共作版:イドラとユクサー 白きエルフに花束を 白の章のみ
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                      《1》
 三月末の凍える夜の事だった。
 無重力状態にさらされたせいで、全身がむくんで死にかけた宇宙飛行士の顔みたいな満月をぼんやりと眺めながら、僕は口の端から血を流していた。
 顎まで垂れ下がった血の筋が紺色無地のパジャマの上着の端に血だまりを作る。
 痛みから現実逃避するように、自慢の妹を思い浮かべた。
 幼児体型なのにそこそこ背が高くて、真顔でも人を睨みつけているかのような鋭い切れ長の目を持っている。黒くさらりとした御髪
おぐし
が特徴的な美少女キリスト教徒。
 性格は基本的にリアリストに徹しながらも、権謀に生きるようなタイプではない。むしろかなりの甘えん坊だ。しかもどうやらその依存の対象と言うのがイエス・キリストと聖書の神と聖母マリアに向けられているらしい。そして、現実に生きるという妥協からか、僕にも甘えてくるのだ。原因は―――。
 「はい、お兄ちゃん。タオルだよ」
 「……ありがと、いいんだ、そこに置いといて」
 救急箱を提げてかけつけ、今でもにこやかにほほ笑む様はまさに天使。神に愛されたといっていい。
「えっと、それとね。お父さんにこれ以上殴られたら……もう」
「わかった。今……あれ、何時何分?」
「部屋にデジタル時計あっただろ、それ読んでから戻って来いよ」
 彼女の看護をうけながら、ぼうっと考える。
 年は十二歳であるにも関わらず、『聖書』の【創世記】の始めから【ヨハネの黙示録】の終わりまでだけでなく、アポクリファまでも既に全て暗記していて、その敬虔深さと知識量が認められて、牧師の資格を持っている。
 つまるところ、かなり頭がよろしい子だった。正直すごい。だけど、今少しずつ動いている針、1から12までの曖昧な時計の針をすぐに読み取ることは、彼女にはこれよりもっと難しいらしい。
「ごめんね、どうしてもお兄ちゃんといっしょにいたいから。9時18分だね」
 笑うと普段から細い目がさらに弓なりに細められて、とろんとしたかわいらしいたれ目になるのだ。
 時に辛辣な毒舌で人心を打ち砕き、時にとろん、と「おにいちゃん」と甘える愛すべき僕の自慢の妹、そう、彼女の名は華と言う。
 「まずいな。また頭がぼうっとしてきた」
 「もう、お兄ちゃんったら。無理しすぎだよ」
 「華を守るためだったから仕方ないさ。あの時のお前は立派だったと思うぜ?」
 そう言われた当の本人は、顔を真っ赤にして頬を抑えていた。こういった仕草が嫌味にならないのが華のいいところだ。
 実際、夕食前の妹は実に立派だった。華が自室に戻ると、ふとそんな物思いに沈んだ。

                       《2》

「ヴァインはうまいなあ゛、な?」
 適度にいなすがやっぱり絡んでくる。銘柄は「ディアブロ・デル・カッシェロ」。その銘柄の逸話を水で薄めて延々と上機嫌で語っていた。ネットで調べたんだか、それとも見栄で付き合っている呑み仲間に最近聞いたのか、ワインをわざわざ気取って「ヴァイン」といっている。
 なんでも、余りの美味さにワイン蔵へこの銘柄の酒を盗み飲みする馬鹿どもが出現したことで、「倉に悪魔が出る」なんてデマを当時のオーナーが流した曰く付きの逸品。
 どうもその薄汚いエピソードが気に入ったらしく、あの糞親父は今日に限ってこのワインを13本も買い込んできやがったのだ。いや、僕未成年……
 かなりローカルなブルーチーズを摘まみつつ値段のそこそこする瓶を既に数本空けていた。
 実質このタイミングしか、チャンスがない。上機嫌でいるときなら、殴られずに済むかもしれない。
「お父さん、華は三ノ辺聖十字教会の牧師になりたいの。だからお願いします。神学校に通わせてください、せめて、通信制でも構いませんから」
「あ゛ぁッ、なんだって?」
 酒焼け声ですでにできあがっている。
「ですから――」
「おめえ、学費がいくらなのか知っとんのか?!」
 親父はぱっと僕を離し、華に詰め寄った。
 実際、こいつは暴力沙汰の数において僕たちが住む三ノ辺町で右に出るものは居ないと近所で恐れられている。逮捕はともかく署で話をきいている、なんて小さい頃は母によく聴かされた。
 というわけで、嫌な予感しかしないんで背後から奇襲をかけて締め上げてやった。それに逆切れした親父が部屋の端まで吹っ飛ばした。とまあ、こんな経緯で僕は胃をやられた、と思う。
 軽い脳震盪を起こしたらしく、ぼーっとして口元の血を拭い去る気にもなれないでいるわけだ。
 古時計の規則的な針の音が鳴る部屋を、呆然と見渡した。狭い物置と化した旧書斎部屋を片付けて布団を敷いただけの部屋は、人様に殺風景かと問われれば……。まあ、その表現の範疇には入る事は入る。
 だが、古い理工学系の学術書が乱雑に詰め込まれた本棚とか、武術書の山とか、あるいは壊れた本物のリボルバー拳銃が嵌め込まれた額縁などに囲まれて寝るのは、案外悪くないものだと気に入っている。
 華が隣の部屋で祈祷文を清らかに詠唱している。しっかりと聞こえるのに、僕にとっては甘やかで最高の子守歌だ。
 今日のテーマはどうやら『暴力と正義』についてみたいだ。……自然と覚えてしまったみたいだ。
 「ん?あれ、この泣き声……?」
 そんな自慢の妹の詠唱が途中からすすり泣きにすげ変わった。
 それは次第に声なき慟哭に変わり、喉の奥から絞り上げるような鳴き声が上がったかと思ったら、突如として人の気配が消えた。
 四の五の考えるまでも無く足下の布団を蹴り飛ばし、反射的に華の部屋に駆け付けた。
 「華……っ!?」
 そこにはきゅぃぃっと掠れた悲鳴を上げてロザリオを握りしめ、腹を抱えながらCの字に横たわる華の姿があった。
 華の体調が明らかにおかしい。
 厚手のパジャマがじっとりと汗で濡れてしまっており、いつもはキッチリしまってあるシャツの端が露見してしまっている事が、見た目にも途轍もなく痛ましい。
 「華、はなぁっ!!大丈夫か……!?どうしたん、な、なぁっ……!?」
 よく見てみると華の布団が、彼女の腰を中心に赤く染まっていた。ひどい汗で、枕に顔をうずめていた。
 「た……すけて……」
 「もういい、無理してしゃべるな!」
 「お父さ、んに、やられた……」
  何かんがえてんだあの親父!
 「華っ、腕貸せっ。トイレまで兄ちゃんが抱えてやっから!」
 まずい、どうやら華は、父親に腹を蹴り飛ばされた衝撃で腹から内出血を起こしたらしい。1回殴られただけでこんなにドクドク血が出るのか、と不安に思う。華は痛い痛いと言いながら、なおもきつく膝と腹をくっつける。
 「なあ、逆に少しずつ体を伸ばしたほうがいいと思うぞ、丸まっちゃうともっと痛いと思う。もう、少し我慢してくれ」
 「ぅ、う、ん」
 しばらくして落ち着いても尚、痛みに震える妹を腕に抱えて一階のトイレまで連れて行くのは並大抵のことではなかった。
 「ぎゃ、イエ、スさ、まぁ……っ!!」
 トイレの扉をぎりぎりと引っ掻き、天の主の名を叫ぶ華の苦鳴を、僕は黙って聞く事しかできなかった。喉の奥からこみ上げるものがあった。
 「……ぐ、ぶっ」
 咄嗟に口を押えると、血の塊が出てきた。それだけ、ストレスでも溜まっていたのだろうか。
 「ぅぅぅっ……!!もう限界だ、あの手を使うしかない」
 己の血の塊をぐしゃりと握りつぶし、あの伝説を確かめることを決意した。
 「人当たりが良いことだけしか性格的にゃ取り柄がない、あの気障りな先公のつてに頼るしかねぇな……」
 たぶん悪魔に取りつかれた家の親父よりかは一兆倍マシだ。
 「それにしたって何年も先の将来の事をきちんと考えようとしている娘に、空手の前蹴りははねぇだろ……、あの腐れ外道……、絶対にこの世界に戻ってきたら復讐してやる」
 エクス●ァック!マイファーザ−!
                     《3》
 「うぅ……。最悪だ」
 昨日はどうやら考え事をしたまま寝たせいで、それがそのまま夢に出てきたようで、極悪な目覚めだ。
 「あの糞親父……。今に見てろよ」
 父親に肚の底で昨日の悪態を吐きながら、朝餉の席に着く。
 「そういや最近は地鎮祭をやっていないな」
 階段を下りてきた我が家の暴君が唐突に耳慣れないことを言い出した。
 この父親は、実の娘に暴行しておきながら、何を平然と宣っているのだろうか。
 言いたい事は山ほどあるが、文句を言うと正拳が飛んでくるので「ああそうだったね」と、適当に返しておく。
 我が家の暴君の顔が引き攣った。話に付き合えということだろう。
 この幼稚なかまってちゃんが。二連蹴りをお見舞いしてやろうか……などと思ったが、近所の人へ迷惑がかかるので話に付き合うことににした。
 ――何か、肺が痛い。何で?
 「地鎮祭って何だっけ?確かこの辺りのお祭りだったような」
 「近所の爺さんによるとそういう事らしい。なんでも、正式には三社例大祭というんだと。
  あの爺さん、休日の昼間に突然訪ねて来るなり、『居られるかー‼』って神奈川弁だか何だかで玄関先に怒鳴り込んできちまったから、もう参っちまったよ」
 親父でも参ることあるんだな。縁側で茶を飲んでるだけの爺さんかと思ってたんだが。
「ありゃ、それは災難だねえ。そんで、その爺さんの用って何だったの?」
 薩摩芋としめじの味噌汁をかき込みながら、返事を待つ。
 「それがどうも、三社百度参りに参加してくれる氏子を探しているんだとさ」
 「ええっ?それって、も、もしかして……」
 父は細長く息をした。思い出すのも疲れると見える。
 「神社前の階段を上って、お参りして、そして降りる、ってのを三社の神社で同時に百回繰り返す……。今のご時世、とてもじゃないが誰もやらんよな」
 もっと言えば親父はどうだか知らないが、僕と華はもともと夏母さんの連れ子で、生まれたのは那覇なので氏子ですらない。地元民でなくて本当に良かった。
 「氏子じゃないつったら、肩透かし食らったみたいな顔して帰って行ったんだよ。何か悪いことしたみたいな気分になっちまってさあ」
 ――……でも? でもってなんだ?
 「なるほどねえ。ご馳走様でしたっ」
聞き覚えのない幻聴が、自分の耳に届く。振りほどこうと機械的に食器をシンクに運んでしっかりと洗い、通学鞄を肩にかけて玄関へ向かう。
 「行ってきます」
                     《3》
 「ね゛ーぇっ。返してよ、ほんともう早くもーう、い、や、だあー」
 「返してほしけりゃここまでおいでぇっ!」
 僕は鉛筆を取り合って追いかけっこを始めた同級生に、冷たい視線を投げかけていた。時々、ここは中学校なのに小学校ではないかと錯覚する事がある。そして、何かイライラする。
 この出来損ないの溜まり場と化した、教室の風景。ここが特別支援学級であるという位置づけ上、発達障害を抱えた学生の中でも学習能力が低い者が集まるのは仕方のないことだが、どうしてこうも生徒の品位までレベルが低いのか。
 「どうにかならないもんかねぇ」
 何よりも奴らときたら、己らが何の悪気もなく授業妨害していることに気づいていない。やれやれ、まったくため息しか出ないではないか。……何かむなしい。
 僕たちは、兄妹そろって同じクラスに通っている。この学校は個別授業の方針だ。
「がんばってーーーーーー‼」
 わあ、と歓声があがる。日頃のストレス発散でもしたいのか、普段は真面目な華も、彼女用に組まれた特別カリキュラム『さんすう』だけはサボって男子共の追いかけっこを黄色い声で応援している。
 ちなみにこのネーミングは、『小学生レベルの算術もできない者が、サンスクリット語を読めるからといって『さんすう』を『算数』と表記しようなどという発想は一兆年早い』という彼女らしい過激な発言に担任の井上先生が激しく賛同したことによって採用された。
 正直に思う。
 それって自虐ネタにしかならないだろう、しかもシャレにもならないしさ。
 ともあれ、なまじ妹がかなりハイレベルなクールビューティーの上に、校内一の聖女として名高いため、むさくるしい野郎共は筆記用具の奪い合いにますます躍起になっている。
 く、下らねぇ……。
 さっきまでと同じ冷ややかな視線を送ると共に、盛大に引き攣り笑いを浮かべながら、彼奴等の所業にドン引きしていた。アホらしすぎて見ていられず、何気なくただ、早く放課後になって欲しくて空を見上げる。
  放課後。結局あいつらのせいで既定の問題が解けなかったではないか。ふと振り向くと、いつからそこにいたのか井上先生が凛とした声で問いかける。
 「風祭さん、勉強は進んでいますか?」
 彼女はこのクラスの初代主任で、以前別の学校で障害児教育に長年携わってきたベテランである。
 ロマンスグレーの天然パーマと六頭身がチャームポイントだ。
 「いいえ、全く。奴らが喧しいので一向に進みません」
 僕は頭を掻き毟り、気だるげにぼやいた。井上先生は何も言わず、僕のテキストを見る。
 「そうなの……仲が良くないのもわかるけど、礼也くんからもう少し歩み寄ってもいいと思うな。だって、勉強と関係ない所ではいっつも頭いいし。麻央さんが言ってたよ。あっ、そうだ!」
 ふーん。何か名案を思いついたらしい。
 「面白い問題があったんだった!ちょっと待っていて」
 井上先生はそう言うと、僕のそばを離れ、教員用のデスクに据え置かれたパソコンを操作し始めた。
 すると窓際に据え置かれたコピー機から、答案用紙が吐き出される。一体どんな問題だろう?
 「わかりました、今日の宿題です。この地図を見てください」
 机に広げられた答案用紙は、なんとうちの近所の地図だった。
 「そこから問題を出します。来週月曜日までによろしくおねがいしますね」
 正直気は乗らないが、これで今までの時間をチャラにしてくれるらしい。ふん、なめられたもんだ。
                       《4》
 今日は自室で宿題を始めた。今回はプリント3枚だった。途中までは、何の変哲もない問題。問四は、ビリヤードの玉の角度の逆算で、解けなくてもいいと言っていたから後回し。くだらんと言っていても気になる本命は、問5。

