最強のコミュ障怪盗とポンコツ毒舌人形
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 プロローグ 最強怪盗の欠点

「怪盗だ! 怪盗が出たぞ!」
 午後八時。町が眠るには早すぎる時間であるが、それでも町は異常な熱気に包まれていた。
 ここはさる富豪の屋敷。『怪盗』である僕は、盗んだ宝石を手に屋敷の屋上に立っている。
 僕を見あげる人々。ある人は不安気に、ある人は期待に胸を膨らましているようにも見えた。
「怪盗様! ステキです! 結婚してくださいぃぃ!」
 ……中には僕に恋心のようなものを抱いている人もいるようだ。
 なんだろう。これはもう怪盗というより、アイドルと言った方がいいんじゃなかろうか?
「ふふふ、モテモテですね。よかったですね! マスター」
 僕の懐にいる小さな『人形』が話しかけてきた。そう、人形である。
 手のひらサイズで少女姿のその人形は、とにかく美しい。その綺麗な銀髪と琥珀色の瞳を見るとまさしく妖精と言っても過言ではないと思える。思わず頭を撫でたくなる愛らしさだ。
 彼女の名前はフォト。僕のパートナーだ。見た目は人形だが、かなり感情豊かである。
 言葉まで話す人形ということで最初は驚いたが、今はもう慣れた。人間、慣れが大事だ。
「……はあ」
「おや、マスター。なぜため息を? こんなにもモテモテで、嬉しくはないのですか?」
「あのね、フォト。モテる為に怪盗をするなんて、動機が不純だよ。怪盗をやるなら、もっと真面目にやるべきだと思うんだ。それが本物の怪盗さ」
 我ながら良い事を言った。まさに怪盗の鏡のような台詞だ。
「マスター。あなた…………アホですか?」
 アホ!? こいつ、ご主人様をアホと言いやがった!
「人の物を盗むという時点ですでに悪行でしょう。それを真面目にやるとか、そんな中途半端な考え方は、逆にダサいです」
 ああ、そうだ。この人形、実はとんでもない毒舌だったんだ。見た目は美しく、声も可愛いのだが、言動は全く可愛くない。というか、五月蠅い。
「おのれ、怪盗め! 観念しろ!」
 そんな話をしていたら、警察達が屋根を上って来た。僕を追ってきたらしい。
 彼らもご苦労な事だ。敵ながらもその仕事熱心な態度には敬意を払うべきだろう。
「ほら、あなたが余計な話をしているから、警察に追い付かれてしまったではないですか」
「話しかけてきたのは君だろ」
「ま、問題はありませんがね。始末してしまえばいいだけです。ふふふ」
 そして何故だか敵を見て目を輝かすフォト。人形のくせにずいぶん好戦的な子である。
「私もサポートしますよ。敵の数は……『十人』です!」
「……………………えっと、敵の数、『五人』なんだけど」
「あ、本当だ。誤認してしまいました。五人なだけに……てへ♪」
 今のはひょっとして面白く言ったつもりなのだろうか? 舌を出して可愛らしさをアピールしているが、僕から見ればただあざといだけである。
 そう、実は我がパートナー、絶望的に『ポンコツ』でもあった。数もまともに数えられない。
 フォトは自身を有能だといつも絶賛しているのだが、その判断がすでに間違っていることに本人は気づいていない。いや、気付いていて見ないふりをしているに違いない!
 毒舌でポンコツ。この子は長所をいったい何処へ忘れてきてしまったのだ。
「どっちにしても、マスターならこんな奴らは楽勝ですよね。やっちゃってください」
「はいはい。まったく、簡単に言うよ」
 僕が手をかざすと、空間から刃物が出現した。殺傷力があるわけではなく、攻撃した相手を気絶させるスタンナイフだ。怪盗の基本武器でもある。
「かかれ!」
 襲い来る警察。だが彼らは僕に触れられることなく、次々と気絶させられていく。
「す、凄い。なんて強さだ!」
 全ての警察が倒れるのに十秒と掛からなかった。その光景を見た町人達からまたも歓声。
 話によると、僕はとても優れた怪盗らしい。それどころか『最強の怪盗』なんだとか。
 確かにそうだ。実際に戦いとなれば、僕はどんな相手にも負ける気はない。どのような強敵が相手でも、どれだけ厳重な警備があっても、最も効率的な『答え』が見えるのだ。
 うん。素晴らしい。この時点では完璧だ。今の僕は理想の怪盗だと言えるだろう。
 だが、僕にはその長所を全て塗りつぶすほどの重大な『欠点』があった。
 それはもう、怪盗にあるまじきどうしようもない弱点である。許されざる汚点だ。
「さあ、マスター。それでは『決め台詞』を言ってください」
「決め台詞……」
 この町で怪盗をやるには様々な『ルール』を守らなければならない。その一つが『最後に姿を見せて台詞を言う』だ。これは『決め台詞』と呼ばれている。
 わざわざ僕が盗んだ宝石を手に警察の前に現れた理由もこれである。このルールは絶対に厳守しなければならない。破れば怪盗の資格は剥奪だ。
 別に難しい事じゃない。ただ、かっこいい勝利の台詞を言えばいいだけだ。
 怪盗なら出来て当たり前……というか、一般人ですら何ら苦労をする要素は無い。
 よし、やろう。ここでかっこいい台詞を決めて、僕は町一番の人気怪盗になってやる!
 人々の感動の眼差しを十分に受けた後、僕は満を持して勝利の決め台詞を発した。

「ほ、ほ、本日は、お、お日柄もよく、ご、ご、ご来場された皆様におけましては……」

 ……………………静寂。
 さっきまで活気づいていた町の熱気は一瞬で消え去り、町人たちの高揚も警察の怒りも一気に萎んでいく。そして、彼らの目が揃って僕にこう語りかけてきた。
 こいつ、なに言ってんの?
「はぁ〜。ダメだこりゃ」
 隣ではフォトが額に手を当てて、深いため息をついていた。
「やはりあなたは、最強の『コミュ障』怪盗なのですね」
 ああ、そうだ、そうなんだ。これが僕の欠点なんだ。呪いと言ってもいい悪夢だ。
 僕は重度の『コミュ障』だった。怪盗なのにコミュ障だ。
 いつも何かを話そうとしたらこうなる。こんな大勢の人間の前で決め台詞なんて言えるわけがなかった。もうさっきの台詞すら褒めて欲しいレベルである。
 完璧で最強の怪盗。その正体はコミュ障だったなんてお笑いである。
 そもそもなぜコミュ障の僕が怪盗なんてものをやる羽目になったのか?
