が堅くて、ストーリーも堅くて、テーマも堅い。
読者のとっつきにくいものが三拍子そろっているかもと思ってしまい。
何と言ったらいいですか。
たくさん文章読ませてくれるけど、あんまり物語が進まない感覚。
たくさん説明してくれるけど、明快なイメージを持って進めない感じ。
とかくこの手の話は堅くなりがちなので、パパッとキャラを動かしたら、読者が読みやすくなるかもと感じた次第です。

あと、目の付け所がとても良かったと思います。
地下で自由になりたいと願う人間は魅力的に見えますし、ちゃんと救われるラストも素敵です。
伸びしろがたくさんある作品だというのは間違いないと思いました。

以上。もう全部、自分のことは棚に上げてしゃべりました。

ありがとうございました。
10

pass
2020年05月11日(月)13時41分 鱈井元衡  作者レス
・屋上庭園様

少年が救われなかった様子ばかりをとりあげて書いてる感は強いですね。彼の心情の移り変わりは確かに足りませんでした。聖人のうさんくささとか、彼に従うしかない群衆の悲惨さが中心になってます。

この作品に限っては、僕はあまりエンタメを求めて書いてないんですよね。日本における一般人の宗教に対する反応を単純に反映したくないな、という気持ちはあります。でも、これは我流に乗り過ぎたようですね。

>恐らく作者様が伝えたかった内容とは違うかと思いますが、私としてはこういう解釈もできるのかな、と思って楽しかったです。
・実は地下世界に住む人間の方が病原菌に犯された者だった。
・人々は気が狂っていて、健康な人類の方を敵だと認識し、地下に閉じこもっていた。
・聖人の言葉を信じきった群衆は地上に出たがらなかったが、本当は地上に出れば特効薬を持つ人間の手で救われていたかもしれない。
・最後、力尽きる寸前の少年の前に現れたのは、地上から助けに来た健康な人間だった。
・信じる気持ちは大事だが、群衆や聖人は誤った事実を信じたが故に自らの身を滅ぼしてしまった。

その解釈……いいですね! 前日談みたいな形で挿入することができるかもしれません。聖人は実は人をだますために送りこまれた、というような裏設定を導入することもできたかもしれない。

僕は庭園さんの作品が気に入ってましたよ。『わけにはいかない』が続く冒頭はおかしさがありますから。

pass
2020年05月11日(月)02時04分 Yes  +10点
個人的には好きなタイプの作品で、世界観もいいのですが、こういうジャンルがおそらく一般受けはし難いと思うので、冒頭は入り口をもっと広げて読者を誘い込むような工夫がもう少し必要かななんて読みながら思いました。ちょっととっきにくい書き始めでした。とは言いつつ、今はこういう世の中ですので、僕はものすごく興味深く読んだのですが。
8

pass
2020年05月09日(土)19時00分 屋上庭園  +10点
拝読しました。

私自身が宗教に関して全くの無学ですので、あくまで参考程度にお読み取り頂ければ幸いです。

コメントにもある通り、信じること、信じる人間の気持ちを理解することは大切なことだと思います。
ですが、この物語を読んだだけでは、その大切さはあまり伝わってきません。
内容が難解、というより、説明や描写がいまひとつ足りてないような印象を受けました。

ストーリーとしては、最初聖人を単に面白い人だとしか認識していなかった少年が、次第に聖人を信仰し、地上に復帰するよりも来世に期待するようになるといった内容かと思います。
しかし、聖人のどんな言葉を聞いて少年の心境の変化がしたのか、地下世界で何があって少年が変わったのか、作品世界の情景があまり伝わってきません。
例えば、地下世界の住人数はどのくらいでしょうか。聖人が言う抽象的な言葉の数々を、少年はいかにして理解を示したのでしょうか。
もしラノベのようなエンタメ的作品を目指すのであれば、もっと俗に落とし込む作業が必要かと思います。
特に、日本人は大多数が無宗教者と言われていて、信仰心そのものに距離を置いている方が大勢いらっしゃいますから(宗教批判をしている訳では決してありません。あしからず)。
少年や聖人にどのような意図があるのか、読者にわかりやすい形で描写してほしいな、というのが率直な感想です。

恐らく作者様が伝えたかった内容とは違うかと思いますが、私としてはこういう解釈もできるのかな、と思って楽しかったです。
・実は地下世界に住む人間の方が病原菌に犯された者だった。
・人々は気が狂っていて、健康な人類の方を敵だと認識し、地下に閉じこもっていた。
・聖人の言葉を信じきった群衆は地上に出たがらなかったが、本当は地上に出れば特効薬を持つ人間の手で救われていたかもしれない。
・最後、力尽きる寸前の少年の前に現れたのは、地上から助けに来た健康な人間だった。
・信じる気持ちは大事だが、群衆や聖人は誤った事実を信じたが故に自らの身を滅ぼしてしまった。

以下、事務連絡です。
当方、以前このサイトに「学校を抜け出してみたはいいものの」というタイトルで作品を投稿しました。
が、少し思うところがあり、削除することにしました。
鱈井さんにはコメントを頂いていたようですが、お返事が書けず申し訳ありません。
13

pass
合計 5人 60点


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