・この地図には三つの神社が記されています。神社と神社の全ての間に線分を引き、地図上の図形の中心を求めることで、その中心に地図上では何があるのか答えなさい。なお、あなたが持っているのは鉛筆と定規だけとします。完成後は下部のシールをはがし、読みなさい。

 何でシールが貼ってあるんだ?何はともあれ、まずはやってみることにした。
 まず定規で線分を引いた。手元の筆箱にコンパスがあるが、扱いが難しいのと今回は使用禁止なのとで使えない。何か考えなければ。
 「そうだ、こういうのはどうだ?」
 次に三角形の頂点を除く角と角を合わせてそれぞれ三回折り、折り目に沿ってそれぞれの角を頂点とし、底辺の中点まで線分を引く。
 「できた!」
 狙い通りコンパスがなくても交点をつくり、中心を求めることができた。
 しばらく考えたが、なるほどこれは面白い。こういう趣向を凝らした問題は嫌いじゃない。興味が湧いたので一応やってみることにした。さらさらと解答用紙の上を鉛筆の芯が舞う。
 「やばい、これ超楽しい……」
その交点に記されていた地名は、『要石の祠』とある。
 ワクワクしながら交点に引かれた周囲の線を消し地図を見つめると、確かに中心に描いた交点上にはそう描かれている。
 たぶん正解だろうと胸を弾ませながら、白シールをはがした。
 ・この三角形は実のところ、結界が張られている地域とある。詳しい話を聞きたくば、月曜日に私のところに来なさい。
 なんとなく、あどけない表情を思い浮かべる。さすがオカルトマニアといえばそれまでだが、やたら心から幸せそうに何かを語れるのが、すごいところだと思う。

 コンコンコン、と親しげな回数のノックが聞こえた。他人行儀な四回ではないことに、思わず頬がゆるむ。ドアを開けて立っていたのは、華だった。厚くて赤い、タータンチェックのパジャマを着ている。西洋人形のように整った顔立ちには、名前通りの華やかさと生命力が同居していた。好物の牛乳片手に肴にしたくなる立ち姿だ。あいにく麦茶しかないので、花見酒ならぬ華見茶と洒落込む。
 自分が何をされているのかうすうす気づいたらしく、華は顔を真っ赤にして俯いている。まさか、自分が鑑賞されるとは思わなかったのだろう。お互い無言ではあるが、華からすれば半ばセクハラかもしれない。
 「あのね、お兄ちゃん」
 ふと、自分の行いが度を越していたことに気が付く。華にそれを口に出させるまでやめなかったのはよくなかったかもしれない。
 「――――」
 途端に自分のしたことが恥ずかしくなって、顔を俯ける。僕は、実の妹を【そういう目】で見ていたかもしれないのだ。華は、そんな僕の態度に白けたのか、あるいは何かを期待していたのに肩透かしを食らったと感じたのか、それはわからないけど肩の力をだらりと抜いた。
 「どうしたの」
 首筋の力をわざと抜いて、華は首を傾げた。その退廃的で飾り気のない雰囲気がたまらなく愛おしい。
 「なんでもないよ」
 何でもなければ、お前を鑑賞なんかしないよ。【この想い】に蓋をするにはそれしかないんだ。ああ、それしかないんだ。本当に僕にはそれ以外なす術がない。
 「お兄ちゃんごはん……って、お兄ちゃんがちゃんと宿題してる!! ね、今日はチーズフォンデュだよ、一緒にソーセージたべよ!」
 濃厚でねっとりした雰囲気を放り捨てるように話を逸らされて、ぱっと意識が戻った気がする。そして、うげっとなる。華がまだ小さくて覚えていないだろうが、僕が6歳のとき一度相伴に預かった……。だがそういや、食べたのはほぼ野菜だけだった気がするんだけど!
 僕の苦虫を噛み潰したような顔を見たとたん、彼女はティッシュを持って来ようとして困っちゃった子犬みたいな顔をした。……可愛い。じゃなくて!
 「解った! 機嫌損ねないうちに今すぐ行くよっ」
 こうしちゃいられないと、猛烈ダァッシュッ!むろん後でしこたま叱られた。

                       《5》
 三月末ごろ特有の暖気と涼風が同居する微妙な天気の中、僕は少し寄り道をしていた。
 それにしてもいつもの通学路の途中に先生の家があったことに、今までどうして気が付かなかったのかは自分でもわからないが、とにかく僕は井上先生の家の前で呆然と突っ立っていた。
何故ならば。
 「で……っか!」
 かなり広大な敷地を持つ瓦屋根のお屋敷だったからだ。
 枯山水が引かれた美しい日本庭園には高そうな鯉が泳ぐ池があり、指先一本でも触れようものならそれこそ何百万円もの弁請沙汰になりかねないほどの価値が有りそうな盆栽が、有田焼の植木鉢に植わっている。門をくぐれば時代をさかのぼった気分だ。ガチガチに緊張しながらも意を決して正門前のインターホンを押した。
 「はい、どちら様でしょうか?」
 「風祭です、お話の続きを聞きに伺いました」
 緊張のあまり、柄にもなく謙譲語を使ってしまった。
 「あらそう?来てくれて私はとてもうれしいですよ! どうぞ、バレないように勝手口から入ってね」
 「は、はあ」
 どうやらよそよそしくは思われていなかったようで、僕はほっと安心した後に言われるがままに井上邸の勝手口へと向かっていった。          
                       《5》
 カシミヤのガウンを羽織った井上先生が揺り椅子に座り、優雅にアフタヌーンティーを楽しんでいた。
 「いらっしゃい、よく来てくれましたね。 そうね……その椅子でも掛けて、ミルクティーでもいかが?」
 日本庭園で見た「和」の雅やかさだけでも大したものだが、内装の豪奢さも相まって最早眩暈がする。
 この圧倒的なブルジョア感に気圧されてまたもや僕は立ちつくしてしまった。
 このままだと三十分は棒立ちになってしまうかもしれないと思い、「でで、では遠慮無く!」と突飛なタイミングで素っ頓狂な声を上げて、日本庭園が見える窓辺の席に着いた。
 広々とした窓からの採光は淡く細やかだ。その恩寵を受けた庭園の様は、透き通るような水色と碧色に彩られた一幅の水墨画のように思えた。
 心を強く奪われ、ぼぅ、と見惚れていると、ふと井上先生の視線を感じた。
 「本題に入りましょうか」
 「はい。やっぱり気になりますから」
 そう固くならないで、と微笑む井上先生にここまでの豪邸は初めてですので無理ですよ、と苦笑いする。
 「まず、日枝神社、椿稲荷神社、八雲神社の三社で同時に行われる三社例大祭の事は話した通りだと思うけれど、そこまでは覚えていますね?」
 首が千切れ飛びそうなほど頷く。
 「あくまでも伝説です。 ただ、お駄賃とかそういうレベルではありません。知っていますか? 異界に飛んで、そのまま戻らなくなった男女を」
「……ふたりぐみ、なんですか?」
「いえいえ、大抵はひとりで務めを果たされたそうです。 基本は男の子なのですが、稀に巫女さんが挑戦することもあるのですよ。 ……どちらであっても、生きて帰ってきていませんけどね」
「へえ、さすがオカルトマニア。もし僕がそっちに行くとしたら、どうなるの?」
 「それならよかった。これから話す計画を簡潔に話すと……」
些細な疑問だった。井上先生は少し考えて、いくつか僕に聞いた。
「そうですね、お話をまとめると
一、運が良ければ、の話ですがその内お年寄りの方々から、氏子でなくてもいいから参加してほしい、と風祭さんへ依頼されます。
二、風祭さんが例大祭が行われる前に特殊な細工を施した狩衣を着て、要石の祠で神楽を奉納します。
三、私たちが住むこの『陰界』という枝葉に当たる世界から、『陽界』と呼ばれる根っこの異世界へいってらさーい、という訳です」
 あまりの突拍子のなさに、しばらく僕は唖然とした間抜けな顔のまま絶句した。やっぱり、根拠とか証拠とか、そういうの気にしちゃいけないのかな?
 「本当に、それだけで良いのですか?」
 「そうですよ、こことは違う世界という場所は分厚い扉で閉ざされているだけで、意外と近くにあるものなのです。私たちが住むこの宇宙は全部で七つある『陰界』の一つでしかないのですよ」
 またもや絶句。
 その阿呆面を見た先生がクツクツと笑う。
 「まあ、この話を信じろと突然言われても信じられないでしょうし、この話は無かったことに……」
 「その話、乗ります。ただし、女性用をもう一着」
 「しませんよ?」
 わざわざ話を遮ってまで取引に食いついたので、その返答に大いにずっこけた。
 「その代わりにこのことは誰にも話さないと約束して下さいね?」
 「ハイ!」
                     《6》
 下校途中のいつもとは少し違う帰り道。
 田舎でもこうして歩いていると何か未練があると思っていたが、実際そんなことはなかった。昨日の「御赦しください……」という悲痛な詞のほうが余程身にしみる。あれから適切な処置を受けたとはいえ、昨日今日とでぐったり度合いが増していた。相対的に無関心になっていて不利なのを差し置いても、やっぱり、未練なんてなかった。
 「これで、これで華を救える」
 ついに、ついにこの日が来たのだ。僕は長年『異界の門を開く方法』を探し求めてきた。空手を極めると決めたのもこれがきっかけだった。全てはこの日の為に!
「このくそったれな世界を抜け出して、僕らは旅に出るぞっ‼」
 その為にはやるべきことは山ほどある。
 決めた。
「師匠の下へ行こう。まずはそれからだ」

                     《7》
 道場へ赴くと、この時期には珍しく師匠が庭掃除をしていた。こちらに気付いたらしい。
 長年にわたり着古された道着、そして黒帯を超えし究極の帯、赤帯をお召しになってらっしゃる。赤帯とは、空手界に功績を残した者しか帯びることを許されない『名誉段の証』だ。
 このお方こそ、木村師匠。僕が『この世界で』一番畏敬するお方だ。
  井上邸とはまた違う趣があるとはいえ、僕は庭先で、僕はやおら、されども突然、師匠の前に跪いた。
 「木村師匠、ご報告致します」
 師匠は沈黙を堅持していた。だが、跪いた僕の目を見て何かを悟られたようだ。
 「ついにこの日が来たか」
 「はい、『探し求めていたもの』が見つかりました」
 それとは何か、と尋ねるほど此の方は野暮ではなかった。
 「そうか。来い、見せたいものがある」
 「はい、参ります」
 玄関で靴を脱ぎ、いつも通る廊下をわたる。途中から何か変なことに気づき、やがて、息をのんだ。師匠は僕を道場の神棚の御前にお連れして下さった。
  師匠は二礼二拍手一礼の後、神棚の神にこれ以上ないほど真剣に祈った。
  その祈りは僕と先生にとってとても貴いものだった。
 「我が弟子に幸を授け賜ります様、畏み畏み申す」
 そして師匠は有ろうことか、神棚のご神体を取り出した。
 「師匠……!?」
 「よいのだ。すでにこの時が迫っていることを、私は知っていた。身は清めてある」
 「……はい」
 そして、ご神体を開封し取り出す。
 「これは」
 師匠の手の中にあったのは、呪符ではなく、この道場の秘伝書だった。しかも保存状態がかなり良好だった。
 「これは……、剛柔流空手の基本にして奥義(おくぎ)である『三戦(サンチン)』、そして最高位形、『壱百零八手(スーパーリンペェ)』の『上』・『中』・『下』、それぞれを記した教本だ」
 「……、壱百零八手(スーパーリンペェ)の、『中』と、『下』は、失伝して久しかったのではないのですか?ならばこれは……」
 「そうだ。流祖、宮城長順先生の直筆だ。これを世に広めれば、間違いなく空手界の歴史に残る発見となるだろう」
 だが、と木村師匠は区切る。
 「これを先にお前に授ける。免許皆伝だ」
 「そんな……!僕なんかにはもったいのう御座居ます!」
 「謙遜するな」
 「……」
 「人を侮る前には必ず自分を侮っているものなのだ。それは、必ず命取りになる」
 「はいっ!分かりました。ありがとうございます!」
 思わず歯を見せて笑ってしまった。
 いつもならそんな笑い方をしようものならば、顔面に『戦いの最中に歯を見せると折れるぞ』という意味の鉄拳が飛んでくるのだが、この時ばかりは師匠もどこか満足気に苦笑いするだけだ。
 「……礼は言わずとも良い。これから、お前一人で修練を積むことになるだろう。
 いままでの稽古の内容をしっかりと思い出して、これからも精進するのだ」
 「師匠、今までありがとうございました」
 最後に師匠へ空手の礼を捧げた。
  「ところで礼也、恋をしたことはあるか?」
 へ? と拍子抜けをした。一体、師匠は何をおっしゃるのだろうか。
 「大丈夫です。美人局対策ならしっかりと……」
 「この先、恋なんぞない修練の途で、汗と血にまみれ、死すこともあろう。だがな、余計な世話ということも含めて少しは駆け引きという言葉を頭に……いや、嫌ったり、持ち上げすぎたり。私は今一番、そこが怖いのだ」
 「……あの、どうして、そんな話を?」
 「私は若いころ、近江に住んでいたことは知っておるな。その時に琵琶湖博物館で笑いかけてくれて、好いた人がいた。それだけだ」
 「わかりました。ですが、わからないんです。師匠がなぜこの話をしたのか、僕には……。確かに生きていたら、恋をすることはあると思います。しかし、これではわざわざ心を乱し、修養の妨げに至るとしか、思えません」
「やはり言うてよかった。早すぎるというのも杞憂みたいだ。励めよ」
 どういうことだろう。しかしそれでも、僕が全任を置く師匠の訓示をしっかりと胸に刻んだ僕は、こうして道場を後にした。
 帰宅後僕は、免許皆伝の証書を大事にボストンバッグに仕舞い込み、道場の門を振り返った。
 師匠と、ついに別れたのだ。
 忘れ難い修行の日々について思いを馳せる。
 「守破離か……。僕はやっとここまで成し遂げたんだな……」
 感慨深く木村邸を眺める。
 三社例大祭を待っている暇はない。予定より一か月早いが墓地に行かなくては。
 「よし……、征こう」
 僕は華を連れるため、いったん家に帰ってあの要石の祠へと向かった。