 この大失敗によるショックで、僕の記憶は過去へと飛んでしまった。

 第一話 怪盗はエンターテイメント

「ねえねえ、また怪盗が出たんだって」
 聞き慣れない単語が聞こえたので、僕こと梔子真人(くちなしまさと)は耳を傾ける。
 今は放課後。まだ帰る気にはなれなかった僕は、教室でふて寝をしていたところだ。
「公式に認められた怪盗がいるなんて、この町って凄いよね」
 女子達は流行の怪盗について話をしていた。この教室での恒例行事である。
 この町の名前は『怪盗指定都市』。ここはとてつもなく科学が発展している町だ。
 そしてこの町では、日常的に様々な『怪盗』が出現する。
 それは政府が『公式』として認めている怪盗なのだ。ゆえに怪盗行為が犯罪とならない。
 理由は怪盗が『エンターテイメント』として機能しているからだ。怪盗のおかげで町はとてつもなく発展した。、むしろ怪盗が町の名物だと思ってもいい。
 怪盗はそれぞれが超人的な力を得ており、人々はその能力に釘付けである。
 すでに百人以上の怪盗が確認されており、彼らがこの町を盛り上げていた。
「昨日の『ライブ』、楽しかったよね」
 ライブと言えば、普通はコンサートを連想するだろう。しかし、この町でのライブはコンサートの事ではない。この町ならではの大きな意味を成す単語である。
「うんうん。怪盗アメジスト様、すごくかっこよかった! 最高だったよ!」
 この町でのライブは、『怪盗を生で見ることができる場』のことを言う。
 怪盗が実際に宝を盗む姿を、人々がお金を払って見学することができるのだ。
 ライブには何千人という人が集まる。そしてそれぞれが『入場料』を払って怪盗を応援する。
 中には『指定席』という、間近で怪盗を拝むことが可能な高額チケットなんてものも存在するらしい。そう考えたら、本当にアイドルのコンサートと変わりない。
 怪盗によっては応援に来た観客の手を握るなど、サービスを行う人もいるとか……
 今話題になっているのは怪盗アメジスト。とてつもない美貌と人間離れした強さを持ち、町で一番人気の女怪盗だ。
 様々な怪盗がいるからこそ、その人気にも大きく差があり、怪盗たちはそれを競い合っている。月間怪盗人気ランキングなんてものもあるくらいだ。
「ああ、怪盗さん……もっとお近づきになりたいよ〜」
 乙女チックな目をして天井を見上げている一人の美少女が目についた。彼女の名前は姫咲莉愛(ひめさきりあ)さん。このクラスでトップの成績を持ち、アイドル的存在でもある。
 彼女は学園で一番の美貌を誇っており、さらに抜群のコミュ力も搭載している。それでいて、オシャレや流行にも詳しく、性格もめちゃくちゃ優しい。
 そんな姫咲さんが人気者なのは当然であり、まるで全ての人間から慕われるために生まれて来たかのような輝きを放っていた。言うまでもなく男子にもモテる。
 既に学園の全男子から告白を受けているとの噂だ。全ての男が彼女の魅力の虜になってしまったのかもしれない。かくいう、僕もその一人である。
 おまけに大企業の社長令嬢というオプションまでついていた。まさしく完璧美少女だ。
 だが、そこまでモテる姫咲さんに彼氏はいない。それには大きな理由があった。
『ごめんなさい。私、怪盗さんじゃないと無理なの』
 玉砕した男子諸君が揃って耳にしたのがその言葉であった。
 そう、彼女は筋金入りの怪盗マニアだったのだ。それはもう、常識を逸脱するレベルだ。
 あまりにも怪盗を愛してしまった結果、怪盗以外は受け付けなくなってしまったらしい。
 完璧な美少女のたった一つの故障。いや、完璧だからこそ、神様からのつじつま合わせがその好みだったのかもしれない。
「あのさ、姫。そろそろ怪盗マニアは卒業した方がいいわよ」
「うう、ダメなんだ。私、どうしても諦めきれないんだ。変な子だって思われてもかまわない。それでも、自分の気持ちは誤魔化せないんだ」
「……あんたに告白した男子にはちょっと同情するわ」
 友達からも注意を受けているようだが、姫咲さんはその好みを改めるつもりは無いようだ。そろそろ学園に広まっているらしく、告白の話も最近は聞かない。
 逆に言うならば、もし怪盗になることができれば、あの姫咲さんのハートですら射止めることが可能という事になる。いや、きっと彼女だけでなく全ての女性を魅了できることだろう。
 そんな夢のような怪盗だが、どうやって怪盗になれるのかは謎である。
 怪盗の養成学校なんてものもない。怪盗になる方法は誰にも分からないのだ。
 風の噂では、ある日いきなり妖精が現れて、自分を怪盗にしてくれるなどという話もあるが、これは嘘くさい。間違いなくガセだろう。
 まあ、どちらにせよ僕には関係ない話だ。たとえ自分が憧れの怪盗になれたところで『コミュ障』である僕は幸せにはなれない。それは変わらぬ事実であろう。
 しかも、今の僕は異常なほど存在感が薄い。昔はそうでもなかったのだが、コミュ障が進むにつれて、どんどん存在感も薄れていった。今では教師でさえ僕の事を忘れることがある。
 コミュ障であり、存在感も無い僕。こんな僕はそのまま誰にも認知されず、永遠にぼっち生活をするのがお似合いなのだ。
「ねえねえ、梔子君」
 そんな僕に誰かが話しかけてきた。僕の存在を認知できる人がクラスにいたとは驚きだ。
 声の主を見ると、それはちょうど僕が脳内で話題にしていた姫咲さんその人であった。
「今度みんなと一緒にアメジスト様のライブに行くんだけど、梔子君も一緒にどうかな?」
 姫咲さん、なんて優しい子なんだ。彼女はとても気が利くし、目線が広い。僕みたいな存在にもきちんと気付いて、気にかけてくれたのだろう。
 ここで彼女の手を取れば、僕はついにぼっちから卒業できる。だが……
「……あ……う」
 ダ、ダメだ! 言葉が出ない! 僕の中に巣くう呪いがそれを許さない! コミュ障の僕は手を取ることは出来ても、言葉を交わすことは出来ないんだ!
「ほえ? 梔子君、どうしたの?」
「ご、ごめん!」
 耐えきれず、教室を飛び出してしまった。そのまま当てもなく走り出す。
 どれだけ走ったのか、僕は気付いたら家の前にいた。帰巣本能というやつかもしれない。
 移動する理由も無いのでそのまま自宅の扉を開けて、ベッドへと飛び込んだ。
「…………はあ」
 なんてことだ。あの姫咲さんを無視する形になってしまった。本当に最低で最悪だよ。
 『なんでそんな簡単な事ができないの?』とか『普通に返事をすればいいだけなのに』と誰もが思うだろう。できる人間から見れば、イライラするのかもしれない。
 でも『なんで』なんてのはこっちが聞きたい。そもそも『普通』ってなんだよ! 説明が不可能である普通という言葉は、この世で最も恐ろしい概念だと僕は思う。
「…………ゲームでもやろ」
 これ以上は考えても死にたくなるだけだ。こういう時はゲームでもして気分転換がいい。
 僕は特に秀でた才能も無い人間だが唯一ゲームの腕前だけは人並み以上の能力を持っていた。
 人と関わる機会がないので、その手の一人遊びは妙にうまくなったらしい。
 ここは怪盗指定都市なので、ゲームでも怪盗に因んだものが多い。僕がやっているゲームもその例に漏れず、『怪盗になりきるゲーム』である。
 このゲームは町一番の人気作で、コミュニケーションツールとしても話題になっている。
 たくさんの怪盗プレイヤーと仲良くなって、協力してクリアーするのがウリのゲームだ。
 ヘッドギアをセット。科学が発展したこの町はゲームも進化しており、少し前ならラノベなどでしか見られない仮想世界のダイブが可能となっていたのだ。
 となると、ここで想像するのは一つ。僕は現実世界では空気のような存在だが、ひとたびゲーム世界に飛び込めば、最強の自分になれる。つまり、新しい自分になれるんだ。
 そんな僕は周り(特に美少女)からもてはやされ、ゲーム世界では人気者となれる。ラノベの世界でしか見られなかった夢のような出来事がついに現実となるんだ!
 そんな期待を胸に抱いて、このゲームを始めたわけなのだが……
「………………今日も一人で頑張るか」
 現実は残酷であった。結論を言うと、悲しい事に僕はこの怪盗ゲームでさえ誰とも仲良くなれなかった。僕が夢見たラノベのような世界は何処にも存在しなかったんだ。
 そもそもコミュ障の僕に仲間を集めることなど不可能であった。特にこのゲームはリアリティが高い。つまり、現実でコミュ障なら、ゲーム内でもコミュ障となってしまうわけだ。
 よく人と話すのは苦手だが、ゲームのチャットやSNSだと饒舌になるタイプがいる。だが、僕ほどのコミュ障になれば、SNSとかでもどう呟いたらいいのか分からんのだ。普通に思った事を呟けばいいよ、思われるのだろうが、やはりその『普通』が僕には分からない。
 つまりゲーム内チャットでも常に無言。そんな僕に夢のような出会いは訪れなかった。
 結局、僕は一人で悶々と頑張る日々である。そして今日、僕は最終ステージ立っていた。
 今から最難関ステージに一人で挑まなければならない。それは無謀とも言える挑戦であった。
 このゲームは十人で役割分担をして攻略することを想定とされている難易度だが、僕には仲間がいないので、それらを全て一人でこなす必要があったのだ。
 それはもう、途方もない労力とテクニックが必要だったが、僕はそれでもこのゲームを続けていた。よく分からない意地が働いていたようだ。
 それにゲームに関しては難しいほど燃えてしまうタイプだ。攻略するまでは終われない。
「よし! クリアーだ!」
 そして激戦の末、僕はついに最終ステージのお宝を奪うことに成功。とうとうやり切った。
 疲れた。まさに死闘であった。十人で攻略するのを一人でやるというのは、難易度も十倍という計算になる。こんな縛りプレイで達成してしまった人間は世界でも僕くらいだろう。
 とてつもない達成感。やはりゲームは最高だ。コミュ障で辛い現実があっても、この喜びがあれば僕は何とか生きていける。
「おめでとうございます! ゲームクリアーですね!」
「…………………………へ?」
 そんな時、どこからか可愛い女の子の声が聞こえてきた。ゲーム内の音声だろうか。
「そして、あなたは選ばれたのです! やったね!」
 いや、違う。ゲームからは聞こえない。別の場所から聞こえてくる。……どこだ?
