こぼれる光
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 放課後の学校。誰もいない静かな教室。
 カーテンの隙間から注がれるかすかな光は、まるで天からの使いが来るかのように美しく見えた。その淀みのない光に私は・・・・・・連れ去ってほしかった・・・。

 あの悪夢のような出来事はあの日を境にやってきた。今まで仲良くしていた友達も皆いなくなった。
ちょうど一年前、その日はやけに肌寒い一日だった。8時45分いつもどおり朝のHRが始まった。
 「おはよう。朝からすまないが、残念な知らせがある。」
 先生の言葉はいつもと違い重々しかった。
 「このクラスで盗難があった。」
 一瞬の沈黙のあとに、クラスの雰囲気は多様な感情で溢れていた。
 「被害にあったのは、桜庭だ。修学旅行費を盗まれたそうだ。犯人はまだわかっていない。」
 それは私の親友の桜庭みなみだった。みなみとは中学からの仲だが、二人で遊びに行ったり部活をしたりまさに親友と呼べるような存在だった。そのみなみが窃盗にあった。可哀想という感情とともに、なぜ私に相談してくれなかったのかという疑問が芽生えた。
 「高校生活で修学旅行に行けるのは一生に一度だ。なのにこんな事件が起こるなんて・・・。非常に残念だ。犯人が出ないと修学旅行には行けないと思っておけ。」
 クラスは犯人探しをする人たちで溢れかえった。
 「何か少しでも情報を持っている人がいたら先生のところに来るように。」
 親友を助けるための情報は持ってはいなかったが、少しでも力になりたい。そう思った。HRが終わるといち早くみなみのところに駆け寄った。
 「ねぇ、みなみ大丈夫?」
 私は優しく声をかけた。
 「・・・・・・。」
 みなみは私の目を見たあと俯向きながら何も言わず教室から出ていった。
 「おい、天宮。ちょっと相談室まできてくれないか?話があるんだ。」
 なぜ私が呼ばれたのか一瞬で理解ができた。みなみの一番近くにいるのはいつも私だから。きっと盗難について聞かれるんだろう。そう思っていた・・・
 「はい、今行きます。」
 長い廊下を先生の少し後ろを無言でついていったが、ついに我慢ができなくなった。
 「先生、みなみの事についてですよね?私、みなみお金を盗んだ人を探したいです。」
 先生は私の目の前で急に立ち止まり、ゆっくり振り返った。
 「おい、何言ってるんだお前が盗んだんだろ?」
 私は驚きとショックで声が出なくなった。やっていないのに何も言い返すことができなかった。
 「とりあえず、ここで待っていてくれ。」
 先生の指示通り、相談室に入った。先生の発言に苛立ちを覚えたが、その気持ちをぐっと抑え、先程の先生の言葉の意図を必死に考えたが、パニックになり頭が真っ白になった。

 先生が相談室に仰々しく入ってきた。何を偉そうにしているんだと言いたかったが、その後の影響を考慮して言わないことにした。
 「天宮にいくつか質問があるんだが・・・」
 「私がなんで疑われているんですか!証拠とかあるんですか?」
 思わず先生の発言を遮ってしまった。その時の私は自分はやっていないとアピールをした。よりにもよってなぜみなみと仲の良い私を疑ったのか、先生の目は節穴なのかと言ってやりたかった。
 「単刀直入に言う、お前のことを犯人だと言い出したのは桜庭だ。」
 「・・・え?なんでですか・・?」
 先生に聞いても何もわからないのは重々承知だった。でも、あまりのショックと絶望によって反射的にその言葉が出てしまった。そしてふと思い返してみた。なぜ教室で声をかけたのにむしをされたのか。
 「あぁ、このことだったんだ・・・。」
 今までの会話や言葉が頭の中で合致した。
 「お前がやったのか?」
 否定したかった。この疑いも、先生も。でも、なぜかみなみの顔を思い浮かべたら否定することができなかった。ここで否定したらみなみのことも否定することになると思ったから。どんなに疑われていてもみなみは私の一番の友達だから。
 今に思えば、なんであのとき否定しなかったのだろうと思う。たった一人との友情のために自分の心を投げ出すなんて。でも、その選択があのときの私にとって最善の策だった。
 「わたしが・・・私が盗りました。」
 「盗ったお金はどうした?」
 「全部使いました。でも、明日持ってきます。」
 私は大きな嘘をついた。でも、周りの人は不幸にならない嘘。自分だけが不幸になる嘘。こんな嘘なら神様も許してくれるだろう。