                      《1》                    

 異界へと渡る準備のために、午後の半分以上をかけてボストンバッグやらキャリーバッグやらに一週間分の食料品と寝袋、着火剤、拳法着、かるたとトランプ、そして帯と道着と実用性が高いと思われる本を詰め込んだ。
 「お兄ちゃん、何やってるの?」
 華が下からのぞき込んできた。
 「アァ、華か。……往くぞ」
 「どこに」
 僕は何も言わなかった。華だけのためではないが、もうクソ親爺に痛い目に遭わされずに済む所、浮かれた言い方をすれば楽園(ユートピア)へ。
 「家出?」
 唐突に、部屋の蝶番から激しい金属音が響いた。クソ親爺だ。
 「ンだと? おひとりさまだけで大きくなった気になりやがってヨォ」
 「この辺に地震が来るかもしれないって、この前ニュースでやってただろ? 準備してんだ」
 「ガーハッハッハッ、地震ぐらい切り抜けられなくって何が沖縄男児じゃ!」
 こいつ、理論値じゃ真っ先に死ぬくせに実際には生き残るしぶとい奴じゃんか。というか、沖縄男児なんて言葉は無いし、本当の沖縄の人は争いを好まない大らかな平和主義者だし、そもそも沖縄人
うちなーんちゅ
と云う呼び方が正しい。まあ家族としては生きてくれたほうが嬉しいが、こいつ
くぬやー
にはこの程度しか取り柄が無い。核燃料デブリ並みに危険なゴミの中のゴミだ。だれか暗殺してくれないだろうか。考えすぎかもしれないが思わずそう妄想してしまう。
「たるんどる、礼也! 稽古の相手してやる!」
 まーた、始まったよ……、全く。
 師匠が僕に、『三戦』、最高位形の『壱百零八手』を上のみならず中巻、下巻ともに託してくださった。それもあるが、無駄な闘いなんてしたくなかった。
「今日は遠慮し……」
「たわけがっ、それでも沖縄空手道にはげむ男かっ!」
 クソ親爺の鉄拳が飛んできたのを避けたのはよかったが、余計にどっかに火をつけたらしい。
 「華、あいつは何をやろうとしているんだ、正直に答えろ。でないとこの前みたいに血まみれにしてやる」
 華は何も知らない。家出という推論はあっているが、僕だけのためじゃない。
 「わからない。サバイバルごっこの準備?」
 ちなみに、今まで一度もサバイバルごっこはしたことがない。が、どうも逃げ口上のように聞こえたらしく、親爺が腕を振り上げた。
 「やめろよクソ親爺……!」
 「親に向って糞とはなんだ、礼也! 16年間誰が育てたと思ってンだ!ゴルァッ」
 「グハァッ……」
 拳を腕で受け止めたものの、もう片方で僕の頬を打った。僕は右にふっとび、クローゼットに頭を打った。
 「お兄ちゃんっ、大丈夫?!」
 華が、止血にと救急箱を取りに行こうとするも、クソ親爺が通せんぼする。華の耳を引きずって、別室に連れて行こうとしている。
 「離して」「痛い」と叫んでいる華は、ドア前で部屋の窓を指し、下に指を振った。まさか地獄に堕ちろということではないだろうから……
 《ここのすぐ下で、まってて。華もくるから》

 その予想は大体当たった。僕は窓から予備の縄を垂らし、最初に荷物をエアバック代わりに投げた。
 クソ親爺は、僕と、華の部屋の前で座り込み、張っている。華の部屋は鍵がかかるようになっていて好都合だが、僕のところにはない。
 慎重に、気づかれないように。
 この昼最後の風が気持ちいい。普通なら寒いというところだが、その爽涼さが、むしろ心地よかった。大事な時だから、と狩衣に着替えている間も肌を冷気が伝い、覚悟の時だ、と気を引き締めることができた。
 さあ降りよう、という時に華が来て、下から手を振り始めた。
 どうやって降りたのかというのはさておき、華は旅行用バッグをひとつしょい込む。今行くからな――
 部屋の一角に、武器を置くためとか言われて付けられた取っ手がある。幸い窓から近く、縄自体も長かった。
 窓に飛び乗って、……家の壁は想定以上になめらかだ。
「華、荷物を下に置け!」
「何やっとんじゃァ‼このクソたわけがっ!」
 親爺がドアを蹴破って入ってきた。今回は大声出した僕が悪い。僕は、侭よとばかりに2階から縄伝いに飛び降りた。左手の平が熱い。
 「イッチチ……華、僕の走ってるとこにそのままついてこい」

 「待ちやがれっ、この出来損ない二人組ーーーーッ!」
 クソ親爺は、ご自慢のフェラーリという車で僕たちを追いかけてくる。見栄っ張りの親爺らしい外車だ。中古大幅値下げをさらに下げてもらったものだけど。
 僕はとっさに、狭い裏路地に駆け込んだ。少し遠回りだが、仕方ない。
「シャ――――――――ッ!」
 猫が威嚇しているが、相手をする暇はない。
「お、にぃちゃん、づがれた…………」
 華が手を求めた。僕は彼女を引っ張るも、少し速度が遅くなった。
「どこだ―――――狩衣纏った一家の恥さらし――――――!」
 ぜえぜえと息を切らしたクソ親爺が、遠くからギロッとこちらを睨み見た。手には台所から拝借しただろう包丁が握られている。
「ハナ、ガンバレ、モウスコシダゾ―――――――」

 ――うん、お兄ちゃん。二人だけの天国まで、もう少しだね。


                      《2》
 迷宮の様に入り組んだ路地を抜け、華と共に四〇坪ほどの狭い墓場にたどり着いた。
 並び立つ墓、墓、墓。そして無数の卒塔婆。この狭さでその数は、背が波立つほど夥しい。
 「ここが……、『此方の岸』か」
 伝承によれば……いや、実際、その奥に異界へと続く門の役目を担う、苔生した祠が佇んでいる。
 今まで矢の如く過ぎ去った二週間を思い返せば、正に試練の連続だった。華が中学二年生に上がると同時に、僕は高校生となるべく最低限の受験勉強によって回答武装しておいた。
 異界へ旅立つ前に、最低限の知識と生存用品を備える計画を立てるため、兄妹で頭を突き合わせてあれこれ画策していた矢先のことだった。
 結局、所属する中高一貫校の形骸化した進学試験をサボった僕は、何故かそのまま進学できてしまった。高校の歴史の選択科目で、郷史を選択できた。これ幸い、とばかりに、今更ながらまともに授業を受けたことで、わざわざ近隣住民に頼み込んで聞き込みをする必要が失せてくれた。渡りに船とはこのことである。鴨葱と言ってもいいかもしれない。
―――聞けば、別名『此方の岸』と呼ばれるこの地は、古くから度々怪事が起きることで音に名高かったそうだ。
 二週間前、特別支援学級の井上先生がこの地について話したように、事実、この周辺では三社祭が行われなかった翌年、翌々年に、数十名が不審な失踪を遂げている。それを裏付けるかのように『此方の岸』には毎年ひとりでに墓が現れるという。
 関係があるかは判然としないが、異界に姿を消した者の死霊が、生前の強い怨みを持って『此方の岸』を訪れ、この地の氏子を呪殺すると言い伝えられている。
 そう考えるとつまりは。
 「……ねえお兄ちゃん、この墓って」
 その考えに行きついた華の全身が、一斉に総毛立ったように見えた。
 「ダメだ、それ以上想像するな」
 「全部ッ、彼の岸で死んだ人の、墓なの……っ?!」
 「だから、ダメだってば!華っ、はなっ!!しっかりしろ!!」
 うわぁぁあっ、と年甲斐なく泣く華をなだめながら、本当に、ここに来てしまったのだと実感する。皮肉にもここは、その惨劇が繰り替えされないように死者を供養する為の場所でもあったのだ。
 彼女はいや、いや、と後退りながら、必死に口を塞いで吐き気を堪えたが、言語に化し難い悍しさに耐え切れず、反吐を己の顔や地面に吐き散らしながら頽れた。
 キュルキュルと胃の腑が捩じ切れそうなほど絞り上がる音が、心なしか華の胃から聞こえる。
 おそらく、あの祠に住まって居るのは。この世ならざる【魔】だ。
 「なあ、もうそろそろ行かなきゃ、逢魔が時じゃなきゃ儀式は成立しないだろう?さあ、立って」
 華はバッグを開けてタオルで顔を拭くと、僕の顔をじいっと覗き込み、膝小僧を握りしめ力を振り絞って立ち上がって僕を抱き締めた。
 これは、試練だ。
 己の覚悟を試す禊なのだ。
 最後に妹の華へよく我慢したなと微笑み、熱い抱擁を返す。
 狩衣が汚れちゃったけれど、不可抗力なので仕方ないし、それぐらい許さなければ、術者として廃るというもの。でもなぜか華は、顔を俯けたまま憂鬱な顔をしている。
 いうべきことがあるのに言い出せないといったそぶりを見せ、やがて踏ん切りがついたのか僕の顔を正視した。
 「ごめんね、お兄ちゃん。――――わたし、やっぱりいっしょにはいけない」
「え?」
 今の一瞬、僕はその意味について判じかねた。
「お兄ちゃん。あの伝説って、清い身だからこそできるんだよね」
「そうだけど……どうかしたの?」
 気が付けば華は、涙を目一杯浮かべて嗚咽を漏らした。
「ごめんね、ごめんね……やっぱり私、牧師の夢を捨ててまで行きたくない。向こうに行ったとき、もしお兄ちゃんだけが死んだとかだったら……ムリ、いや、やりたいことがないよ……」
「そうだな。帰るか?」
 僕は機械的に返事をした。よく考えれば、華には荷が重すぎるし、変な気持ちを持って行けば共倒れは確実。軽く天秤にかけてみたが、結局のところ、最終的には華にも思い入れがない気さえしてくる。縦にブンブンと首を振っているところが、本当に子どもっぽく、あどけなく思えた。
「お兄ちゃんは頑張ってよ! だって、木村のおじちゃんからメール来たんだけど、兄君を助けなさいって。そして、異心あらば蹴りだしなさいって」
「そんなもん、あるわけないだろ」
 少し意地になって、華に寄った。
 華が唇を押し当てた。僕は閉じるどころか、思わず目を見開いてしまった。離そうとしても、首と首との距離が、より近くなる。
 酸欠になりかけた時だった。
「本当に、未練なんてないの? お兄ちゃん。私、小さいころから、ずっとお兄ちゃんが好きだった」
「――――華」
 天主教では、『近親相愛』は禁忌中の禁忌なのだ。中世とかでは親告罪とはいえ、常に神が隣におわす状態の華からすれば、火刑と常に向き合っていたことになる。これまで一緒に過ごしてきた中でも、煙ったようにすごく苦しそうだった。うつむいて吐く息も少しずつ細くなっていく。
 「私、神様を裏切りたくない。でも本当はそれと同じくらいお兄ちゃんが好きなの。ねえっ、お兄ちゃん!私、私っ……」
 華は、自分ののどを両の手で押さえた。鼓舞するつもりだったのに、僕にすがるように、頼るように、乞うように、目で訴える。
「どうしたらいいの。お兄ちゃん」
 わからない。せめて、僕が大人になって支えないと。なだめないと。
 「……もういいよ、シスター華。もう我慢しなくていいんだってば」
 「お兄ちゃん……?」
 「時空がゆがむ今だけは、僕がわがままの責任を取るよ。華の信じる神様は、どんな方だったっけ」
 彼女は少しうつむいて、思いの海原に沈んでいった。そして、一筋の光明を得たように顔を上げた。
 「赦しと癒しの神」
 「さあ、おいで。もうこれきりなんだ。誰も見ていない。誰も僕らのことは知らないんだ。今だけなら、僕は華の恋人になれる」
 正直な所、本当は、何も感じていなかった。出まかせだとも思う余裕なんてなかった。
 一叫。僕を呼び、華は僕に抱き着いた。愛おしそうに、幸せそうに、僕をきつく抱きしめる。僕も、彼女の背中に腕を回して、髪をすいてあげた。
 「ふぁ……。……気持ちいい。レイヤくん、好き、大好きっ。愛している、愛しているの」
 僕の胸に手を当てて、華は鼓動にそっと触れた。そして、2回目のキス。
 初めは優しく、柔らかく。――――――――――っ。僕の背筋に強烈な背徳感が駆け上がった。なんで、そうなったのか理解する間もなかった。
 口づけは次第に深くなって行き、回された腕も、背中をまさぐるようになった。胸と腹の奥から突き上げるような衝動が沸き上がる。このまま、溶けて、癒着し、混ざり合いたくなった。なのに、何故。喉の奥が塩辛くなってきた。
 「お兄、ちゃん。わ、たし、も、う」
 華の顔はこれ以上ないくらいとろけ切っていた。内またになって、太ももをこすり合わせている。もうこうなってしまえば、乗り掛かった舟だ。僕何も言わず、華にやさしく笑いかけ、視線で問いかけた。すると彼女はうなずいて、僕に身を預けた。そのまま僕は――――。
 「ぅふぅっ、嗚呼ッ!お兄ちゃん、おにいちゃ、ああっ」
 華の体が、大きく痙攣する。戒律を破る背徳感と、体験したことのない快楽にからめとられ、溺れていった。いつもの華からは想像もつかないほど、他人に見せられない顔をしている。ガタガタと細い足を、後ろに引こうとした。
 そのまま彼女は腰砕けになって、震えながら崩れ落ちた。倒れかけたところをぎりぎりのタイミングで支える。
「……おにいちゃん」
 キャンプシートとタオルをカバンから取り出し、その上に華を寝かせた。
片手の指を絡め、僕の鼓動を聴き、僕の胸に額を預けている。髪をいつまでも、いつまでも梳きながら、華は賛美歌を囁く。
 幸せだった。この時間がいつまでも続けばいいのに、と思ったけど、心から言っているのか、とうにわからなくなっていた。
 僕は死ぬ。その確率が上がったんだ。文字が流れても、なんというか、思えないような感覚が自分を伝う。
 ―――――――――誰を、愛せばよかったのだろう。
 僕は、華の頭を抱いて、蹲った。泣いて、哭いて、鳴いた。そうして、深い眠りに落ちた彼女の首筋に、手刀を入れて気絶させた。それはまるで、彼女の電源を切るような行いだった。
 華の首をそっと撫でて、静かに横たえ、空虚な思い出を振り切るために立ち上がった。
 僕は己の指先に犬歯で噛み付き、傷口から血を流した。そして上着を脱ぎ、胸に血の五芒星を描く。その中心に原始的な漢字で【飽】の字を書いた。
 それから口に血を塗り、祠の前に平伏した。
「彼方と此方の狭間にまします幽かな主よ、此処に渡世の詞を捧げ奉る。吾の軛を砕き給れ」
 僕は祝詞を挙げ、伝承どおりに滅茶苦茶に踊り狂い、異界の【魔】に厳かな詩を奉納する。最初にうたった詠み人は――現在まで伝わっていない。
「……クソったれ」