「おっと。気付いていませんか? あなたの足元ですよ」
「……足元?」
 よく目を凝らして足元を見てみると、そこには少女の姿をした小さくて美しい人形が、愛らしい笑みでこちらを見上げて笑っていた。
 その人形は手のひらサイズの大きさで、琥珀色の瞳は宝石のように綺麗だ。幻想的な服装に身を包むその姿は、妖精のようにも見えた。
「に、人形……人形が喋っている」
「その通り! ふふふ、驚きましたか?」
「これはまさか……呪いの人形か!?」
「ちげーよ! 誰が呪いの人形じゃい!」
 プンプンと頬を膨らましている人形。美しい見た目の割に思ったよりコミカルな仕草である。
 確かに呪いの人形というタイプではなさそうだが……
「もう一度言いましょう! あなたは選ばれたのです!」
 両手を広げて『選ばれた』と言ってくる人形。そうか、分かった。つまりこれは……
「詐欺だね。悪いけど、僕はその手には引っかからない。他を当たってくれ」
「詐欺じゃねーよ! せっかく『怪盗』に選ばれたというのに、その反応はなんですか!」
「怪盗?」
 ついさっきまで女子達とその話をしていたところだ。その時に憧れの姫咲さんから逃げてしまった事を思い出して、少し胸が痛んだ。
「怪盗って……もしかして、公式で認められているあの怪盗のこと?」
「はい! 正解です! 実はあなたをスカウトしに来たのです」
 なんということだ。本当に妖精みたいなのが勧誘してきた。噂は本当だったのか!
「どんなにダメ人間で女の子にモテないゴミクズのあなたでも、怪盗になれば人生は一発逆転です! さあ、あなたも怪盗になりましょう!」
「誰がダメ人間で女の子にモテないゴミクズだ!」
「あ、失敬。ついいつものキャッチフレーズを……テヘ♪」
 よく見ると、感情豊かでよく喋る人形である。でも、めちゃくちゃ口が悪い。
 妖精というより、悪魔と言った方がいいんじゃないだろうか。さっきの宣伝文句も完全に詐欺師のそれで、怪しい事この上ない。あとそのキャッチフレーズはやめた方がいいと思う。
「それはともかく、怪盗になってみませんか? きっとあなたの為になりますよ!」
「断る」
 というわけで即決。僕はこの人形の勧誘を切り捨てた。
「は、はあ!? なぜですか? みんなが憧れる怪盗ですよ?」
 人形は世にも信じられないような目で僕を見ているが、それをこっちも同じである。あまりにも怪しい。簡単に信じて痛い目を見るのは間違いないだろう。
「あなたには怪盗の才能があるのですよ? もったいないとは思わんのですか!」
 なおも必死に食らいついてくる人形。確かに雰囲気だけでは嘘を言っている気配は無い。
 だが、怪盗の才能があると言われても複雑な気分である。盗む才能があるとか、そういう事なのだろうか? 犯罪の才があったところで全く自慢にならない。
 でも『盗む才能』……か。となると、ひょっとしたらとんでもないものを盗んでしまえる可能性もあるのでは? 例えば……女の子の心とか!
「あっ、少しにやけましたね? やっぱり、怪盗になりたいのでしょう?」
 しまった! つい顔に出てしまった。自分の中の憧れの心は消しきれない!
「僕に怪盗の才能があるって話は本当なのか? なにかの間違いじゃないのか」
「いえ、きちんと理由があります。あなたはこの怪盗ゲームをたった一人でクリアーしました。それが才能ある証なのです! これは信頼してくれて構いません。自信を持ってください!」
「ちょっと待って。あんなゲームで怪盗の才能が分かるの?」
「もちろん! あのゲームは怪盗の才能を発見するために政府が開発した特殊ツールなのです。そうしてこの怪盗指定都市では、才能のある人物を怪盗に勧誘していたのです」
 とんでもない事を聞いてしまった。あのゲームにそこまで深い意味があったとは……
「そういえば自己紹介がまだでしたね。私の名前はフォト。怪盗をサポートする小型のロボットです。我々のような存在は『サポーター』と呼ばれています」
 この子、ロボットだったのか。この怪盗指定都市の科学はとても発展しているが、それでもこんな現実離れした存在がいたとは驚きだ。ロボというより小型アンドロイドだな。
「言っておきますが、あなたの才能は並ではありません。あなたは『最強の怪盗』になれる素質があるのです。怪盗になるために生まれてきたと言っても過言ではありません」
「ぼ、僕が……最強の怪盗」
 確かにあのゲームを一人でクリアーできるのは、人類でも僕くらいだ。それが怪盗の才能に繋がっているというのなら、この人形の話はまんざらでたらめでもない。
「ええ。僭越ながら、私もあなたを補佐しましょう。だから、ご安心ください」
 そう言って人形は笑顔でウインク。口は悪いが、見た目は本当に可愛い子である。
 人形と戯れる趣味はないが、これほど可愛い子と怪盗をやることができれば、それは実に楽しい怪盗ライフとなるだろう。まさに夢のような話ではある。
 だが、ダメだ。ここで甘い誘惑に乗ってしまうと、きっと後悔することになる。
 自分の弱点をもう一度よく思い出すんだ。そうすれば近い将来、このフォトという人形が僕に対して失望している姿が容易に想像できる。
「ダメだ。それでも、僕には怪盗なんて無理なんだ」
「まだ言いますか。いったい何を渋る必要があるのです? もしやあなたはアホなのですか?」
 アホって……本当に口の悪い人形だ。そんなので勧誘が務まるのか?
 いいだろう。それなら、今ここで失望させてやる。早いか遅いかの違いだ。
 僕がどうしようもないダメ人間だという事を思い知れ! そして失望せよ!
「僕は…………障なんだ」
「は? なんですか? よく聞こえません。もっとはっきり言ってください」
「僕は…………コミュ障なんだ! だから、僕には怪盗なんて無理だ!」
 言われた通りはっきりと言ってやった。怪盗として……いや、人間としてあるまじき欠点をぶちまけてやった。さあ、美しき人形よ。こんな僕を見て、存分に軽蔑するがいい。
「…………」
 そう思っていたのだが、フォトは何を言われているのか分からないようで、首を傾げていた。
「あの、何で無反応なの? 話、聞いてる?」
「いや……っていうか、嘘ですよね。そんなので逃げられると思ったのですか?」
 軽蔑はされたが、思ったのと違う。…………嘘?
「嘘じゃないよ。なんで信じてくれないんだよ」
「だって、あなた今、ものすごく喋っているじゃないですか」
「…………え?」
 言われて僕も自分の首を傾げる。二人揃って同じポーズで、ちょっとシュールな光景だ。
 確かにそうだ。今の僕、めちゃくちゃ喋っているじゃないか。
 でも、なんでだ? どうして、今の僕はこんなにも喋れる?
「そうか! 相手が呪いの人形だからだ! 緊張する要素も無いし、別に気を遣ったりする必要が無いから、普通に会話ができるんだ!」
「おお! なるほど! って、誰が呪いの人形か!」
 再び手足をジタバタさせながら怒るフォト。うん、でもやっぱり緊張はしない。
 人間が相手ならどうしても緊張してしまうが、こんな非現実な気配が漂う人形だったら、緊張はしないらしい。ましてや毒舌であるフォトに気を遣う必要は微塵もない。
「ま、理由は分かりました。要するに私が人間ではなく、ロボットなので、普通に会話が可能という事ですね。もっとも、私が可愛すぎるというのも理由かもしれませんがね」
「後半はともかく、前半についてはそうみたいだ」
 つまり、この人形が相手ならば、僕はコミュ障ではなくなる?
