妖怪の狩人
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 ある夜のことである。

 女が月明りの中、刀を抜いた。

 刀身が月夜に煌めいた。

 女の周りには、刀を持った男たちが女を取り囲んでいた。

「あの女を殺せ!」

「逃がすな!!」

 男たちの怒声を前に、しかし女は無言を貫いた。

 その女は美しく、妖しい雰囲気を出していた。

「……」

 男たちの中の一人が、女の膝に向かって、刀を下段に斬った。

 女はそれを、飛んで躱した。

 着地すると同時に、その男に向かって真っすぐな突きを繰り出した。

 男は胴体を貫かれ、絶命した。

「囲め!!」

 他の男たちも、次から次へと女に襲い掛かるが、女は紙一重でそれらの攻撃を避ける。

 そして、返す刀で男たちを斬り殺していく。

 男たちはほとんど死んだ。

 残すは、一人だ。

 その一人の男は、周りにいた男たちよりも、格上の剣術家だった。

「我は虚空丸! お主の名は?」

「……私に勝ったら教えてやる」

 初めて口を開いた女の声は、女特有の甘さを残していたが、半分は殺意に満ちていた。

 思わず虚空丸という男の顔も引き攣った。

 しかし男はなおも吠える。

「死人に口なしではないか! 勝ったところでお主は何も喋れぬ」

「黙れ……!」

 女は無表情のまま、男の胴体を切り裂いた。

「ぐはっ」

 男が吐血して、地面に這いつくばる。

 それを見て、女は驚いた。

 男の傷跡が塞がってきているのである。

「どういう体の構造だ? 虚空丸とやら……」

 しかし冷めた眼で男を見る女だった。

「ふふふ……我は不死身だ。夜には死なん」

「成程、なんらかの能力者か……ならば夜が終わった頃に殺してやる」

 女は刀身を鞘に納めた。

「私の名は楓だ……そしてこの刀の名は鬼丸」

「ほう……楓か。良い名前だな。殺すのは惜しい」

 楓は男を睨んだ。

「勝てると思っているのか?」 

「ま、俺の腕前では無理だろう。だが、先ほど言った通り、俺は夜には死なない」

「つまり、勝ちも負けもないと?」

「そうだ」

 男の発言に、楓は急に顔を上げて笑った。

「ははっ。笑わすな。剣筋が鈍る」

「失敬……!」

 虚空丸は不敵に笑った。

 そして朝の時間が近づいてきた。

「楓とやら、また会おうと言いたいところだが、次回からは会わないようにしよう」

「ほう。なぜそう思う」

「朝は苦手だ……御免」

 虚空丸の右手から、閃光が炸裂した。

 どうやら、何か持っていたらしい。

 楓は目くらましにあい、虚空丸を逃がしてしまった。

「……まぁ、いい。奴が妖怪の類ならともかく」

 ただの人間ならば、用はない。

 この女、楓は妖怪の狩人なのだった。

 その時、背後に気配がした。

「何奴?」

 楓が振り向くと、そこには妖怪の悪鬼がいた。

「キシャア!」

 悪鬼は楓に向かって、突進してきた。

 楓は後ろに飛びながら、刀を抜く。

 この刀、鬼丸は妖怪退治用の刀だ。

 無論、人も斬れるが、妖怪に対して真価を発揮する刀だ。

 悪鬼は楓に縦と横に斬られ、四分割された。

 その後、楓は悪鬼の首をちょん切る。

「こんな朝から妖怪か……!」

 楓は顔をしかめると、血まみれの刀を拭いた。




 太陽が昇り始めた。




倉本たつき 

2021年05月04日(火)12時51分 公開
■この作品の著作権は倉本たつきさんにあります。無断転載は禁止です。

■作者からのメッセージ
いろんな作品から影響を受けて書きました。

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2021年05月10日(月)10時37分 倉本たつき  作者レス
BBさん、こんにちは