 幽けき 深みに まします主ぞ 聲を聴き給れ
 巡りたる 九十九重の 籠世の網目を 裂き給れ 古の大門に 三顧九拝 捧ぎけり
 其の文 示すや 現世返る子 喰らふべし
 八十八の 暁に 呪禁之血啜(ずごんのちすすり) 盟いけり
 渡世賽之瀬ぞ 千代に八千代に 去り行かむ 手の道 楽土道 いざや彼岸に参らむ

 狂舞と渡世唄を終えると、どこからともなく風が襲い掛かる。
 その風は空気を一瞬にしてさざめかせ、僕を青黒い業火の内に押し包んだ。
「貧クソったれがァァァァァァァァッッッ!!」
 この世すべてへの巨いなる呪詛を、淀んだ曇天に、高く、どこまでも高く、ブッ飛ばした。
「今日もだりいなぁ、パトロール1時間さぼってもいいんじゃね……って、何だあれ!」
「すげー、その病焔を鎮めしは俺!ってやつじゃん!! 俺、昔ダークブレイズマスター目指してたんだよ」
「おい、女の子が倒れてるぞ」
「あの家の厳さんか、ッたく、いや、殺ったのは息子の礼也じゃねぇか! というかなんだよ、何かに吸い込まれてるぞ、助けに……」
 救急車かパトカーのサイレンが響き、僕は「兄」として最後に少しだけ、乾いた笑い声を漏らした。

 ――わたしが一番じゃ、ないんだね。でも、大好き。

……ふうぅ。
 昨日の夕暮れとは、また別の爽やかさがここにはあった。樹木が生んだ新鮮な空気が、僕の気を高めるような――
  僕は瞼を開いた。
 「ついに来たのか」
 ここには、樹齢百年をゆうに超えるであろう木や、緑が眩しい草が繁茂している。すでに深い樹海に身を置いているからか、僕の心はふしぎと騒めきが薄かった。
 すぐ近くに、一本の大樹があった。他の樹木を地に臥せさせても、自らが生き残ったといわんばかりの、存在感。その近くの倒木のうちいくつかからは、キノコが生えていた。
 大樹は見上げればいよいよ高く、頂きなんてとてもじゃないが見えやしない。誰が刈ったのか陽の光を一身に浴びること叶い、下葉がつややかに、照っていた。
 大地は一寸ほどの苔に覆われ、歩けば足跡が付きそうだ。
「ここが、陽界……」
 感慨深いものがあるが、そうもいっていられない。異世界に来れた、これはいいとして、遭難の二文字が頭を掠める。
「色々と準備しておいて良かった」
 手刀を繰り出し、適当な木を相手にしばらく応戦していた。練習用の案山子ではないため、手には細かく傷跡ができたが、とにかく、打ち込まねば気が済まなかった。
 夜目が利く方ではあるが、気が付いたらほぼ何も見えなくなっていた。このままでは逆に視力が落ちる。
 日も落ちてきたのだし、夜営の準備をせねば。と簡易テントと寝袋を手探りで用意。少しだけ懐中電灯を使って組み立てた。コツはつかんだ。
――近いうちに、人工的な光とはおさらばだろうな。
 ぬくもりを感じる前に、切った。本当にいる時だけ使うべきなんだ。
 そのまま、意識が途切れた。

《2》
「親方、青の国まではあとどんぐらいなんすか?」
 長い耳を持つ浅黒い少年は痛む左膝関節をさすり、問いかけた。
「せやなぁマグ、この森の斜面が終わってすぐに白い砂が続く。そん時に教えてやる」
 二人が支えている簡易な車には、動物の干し肉や砂糖菓子、紙製品、骨や角の加工品や角材、さらには置物や鉄器などがあった。この隊商は13人で構成されていて、種族、容姿や男女比が多少偏っていた。
「まず青って、湖の底なんでしょ? 溺れませんか」
 肩に売り物を背負っている別の青年がツッコミを入れると、親方は舌打ちした。なまじ頭の割に多大な筋肉がついており、とてもバランスが悪い。
「だから後で言うつってんだよ‼んだよええとこやってのに。おい、エイシス、おまえも何か言うてやれ」
「ただの説明に論戦を強いるなど、愚かなこと」
「おまえは空気読めーーーーーー! 」
 先の運送で熊に右腕を食いちぎられた女相手にも隊長はガミガミとあまり容赦しない。エイシスは怒鳴りをしっかりと聞きながら車の後部を支えていた。
「ところでよ。今回、例の目玉商品が売れて報酬が5倍になったら、どう使いたい」
「あー、黒檀と玉鋼の食器だっけ?レプラコーンの工房に伝手あって、ホント好かったッスよね」
「確かに。そうですね、私だったら黄の国に旅行に行きますね。あ、でも赤だと教会焼延事件や水毒白エルフ逮捕事件とか、株価世論困惑事件とか、危険地帯の宝庫ですけども新文芸の聖地参拝も悪くないですよね」
「俺は緑かな……やっぱ、その」
 マグはあることを思い出し、もごもごと口を動かした。
「なんだよ」
「いや、なんでもねーよ」
 親方は頭巾を外して顔の汗を拭き、あと歌をひとつ歌いきったら交代だ、と言った。
「じゃ、いこうか。国歌の御瀑(みたき)‼」
「……センス古っ」
 また、別の誰かが突っ込んだ。彼は赤毛で、もうすぐ荒地に近づいているというのに、汗一つかく様子がない。加えてガタイが非常にいい。タッパもかなりある。
「あ、噂をすれば白エルフか……」
「え、どこどこ? あ、あんなところにいた」 
「虫取り網どこ?」
「バカ、休憩なんてもんじゃないだべさ、親方、獲りに行ってもいいっしょ? 体ボロボロで動けなさそうだし」
「服着てるし、ムラからはぐれているみたいだし、ただの野生種に見えない。あたしは反対」
「あ、逃げっぞ。なおさら好都合じゃねえか。ひん剥いて縄つければ高水準で売れるじゃん。旅行よりぱぁっと打ち上げようぜ!」
「親方はどう思います? ねえ親方?」
「……おめえら、気力は残ってんのか?」
 親方が急に静かになった。それを厳かぶったと誤解した隊員らは、余計やる気が出てきた。
「勿論! さ、とっつかめーるぞ! エイシスも手伝えよな。人がいなきゃ手足がバタバタとうぜえんだよ」
「じゃ、俺たちゃ行ってきますんで、荷物お願いしまーす!」
 青年らは縄や鉄スコップ等を持っていき、その白エルフを追いかけた。
「親方」
「ミェイ、おまえは行かないのか?」
「僕は一応白エルフの友達たくさんいるんで、見て見ぬふりをします。親方こそ、どっちにしろ責任取らなきゃいけない立場ですよね。部下に押し付けることもできるじゃないですか。どうして行かないんですか?」
「俺? そーだなー。今日は気が乗んねえから。商人の勘だ」
「それはどのような根拠がおありで?」
「考えてもみろ。あの白エルフ、身なりがピシッとしているだろ?ああいうのは、誰かしらの助けを得て生活している証拠だ。バックに居る奴を怒らせていい事なんかあるはずがない」
「だが、止めると揉めるから放っておく、と。なら、僕、残って正解でしたね」
ミェイが仲間たちが走っていった方をじっと見つめる。それを見て、親方は自分は本当にどうしようもないやつだと呟いた。
「ま、ギャングの元締めが意外と普通のおっちゃんなのと同じ事だ」
「何か言いましたか?」
「いいや、何も」
本当にどうしようもない。そんな気持ちを代弁するかのように薄く嗤う。
「何も言っていないさ。何も、ね」
                      《3》
「は、やっ! もう今日はいいかな」
 樹を相手に練習していたおかげで、拳には傷がつき、体からはうすく汗がついていて、先ほどの爽快感がむしろ寒さに変わる。
 鞄に入っていた飲料水のうち、一つが空になった。幸か不幸か周囲に獣や虫はいない。
「色々と準備しておいて良かった」
 先ほど見つけてきた川から冷水を汲み足し、ペットボトルに移した。沈殿物が目立つほど汚くはなかったし、濁ってもいない。ただ、サバイバルブックによれば本来は日光に6時間当てなきゃ消毒できないらしい。はやく明日の朝を迎えたい。チャーハンのレトルトパックを開いている時のこと。よくわからない声が聞こえる。
 どう考えても、人の喝采だった。
 よかった、人がいる! というのが僕の第一印象だった。
 唐突に、強く嫌な予感がして、後ろを振り返る。今までこういったので、ロクな目にあったためしがない。おまけに、本能が何かの命の危機を感知している気がする。
「……なんでだ?」
 転瞬、荷物を全部持ったまま、気配を殺し、殺気を感じた方角へ三戦の歩法を応用して、忍び寄る。
 茂みから伺うが、頭が白い人を、大勢の男女が縄を持って囲っているという視覚情報以外、得られなかった。
『そうね。私はそうよ。どうしてって? 案内? 紺青村まで案内? 嫌。他の子に頼んでよ。私そのへん詳しくないし、ガラスの回廊ぐらいしか名物知らないし。旅人さんのほうがわかってるんじゃないかしら? 最近は鋼の街とか言われる首都なんて、私といるより、ずっと快適だと思うな』
『ねえちゃん、頼むよ! 荷物を持って待ってるツレも、こっち来たのはじめてなんだ。国境出るどころか、こっちの方角の森に行ったことねえんだよ』
 人の比率が、明らかにおかしい。さすがの僕も、というか僕だからこそ、何か気持ち悪いと思うような囲み方だった。
  茂みに荷物を隠し、素早く手近な若木の幹へ上る。枝葉の隙間から恐る恐る覗く。
「……こいつらッ……!」
 囲まれている人の肌の色が茶色とか赤とか、もの凄い色合いになってんですけど!!しかもどう見ても、白い女の子が大木を背にして追い詰められている。
「……貧クソッたれが。その罪、地獄で償っていただくとしよう」
 気が付いたら、手足が勝手に動いていた。自分でもよくわからない。物凄いパワーで、男女問わず地べたに打ち付けた。
 巨漢の強そうなの目掛けて、跳躍。
 『剛柔流空手・跳び膝蹴り』
 それでも足りず、硬い膝が、名も知らぬ巨漢のしゃれこうべを皮越しに強かに粉砕。そのまま首がひしゃげて動かなくなった。おそらく即死だろう。
 片手の拳をもう一方の片手で包み、軽く哀悼を捧ぐ。いわゆる『拱手』と呼ばれる中国の軽い礼だ。
 その場の僕以外が全員ポカンとしているが、こういう機会はなかなかないので言わせてもらう。
 「全日本空手道剛柔会派・剛柔流空手道・第六代目継承者、風祭礼也、参上」
 なんか、すっごく気持ちがいい気がしてくる。
 呆然の感をさらに深めた大柄な巨漢達は、やっと目が覚めたのか、立ち上がろうとした。僕に「バッゲンッ!」だの「ボッギュ!」だの、凡そ未成年が聞くにあたってよろしくなさそうな異界の罵声を浴びせる。
 巨漢も、もぞもぞと少し動いていた。治療はいるかもしれないが、少し時間がいる。
 まともに立ち上がれたのは、僕より浅黒い肌の耳が長い奴だけだった。
  何か言ってる。全く意味が分からん。恐らく向こうにも通じていないだろう。
 地面に足を真っすぐ叩きつける。
「招(ツァオ/受けてみろ)‼」
『俺らの獲物だ。青の国まで案内する奴が必要だから今回は見逃せ』
 何を言っているのか、全くわからない。翻訳してもロクなことにならなさそうだ。
 風祭氏八極拳の基本技、『震脚』と『冲捶』を繰り出した。
「哈(ハ)ッ」
  腰に構え、体を横に向けながら強力な突きが放たれて鳩尾を直撃、肋骨をゴリリッと抉る。少し吹っ飛んで、つま先で着地し、足のバランスを崩した。
 森に鳥の群れが驚いて飛び立つほどの少年の大絶叫が鳴り響いた。
『あいつ、捻ったほうを折ってんじゃん! どうすんだよこいつっ』
 たたらを踏む彼奴にラリアットから首投げを噛まし、足の側面を使ったローキック『足刀蹴り』を叩きつけ、震脚の要領で顔面を踏み潰しながら、先ほど首を折ってやったのとは別の巨漢の喉元へ、素早く飛び蹴りを放った。
『痛ッ、だいじょうぶかマグ、……親方んところに戻らんと……あの女、こいつのツレかよ……』
『すまんな、ルーフ、戦ってくれ! 誰か、連絡いれてくれ‼』
『わかった』
 嫌がる白い子の両腕を握っていた何人かの少女たちは、ぱっと手を離した。その隙に彼女は逃げた。
 当然躱されてしまったが、腕を鉤状にして巨漢の首を巻き込み、着地と同時に引き倒した。
 震脚で踏み潰してとどめを刺そうとしたが、靴の裏を蹴り上げられてしまった。
 不味い、トラッピングに引っかかってしまった。
 そう思った時にはもう遅く、巨漢はバネ人形のように跳ね起きて、その勢いを使ってヘッドロックを狙いながら頭突きをかました。
 しかし辛くも空手の交差受けを使って受けきり、腕を解き放って頭ごと吹き飛ばした。
 「招(ツァオ/喰らえ)‼」
 『おい、誰か鍬投げろ! とどめを刺させろ、ルーフとマグの仇だ』
 鍬での突きをなんとか転がりながら避け、下から少女たちを見た。
 そのうちの一人が羽織を畳んでいた。彼女の片腕がなかった。急に恐怖感が増し、焦りが生まれた。
 怖い、怖い、怖い。
 狙いが定まらず、腕を曲げたまま一撃目を繰り出し、突いた瞬間に肘を伸ばし切った。剛柔流古流空手の技術における極意であり、突きに一寸勁を掛ける方法。巨漢はゆらめいて、後ろに倒れた。けど、すぐ起き上がる。
――決まらなかった……? 木村師匠に託された僕が?
 瞬時にシュミレートして、相手を倒すはずが、何かが利かない。何も考えれない。
 嘘だ、そんなはずはない! 僕は選ばれたんだ。選ばれて、陽界に来たんだ!
 心が落ち着けば、きっと、そんなはずはないんだ! 次こそ、白い子のぶんの恨み、晴らさせてもらう!
 僕は茂みの荷物を持ち、女の子が行った方向とは逆に走り去った。
『なあ、みんな生きとるか?』
『だれかー、傷薬もっとらんか』
『あたしの救急箱フル活用だね!』
『置いてってんじゃん』
『まだ地べたでうめいてる5人のなかで一番重いのだれ? おぶれる? 固定用の添え木持ってる子は……いないか』
『ちょっと待てよ、マグ、おめえさっき足が痛いって言ってたよな。そこやられちまったか』
 脱臼がひどいなか、彼は仲間の背に負われていた。目をつぶっていても、だれの温もりか少しわかる。
 ユリ祭りまで、あと17日。