 次の日、私は自分の貯金からお金をおろしクラスの目の前でみなみにお金を渡した。文字通りの公開処刑だった。その日からいじめを受ける生活が始まった。


 「おい、お前こっち見てくんなよ!俺の金とる気かよ」
 「あの人、友達のお金盗ったらしいよ。」
 「あいつに近寄らないほうがいいよ。人のもの盗むの好きらしいから。」
 私が登校するとき教室にいるとき、廊下を歩いているとき、帰るとき、常にどこからか罵声が聞こえる。自分で決めたことだから仕方がない。そういつも自分を騙していた。
 誰も私に近寄らない、あんなに仲の良かったみなみは早々にまた新たな友達を作り楽しそうにしていた。たまに目が合うけど、すぐに目をそらされる。
 「もうどうなってもいいや。」
 不意に出たその言葉は自分の本当の気持ちだった。
 私は、修学旅行には行かなかった。この事件の主犯が行ったところで周りは楽しめないと思ったから。でも、一つだけ心残りがあった。みなみがなぜ私を犯人に仕立て上げたのか。


 修学旅行が終わりまたいつもどおりの日常に戻っていった。私は勇気を出してみなみに声をかけた。
 「みなみ、話したいことがあるんだけど。」
 「何・・・?」
 「なんで私を犯人にしたの?」
 「それは・・・。」
 「ねぇ、なんで?私なにか悪いことした?」
 私は泣きそうになった。今までたくさん笑ってたくさん話した友達を責めている。たとえみなみが悪いとしても私には心が痛かったから。
 「ありさが悪いんだよ・・・。部活の成績も勉強もいっつも私より先に行って。私にとってあなたは邪魔なのよ。窃盗の罪を擦り付けたのは申し訳ないと思ってるけど、もう私に声かけないで!」
 私は今までにない感情に陥った。怒りでも悲しみでもない不思議な感情。もう、みなみに関わってはいけないと思った。
 それから数カ月が過ぎた、私は卒業式に参加していた。特に泣くこともなくあっさり終わった。私の高校生活は高2の頃がピークだったと誰もいなくなった教室で振り返る。


 自分に正直に生きればよかった。誰かに頼ればよかった。助けを求めればよかった。もう少し自分を大切にしていれば・・・。こんなタラレバ意味がないってわかってる。でも、少しでも少しでも言い訳をすれば楽になると思ったから。でもそんなことはなかった。どんなに努力しても辛いだけ、苦しいだけ、こんなになるなら最初から正直に生きてればよかった。

 こうして私はもう取り返すことのできない現実を受けとめて前を向いた。

 教室のカーテンの隙間から注がれるかすかな光は、まるで天からの使いが来るかのように美しく見えた。 その淀みのないかすかな光に今までの後悔を全部連れ去ってほしかった。
☆多摩ネギ小僧 

2021年07月14日(水)12時19分 公開
■この作品の著作権は☆多摩ネギ小僧さんにあります。無断転載は禁止です。

■作者からのメッセージ
はじめまして、☆多摩ネギ小僧といいます。(☆は読みません)

初小説、初投稿なのでお手柔らかにお願いいたします。

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2021年07月16日(金)00時20分 BB  +10点
拝読しました。
初小説ということですが、とても読みやすい文章でした。

主人公の想いが巧く表現されていて良かったです。

ただ、親友の証言を否定できず、犯人だと認めてしまう心理が、理解できなかったです。
まあ人というのは時として理不尽な行動を取るものです。
この部分、主人公の心理が丁寧に描かれている点が良かったです。