「ならば問題は無しですな。さあ、怪盗になりましょう!」
「待て待て。君が相手なら大丈夫だけど、僕は他の人に対しては本当にやばいレベルのコミュ障なんだよ。常人がドン引きするくらい全く誰とも会話ができないんだよ!」
 この町の怪盗はアイドルみたいな存在だ。それがコミュ障だなんて大問題だ。そうじゃなくても『コミュ障の怪盗』なんて許されるはずがない。
「ふむ、なるほど。ですが、それで最強を捨てるなんてあまりにも惜しい」
 腕を組んで、何やら考え事を始めるフォト。とりあえず信じてくれたみたいだが……
「そうだ! では、こうしましょう。あなたはコミュ障を克服するために怪盗となる。つまり、『人と会話をする練習』として怪盗活動を始めるのです」
「…………は?」
 思っていもいなかった提案に、思わずヘンテコな声が出た。
「えっと、そんな理由で怪盗になってもいいの?」
 怪盗とはいえ、政府が公認している以上、仕事みたいなものだ。そんな仕事を会話の練習の場にするなんて、怪盗を冒涜しているみたいなものではないだろうか。
「ふふふ、あなたは怪盗にとって、一番大切な事が何かを知っていますか?」
「一番大切な事? どれだけ上手に宝を盗めるか……とか?」
「いいえ、違います。まあ、普通の怪盗ならそうかもしれませんねぇ。でも、この町は『怪盗指定都市』なのですよ。うまく盗む怪盗なんて、そこらにゴロゴロといます」
 ……一理ある。でも、それなら怪盗にとって一番大切な事ってなんだ?
「答えはね、『個性』ですよ! この怪盗指定都市で怪盗としてやっていくなら、個性が重要なのです。他の怪盗には無いものを持っていなければならないのです!」
「それなら、余計に僕には向いていないよ。僕はとてつもなく平凡な人間だ」
「なにを言うのですか。あなたは『コミュ障』という実に強力な個性があるではないですか!」
「コ、コミュ障が個性!?!?」
 それ、個性って言えるのか? どう考えても、マイナス要素じゃん。
「あなたはコミュ障の怪盗なんて聞いたことがありますか? ないでしょう! そう、怪盗とは皆がやたら爽やかなタイプだったり、クールだったりします。だから、あえて逆をつくのです! コミュ障怪盗。これは間違いなくうけますよ!」
 興奮して持論を語るフォト。だが、大丈夫なのだろうか?
 なんというか、欠点を全て個性とか言う人って、ダメ人間のイメージがある.
「うんうん。いいじゃないですか。コミュ障でちょっと陰キャっぽい。あなたはむしろ私の理想の怪盗かもしれません」
「コミュ障で陰キャ怪盗のどこが理想なんだよ」
「分かっていませんね〜。あなたはよくいるその辺の怪盗とは全然違うのです。だいたい最近の怪盗はチャラチャラしすぎです! それにイケメンすぎます。イケメンは嫌いです! すぐに周りの可愛い子に言い寄られて、そっちに流されて、私を捨てようとするんです! ああもう、マジムカつくわ!」
 なんかいきなり拳を握り締めて語りだした!? 過去に何か嫌な事でもあったのか?
 なんだろう。この子はロボットなのに、人間以上に感情的に好みが激しい気がする。この毒舌っぷりはコミュ障の僕からすると、もはや羨ましいと言えるレベルだ。
「その点あなたは最高です。変にイケメンじゃないし、真面目そうだし、何でも言うこと聞いてくれそうだし、おとなしそうだし、怒らなさそうだし、何でも言うこと聞いてくれそうだし」
「それって思い通りになる人間がほしいだけじゃないの? あと、何でも言うこと聞いてくれそうって二回言っているよ。それが目的?」
「おっと、失礼。今のは忘れてください」
「あと、イケメンじゃなくて悪かったね」
「可愛い顔だし、私好みってことですよ。ふふ」
 この子、やっぱり危ないんじゃないか? 本当に呪いの人形な気がしてきた。
「それにあなただって、ずっとコミュ障なんて嫌でしょう? 克服したいと思っているはずです。ならば、怪盗は絶好の練習の場ですよ」
「それは……」
 そう、確かにこれはチャンスなのだ。人生の分岐点とも言えるイベントだ。
 コミュ障の最大の難点は『練習ができない』事。克服しようとしても、友達がいない僕には練習相手がいなかった。
 その点、フォトが相手なら僕はいくらでも練習ができる。人形なので相手の評価など気にならないし、フォト自身も僕のコミュ障については、そこまで馬鹿にするような素振りもない。
 さらには怪盗という大舞台ですら体験することも可能だ。失敗しても、正体が僕だと分からないので、リスクは少ない。逆に成功した場合は、誰もが憧れる怪盗になることができる為、メリットの方は膨大だ。
「どうしても人と話すのが苦手だったら、まずは私とたくさんお話しましょう。私が相手なら緊張しないんでしょう? 存分に利用してくださればいいです」
「そう、だね」
「ええ、たくさん私と会話して、怪盗活動をして、ゆっくりと自信をつけていけばいいんですよ。『練習ができる』。これだけでも、あなたには大きなメリットがあると思いますよ」
 なんて交渉上手な人形だ。本当にロボットなのだろうか。実に巧みに僕の心理を突いてくる。
 色々と不安な部分もあるが、それ以上にメリットの方が大きい……か。
「……分かったよ。怪盗、やってみる」
 せっかくの機会なんだ。このチャンスを生かしてみよう。
 ゲームだけが取り柄の存在感の無い僕が、怪盗として輝かしい人生を踏み出せるかもしれないんだ。やってみる価値はある。
 僕の目的は会話の練習だ。そのついでに怪盗活動とやらもやってやろう。これでコミュ障が克服できたらありがたい話じゃないか。どうせ失うものも無いんだ。
 それに、もし本当にゲームの腕が怪盗の能力に繋がるなら、僕は誰にも負けない怪盗になれる。そこは絶対の自信を持って言える。
「でも、本当にいいのかな〜。怪盗がコミュ障なんて、大問題じゃない?」
「いいんです。気にしたら負けです!」
 本日、コミュ障の僕は怪盗としてやっていく決意をした。ここに『コミュ障の怪盗』が誕生したのだ。
 果たして僕は立派な怪盗になることができるのか? そして、コミュ障を克服して真人間となることができるのだろうか?

 第二話 最強のコミュ障怪盗とポンコツ毒舌人形

 怪盗といえば華麗で美しく、なんでもを完璧にこなせるイメージがある。
 特に変装が得意だと想像する人も多いのではないだろうか?
 変装により性格までも他人になりきれる。それはつまり、怪盗とは人の心理を完全に理解している存在なのだ。俗に言う人心掌握のプロである。
 そんな完璧人間のはずの怪盗がコミュ障だと知ったら、皆はどのような顔をするのだろうか。
「さて、あなたは今から怪盗になるのですが、この町の怪盗にはいくつか『ルール』があります。あなたはそれを守らなければいけません」
「ルール?」
「ええ。まず怪盗は一般人には正体を知られてはなりません。もし見破られてしまった場合、怪盗の力を剥奪させられます。私の存在が知られてしまった場合も同様です」
 怪盗関連のことは他人には内緒らしい。間違っても自慢げに話してはならない。
「それは大丈夫だな。僕はコミュ障だから誰にも話せない。友達もいないしね」
「理由があまりにも悲しすぎますが、まあ、そこは安心だというわけですね」
 僕はぼっちで存在感が無い。つまり誰も僕の正体には気づかないという事だ。欠点を長所に変換する素晴らしき発想であるが、最愛のパートナーはちょっとかわいそうな子を見るような目で僕を見ていた。もう少しご主人様を敬ってほしい。
「ちなみに怪盗の正体を掴めば、その人は莫大な賞金が貰えます。つまり、一般人は怪盗の正体を知ろうと必死なのです。気を付けてくださいね」
 これは厄介なシステムである。特に金に飢えている一般人ほど怪盗の正体をあらゆる手段を使って探って来るという訳だ。存在感が無い僕だから、大丈夫だとは思うけど。
「まだまだルールはあります。怪盗は盗みに入る前に『予告状』を送らなければならなりません。それを相手が承諾して、初めて怪盗行為が行えるのです」
 怪盗といえば予告状。いきなり盗みに入るのはご法度であり、犯罪となる。
 政府から正式に認められている怪盗は、盗まれる方にもきちんと了承が必要ということだ。
 盗まれる側が予告状を受け取ることで怪盗行為を承認する。そして警察を雇って怪盗を迎え撃つ。それは町全体に公開されており、入場料を払えば観客は近くで怪盗と警察の対決を見学することも可能となる。これが『怪盗ライブ』である。
 怪盗と警察でゲームをしているイメージと考えれば分かりやすいか?