《3》
  背中が冷たくてヌルヌルする。まずそう感じた。寝こけた、というより倒れた衝撃で砕けた苔くれが、背中にぐちゅりと纏わりついていた。
 悔しいささえ湧かない。写真のように、敗北の記憶が僕に纏わりつく。事実、追い打ちをかけるように背中と尻が朝露に濡れていた。思わず不快感に身をよじる。一応寝袋は2人分あったが、 どうも暖かさを求める気持ちになれない。
 鍛えているはずなのに草臥れた体は軋み、意識は完全に置き去にしてあーだのこーだの不平を漏らしている。末梢神経がイカレたのか指先が悴んでしまっていた。なんか、もう、疲れたよ……。
陽が出る方向へ寝返りを打ってから、ゆっくりと身体をさすり、徐々に目を開けた。眩むほど強い光だった。いや、もっと……。
「うぅ……、って、え?」
正直気づかなかったが、隣に昨日の白い子が座っていた。
『あ……。起きた』
「っ……!!」
 僕は驚きで絶叫したいところをぐっと堪えた。 これこそ、写真的記憶)フォトメモリー)として残すにふさわしい一瞬だったと思う。ぐいぐい目を見つめ返してしまった。
 ……フォトメモリーとは、自閉症等でたまにいる、事物を記憶する際に写真のように細部にわたって記憶できる、一種の異能力ともいえる症状だ。……だが、この話を昔の嗤う正論と言われた友人に打ち明けたところ、中二病アニメの主人公になれそうでうらやましいなどと言われて、ソイツをぶちのめしたこともある。
「レイヤ、やっぱりオッドアイとかどうだよ。チョキを横にしたらきっとかっこいいと思うぜ」
 それが皮肉か本心かは今となってはわからない。だが少し前までオンラインゲームのアカウント名を「†キリュヴド†」にしていたらしいから、その反動を押し付けているだけではないかと勘繰ってしまう。
 ふと気が付くと、彼女は事切れたばかりの死体みたいにカチコチになった僕を見て非常に心配そうな顔をした。
「……っふぅぅ」
大きく深呼吸して緊張を解いた。人さまの顔を見て仰天絶叫するなんて、化け物に鉢合わせたのではあるまいし、ましてや年頃の異性に対して無礼千万ではないか。
『大丈夫?……あれ、どうして、顔を伏せるの?』
――この、僕ともあろうものが。
少々無理やり起き上がってその子の容姿をはっきりととらえた。
白い、本当に真っ白だ。
 第一印象としては『白』という概念が服を着て座っていたとしか表現しようがない。
足跡一つない雪野原みたいに、くすみなく滑らかな肌に、華奢な四肢。
 何より凄いと思ったのが、色無き光芒のような髪だ。少し透明感があるのに、地肌が透けていない。本当に色が無いのかと尋ねられると困るのだが、強いて色と呼べるのが髪の毛を弾く光だ。それが、彼女を柔らかくオーラの様に包み込んでいる。
 自然豊かな土地柄の影響のせいか、かなり引き締まった体の持ち主のようだ。
 武術家としての目で見れば、意図的に鍛えた体ではなく、生活の必要に迫られて得た肉体であろうことが窺える。
 白染めの麻布で仕立てた服はかなり軽装で、首から柔らかそうな紐でへそ出しトップスを吊り下げて更にその下にショートズボンを下げ、その下にズボンの裾が下がっている。
 もしかしたら、あの紐は布地の中で一本の紐として繋がっているのかもしれない。
風通しがよさそうで、涼しげな格好。しかも脱ぎやすい――って、僕は何を考えてるんだ!
それにしてもここ最近、普段どおりでないことが多すぎる。だけど、不思議と不甲斐なさに前ほどのつらさは感じない。
だが、いくら元がキレイでも、どう考えても転んだ等と言う言い訳など通用しない生傷や無残な内出血があちこちにある。もしあの時助けていなければ、この子はきっと――
 傷が時代を重ねている。昨日今日で連中につけられたのもあったが、もっと前に何かあったんだろう。
細いチェーンには太陽の欠片のような宝石がむき出しのまま付いていた。不揃いにカットされていたが大き目の水晶かと思ったが、その宝石の中心部には燦然と輝く光明が宿っていた。
暇つぶしに鉱物辞典を読んではいたが、こんな宝石は見たことが無い。だが、この石自体は磨きが足りない気がする。若干透明度に欠ける……ものの――本気で磨けば、凄まじい耀霊を放つだろう。
 もうしばらく考察を続けていたかったが、本人が何事かと眉をひそめていた。やはりこれ以上の推測は、下賤な邪推になりかねない。どうしたらいいのだろうか。
 僕は、心の中で頭を抱えた。正直、なんと感じようかというのを抑えているような、よくわからない不快感があった。いろんな色が、僕の目をひきつける。
「う゛っ……!」
思わず声に出てしまったが、運悪く彼女の腕を見てしまった。
 リストカットだ。正直、生々しい。危険信号をあえて避けているせいか、冷や汗がでそうだ。白そのものが自らを傷つけ、このままでいたら滅する。まるで、白色そのものに脅かされて生きてきたみたいに、真っ黒な瞳が寂しそうに揺れていた。
 僕はつい笑顔をつくって、この子に反射的に抱き着いた。
『え、あ、その……あなたは……えっと、嫌いじゃ、ないの? 顔がくもってたよ』
でも、顔を上げて笑いかけてくれる彼女は、きっと、思いやりのある優しい子なのだろう。自分が落ち着くまで、これでごまかす作戦をとった。
「……もしかして、君はあの時の女の子?」
 それからしばらくして、体を離した途端に、つい、言葉が漏れた。
 通じないことなんてわかってたのに口が動いた。僕がそう問うても白い少女は僕の言葉に不思議そうな顔をするばかりだ。
 だが、彼女はふと何かを思い出したようなそぶりを見せた。待っていてほしいと身振り手振りでいうので、うなずいた。
 彼女は、コップのようなものに水と何かを入れた。僕に渡すと何かを探しに行った。
 少し後を追ってみると、別室の手すりを伝って幹の上を歩いて行っていた。
「……それにしても、この場所は不思議なところだな」
 察するにここは木の上に足場を渡して作られた家の類だろう。幹と足場の隙間に補強が施されており、万が一の備えにあちこちに手すりらしきものが規則正しく設置されている。
 あたりの様子を見回していると、先ほどの白い少女が戻ってきた。
何やら重そうなものを抱えているが、何だろうと思いきや、何のことはない。正真正銘僕の荷物だった。
もうこれを見てしまった以上、問い質すまでもなくこの子は僕が助けた女の子だ。
 彼女はどうやら、中身が気になってしょうがないのを堪えて知らんぷりをしているようだ。
 それなら、とバサバサと中身を出す。サバイバルセットだからナイフ等の凶器も入っていたが、それ以上に食料やテントが多くを占めているのだから、さして怖くもないだろう。
 興味あるのバレバレなのにこちらの苦笑いに気付いていないあたりが可愛らしい。
『ナイフ……? 縄? でも平気そう。というか気づいてないみたい』
 やっぱり、こっちでは見ないものばかりだから気になってるのかな?
 あ、先ほどの事件は何事なのか聞かねば話になるまい。そっちにしよう。
 いざ言葉を切り出そうとすると、どうアプローチしようか迷った。ぼそぼそと独り言をつぶやき、要点を整理する。言葉なんて通じなくとも、僕が言いづらそうな話を切り出そうとしていることを、器量のいいこの少女はすぐに察した。
 何事かを僕に告げ、一個の指輪を取り出した。銀色に輝くその指輪には、磨き抜かれたオニキスが嵌め込まれていた。
 女の子は、僕の節くれた小指に輪を通した。
「私の言葉のもうわかるか?」
 頤を弾かれたみたいに顔を上げた。自分は不安げに引きつった笑顔を浮かべている。あのようなことがあったせいもあってか、精神的衝撃と頬骨の青痣が邪魔して上手く笑えていない。
「うん、ありがとう。いい家だね」
「……よかった。それ、翻訳の魔法がかけてあるんだけど動きが低いから。この指輪は熊とか鹿とか犬とか、そんな頭が良い動物としか話せない仕様なんだけれど、もっと頭いい人間なら詳しさが強いんだね」
 翻訳が微妙に間違っている気がするが、まあ言いたいことはわかる。
 この女の子は、こういった奇妙な出来事を前にして、また奇妙な独り言をつぶやいていた僕を安心させるために静かに笑った。
「でもさ、そんなことより僕のためなんかに無理して笑わないでいれば、君も僕も今よりは幾らか楽に話せるんじゃないかな。」
「あなたも無理なことしてるでしょ、お互いだよ」
 本当にお互い様ですむことなのだろうか。僕なんかよりも、彼女の方がずっと苦しそうだった。だから、尚も言葉を継ぐことにする。
「僕は、戦う術があって日ごろ体を鍛えている上に、元々頑丈な体質だからそんなに心配してくれなくたっていいとしても、何より今の君こそ怪我をしている僕よりもずっと辛そうな顔をしていると思うんだ」
 顔には出ていなかったけど、あまりにも痛々しいその姿が無性に悔しくて、どうにもならない無力感を押し隠した。女の子も黙っていた。
今の彼女がどんな気持ちかわかってしまえば、多分二の句が継げぬまま、互いに黙り込んで話を終えなければならないかもしれない。
どう切り出すか暫く逡巡し、口を開いた。
「守り切れなくてごめん。今言った言葉やこれから聞くことは本来、通りすがりの関係ない奴がとやかく聞くことじゃないし、言うことじゃないかもしれない。だけどいいかな? なんで君はあのような連中に袋叩きにされたんだ?」
 間髪容れずに「な、何でも、何でもないの!あれはただ」と誤魔化す彼女の声を「僕はただ、君が心配なだけだ」ときつく眉根を寄せたまま、温かい言葉で容赦なく遮った。
「……ほ、本当に何でもないんだけどなぁ」
事実を口にしている割には、肩が震えすぎている。おそらく、捕まりそうになっただけで乱暴はされていないのだろう。
 「あ、そうだ!」
 それから、何か思い出したように両手をパチンと合わせた。
「お腹すいている?この辺に旅人さんが来たのは初めてなの。たくさんな話を聞きたいな。周囲近くに今夜泊まるところもないんだし、家に泊まるといいよ!ああ、それと自己紹介もはじめた!」
 あの話によほど触れたくないのか、あくまでも明るく振舞う。
「なんで、泣いているの?」
「へ?」
「君、今とっても自然に笑っているはずなのに、何故笑いながら泣いているんだ?」
目を据えたまま、彼女は頬をなぞった。
「……嘘、あなた、怖い。sinpaiって言葉ってなに? なんで押し付けに変換されないわけ? ねえ!」
「え?え……っと」
警戒心に操られた哀れなマリオネットは、そのまま緊張の糸が切れたみたいにくずおれた。

                      《4》 

 怖いとか、言われる覚えがない。

『ごめんなさい、よければ、このハンモックに寝て。私はここで警戒してるから。そのナイフと重そうな本、貸して』
 昨日の彼女の言葉を思い出す。
――何て虫のいい。
 なんというか、この子の嘘が許せない。助けてやったのに、どうも面白くない。
 うまく言えないけど、こっちに来てから予想外の事ばかりでよくわからない事ばかりだ。
「そういえば、君は一人暮らし? お母さんとか、……家族とかは、いなかったの?」
「いない。旅人さんは? 変わった服してるけど、しいて言うなら赤の国の戦災孤児みたいに見えるけど」
「どこか知らないけど、向こうって、戦争してるの? 今は大丈夫かな」
「本当はどこに住んでるの? 違う国かな」
「ニホン。三ノ辺町」
「どこ?」
 地図で説明すればいい? どうやって示せばいい? 
 とりあえず、異世界のことについてなんてよくわからなかったけど世界地図を開いた。黒いボールペンを出してみる。
 少しは、似たところがあるだろうという淡い期待は、すぐ打ち砕かれた。
「これなに? 長細くてまるいね」
「この地図のなかで、どこが現在地?」
「え、地図? うちにもあるけど、その形見たことない。それより、朝ごはん食べようよ。根つめるし、体力つけなきゃ。何食べたい?」
「僕? そうだなあ。君がいつも食べているものがいい」
「なら、鹿肉をコルトゥラに漬けてあるから、地下室に取りに行こうよ」
ふむ。コルトゥラか。察するに味噌の仲間だろうか。
「いいけど、コルトゥラって何?」
 僕が不思議そうに尋ねると、しばらくの間、彼女は眼を瞬かせてそれから小さく噴き出した。
 「あははっ、そうよね。旅人さんが知らなくても無理ないか。ええと、コルトゥラというのは、川魚を童酒で発酵させた調味料の事だよ。ひよこ色で粘り気があるんだ」
 やはり、味噌と非常によく似た調味料らしい。地下室は、家である大樹の地下にあるそうなので、取りに行くことになった。

