夜行列車でのワンシーン
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 上野から札幌に向かう寝台列車。鉄道大好きな少年テッペイは、一人ロビーカーでくつろいでいる。
 ふと彼が女性に声をかけられた。
「す、すみません。時計を知りませんか?」
 えっ、と言って振り返ると、彼の目の前にはテッペイに近い年格好のブロンドで透き通るような白い肌の女の子がいた。
「え、時計?」
 テッペイが戸惑っていると、彼女は自分の左手首を指さす。その手ぶりから、本人は腕時計を探しているとすぐにわかった。
 ちょうどそのとき、水色の制帽と制服を着た女性アテンダントが近くにいた。テッペイはすかさずそのアテンダントに声をかける。
 「ちょっとすんません。この娘が腕時計を探しているんですが」
「お探しものですね。特徴をおしえていただけますか?」
 その質問にブロンドの娘が答える。
「茶色いベルトがついてます」
「そうなんですね。少々お待ち下さいませ」
そう言うと、アテンダントはヘッドセットのスイッチを押した。

「乗務係、応答願います」
『はい乗務係、どうぞ』
「女性のお客様が、茶色のベルトがついた腕時計をお探しです。そちらに届いていますでしょうか?」
『茶色いベルトがついた腕時計ですね。少しお待ち下さい』
 少しの間が空き、程なく乗務係が話し出す。
『ありました。届けられています』
「了解しました。ありがとうございます」

「お客様、腕時計は届けられておりました。お持ちしますので、こちらでしばらくお待ち下さいませ」
 アテンダントのその言葉で、二人の顔はぱあっと一気に明るくなった。
ブロンドの娘の腕時計が本人の手に戻されると、テッペイとその娘はありがとうございます、と礼を言った。
 彼はブロンドの娘を見送り、自分も寝台に戻って床に着いた。

 翌日の日中に列車は札幌駅に着いた。テッペイがホーム上で体を軽く伸ばしているところで、ブロンドの娘と目があった。
「あ、おはようございます」
「おはよ。腕時計、見つかって良かったね」
「おかげで助かりました」
「うん、それじゃ、気をつけてね」
「はーい、アウフヴィーダーゼーン」
 この時、彼女はドイツ語で別れの挨拶をし、足早に去っていった。
 テッペイはその意味がわからずポカンとしていた。
「ああっ、いけね、連絡先交換すんの忘れてた!」
 彼はあわてて階段を駆け下り、コンコースを見回したが、そこに彼女の姿はなかった。もう後の祭りだったのだ。
 この時になって、彼は早くに連絡先を好感しなかったことをただ後悔することしかできずにいた。

― 完 ―
ダイヤのT 

2023年11月06日(月)21時23分 公開
■この作品の著作権はダイヤのTさんにあります。無断転載は禁止です。

■作者からのメッセージ
御覧の通り、少年と外国人の女の子との偶然の出会いを、恋心的なものを絡めたつもりで書いてみました。
ご感想を頂けますとありがたいです。
よろしくお願いします。 


この作品の感想をお寄せください。

2023年12月02日(土)00時48分 鴨長明  0点
全体的に絵が想像しにくいな、と感じました。主人公の描写もなく、感情移入もしづらく、話に入れませんでした。主人公がその娘を気に入っている描写がなかったので、そこらへんを書いてくれると親切かなと思いました。若輩者ですが意見させていただきました。
11

pass
2023年11月20日(月)20時09分 ひのはら  -20点
読みましたので足跡を。素人が無責任に言ってるだけなので取捨選択をよろしくおねがいします。

短くまとめた、というよりは、中編作品以上を書く体力がなく、この文字数を書くのがいっぱいいっぱいというところでしょうか。
文章は上手くて読みやすいのですが、やはりこの文字数では内容が薄すぎるという感想になります。

主人公やヒロインのキャラクター像や、具体的地名まで出した物語の舞台については、描写の厚みを増すことによっての掘り下げがほしいです。主人公については内面描写、ヒロインは外見やしぐさや台詞によって魅力を描くことによって、主人公が彼女に惹かれた経緯の説得力を持たせてほしいです。地名については、掘り下げがほとんどなく、他の地名に置き変えても成り立ってしまいそうなので、ならば余計な情報なので出さない方が無難なのではないでしょうか。

また、ストーリーの流れとしては、起伏と葛藤が必要なところです。現状は一本道で、盛り上がりも選択肢も何もありません。
長編小説の冒頭1ページみたいな感じで、ここから何かが始まって物語が広がっていくのなら良いのですが、ここで終わってしまうと、掌編小説としては消化不良感だけが残ってしまいました。

書き始めたばかりの初心者の方だと思われますので、下手なことは悪いことではありません。いっぱい書いていけば上達するでしょうから、がんばってください。

14

pass
2023年11月13日(月)11時51分 藍川二兎 dDOg4tozl. -10点
こんにちは
作品読ませて頂きました。
時計を失くして、それを駅員さんに見つけてもらった、という出来事のみが描写されていて恋愛感情についてが描かれていないので、作者さんの伝えたいことが表現しきれていないな、という印象がありました。
もう少しテッペイ君の内面描写や、女の子の可愛い部分や好きになりそうな部分マシマシで書くと読者にも恋愛模様が想像出来るようになるかなと思います。
参考になれば幸いです。
16

pass
2023年11月12日(日)21時12分 ワタリヅキ  0点
こんばんは。小説を読ませていただきました。
本作は短い作品として作られたものであると思います。描写は少なくされていると思うのですが、全体的にもう少し詳細の記述が欲しいところです。
テッペイがいくつくらいの少年なのかがまずイメージが出来ませんでした。また、彼が上野から札幌に行く理由も、あっても良いと思いました。
心情描写についてももっと欲しいところです。正直なところ、テッペイが少女に恋心を抱く理由がわかりませんでした。いつ、心が動いたのかも。珍しい外国人の女の子に一目惚れをしたのかもしれませんが、読み終わる段階で、連絡先を交換しなくて後悔するという心情に共感が持てなかったのです。
すみません、色々と書いてしまいましたが、ワンシーンを描く小説として狙いを持って描かれている小説だと思います。
それでは、失礼いたします。
18

pass
合計 4人 -30点


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