 これも別に難しいルールじゃないな。予告状くらいならいくらでも書いてやる。
「最後にもう一つ、怪盗は最後に必ず観客に姿を見せて、『台詞』を言わなければなりません。これは『決め台詞』と呼ばれています」
「なにぃぃぃ!?」
 最後の最後にとんでもないルールが来てしまった!
「ちょっと待て! なんでそんなことをする必要がある!?」
 これはまずい。ヤバすぎる! コミュ障の僕にはあまりにも過酷なルールだ。人前で決め台詞なんて、下手をすれば気絶してしまうぞ!
「この町の怪盗がエンターテインメントとして認められているからです。だから怪盗は人々を喜ばせて、町を盛り上げる義務があるのです。その一環が決め台詞です」
 くそ、そういう事か。これには納得するしかない。怪盗なんて犯罪行為を容認するには、それだけの『利益』を町にもたらす必要がある。
 そのための『決め台詞』だというのならば、こちらには拒否権なんてないんだ。
「まあ、ちょうど良いではありませんか。コミュ障を克服したかったのでしょう? 決め台詞は絶好の練習の場ですよ」
「……いきなりハードル上がりすぎだよ」
 何百人もいる観客の前で決め台詞なんて、コミュ障じゃなくても緊張するぞ。
「とりあえず、本格的に怪盗の契約といきましょうか。そういえば、お名前を聞かせていただいてもいいですか? 考えてみたら、私はまだあなたの名前も知りません」
「ああ。そうだった。僕の名前は梔子真人だよ」
「はい、えっと……『口無し』さん、ですね? 漢字はこれで合っていますよね。コミュ障のあなたにはピッタリの名字ではありませんか」
「違うし! 『梔子』だよ! こう書くんだ」
 口無しなんて漢字があるわけなかろうに。この子は意外とポンコツだったりする?
「コホン、梔子真人さんですね。まったく、日本語って難しいですね。そうだ! これからはマスターと呼ばせていただきます。普通、サポーターはご主人様のことをそう呼ぶのでした」
「はあ、別に難しくないと思うけど……まあいいよ。好きに呼びなよ」
「はい、マスター。それでは、よろしくお願いしますね!」
 これで僕たちのコンビが成立したという訳だ。先行きは不安だが、考えても仕方ない。
「それでは失礼」
 フォトがいきなり僕の手の甲に口付けをしてきた。
「な、何をする!?」
「怪盗の契約ですよ。そっちこそ、なに赤くなっているのですか。私は人形ですよ? ああ、ひょっとして人形に欲情する性癖をお持ちですか?」
「そんなわけないだろ!」
「では、私が可愛すぎてマスターの性癖を歪めてしまったのですね。ふっ、私も罪な女です」
 それも違う……と言いたいが、言っても無意味そうなので無視することにした。
「これでマスターはいつでも怪盗として超人的な力を使うことができます」
 え? もう僕は怪盗になったの? ずいぶんと簡単になれるんだな。
 感覚的にはまるで変化は感じられない。いつも通りの僕である。
「怪盗か。全く実感が沸かないよ」
「ふふ、まあそうですよね。ならばさっそく今から怪盗活動を始めましょう! 実際に怪盗として動いてみれば、おのずと自覚も出てくることでしょう」
「え? いやいや、いきなりそんなことを言われても、まだ心の準備が……」
「何を言っているのですか。あなたはもう立派な怪盗なのですよ。もっと自信を持ってください。コミュ障を治す一番の近道は自信です」
 一応、僕のコミュ障の事を考えてくれるのだろうか。だとしても中々スパルタである。
「では、予告状を送ります。っと、その前にマスターの『怪盗名』はどうします? 本名はさすがにまずいでしょう」
「いや、普通に『クチナシ』でいいよ」
 僕のゲームのアカウント名と同じ名前だ。これで問題が起きたことは無い。
「本名を使うつもりですか? 身バレの危険がありますよ?」
「クチナシって花の名前なんだよ。普通はそういった意味で受け取る人が多い。それに僕は存在感が無いから、誰も名前からは僕だと分からないさ」
「なるほど。存在感の無いぼっちのゴミなので問題無し、と」
「言い方!」
 ちょっと悲しい理由だが、長年慣れ親しんだアカウント名なのでこの方がしっくりくる。
「では、怪盗クチナシで予告状を送信しますね」
 フォトが予告状を送ったらしい。どうやらデジタルで送信してくれるようだ。
 ま、怪盗を歓迎する人なんてそうそう現れないだろう。どうせ断られるに決まっている。
「はい、受諾されました」
「はやっ!?」
 早すぎだろ! 予告状を送って十秒も立ってないぞ!
「なんなの? 金持ちの皆さんは怪盗に盗みに来てもらいたいの?」
「ええ。怪盗を返り討ちにして目立ちたいのです。金持ちの道楽なんてそんなものですよ」
 刺激を求めているって事だろうか? 金持ちの考えることは分からない。
「他にもライブの入場料が全て『盗まれる側』に入るのが大きいですね。怪盗が来たらライブができます。その収入は宝石以上の利益が出るのです」
 なるほど。仮に宝石を盗まれても、ライブ代という莫大な収益を得ることができる。どう転んでも盗まれる側が得をするシステムだった。
 だから金持ちは予告状を拒否しない。これが絶え間なくライブが行われる理由だ。
「ライブは今から三日後です。楽しみですね!」
 こうして僕の怪盗としての初仕事はあっさりと決まってしまった。

 × × ×

 三日後。僕は現地付近へと足を運んでいた。フォトは僕の胸元へもぐりこんでいる。
「……来てしまった」
 まだ怪盗としての覚悟とか全く決まっていないのだが、大丈夫なのだろうか。
 ここは現場から少し離れた建物の屋上だ。この場所ならターゲットの屋敷が見えやすい。
 屋敷はそこまで大きくない。金持ちがいくつも所有する豪邸の一つなのだろう。
 フォトは窮屈だったのか、僕の胸元から地面へ飛び降りて、屋敷を観察していた。
「ねえ、フォト。僕は大変な事に気付いてしまった。緊急事態だよ」
「む、どうしましたか?」
「ひ、人だ……人がたくさんいる!」
 屋敷の周りは明るいライトで照らされており、そのさらに外側には観客用と思われるスペースがある。驚くべきことに、そのスペースにはざっと見て百人近い観客で埋まっていた。
「うむ。ちょっと観客が少ないですね。ああ、物足りませんか?」
「逆だよ! 多すぎだろ! 百人はいるぞ!?」
「こんなの少ない方ですよ。人気怪盗だと余裕で観客は千人とか突破します」
「……嘘だろ」
 怪盗ライブは人気だとは聞いていたが、まさかここまで人がいるなんて思わなかった。特に僕なんか無名の新人だぞ。そんな僕をこれだけの人数が見学しに来たのか?
「それだけ怪盗が人気という訳ですね。特に新人は怪盗好きの人の目に付きやすいのです。多くの方がマスターに期待しているという事ですな。どうです、燃えてきたでしょう?」
「むしろプレッシャーになるんだけど」
「ちなみに観客の八割が女性の方ですよ。最高ですね!」
「余計に緊張するってば!」
 失敗したら凄く恥ずかしい。緊張しすぎて失敗とか普通にありそうだ。
『レディースエーンドジェントルメーン! さあ、いよいよやってきました。今宵も怪盗ライブが始まります! 今回勝利するのは我らが怪盗か? それとも憎くき警察なのか?』
 いきなり大きな声が辺りに響いた。その声に並んで歓声も沸きあがる。
 見ると、まるでアイドルのようなコスプレをした可愛い女の子がマイクを握って叫んでいた。
「えっと、あれはなに?」
「実況の方ですよ。場を盛り上げるためにいるのです」
 そんな人までいるのか。下手に盛り上げられてしまったら余計に緊張するじゃないか。
『今回挑戦する怪盗クチナシは、なんと新人君です! 今回が初仕事です! 皆さん、応援してあげましょうね!』
「はーい!」
 実況の言葉にノリの良い観客達が声を合わせて答えた。歓迎されるのは嬉しいのだが、あまりハードルを上げられても困る。
「そう緊張しなくても大丈夫ですよ。マスターには私がついています。何を隠そう、私は超高性能なのです。最高のサポーターなのですぜ!」
 本当なのだろうか。僕は内心でちょっと怪しんでいた。漢字も読めないポンコツだし。
 まあ、これだけ感情豊かに会話が出来るのだから、あながち嘘でもないだろうけど。
「ではマスター。怪盗として相応しい姿に変身しましょう」
 フォトが指を鳴らした瞬間、光と共に僕の服装が変わった。黒をイメージしたオシャレな服である。暗闇に紛れるには有効そうな姿ではあるが……
「私が独断と偏見でイメージしたマスターの怪盗姿です。うん。闇属性っぽくて最高ですね」
「勝手に人を闇属性にしないでくれよ」
 とんだ厨二病の人形である。なんでロボットなのに厨二病なんだよ!