>いずれにせよ、虚空丸が死んでないということは、彼と楓の新しい物語が始まりそうな予感がしますね。

そうですね。長編のプロローグにもなるように書きました。

再度の感想、ありがとうございます。

励みになります。

では


pass
2021年05月10日(月)03時38分 BB  +10点
再訪です。

虚空丸と悪鬼は別人だったんですね。
そうすると、悪鬼とのくだりが全体のストーリーと繋がりがなく、唐突感があります。

悪鬼が登場するのを夜明け前にして

「虚空丸とやら、其方との対決は後回しだ。そこで待っておれ」

などと言って悪鬼を退治している間に、虚空丸が姿をくらます。
なんて展開はどうでしょうか。

いずれにせよ、虚空丸が死んでないということは、彼と楓の新しい物語が始まりそうな予感がしますね。
27

pass
2021年05月07日(金)09時52分 倉本たつき  作者レス
BBさん、こんにちは

>虚空丸=悪鬼と思ってたんですが、違うのでしょうか。
人の姿をしたものが夜になると魔物になる、という設定はよくありますが、逆は聞いたことがないので、新鮮に感じました。

また「昼間は悪鬼で夜は不死身の剣士」という設定だけでは、ギャップがなく意味がないように思えます。
ですが、妖怪の狩人である楓と組み合わせることによって、色んな可能性がでてくると感じました。

虚空丸と悪鬼は別です。人間と妖怪です。

>序盤、なぜ楓が人間と斬り合うのかが、不明です。
なにか理由付けがあった方がいいでしょう。例えば

「女、その刀を置いていけ。さすれば手荒な真似はせぬ」
「うぬらこそ、命が惜しいのなら、この場を立ち去るがよい」

みたいな会話を最初に入れるのはどうでしょうか。
楓を意味なく人を斬る人物像にしない方が良いと思うので。

そうですね。これは自分の脳内では、楓と悪人たちとのトラブルみたいに思っていたのですが、ちゃんと文章化していなかったのは失敗かなと思います。

感想ありがとうございました。

では


pass
2021年05月07日(金)00時21分 BB  +10点
拝読しました。

虚空丸=悪鬼と思ってたんですが、違うのでしょうか。
人の姿をしたものが夜になると魔物になる、という設定はよくありますが、逆は聞いたことがないので、新鮮に感じました。

また「昼間は悪鬼で夜は不死身の剣士」という設定だけでは、ギャップがなく意味がないように思えます。
ですが、妖怪の狩人である楓と組み合わせることによって、色んな可能性がでてくると感じました。

序盤、なぜ楓が人間と斬り合うのかが、不明です。
なにか理由付けがあった方がいいでしょう。例えば

「女、その刀を置いていけ。さすれば手荒な真似はせぬ」
「うぬらこそ、命が惜しいのなら、この場を立ち去るがよい」

みたいな会話を最初に入れるのはどうでしょうか。
楓を意味なく人を斬る人物像にしない方が良いと思うので。
27

pass
2021年05月05日(水)08時15分 倉本たつき  作者レス
ミチル、こんにちは

作者レスが遅れて申し訳ありません。

>美しくも鋭い刀身が目に浮かびます。殺伐とした雰囲気もありありと感じ取る事ができました。
 冒頭の三行は素晴らしかったと思います。
 夜には死なない能力を持つ虚空丸は本当にただの人間だったのか、楓の今後の妖怪退治はどうなるのか。
 物語は膨らみそうです。

そうですね。自分の場合、物語が膨らむ直前で小説を書き終わる傾向があるように思います。
長編を書くんだったら膨らませた方がいいんでしょうね。

>いろいろ申し上げましたが、読み応えがありました。
 これからも執筆を頑張ってください!

はい、頑張ります!

では


pass
2021年05月04日(火)23時01分 ミチル  +10点
倉本たつきさん
 こんばんは、ミチルと申します。御作を読了いたしました。

 以下、ネタバレを含みます。未読の方はご注意ください。

 美しくも鋭い刀身が目に浮かびます。殺伐とした雰囲気もありありと感じ取る事ができました。
 冒頭の三行は素晴らしかったと思います。
 夜には死なない能力を持つ虚空丸は本当にただの人間だったのか、楓の今後の妖怪退治はどうなるのか。
 物語は膨らみそうです。

 文章については、視覚情報は申し分なく描写されていたと思います。
 個人的には触覚や嗅覚から得られる情報(身を切るような夜風の冷たさ、むせかえるような血の臭い等)もあると、より臨場感が増したかなと思います。好みの問題ですが。

 いろいろ申し上げましたが、読み応えがありました。
 これからも執筆を頑張ってください!