                       《5》
 暗くて狭い地下室まで取りに行った甲斐があった。何せ極上の逸品である。最高に旨い。何が旨いって、カーフィャで発酵してあるから、山羊乳の豊かな風味と濃厚なうまみが塩気と相まってものすごく旨いのだ。酵素のおかげか、肉も非常に柔らかい。
 加えて、この本能をくすぐる食事スタイル。これで食欲が増さないはずがない。
 「旨−−−−!!サイコーーーー!!」
 歓声を上げながらむしゃむしゃとがっつく僕を見て、彼女はすっかり呆気に取られている。
 ガツガツっ、むしゃむしゃむしゃむしゃ、ゴキュッ!
 「御馳走様でした!あーっ、美味しかった……」
 「そんなに美味しかったの?」
 「うん!最高だったよ!」
 僕の答えを受けて、彼女は満面の笑みを浮かべて鼻歌を歌い始めた。足どりも軽く、嬉しそうに皿を片付け始める。
 「今度はもう少しさっぱりさせてみようかな」
 「うん、それがいいよ。ありがとう!」
 笑い合って、その日の朝食を和やかに締めくくった。
壱番合戦 仁&玉城 つむぎ aW4ZwmeEKs

2019年08月31日(土)19時13分 公開
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■作者からのメッセージ


この作品の感想をお寄せください。

2019年09月17日(火)10時06分 もか 
壱番合戦さん、返信をありがとうございます。
壱番合戦さんがこちらの文章を直接修正できない事情はわかりました。で、すみません。こちらでの添削の回答をいったんストップしていただいてよろしいですか?
「共作」とはありましたけど、そういう形で玉城さんが制作にかかわっていたとは思わなかったので、ちょっと、かなり戸惑っています。

今日これから外出するので、夜にでもなろうメッセージから改めます。そちらから何かあるようでしたら、なろうメッセージからご連絡ください。
取り急ぎ、いったん失礼いたします。
99

pass
2019年09月16日(月)18時37分 壱番合戦 仁&玉城 つむぎ nY4XfnbGic 作者レス
もかさん、お返事できずにごめんなさい。これから少しずつ返していきます。なお、僕のパソコンからは投稿室の原稿を編集できません。玉城さん経由で改稿することになるので、時間がかかります。どうかご了承ください。

 以下、添削の回答です。

 >>わざわざ銘柄と逸話を出しているあたりは、「作者の知識のひけらかし」が感じられてしまいます。
 ここでワインについて詳しく語ってしまうと、「「僕」は父親が語ってくれた銘柄や逸話を説明できるほど、父親の飲むワインに関心を持っている。」と、「僕」の人物像にブレが生じてしまいます。

 あー、確かに。その辺を考えていなかったようです。修正しておきます。

 >>御髪は敬称だから、妹に使うのは不自然。

 そうですね。聴いたことない言葉だったので自然に受け入れていましたし、相棒が修正した部分だったので確実に間違いはないと思っていました。敬語の一種だったんですね。直しておきます。

 >>誰のセリフか、誰が誰に絡んでいるのかわかりづらいです。「絡んでくる。」とあるので、「僕」が絡まれているのかな、となんとなくわかりますが。

 これね、主語を省いたのがまずかったと思うんですよ。追加しておきますね。

 > 実質このタイミングしか、チャンスがない。上機嫌でいるときなら、殴られずに済むかもしれない。

・これは、「僕」の考えたことですか? 続く流れから、妹が考えたことのように思えるのですが。

 なんでこの文が書かれたのか僕は知らないんです。これも、玉城さんが追加した部分なので問題ないと思っていました。彼女に聞いてもいいのですが、言っても仕方ないので、主人公に妹へ目配せさせておきます。

 あと、主人公の「僕」が食卓を見回してため息を吐くシーンがあるといいかもしれません。回想の初めに書いておきます。

 あと、主人公の名前を出すタイミングが分かりません。どのあたりで出した方がいいですか?

pass
2019年09月12日(木)14時55分 もか 
すみません、添削をここでいったん中断します。

添削には双方の意思疎通が大切です。作者さん側が私の添削内容についてどう思ったか、都度返答をいただきながら進めますので、まったく応答のない状態では継続することができません。

添削内容が参考になっているのか、いないのか。
指摘箇所に関して、どう思ったか。
指摘箇所をどう直そうと思ったか。
指摘に納得ができないなど、反論はないか。

本来ならば指摘箇所ひとつひとつに返信をいただくのですが、数が多いので大まかにでもいいので、「どう思ったか」返答をください。

返信がなければここで添削を中止します。
101

pass
2019年09月12日(木)02時52分 もか 
《2》の後半の添削です。

> そんな自慢の妹の詠唱が途中からすすり泣きにすげ変わった。

・「すげ変わった」ではなく「すり替わった」ではないでしょうか。

> それは次第に声なき慟哭に変わり、喉の奥から絞り上げるような鳴き声が上がったかと思ったら、突如として人の気配が消えた。

・「慟哭」とは声をあげて激しく泣くという意味です。声をあげないのであれば慟哭ではありません。また、「鳴き声」は虫・鳥・獣など、人以外の鳴く声のことです。ここは誤字でしょうか?
「突如として人の気配が消えた。」人とは誰ですか。流れから、人(妹)の気配が消えた、どこかへ行ったのか、あるいは最悪の事態(気配を発せない状態)になったのかと思ってしまいました。

> 厚手のパジャマがじっとりと汗で濡れてしまっており、いつもはキッチリしまってあるシャツの端が露見してしまっている事が、見た目にも途轍もなく痛ましい。

・「露見」とは悪事などが明るみになることです。「露出」ではないでしょうか。

> まずい、どうやら華は、父親に腹を蹴り飛ばされた衝撃で腹から内出血を起こしたらしい。1回殴られただけでこんなにドクドク血が出るのか、と不安に思う。華は痛い痛いと言いながら、なおもきつく膝と腹をくっつける。

・「父親に腹を蹴り飛ばされた」「1回殴られただけで」、妹は「お父さんにやられた」としか言っていません。「僕」は暴行現場を見ていないはずですが、蹴り飛ばされた、1回殴られたとはどこからの情報ですか? また、蹴られた・殴られた、どちらですか。
「内出血」は体外に血が出ないことです。「腹から出血を起こしたらしい。」でいいと思うのですが……腹から出血、文字通り腹部から出血ですか? 下血ですか?

> しばらくして落ち着いても尚、痛みに震える妹を腕に抱えて一階のトイレまで連れて行くのは並大抵のことではなかった。

・布団が腰を中心に赤く染まり、ドクドク血が出ているほどの大量出血では、ショック状態を起こして命にかかわりそうなので、悠長にトイレに連れて行くのではなく、病院へ、むしろ救急車を呼んだほうがいいと思うのですが。

> 咄嗟に口を押えると、血の塊が出てきた。それだけ、ストレスでも溜まっていたのだろうか。

・ここでの吐血は、先ほど吹っ飛ばされ胃をやられたための吐血ではなく、ストレスによる吐血ですか?

> 「ぅぅぅっ……!!もう限界だ、あの手を使うしかない」
> 己の血の塊をぐしゃりと握りつぶし、あの伝説を確かめることを決意した。
> 「人当たりが良いことだけしか性格的にゃ取り柄がない、あの気障りな先公のつてに頼るしかねぇな……」

・このあたり、ちょっと流れが乱暴です。「僕」が限界を感じたのは、今日自分が振るわれた暴力に対して? 妹にまで暴力が及んだことに対して?
「僕」がこの世界ではない場所へ行こうと決意する、大切な場面です。
これまで溜まり溜まったもの、それでも我慢していたもの、それが決壊した引き金が何だったのかを明確にしてほしいです。

> たぶん悪魔に取りつかれた家の親父よりかは一兆倍マシだ。

・「悪魔に取りつかれた」は比喩なのだと思いますが、父親の行動は悪魔のしわざであって、なにかきっかけがあって今のような乱暴者になったのであり、本来の性格はこうではなかった。というようにも受け取れます。

> 「それにしたって何年も先の将来の事をきちんと考えようとしている娘に、空手の前蹴りははねぇだろ……、あの腐れ外道……、絶対にこの世界に戻ってきたら復讐してやる」

・「空手の前蹴り」、先ほどもありましたが、「僕」は暴行現場を見ていません。なぜ前蹴りと断定できるのでしょうか。
「絶対にこの世界に戻ってきたら復讐してやる」、唐突な発言です。また、「あの伝説」を確かめてもいないうちから、確実に行って帰ってこれる確証はどこにあるのでしょうか。


《2》の後半は、流れがよくわかりません。
1、妹が祈祷文を詠唱→2、途中からすすり泣き→3、慟哭→4、人の気配消える→5、「僕」は妹の部屋へ。
妹が父親に暴行を受けたのはいつですか? 夕飯前の時点ですでに蹴られていて、それがじょじょに悪化して詠唱中に我慢できないほど苦しくなったのか、1と2のあいだか。
1と2のあいだなら、妹が部屋で詠唱をしているところへ父親が入ってきて蹴られたのだと思いますが、あの父親が物音も立てずに部屋に入り、蹴りを入れてまた静かに退室した、とは考えにくいです。
おそらく詠唱が耳障りで(?)妹の部屋に乱入し、怒鳴りつけ蹴りを入れ、うずくまった妹を放って出て行った、その後で「僕」が駆けつけたのだと思うのですが。
そうであれば、父親の騒々しい足音や怒鳴り声も聞こえていそうなんですが、その描写はまったくないので、隣室にひとりでいた妹に突然異変が起きたように読めてしまいます。

一日のうちに父親の暴力によって、兄が吐血、妹が下血している状態です。父親は以前にも暴力沙汰を起こしているのですし、病院か警察に駆け込めばそのまま保護してもらえそうなものですが、そういう避難の仕方は思いつかず、不確かな伝説に頼ろうとするのはなにか理由があるのでしょうか。ちょっと発想が突飛すぎるように思えます。
88

pass
2019年09月11日(水)18時05分 もか 
添削の続きです。

《2》は時間が遡ったうえに、唐突に誰のものだかわからないセリフから始まっているので、ちょっと面食らいます。数行読み進んでから、《1》の最後に「物思いに沈んだ。」とあったから回想が始まったんだな、とようやくわかりますが。

気になったのですが、「ディアブロ・デル・カッシェロ」は、チリワインの「カッシェロ・デル・ディアブロ」のことでしょうか?
実在の銘柄をそのまま出すのはマズいと思ってカッシェロとディアブロを入れ替えたのでしょうか。悪魔伝説の逸話まで同じなので、知ってる人には「銘柄間違ってない?」と思われそうです。
父親が飲んでいるワインの説明を入れたいのなら、銘柄も逸話もオリジナルのものを考案したほうがいいかもしれません。

というか、ワインの銘柄と逸話、いらないと思います。
なぜなら、「僕」は父親を嫌っています。(そうですよね?) 嫌っている父親が飲んだくれて知ったかぶりで話す逸話など、関心も興味も持てないだろうし、耳に入ったところで聞いてはいないと思います。
わざわざ銘柄と逸話を出しているあたりは、「作者の知識のひけらかし」が感じられてしまいます。
ここでワインについて詳しく語ってしまうと、「「僕」は父親が語ってくれた銘柄や逸話を説明できるほど、父親の飲むワインに関心を持っている。」と、「僕」の人物像にブレが生じてしまいます。
せいぜい、「ワインをヴァインとカッコつけて言う父親が、銘柄の逸話について何か語ってる。僕は未成年だし興味ないからどうでもいいけど」くらいの感想しかないように思います。

時間が遡っていること、余分なワインの説明が入っていること、状況の把握に時間がかかることで、《2》はちょっと読みづらいです。
整理すると、時間は夕飯前。ワインを飲み、「僕」に絡む父親。酔って上機嫌の今がチャンスと、妹は進路の話。激怒した父親から妹をかばい、「僕」は負傷。でしょうか。(時間が《1》に戻るので、いったんここまで。)


ちょっと雑ですが、ワインの説明部分を省いて、添削してみます。

>「ヴァインはうまいなあ゛、な?」
> 適度にいなすがやっぱり絡んでくる。

・誰のセリフか、誰が誰に絡んでいるのかわかりづらいです。「絡んでくる。」とあるので、「僕」が絡まれているのかな、となんとなくわかりますが。
この後すぐにワインの説明がつらつら続き、

>いや、僕未成年……

とありますが、唐突です。
最初の「ヴァインはうまいなあ゛、な?」に対して、「いや、僕未成年(だから飲んだことないし、同意を求められても)……」という流れなのだと思いますが、間に入っているワインの説明のせいで、なんで唐突に未成年発言? と一瞬戸惑います。少し考えて、ああ、最初のセリフに対しての言葉ね、とようやくわかります。

> 実質このタイミングしか、チャンスがない。上機嫌でいるときなら、殴られずに済むかもしれない。

・これは、「僕」の考えたことですか? 続く流れから、妹が考えたことのように思えるのですが。

>「お父さん、華は三ノ辺聖十字教会の牧師になりたいの。だからお願いします。神学校に通わせてください、せめて、通信制でも構いませんから」

・いきなり妹が登場しました。直前の「実質このタイミングしか〜」まで、この場には「僕」と父親しかいないと思って読んでいたので、ちょっと驚きます。
「ヴァインはうまいな」の前後に、夕飯前の時間軸であること、(おそらく)食卓に、「僕」と父親と妹がいる状況は、書かれていたほうがいいかもしれません。