「でも、顔は変わっていないよ。これだと僕の顔を知っている人に正体を知られてしまうんじゃないか? ばれたら怪盗の能力は剥奪なんだろ?」
 まあ、存在感の無い僕の顔を知っている人がこの場にいるかどうかは置いておくとして。
「大丈夫です。怪盗のコスチュームには『認識疎外』の効果が付与してあります。マスターは別人として認識されているはずです」
 認識疎外って……本当にぶっ飛んだ性能だな。いったいこの町はどうなっているのか。
「ちなみに私も普段は認識疎外を起動させています。よほど目立ったり大声を立てたりしない限り発見されることはありません。そうしてマスターの家に入り込んだわけです」
「ああ。初めて会った時、いつの間にか足元にいたのはそういう事だったのね」
 それは不法侵入なのですが……まあ、そこは追及しないでおこう。
「さて、マスター。もう少し高い所に行きましょう。あのビルの屋上へ飛んでください」
 フォトが指定したそのビルは、ここからさらに十メートル以上は上にある。
「いや、あんなところまで飛べるわけないだろ」
「それが怪盗となった今のあなたならできるんですよ。騙されたと思って、飛んでください」
 フォトに言われた通り、ダメ元で思い切りジャンプしてみた。
 すると、本当に僕の体が天高く浮かび上がり、ビルの屋上へと着地する。
「……マジか」
 とんでもない跳躍力だ。前にフォトが超人的な力を得たと言っていたが、嘘では無いようだ。
(こら〜。私を置いて飛ぶんじゃありません!)
 その時、いきなり『頭の中』にフォトの声が聞こえてきた。本当に飛べるなんて思ってなかったし、フォトを下に置いたまま飛んでしまったのだ。
(ちなみにこれはテレパシーです。怪盗の契約をすることにより、私の声がマスターの頭の中に直接聞こえるようになったのです。便利でしょ?)
 テレパシーを使った通信機能まであるらしい。確かにこれは非常に便利である。
 これなら普段から怪しまれずに会話をする事も可能だ。大いに活用させてもらおう。
 とりあえず、下に降りてフォトを回収し、もう一度ビルの上へと飛ぶ。
 ちなみに十メートル以上の高さから飛び降りても、足に痛みはまるでなかった。耐久力も人外の力を得ているようだ。
「さて、怪盗の力、ご理解いただきましたか? 今のマスターは『全ての能力』が何十倍にも強化されているのです。この力ならやれそうでしょ?」
「……そうだね」
 こんな力を見せつけられたら、流石に納得するしかない。いよいよ実感が沸いてきた。
「では、今からやることを説明します。マスターはあの屋敷に潜入して、ターゲットの宝石を盗まなければなりません。制限時間は一時間です」
 この辺りはゲームと同じだし、ライブを配信で見たことがあるのでだいたい分かる。
「屋敷に入れば、宝石の位置は私のレーダーで分かります。案内はおまかせください」
「へえ、宝石の位置が分かるんだ。凄いじゃないか」
 迷わずに済むのはありがたい。さすがは自分で高性能と言うだけはある。
「ちなみにターゲットは、女神の涙と呼ばれている宝石で、売れば一千万円にもなると言われております。まあまあの高級品ですな」
「それは素晴らしいね。盗むのに成功したら、そのお金を貰えるの?」
「手に入るのは売値の一パーセントです。残りは町の発展費として使われます」
 なんだ、一パーセントか……と思ったが、それでも十万円である。高校生のお小遣いとしては間違いなく大金だ。これは報酬が楽しみである。
「最初は警察に見つからないように潜入……か」
 屋敷の周りには制服姿の警察が何人かうろついているのがはっきりと見える。怪盗になったことで視力も大きく強化されたらしい。
「この警察って、本物の警察じゃないんだよね?」
「そうです。彼らは全てお金で雇われた傭兵です。怪盗というシステムの名目上『警察』と呼んでいるだけで、別に掴まっても犯罪者として罰せられるわけではありませんのでご安心を」
 捕まってしまうと警察側の『勝ち』となるだけで、特に法的に裁かれるわけではない。
「このレベルの警察は大したことありませんが、高レベルになれば元軍人だったり、元怪盗の警察が出てきたりもします。怪盗の捕獲に成功すればさらに報酬が貰えるので相手も本気です」
「なるほど。でも、今の警察が相手ならこの力で普通に勝てそうだね」
「ある程度はやっつけてしまう事も可能でしょうが、相手の数が多いので正面から戦うのは危険です。なるべく見つからないように、こっそりと宝石を盗むのが得策でしょう」
 怪盗は一人に対して、警察は集団で襲い掛かって来る。いくら身体能力が強化された怪盗でも、全員と同時に戦うのは不利というわけだ。
 数の利を持つ警察に対して、怪盗には強化された身体能力と、サポーターがいる。
 その部分を差し引きしたら戦力は五分といった所か。
「ちなみに高レベルになると『巨大ロボ』とかも敵として登場しますのでご注意ください」
「はあ? 巨大ロボ!? そんなのどうやって倒すんだよ」
「倒せません。どんな怪盗でも撃破は不可能だと言われています。うまく避けながら目標を達成するしかありませんね。もちろん、今回は出てきませんが……」
 どうやら怪盗とは僕の想像を遥かに超えた相手とも戦わなければならないらしい。
『さあ! 時間が近くなってきました。まもなく怪盗と警察の戦いが始まります!』
 実況の声が大きく響き渡る。そろそろ予告時間となるようだ。ついにその時がやってきた。
「マスター。いよいよ始まりますよ。心の準備は出来ていますか?」
「そうだね。少し楽しみになって来たよ」
 目を閉じる。まだ現実味を帯びていないが、それでも怪盗行為自体は僕の好きなゲームと同じである。そう思えばワクワクしてきたかもしれない。
「ふふ、いい反応です。大丈夫、最強の自分を信じなさい」
「最強……ね。本当に期待しているからね?」
 僕に怪盗の才能がある。それが本当か嘘かは今回で判明するだろう。
『時間です! 怪盗VS警察。果たして今回勝つのは我らが新人怪盗なのか? はたまた警察たちなのか? ライブスタート!』
 ついに時間となったようだ。同時にフォトが僕の懐へと入る。
「よし、ではマスター。行きましょう!」
「了解。まずは屋敷に潜入すればいいんだよね?」
「はい! 警察の目を盗んで、見つからないようにするのです。タイミングが大事ですよ!」
 怪盗らしくこっそり行くのが重要らしい。目立ってはいけない。
 でも、なんだろう。謎の直感が僕を支配していた。それは自信とも言える感覚だ。
 『普通に通り過ぎても気付かれない』。そんな確信めいた直感だった。
 僕はその直感に従って、ビルから飛び降り、正面から建物へ歩いていく。
 入り口には仁王立ちしている警察。普通ならここで気付かれてしまう。
(え? ちょ……マスター? そんなタイミングだと見つかりますよ!?)
 当然ながら戸惑うフォト。言葉を出せば気付かれてしまう為、脳内で僕に注意を送る。
 だが、それでも僕は注意を無視。警察に向かって歩みを止めなかった。
 そのまま僕は警察の横を通り過ぎ、入り口の扉を開けて中へと入った。
(えええええ!? なんであれで見つからないの!?)