ところで普通、学校は犯人探しをしません。
ましてや犯人が判ったからといって晒し者になんて、絶対にしないです。
なので例えばですが、

盗難事件発生、相談室で個別に荷物検査。
主人公のカバンから修学旅行費の入った封筒が。
もちろん教師は、この程度で犯人扱いはしない。
翌日どこで見つかったかを伏せ、封筒を桜庭に返却。
結局、犯人は判らず。
しばらくして、どこから漏れたのか、封筒が主人公のカバンから見つかったとの噂が。

こういった流れが、現実的ではないでしょうか。
10

pass
2021年07月15日(木)03時39分 神原  0点
こんにちは、拝読しました。

今の時代、昔と違って修学旅行の積立金は銀行口座から引き落とされるのが普通かも。昔のお話として読みます。

読了して、昔のTVでは良くあるお話に見えます。が、読める内容ですので、評価外は入れません。評価外をつける時はまだ小説として読めないか、どう評価していいか分からない時のみなので。

あ、ルールを一つ私からも追加。

括弧「」の前は一時字下げはしません。
 「これが」×
「こう」〇

普通はお金を盗んだら、お金返しますといっても家に連絡が行くと思うのです。

窃盗の罪を擦り付けた→窃盗の罪をでっち上げた。もしくは、捏造した。の間違えだと思います。

良い点。

最後の余韻が良かったです。

以上から私は普通です。を置いていきたいかなと思います。

5

pass
2021年07月14日(水)21時30分 表参道 LynesOLS3s +10点
こんばんは、☆多摩ネギ小僧さん。
表参道です。

初感想ということなので、初めに日本語の文章規則について。。。

>その淀みのない光に私は・・・・・・連れ去ってほしかった・・・。

 ⇒この場合は・(中点)ではなく…(三点リーダー)を使います。
  「さんてん」と入力して変換すれば出るはず。
  また、三点リーダーは必ず二文字連続で使うというルールがあります。

  ルール適用後:
   その淀みのない光に私は……連れ去ってほしかった……。


> 「おはよう。朝からすまないが、残念な知らせがある。」
> 先生の言葉はいつもと違い重々しかった。

 ⇒括弧の最後に句点は不要です。
  また、括弧の前の行頭空けも不要です。

  ルール適用後:
   「おはよう。朝からすまないが、残念な知らせがある」
    先生の言葉はいつもと違い重々しかった。


> 「私がなんで疑われているんですか!証拠とかあるんですか?」

 ⇒行中の!(感嘆符)、?(疑問符)の後は一文字空けましょう。
  行末で空ける必要はないです。

  ルール適用後:
   「私がなんで疑われているんですか! 証拠とかあるんですか?」

文章規則について気づいたのは、ここまでです。
あくまで日本語のルールですので、破るという手法も存在はします。
ですが、よほどのことがなければ守ることを強く推奨します。


ここからは内容についてです。
まず、テーマに関しては良かったと思います。
冤罪からのいじめ、原因は友人の嫉妬、とシンプルですが流れは十分に作れているかなと。

指摘としては、主人公がほとんど聖人のような行動を取っているのに、その理由が不十分に感じました。
自分から冤罪を認めてお金を払うのはさすがに読者が共感しにくいと思います。
なので案としては、
 ?主人公と友人を多少なりとも対立させる。
 ?主人公がここまでやる理由を用意する。
  ※僕なら友人を盲目的に信じて依存していることを表現。。。とかかなぁ。
などを思いつきました。

文章については、上記の規則の件を除いた場合、読み辛いということはなかったと思います。
強いて言えば、一年前から始まっている点が混乱する。。。かな?

総じて、初投稿の習作としては良いと思います。
主語述語をちゃんと意識して書いているのは個人的に大事なことだと思いました。

最後に。
初感想って初めてなんですよ。。。おかしなこと書いてたら流してください。
あと、自分の初投稿を思い出して複雑な気持ちになったり。

長文失礼しました。

以上です。
執筆お疲れ様でした。

8

pass
合計 3人 20点


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