> 親父はぱっと僕を離し、華に詰め寄った。

・あれ、「僕」は父親に掴まれていたんですね。最初にあった「絡んでくる。」って、せいぜい逸話の聞き手をさせられている程度だと思っていましたが、肩に腕を回されていたとか、体が接触した状態だったのでしょうか。それであれば、「酒臭い息がかかって不快」だとか、「酔って肩を掴んでくる」とか、描写があったほうがいいように思います。

> 実際、こいつは暴力沙汰の数において僕たちが住む三ノ辺町で右に出るものは居ないと近所で恐れられている。逮捕はともかく署で話をきいている、なんて小さい頃は母によく聴かされた。

・詰め寄られた妹の表情、怯えたり恐怖を感じている様子の描写がほしいところです。また、父親はただ態度や怒声で威圧しているのか、あるいは妹を掴み、今にも殴りかかろうとしているのか。
(母親は、今現在どこにいるのか、ちょっと気になりました。)

> というわけで、嫌な予感しかしないんで背後から奇襲をかけて締め上げてやった。それに逆切れした親父が部屋の端まで吹っ飛ばした。とまあ、こんな経緯で僕は胃をやられた、と思う。

・「それに逆切れした親父が部屋の端まで吹っ飛ばした。」誰を? 「僕」なら、「それに逆切れした親父に部屋の端まで吹っ飛ばされた。」という表現になると思います。
「こんな経緯で僕は胃をやられた、と思う。」えーと、父親を背後から締め上げたら、振りほどかれて部屋の隅に吹っ飛ばされたんですね? 壁か柱に背中でもしたたかに打ち付けて、衝撃で胃が傷ついて吐血した感じでしょうか。
武術を習っているならとっさに受け身くらい取れそうですが、ずいぶん無防備にやられてしまうんですね……。
軽い脳震盪も起こしているので、口からの血は頭を打った際に口の中を切った、程度でよかったかもしれません。


《2》の前半は、「実際、夕食前の妹は実に立派だった。」からの回想のはずです。
ですが、実際に書かれているのは、ワインの話が半分近くと、父親の暴力。「妹が立派だった様子」がうかがえません。
前々から、妹が父親に進路の話をする機会をうかがっていたとか、今がチャンスと意を決する様子、表情。思いを伝え、父親に威嚇されながらも、なんとか説得・了承を得ようと、怯え震えながらも必死で言い募るさま。そんな描写があればいいなと思いました。

長くなってきたので今回はここまでです。
105

pass
2019年09月08日(日)19時16分 壱番合戦 仁&玉城 つむぎ  作者レス
 玉城です。添削ありがとうございます。私としては、もし宜しければご指摘を更に賜りたく存じます。
 壱番合戦さんに意向を伺ってみますね

pass
2019年09月08日(日)18時22分 もか 
ノベル道場でお伺いを立てた者です。返信が遅くなり申し訳ありません。
プロ志望、ボコボコの細切れミンチ肉寸前、厳しい添削をご希望とのことなので、そのつもりで取り掛かります。
「批判には一切の文句をつけません」とありましたが、指摘箇所について、「これはこういう意図で、敢えてその表現だ」「これは後のどこそこの部分の伏線だ」等の反論があれば、それはむしろしていただきたく思います。

壱番合戦さんは長文をお読みになれないとどこかで拝見しましたので、適度に区切ります。
全文で3万字弱の作品なので添削にはそれなりに日数が掛かりますし、なろうさんでも何作品かで似たような作業を手掛けていますので、もしも私の添削が壱番合戦さんにとって参考にならない・合わないと思われた場合にはすぐにストップをかけてください。
お互い、無駄な時間と余計な手間は省きましょう。創作・執筆に充てられる時間は有限ですので。

感想ではなく添削になりますので、点数評価は無しにしておきます。ご了承ください。


> 無重力状態にさらされたせいで、全身がむくんで死にかけた宇宙飛行士の顔みたいな満月をぼんやりと眺めながら、僕は口の端から血を流していた。

・他の方にも指摘されていますが、「無重力状態にさらされたせいで、全身がむくんで死にかけた宇宙飛行士の顔みたいな満月」、よくわからない比喩です。
「え、なに、どういうこと?」と疑問に思って読み進める人もいるかもしれませんが、冒頭でいきなりこの部分でつまづき、先に進めない読者もいそうです。また、読みようによっては宇宙飛行士をけなしているように受け止められかねません。

> 顎まで垂れ下がった血の筋が紺色無地のパジャマの上着の端に血だまりを作る。

・あえて「紺色無地」と書いたのには何か理由がありますか?
このシーンを思い浮かべてみます。「口から血を流す少年、滴った血がパジャマに赤いシミを……」と思いきや、紺色無地だと血の赤が目立たず見えない。
単に「血の筋がパジャマの上着の端に血だまりを作る」であれば、読者はパジャマに染みる血の赤さに、さらに痛々しさを感じられるかと思います。
なにか意図があって、あるいはなにかの伏線で「紺色無地」と書かれてあるのであればすみません。

> 幼児体型なのにそこそこ背が高くて、真顔でも人を睨みつけているかのような鋭い切れ長の目を持っている。黒くさらりとした御髪
おぐし
が特徴的な美少女キリスト教徒。

・「真顔でも人を睨みつけているかのような鋭い切れ長の目」、睨みつけているかのよう、とあると、威圧的で印象が良くないイメージです。人を睨みつける時って、敵意とか害意とか、良くない感情がありませんか。
切れ長の目って、くっきりはっきりした印象的な涼し気な目、というイメージです。くっきりはっきりした目と、睨みつけている目は別モノだと思います。
「黒くさらりとした御髪(おぐし)」、妹の髪を指して敬称である「御髪」は、ちょっとふさわしい表現ではないように思います。普通に「さらりとした黒髪」でいいような。

>性格は基本的にリアリストに徹しながらも、権謀に生きるようなタイプではない。むしろかなりの甘えん坊だ。しかもどうやらその依存の対象と言うのがイエス・キリストと聖書の神と聖母マリアに向けられているらしい。そして、現実に生きるという妥協からか、僕にも甘えてくるのだ。原因は―――。

・すみません、結局妹がどういう性格なのかよくわかりません。
また、「僕」がどんな人物なのかもわからないうちに「妹」の説明(描写ではなく説明)をされても、あまり興味がわきません。
冒頭、血を流している少年がいる。読者は何があってそうなったのかが気になる。そこへなぜか続くのは妹の説明……。
痛みから現実逃避したい心境はわかります。でも「妹の説明」をするよりも、さっさと「妹本人を登場」させてしまったほうが手っ取り早いように思います。
「原因は―――。」原因は、何なのでしょう。

> 救急箱を提げてかけつけ、今でもにこやかにほほ笑む様はまさに天使。神に愛されたといっていい。

・「僕」は吐血をしていますね。(口の中を切ったのかとも思いましたが、後に「胃をやられた」とありますので吐血ですかね)救急箱には吐血の手当てに必要な何が入っているのか、気になりました。救急箱は必要ないような。
そして吐血している兄に「にこやかに」微笑む妹。兄を心配しつつも不安にさせまいと微笑んでいるのかもしれませんが、「にこやか」とは「にこにこと人当たりがやわらかで、おだやかな様子。また、心からうれしそうな様子。」うれしそうに微笑むのはいかがなものかと思います。

> 彼女の看護をうけながら、ぼうっと考える。

・「看護」は大げさに思えます。「手当て」で良いような。それよりも、妹はデジタル時計を読みに行っているはずです。兄のそばを離れつつ看護はできないと思います。

> 年は十二歳であるにも関わらず、『聖書』の【創世記】の始めから【ヨハネの黙示録】の終わりまでだけでなく、アポクリファまでも既に全て暗記していて、その敬虔深さと知識量が認められて、牧師の資格を持っている。

・「牧師の資格を持っている。」私も親の意向で洗礼を受けた大して敬虔深くもないクリスチャンですが、敬虔深さと知識量だけで牧師の資格を得られるとは思えません。宗教関係はあまり軽はずみなことを書かれないほうがいいと思います。
もしも実例があるのでしたら、こちらの知識不足です。すみません。

> 笑うと普段から細い目がさらに弓なりに細められて、とろんとしたかわいらしいたれ目になるのだ。

「切れ長の目」と「細い目」は別モノなのですが、妹の目は結局どちらなのでしょうか? 切れ長の目なら、「笑うと普段はくっきりとした目が弓なりに細められて〜」という表現になるように思います。

> 時に辛辣な毒舌で人心を打ち砕き、時にとろん、と「おにいちゃん」と甘える愛すべき僕の自慢の妹、そう、彼女の名は華と言う。

・ここでようやく、妹の名前が「華」だと明かされますが、遅いと思います。妹さん、登場時に「お兄ちゃん」と言っていますので、やってきた彼女が「妹」だということはわかります。「彼女」とボカしていないで、最初から「華」と書いてしまっていいように思います。

《1》の内容はほぼ妹の説明になっているように思います。妹はすぐに登場しますので、「思い浮かべた」という形で説明するよりも、「やって来た妹の黒髪がさらりと揺れた」とか、「切れ長の目が心配そうに僕の顔を覗き込んでくる」とか、実際の行動や言動で描写したほうがいいように思います。

長くなってきたので、今回はここまでですみません。
指摘に納得ができない、上から目線な感じで不快、参考にならない、ただの難癖付け等、思われましたら、ストップをかけていただければ続けずに退散いたします。
90

pass
2019年09月04日(水)07時57分 壱番合戦 仁&玉城 つむぎ  作者レス
 玉城です。感想返しありがとうございます。
 かしこまりました。お父さんのこのセリフをはじめとして、話者とセリフの間が一致しないモヤモヤした展開が続く、と。
 宇宙飛行士の比喩をはじめとし、不適切・読者に分かりづらいところがあり、(おまけにこの回は句読点のいちがおかしく)それが些細なストレスが重なり読者に読む気をなくさせるのですね。仰る通り、とくに冒頭だから致命傷ですね。ありがとうございます。
 以上の件、確と参考にさせていただきます。


pass
2019年09月04日(水)04時52分 日暮れ  -10点
読みましたので感想を置いていきます。
ボコボコにしてよいとあるので、すみません、辛口で書きます。

感想返しということで読了しましたが、正直なところ、途中でなんども挫折しかけました……。物語の善し悪しはひとまず置いておくとして――

表現力に難があります。
状況が分からなくなる場面が多くありました。おそらく、作者様の中では情景がありありと見えているのでしょう。ほとんどの場面で、その三割程度しか読者には伝わっていないとお考え下さい。

具体的には
最初の《2》の冒頭
>「ヴァインはうまいなあ゛、な?」
この発言者は誰だろうか?
《2》になったことで、場面転換しているのは薄々判ります。読者としては、いち早く状況を把握して物語に浸りたいと思います。ですが、与えられる情報はワインについてのことばかり……。
途中で >上機嫌で語っていた。 とあるので発言者は主人公ではないな。では消去法で妹かな?
もう少し読んでようやく「糞親父」とあるので『ああ、たぶん親父が近くにいて喋っているのかな(?)』と判ります。これは小さいながらもストレスですし、その間、せっかくのワインのウンチクに思考を傾ける余裕を読者から奪います。
これは氷山の一角で、場面が動くたびに状況把握できるまで頭にハテナを抱えて読むことが多かったです。

次に比喩表現について。
本来比喩は、読み手によりわかりやすく説明するのに使われますが、今回はその逆の働きをしてしまっています。
冒頭
>無重力状態にさらされたせいで、全身がむくんで死にかけた宇宙飛行士の顔みたいな満月をぼんやりと眺めながら、僕は口の端から血を流していた。
この文章には問題点が二つあります。
1、読点の区切り位置
2、不適切な比喩

1から。
『無重力状態にさらされたせいで、』で区切られているので、この言葉は比喩にかかっていません。よって、何かが無重力状態にさらされている、と単純に読み解きます。
文章を読み終え、ここでハテナが浮かびます。読み返すことで、『全身がむくんで死にかけた宇宙飛行士の顔』にかかっているんだなとようやく判別できます。
特に冒頭ですから。少しでも誤解を与える表現は避けるのが無難かと思います。

2について。
無重力状態にさらされたせいで全身がむくんで死にかけた宇宙飛行士の顔……ってなに!?無重力状態にさらされてむくれるといわれてもピンとこない……。全身がむくんで死にかける、というのは分かります。宇宙飛行士って誰!?
極めつけには『みたいな満月』……満月と例えがどう頑張ってもリンクできません。
これ以外にも、混乱を招く比喩表現がいくつか見受けられました。


上記した要因が、物語の進行に暗い影を落としています。
私もほぼほぼ似た失態をした苦い経験があります。(今でも克服できたかどうか怪しいですが……)

内容の感想については、未完ということで差し控えたいと思います。色々偉そうなことをいってすみません。取捨選択はお任せ致します。
ではでは、お互いに執筆活動頑張りましょう!