 脳内にフォトの驚愕の声が聞こえてくる。当然の反応かもしれない。
(マスター、あなたはどんなトリックを使ったのですか?)
(なんて言えばいいかな。僕は存在感が無いから、それで行けると思ったんだ)
 あまりにも無謀な戦法だったかもしれないが、何故か絶対に成功する確信があった。
(そうか! 『ステルス能力』! マスターは元々存在感が無かった。それが怪盗となることで数十倍に強化された結果、尋常でないステルス力を発揮したのです!)
 ステルス。怪盗になることで僕の『全ての能力』が何十倍にも強化された。それは僕の『異常なほどの存在感の無さ』も例外ではなかったらしい。
 普段から僕は誰にも気づかれない。それが何十倍にも強化された結果、それは真横にいても気付かれないほどの強力なステルス能力となったわけだ。僕はその力を無意識で理解していた。
(ふふ、これは素晴らしいです。怪盗としてこれほど有利な能力はありません。やはりマスターには才能があったという事です)
 フォトの口調から察するに、かなり強力な能力らしい。それは僕としても同意だ。
(なるほど。これほどの能力を誇るマスターが、どうして今まで誰からもスカウトされなかったのか、その理由が分かりました。その存在感の無さで誰も気が付けなかったのです)
(そういえば、僕はなぜかゲーム内でも、異常に存在感が無かったからね)
 考えてみると、いくらコミュ障でも『誰にも誘われない』というのは異常だ。誘われたら簡単にチームに入れるので、ゲーム内でもぼっちになるのは、本来ならありえないはずだった。
 信じられない話だが、僕の存在感の無さはゲームですら影響を及ぼしていたらしい。
(まあ、私は逆に目立たないようなレアな人間を見つけるのが大好きなんですけどね。マスターを発見した時の喜びは至福でございました)
 うっとりとした表情のフォト。人間をレア扱いするのはロボットとしてどうなのだろうと思いつつも、フォトが僕をスカウトできた理由は分かった。
 そういった物珍しい人間を見つけるのが好きな場合や、よほど集中して僕を探知した場合は、認識できるみたいだ。
(これからは珍獣ハンターのフォトちゃんと呼んでください)
(……マスターを珍獣扱いするなよ)
(これは失礼。さて、それでは宝石の場所まで案内しますね)
 フォトの案内に従って屋敷内を進んでいく。内部は高価な壺が置いてあったり、西洋の鎧が飾ってあり、中々凝っている。主人の趣味なのだろうか。
 当然ながら屋敷内にも警察はいる。僕は見つからないように障害物や曲がり角の手前で隠れながら高速で移動する。本当にゲームと同じような動きが可能らしい。
 いい感じの進行速度だ。僕のステルス力を全開にして隠れたら、このレベルの警察なら恐らく僕の目の前を通り過ぎても気付かないだろう。
(へえ。やるじゃないですか。さすがと言っておきましょうか)
(これくらいなら楽勝だね。多分、一回も見つからずにお宝までいけるよ)
(まあ、難易度が『Eランク』なので、マスターの腕前なら当然といった所でしょうかね)
(ああ、ランクもゲームと同じなんだね)
 ゲームでも難易度によってAからEまでランクがあった。この部分でも共通点があるらしい。
(それにしても凄いステルス力ですね。マスターは普段から誰にも認知されないのですか?)
(そうでもないよ。話しかけられる事だってある)
 前に姫咲さんに話しかけられたのが例だ。彼女のように目線が広い人間なら、今の僕でも感知される可能性が高い。過度な油断は禁物というわけだ。
(それにしても、ずいぶんと監視カメラが多いね)
 ゲームでも監視カメラはあるが、それでもEランクとしては異常ともいえる多さだ。
 僕はまだ引っかかっていないだろうが、普通の人なら確実に見つかるぞ。
(カメラに関してはちょっとくらい引っかかっても大丈夫です。数が多すぎる為、監視している人間も全てを把握できていませんからね)
(それ、監視カメラの意味あるの?)
(一番の目的は怪盗の姿を映す事です。実はこの監視カメラ、観客にも映像として映し出されているのです。観客はその中から怪盗を探して楽しむというわけですね)
 そういう事か。確かに怪盗が屋敷に入ったら、外の人達は退屈だもんな。
 監視の為というより、観客の為に作られたカメラというわけだ。よく考えられている。
(怪盗によっては、わざとカメラの前でポーズをとってサービスをする人もいるみたいですよ。マスターもやってみますか?)
(嫌だよ。そんなことして見つかったら馬鹿じゃないか)
 それ以前に僕自身があまりカメラに写りたくないというのもある。コミュ障は写真とかも苦手なのだ。記念写真の類は、いつもどんな顔をしたらいいのか分からない。
 普通の顔をすればいいじゃん、思うかもしれないが、僕はその普通というのが……以下略。
(そろそろお宝の場所だね)
 そうやって進んでいくと、広い場所に出た。中央には豪華な宝箱がある。
 宝箱の中に宝石が入っているのだろうか。あれを開けたら怪盗行為は成功だが……
(マスター。ストップです)
 フォトからは静止の声が入る。僕も同様で、危険な予感を察知していた。
「高レベルの警察がいます。それに宝箱の上にセンサーが仕掛けてあります。警報器ですね」
 宝箱の上にはシャンゼリアがあり、その更に上の天井には赤く光る装置がついていた。
 近づいてしまうと警報が鳴る仕組みなのだろう。そうなれば囲まれてしまい、ピンチとなる。
 さらにその周りにも宝箱を守るように警察が何人かうろついていた。彼らは今までと違って、かなり能力が高いようだ。
(マスター。ここも素通りできそうですか?)
(いや、さすがに無理だね。彼らが相手なら気付かれてしまう)
 これも感覚で分かる。数も多いし、相手もかなり警戒している。ここまで集中されては見つからずに突破するのは難しい。
(では、今度こそタイミングを見計らって行くか、やっつけるかですね)
(そうだね、今度は倒してみようか。フォト、武器とかあるのかな?)
(ありますよ。相手を気絶させられるスタンナイフです。現状ではこれだけが武器ですね)
 いつの間にか僕の手にはナイフが握られていた。この武器はゲームでの初期アイテムだ。
(武器はマスターの意思で自由に出したり消したりできます。必要の応じて念じてください)
(了解。それじゃあ、この武器を使って警察を倒そうか)
(では、私が今から警察の数を確認しましょう。ひい、ふう、みい……むむむ)
 フォトが難しい顔で指を指しながら警察の数を数えている。
(よし! 判明しました! 敵の数は十人です!)
(…………敵、全部で五人だけど?)
 十秒ほど沈黙するフォト。
(…………………………はい。そうですね。五人でした)
 彼女は完全に数え間違いをしていた。原因も判明している。同じ人間を二度数えていたのだ。
(フォト。もしかして、数を数えるのが苦手?)
(そ、そ、そ、そんなわけないでしょう! 私は高性能なのですよ!)
 フォトは誤魔化しているらしいが、もはや完全にバレバレである。そう。彼女は……
(君さ、実はかなりのポンコツだろ)
(うぐっ!)
(自分で高性能とか言っていたけど、本当は落ちこぼれのはみ出し者とかじゃないの?)
(ぎゃああああ!)
 脳内に聞こえてくるフォトの叫び声。その大きな音量は彼女のショックを表している。
(そうです。私、ポンコツなのです。これからはジャンクのフォトとお呼びください。ふふ)
 光を失った目で笑うフォト。変な機能が搭載されてるな!?
(……まあ、別にいいけどね)
 なんとなく分かっていた。僕みたいなのを勧誘するくらいだし、彼女も普通じゃないはみ出し者なのだろう。そうでなければ、もっとまともな相手を怪盗に選んだはずだ。
(待ってください! 一つだけ……マスターに才能があるのは本当です! それだけは信じてください! …………多分)
(多分かよ)
(わ、私も落ちこぼれなので自信が無いんです。でも私の理論は正しいはずなのです。それを証明したいです。だから、ここで辞めるのは……)
(ああ、大丈夫。辞めないから安心して)
 僕の答えを聞いてフォトが胸を撫でおろしているのが伝わってくる。
 僕としてもこんな中途半端で辞めるつもりは無い。さっきも言ったようにフォトがポンコツなのは分かっていたし、その分だけ僕が実力でフォローすればいいだけだ。
(よし、じゃあ一気に終わらすよ、フォト)
(……え?)