※妖怪退治なのに、鬼退治と記載していたのを修正しました。大変失礼しました。
29

pass
2021年05月04日(火)17時36分 倉本たつき  作者レス
神原さん、こんにちは

感想ありがとうございます。


確かに〜たで終わる文章が多かったと思います。

推敲の時にもう少し意識しようと思います。

>これからの人だと思うのでがんばってください。

はい、頑張ります!

では



pass
2021年05月04日(火)17時27分 神原 
こんにちは、拝読しました。


まず一文が短いのは文章を正しく書くために必要な物ですが、今作は短すぎる為、同じ単語が使われると言う弊害が起きている様に見受けられます。


≫女が月明りの中、刀を抜いた。

 刀身が月夜に煌めいた。≪

月明りの中、女が抜いた刀身がほのかに(←就職後はなんでもよい。ないとちょっと寂しい)煌めく。

刀身と刀、月明りと月夜この重複を避ける為に上の様に一文にするなどの工夫がほしいです。これは重複を避ける為なので、重複していない文章なら二文でもいいのかな。




次に「〜た。」で終わる文章が多いです。書き始めの方に多いのですが、色々な語尾で書く癖をつけた方がいいです。


最初
取り囲んでいた。と言う文があるのですが、その何行目後に「囲め」とあるので、囲んでいたのでは? と言う疑問が。



ちょっとまだまだ評価の段階には届いていないと思いますので、評価外を入れたいと思います。

これからの人だと思うのでがんばってください。



31

pass
2021年05月04日(火)15時41分 倉本たつき  作者レス
金木犀さん、こんにちは

>読ませていただきました。
なんか鬼滅の刃最終列車編みたいな話ですね(笑)

僕は鬼滅の刃はほとんど知りませんが、るろうに剣心みたいな話ではあったと思います。

>タイトルがまず、素晴らしいです。
妖怪退治を読みたい人を引き寄せる力がありました。

そうですね。最初は主人子の名前が沙也加で、刀の名前が鬼丸だったので、沙也加と鬼丸というタイトルでした。お褒めに預かり恐縮です。

>また冒頭、
 ある夜のことである。

 女が月明りの中、刀を抜いた。

 刀身が月夜に煌めいた。

 →この描写スッと思いに浮かびました。映像的に迫力があり、女が抜いた刀の美しさなどが際立つ、良い文章だったと思います。

そうですね。この冒頭の文章から考えて書いていました。

>あとウェブ小説を意識した文体なのも良かったです。

ありがとうございます。これについては、意識していたというか無意識ですね。
まぁ、そういうことを言いたいのではないかもしれませんが。

>展開も、最初から戦いのシーンから始まりクライマックスが終わったと思いきや本命の鬼が現れるという演出は意外性がありました。

これは楓が一人の男を倒すだけで終わると、早すぎるかなと思ってしたことです。

>細かく書けば指摘もできますが、まずは伸び伸び書いたほうが作者のためになりそうだなぁと思いこのへんで失礼させていただきますね。

良く分かっていますね……指摘より感想が欲しい心理です。

>執筆お疲れ様でした。

ありがとうございました。

感想、励みになります。

では



pass
2021年05月04日(火)15時26分 金木犀 gGaqjBJ1LM +10点
読ませていただきました。
なんか鬼滅の刃最終列車編みたいな話ですね(笑)

妖怪と、それを倒す者の話はいつの時代もあるものでまさに普遍的な魅力がありますよね。

タイトルがまず、素晴らしいです。
妖怪退治を読みたい人を引き寄せる力がありました。

また冒頭、
 ある夜のことである。

 女が月明りの中、刀を抜いた。

 刀身が月夜に煌めいた。

→この描写スッと思いに浮かびました。映像的に迫力があり、女が抜いた刀の美しさなどが際立つ、良い文章だったと思います。

あとウェブ小説を意識した文体なのも良かったです。

展開も、最初から戦いのシーンから始まりクライマックスが終わったと思いきや本命の鬼が現れるという演出は意外性がありました。

細かく書けば指摘もできますが、まずは伸び伸び書いたほうが作者のためになりそうだなぁと思いこのへんで失礼させていただきますね。

執筆お疲れ様でした。
12

pass
合計 4人 30点


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