88

pass
2019年09月03日(火)07時44分 壱番合戦 仁&玉城 つむぎ aW4ZwmeEKs 作者レス

どうも、壱番合戦 仁です。
感想ありがとうございます。この序盤の展開に強い虚しさを感じていただけたら、それは僕の目論見がかなったといえますね。壱番合戦にとっても冥利に尽きます。ハレルヤ!
 この独特の厭世的な雰囲気は中学生の頃に抱いていた僕の心境を写し取ったものでもあります。アスペルガー症候群を抱えた少年ってこんな気持ちなんだ、と読み取っていただければ幸いです。
 ちなみに、セックスは挿入れていません。着衣のままでの前戯です。そこだけはお間違えの無いように。まあ、キスの延長線上の行為と思ってください。その辺の捉え方は、若干個々人の価値観や道徳基準によって違うと思うので、社会通念だけでは断定できないと思います。何せ、誤差の範囲で、捉え方と視点の問題ですし、道徳単体で割り切れるモノでもありませんからね。
 それでは、評価点ありがとうございました!

pass
2019年09月02日(月)21時05分 颯志 FYhtKH/pDk +10点
現実から逃げるために異世界へ行こうとする主人公。主人公が異世界へ行きたかったのはアスペルガー症候群と家庭内暴力が原因だと思いました。異世界に行けることに期待しなければならないほどにどうしようもなく辛かったのだろうと思います。しかし作品を読んでいて鬱々とした感じはありませんでした。主人公はそういった感情をあまり表には出していなかったように思います。この世界のことはもうどうでもいいかのようです。この世界をあくまでも仮の世として捉えているのでしょう。心の奥底では深く哀しみ傷ついているのだろうと思います。しかしもう主人公にとってそんなことはどうでもよく異世界へ行くことが大事なのです。妹と主人公は互いに精神的に支え合っています。妹も深く傷ついているのだと思います。妹の「二人だけの天国まで、もう少しだね。」というセリフから二人は互いに依存しているのだとも思います。現実から逃げて二人だけの世界を望んでいる。妹と主人公がセックスをするシーンがありました。僕は傷ついてどうしようもない二人が自分たちを癒すための最後の手段としてセックスをすることについては肯定しませんが完全に否定はしません。二人だけの世界に逃げても二人が幸せならそれでいい。そんな風にも思います。妹と主人公がセックスして妹が幸せそうだったので良かったねと思いました。でも僕は一緒に異世界に行って欲しかった。どうして妹だけこの世界に残る結末にしたのだろうと感じました。あるいはそうすることで主人公はこの世界に完全に見切りをつけられるのかもしれません。この後白エルフの女の子が登場して主人公と関わるのがその証拠でしょう。彼女は新しいヒロインで主人公は彼女と関わるうちに新しい世界に馴染んでいくでしょう。でも僕は妹と一緒に異世界に行っても良かったと思うのです。二人で幸せになって欲しかった。まあこれは個人的な好みなので作者さんの好きな方を選んでもらえればいいですが。何にせよこの物語はこれから長く長く続いていくのだろうと思います。これから主人公はどんな冒険を繰り広げていくのでしょう。どんな仲間と出合いどんなふうに成長していくのでしょう。ここからが面白いところです。執筆頑張ってください。

それでは

98

pass
2019年09月02日(月)19時36分 藍色折紙 
藍色折紙です。

 私の酷評を前向きにとらえていただけたこと、本当に感謝いたします。
ですが、重ねて申し上げますが。私個人の勝手な感想ですと言わせていただきます。
私もここで勉強させていただく若輩の身なれば、
私の言うことが正しいとも限りません
私の言うことが全て間違いかもしれません。
それと、あまり一人の感想に傾倒してもいけませんので、この作品への感想はこれをもって最後といたします。
また、下記内容が返答となっていないかもしれません。
そのことを、先んじて申し上げておきます。


 そのうえで、
この作品は起承転結の『起』の部分に該当し、そして『承』『転』『結』なる続きが後に投稿されるというものだと私は読んでいて思いました。
そうであれば本当のすべての物語の総枚数はいくつになるのでしょうか。
それはおそらく作者様が構想されている起承転結すべて含め、100枚を必ず超えるものと思うのですが、
……それは短編ではなく長編ではないのでしょうか。
 面白い、面白くない以前にこの作品は短編としての投稿そのものが相応しくないと考えています。

 はっきりといいますが、未完成ですよね。
『起』だけの小説で続きがあるものを完成品とは私は言いません。それはここのルールで投稿してはいけないのでは?という考えが私にはあります。これがダメですと付けた理由です。
『起』が完成しているかどうかは関係ありません。オチがあるか無いかも関係ありません。
完成した『起』『承』『転』『結』全て一投稿内に収める。それがここのルールに対する私の考え方です。
どんな続編構想を持とうがそれは作者の自由ですが、ルール上、未完成品が投稿禁止である以上『連載』という手段がここではとれないのです。
上手く言葉にできませんが、大前提としてここはそういう場所だと私は思っています。
ちなみに「読み終えることができる完成作品」と申し上げたのは、作者様が考えている起承転結すべての構想をこの作品内で入れ込み、終わらせてほしい。という意味です。かなり勝手ですが、それが私という読み手です。


 ……上記を踏まえたうえでですが、これは考え方の一つとして、
未完成品による『連載』は駄目ですが、完成作品を連続させる続編構想ならいいのではとは思っています。完成作品がただ連続してるだけですから、ルールにおける未完成作品の投稿禁止には該当しないはずです。ただ、恐ろしく難しいですが。

 作者様の構想はわかりませんが、本当に勝手なことながら私であれば以下のようにします。

 この作品では別世界にたどり着いた後の部分を全カット。主人公が完全に異界へ旅立つまでを起承転結ないし、序破急を用いて、読み手にこの物語は『別世界へと逃れるまでの主人公の物語』として認識させるよう作り上げます。絶対に誰もが認識出るだろう『結』を作り上げて終わらせます。
(一応対案として求められていた『起』に対するオチに該当する答えです)

 勿論、読み終わった後「これは途中だな。未完成だな」と読み手が思ったら未完成による連載扱いで失敗。引き出したいのは「完成していた作品だが、それでも続きがあれば見たい」。これに重きを置きます。感想がもらえず判断が付かないということもあるかもしれませんが、それは作り手側のスタンスとしてそうであれというだけの話です。
その後、続きの物語をまた同じように単独の完成作品(けど前作とつながる)ように作り上げます。そうして四作品全部見返したときに大きなカテゴリーとして『起承転結』になっていれば、なにも文句はありません。
執筆速度や、完成作品と完成作品のつなげ方、どの作品を見ても単独では完成作品であるという認識を与えないといけないなど凄まじく難しい事ですが、ここで続きものをやるのであれば、それくらいしないといけないと思います。ここは未完成作品による『連載』ができるサイトではないはずなので。

 それが構想上無理が出てしまうのであれば、すべて完結させて、続きなど一切ない状態にした後、文章の長さに応じて投稿するか、連載可能な別サイトに投稿するか、だと思います。


 主題、命題について
 こちらはあまり長くは書きません。というのも、本来あとで出てくるものが単純に投稿されていないだけど私は判断していますので。つまり、見えていないので不明確だったりするのは当たり前だったという話です。
 物語を完成させるという事を考えれば、主人公が抱える命題、この物語の主題に対する深みや終わり方は見えてくるはずですから。あとは細分化、具体化、イベント化して印象に残るよう、伝えていくだけだと思います。

 表現について。
 こちらも長くは書きません。表現の増やし方はキャラや印象付けたい物事のみのほうがいいかもしれません。逆にあまり印象が強すぎず、流れとして扱うべきキャラやイベントは表現を減らしてみてください。それだけで随分と読み手への印象が変わります。作者様の考える物語が特徴的に伝わります。

 また長くなりました。個人的な思考がかなり入っています。
取捨選択は作者様にお任せいたします。以上です。
92

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2019年09月02日(月)07時53分 壱番合戦 仁&玉城 つむぎ aW4ZwmeEKs 作者レス
 玉城です。 
 今回は厳しくも温かいご指摘、誠にありがとうございました。今回は本来、「たのもー(ぼこぼこにしてください)」枠でしたので、むしろ有難いです。
 御作は続編だったのですね。空への渇望。その前篇を拝読する機会があれば、ぜひとも飛びつきたいものです。
 貴重なお時間を割いて感想をくださってありがとうございます。もし宜しければ、対案をくださいませんか?
 まず1から。拙作は一応起承転結がありますが、起は起、承は承、転は転、結は結という形をとっています。
 しかし、同時にこの起承転結各話の中で一つのオチをつけなければならないのもまた事実。そのつもりで短編に投稿したので、認識の甘さが再確認できました。
 確かに虐待……もとい現実逃避的な理由で異世界に飛び立ってますね。私自身は、異世界(野生?)の怖さ、レイヤくん自身の偏見のあぶり出し、焦りを書き、(壱番合戦さんに伝えるのを忘れていましたが)免許皆伝もそれこそ2階級特進のつもりでした。その合間に家族やエルフと話すって感じです。
「起」内でどうオチをつけるか、書き終わりました後壱番合戦さんと話してきます。
 2も大体同じでしょうか。 命題というガイドラインは今のところ「異世界で成長してひとまわり温かくなって現世に戻る。障碍をどうやったら生かせるかを考え、義務の概念を認識し、相互の義務を確認。その視点から理解し、消極的啓発に努める」ぐらいしかなく、細かいところでオチはついていません。
 もし藍色折紙さんが作るとしたら、起の時点でどのようなオチをつけますか? 
 3です。五感に頼る描写を削ったのは私(玉城)です。ラノベはキャラが命ですので、レイヤくんやアイルちゃんの描写を削り、他キャラスべースをふやしました。それが逆に作品の命を削いでいる、おろそかになっていると。ありがとうございます。他キャラは現在のままで、二人の描写を濃くするように努めます。そういう意味では、壱番合戦さんに謝っておきます。感触表現→主人公の感情。承りました。
 同じことを申し上げるようでもしかしたら失礼かとは存じますが、「起」として完成していると思い込んで投稿していましたので、今回の件、まことにありがとうございました。

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2019年09月02日(月)03時05分 藍色折紙  -30点
藍色折紙です。
感想をと思いここに。

 読ませていただいたのですが、かなり辛口になることをご容赦ください。
無論、以下は私個人の勝手な感想になりますので、切り捨てていただくのも自由です。
あと、誤字などの細か指摘はご理解されているとして省かせてもらいます。
(誤字の指摘では面白さを向上させないと私は勝手に思っているので。それでも誤字の指摘がほしければ別ですが)

 読んで思ったことは下記3点とプラスα。

 1・物語全般における主題が不明確。
読んでいて主人公に物語の主題を追わせるような雰囲気は感じましたが、結局読み終わりの最後までこの物語は何を描きたかったのかよくわかりませんでした。
作者様がアスペルガー症候群に触れていたので、もう一度読み返してみましたが、一部触れていたりするだけで”あまり知識のない私”では、よくわからない。”知識のある人もわかって読めるのか私には判断がつかない”というのが正直なところです。


 2・主人公における命題の途中解決。
主人公が最初もっていた命題は”現実から逃げるために異世界へと旅立つ”しか読み取れず、それも物語途中で解決してしまっています。
異世界にたどり着いてからはひと悶着ありましたが、主人公の命題だとわかるようなものはなく、主人公が何をしたいのかが不明確です。私としては命題というガイドラインがどっか行っちゃったので、なにこれ?状態でした。
このあたりは主人公の身に限らず各キャラクターの心情、そしてドラマ性、いわゆる”おもしろさ”に直結する部分だと私は思います。
 
 主題、異界についてからの命題共に作者様が書いてあるとおっしゃるのであれば、それは私の理解が足りなかったか、もしくはそれを理解させる文章力がなかったかのどちらか。どうとらえるかは作者様のご自由です。
ですが、いずれにしても作中で解決が成されていない以上、私としては首をかしげるだけの感想となってしまいました。

 3・表現の不足。
 おそらくは作者様が描きたい場面が文章として不足しているように見受けられました。
三人称ではないので主人公が見た、聞いたなどの主人公の五感に頼って読み手は世界観を見ることになりますが、それらが不足していると主人公が読み手を置いてけぼりにしてしまいます。
 この辺りは私もよくやってしまうのですが、『作者はわかっている=読者はわかっている』は全て疑ってかかるほどの注意が必要だと思います。作中いくつかそれらが見受けられました。 
色、味、感触を表現後に主人公の感情を表現すると、いいのかなぁと思いました。
 
 プラスα。
 評価に関してですが、これが完成作品であれば”面白くないです”のはずでしたが、結末が別にあると言われいた以上、私は”ダメです”をつけざるを得ません。ごめんなさい。
規約がどうのこうのと言いたくないのですが、勝手ながら私はここでの投稿作品を「読み終えることができる完成作品」として捉えています。
せめて、続編があったとてこの作品はちゃんと物語として完結していてくれたら。と思ってしまいます。
 ここで言うのも変ですが、私の短編作品『バーンアップ・ロストブルー』。実は続編ものです。
ですが、オチを着けて主題である『空へと戻る物語』を終わらせました。
次にあの登場人物たちが活躍する際には、別の主題を設けて、また一作品内で完遂させます。
ドラマで言うならシーズン2、映画で言うならパート2という位置づけ。
そうしろ、とは言いませんが。この作品もここで投稿されるのであればそうであればいいなぁと思う次第です。

 長々と書き連ねました。かなりの酷評になってしまい申し訳ありません。
 先に書いたとおり、私個人の感想、指摘になります。これがすべての読み手の考えだとは思わず、また作品を作り上げて下さることを願っております。

85

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2019年08月31日(土)20時31分 壱番合戦 仁&玉城 つむぎ aW4ZwmeEKs 作者レス


 どうも、壱番合戦 仁です。共作者の玉城つむぎさんと共に、作者コメントをお送りいたします。
 元々この作品は、僕自身の人生を大幅に改変したIFストーリーでした。
 秘密のノートにひっそりと収まって終わるはずの作品がどうしても愛おしくて————、否、ヒロインのアイルがどうしても愛おしくて、中学三年生だった僕はこの作品の世界をもっと旅してみたいと願いました。
 いつしかその思いは、愛する人々が住まう世界を通して、少しでも多くの人に『アスペルガー症候群を抱えた、等身大の男の子』が活躍するキャラクター文芸として読んでいただきたい、という作者としての純粋な志へ変わっていきました。
 この小説に出てくる障碍者は、一生、自身の特性を抱えたまま生きていきます。
 結末はまだ描けていないのですが、一つ、あっと驚く結末を用意してございます。
 様々な禁忌と触れ合い、苦しむ中で、彼らは一体何を学び、何を失うのでしょうか。
 それでは、『共作版・イドラとユクサー 前編 〜白きエルフに花束を〜 体験版』を、どうぞお楽しみ下さい。


 玉城つむぎと申します。
 アシスタントとして、いままでこの作品に携わらせていただきました。
 悔いのないように感想から何かを学び取れたらな、と思っています。
 実はギャルゲ脳なので、作品キャラクターの傾向がキャラ寄りになっていると思います。「†キリュヴド†」など厨二改変等のおふざけ担当でもあります。
 御髪などの表記ミスもあとから気付いたりして、おそらく基本的な指摘が多いと予想しています。
 どうぞ、ボコボコに叩きまくってください!



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合計 4人 0点


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