 フォトの困惑した声が聞こえたが、それを無視して僕は飛び出す。
 高速で警察の背後に回り込んで、スタンナイフで背中を突いた。まず一人。
「ぐっ」
 電撃が走り、警察の体が崩れ始めたタイミングで次の移動を開始。すでに全員の位置は把握している。同じように二人目、三人目とナイフを当てた。
 四人目にナイフを当てた時、ようやく一人目が音を立てて完全に崩れ落ちた。
「だ、誰だ!」
 音を聞いた警察が倒れた一人目の方を向くが、既にそこに僕はいない。
「か、怪盗か!?」
 焦った警備員はキョロキョロと周りを見渡す。僕はその背後に回りこんで、最後の一人を同じように気絶させた。
 全員が倒れたのを確認。これで敵は片付いた。後は宝箱を開けるだけだ。
「っと、センサーがあるんだったね」
 倒れた警備員から警棒を拝借し、上のセンサーへ投げつけた。
 シャンゼリアの間を通り抜けた警棒は、その上に設置されてある小さなセンサーをで貫く。
 ぼんっ、と音を立てたセンサーからは煙が立っていた。
 僕はそのまま宝箱を開けて、中の宝石を手に取った。宝石には詳しくないが、だからこそ余計に綺麗な代物に見える。このレベルでもまあまあらしい。
「これが女神の涙か。綺麗だね。……フォト、これでいいんだよね?」
「……マジか」
 初めて怪盗の力を知った時の僕と全く同じ反応である。軽いデジャブだ。
「す、凄い! 侵入の時といい、とんでもない才能です! これはまさしく最強の怪盗!」
 フォトが目を輝かせて褒めまくってくる。普段は毒しか吐かないようなフォトが珍しい。
「しかも時間を見てください。まだ五分も過ぎていません。新人でこんなタイムを叩きだしたのは前代未聞です!」
「そ、そう?」
 確かに自分でもよく動けたとは思うが、そこまで褒められたらさすがに照れるぞ?
「これはあの怪盗アメジストすら上回っているかもしれません。伝説となれる才能です」
「それはちょっと大げさじゃない?」
 さすがに人気ランキング一位の怪盗と張り合うつもりは無い。まだ実績も無いし。
「まったく無駄のない動き。そう、まさに機械のように洗礼された完璧な動きでした」
「機械って……もうちょっとかっこいい呼び方は無いの?」
 褒めてくれているのはありがたいけど、少し複雑な気分だ。
 効率的なのは好きだ。今回も僕が望む『最高率』を形にしただけ。でも……
「コミュ障で機械的って言われたら、まるで自分がロボットみたいに思えてしまうよ」
「よいではありませんか。私だってポンコツで毒舌で感情的です」
 にっと歯を出して笑うフォト。つられてこちらもつい笑ってしまう。
「確かにね。僕たちってお互いに間違って生まれてきてしまったのかもしれないね」
「いいえ。間違っているのは私たちではなく、世界の方です」
「なんだよ、それ。本当に厨二病な人形だな」
 二人で笑い合う。改めて思うと本当に不思議で変なコンビだ。
 でも、『個性』で言えばこれほど面白いコンビも無いのかもしれない。
「よし! それじゃあ、帰ろう!」
 これにてミッションコンプリート! さあ、家に帰って祝杯の準備だ!
「待ちなさい」
 と思ったが、フォトがさっきとは真逆の厳しい声。僕はビクリと身を震わせた。
「最後にまだ重大なお仕事が残っていますよ?」
 恐る恐るフォトの顔を見ると、彼女は射殺すような真っ直ぐな琥珀色の瞳で僕を見ていた。
「ルールをお忘れですか? 怪盗は、一度は観客に姿を見せて、『決め台詞』を言わなければならないのです。決め台詞を終えるまでが怪盗です」
「うぐ………」
 くそ! やっぱり覚えていたか! その場のノリで逃げられると思ったのに!
「ダ、ダメだ。そんなの絶対に無理だ! 失敗するに決まっている! もう終わりだ!」
「急にヘタレた!? さっきまでのかっこ良さはどこへ行ったのですか! 大丈夫。ここまでうまくいったのですからきっと成功します。ちょっと喋って帰るだけです」
 不安そうにする僕を宥めるような口調のフォト。そうは言っても無理なものは無理である。
「安心してください。もし仮に失敗しても、私には『切り札』があります」
 切り札? 何か作戦でもあるのだろうか。彼女がうまくフォローでもしてくれるのか?
 だったら、それに期待してもいいかもしれない。こんな時のパートナーである。
「さあ、参りましょう。ちょうどこの窓から屋上へ行けます」
「…………分かったよ」
 ルールなのだし、やるしかないか。僕にとっての最大の難関がである。

 × × ×

 窓から外へ出て、屋敷の屋上に立つ。かなり高い場所なのでちょっと風がきつい。
 もうすぐ夏が近い。頬を撫でる夜風は冷たいと同時に心地よさも感じさせてくれた。
 ああ、いい風だ。ずっとこの場所で風を感じていたい。そんな気持ちすら抱かせてくれる。
「いや、なに現実逃避してるんですか。もうすぐ決め台詞ですよ。集中なさい」
「……う」
 だって仕方ないでしょ! コミュ障の僕がこんな大勢の前で喋れなんて拷問だよ!
『さあ、ライブが開始してからちょうど五分が過ぎた所です。今頃、屋敷の中では宝を巡っての攻防が行われているのでしょうか?』
 そんなやり取りをしていたら、実況の声が聞こえてきた。所々で監視カメラの映像も映し出される。観客の皆さんは必死になって僕を探しているようだ。
「とっくに終わっていますよ」
 ふふっ、と笑いながらフォトが遠目に見える実況に答える。彼女としてもこの速さで宝を盗んだことは自慢らしい。……本来は僕が自慢するべきことなのだろうけど。
「では締めといきましょう。ここは目立つので、しばらくすると向こうが気付いてくれます。とりあえず成功を証明するため、宝石を出しておいてください」
 この場所は屋敷で一番目立つ場所で、ここに来ている全員の目が当たる場所でもある。
「何人か警察が来るでしょうが、マスターならさっきみたいに問題なく全員倒せるでしょう。その後に決め台詞をビシっと決めてください」
「……うん」
 僕は宝石を手に持ちながら周りが気付くまでの間、辺りを見回してみた。
 凄い人数だ。これで少ない方というのだから驚きである。
「おっと、忘れていました。これをお持ちください。小型マイクです。スイッチをオンにすれば、マスターの声がここにいる全員に聞こえるようになりますよ」
 僕の声が全ての観客に届く。想像するだけでゾッとした。これは予想以上に緊張するぞ。
『おお、いました! 怪盗クチナシだ! な、なんと……すでに宝石を盗んでいました! 何と恐ろしい怪盗なのでしょう! こんな新人は見たこともありません!』
 僕に気付いた実況が興奮して声を上げた。それを聞いた観客たちからも歓声が上がる。
「ふふ、良い反応です。どいつもこいつも驚いているようですね。マスター、嬉しいでしょ?」
「…………緊張でそれどころじゃない」
 しばらくすると僕に気付いた警察が襲ってくるが、難なくスタンナイフにより無力化した。
「す、凄い。なんて強さだ!」
 歓声は更に大きくなった。確かにここまではいい感じで僕の理想とも言える。
 だが、問題はここからだ。この決め台詞がうまく言えるかどうかで今日の成功が決まる。
「頃合いですね。さあ、決め台詞を言ってください!」
 ついにこの時が来た。もう逃げられない。観客は皆が僕に期待の視線を向けている。
 いいだろう、やってやる! こうなったら、ここでかっこいい台詞を決めて、この町一番の人気怪盗になってやる!
 僕は人々の感動の眼差しを十分に受け、ゆっくりと間を取った後、満を持して勝利の決め台詞を発した。
「ほ、ほ、本日は、お、お日柄もよく、ご、ご、ご来場された皆様におきましては……」
 …………あ、やっちゃった。
 僕のどもりまくった上に何を言っているのか分からない。そんな僕の決め台詞を聞いた観客の期待が、一瞬にして落胆へと変化するのを肌で感じてしまった。
「はあ〜。ダメだこりゃ」
 隣ではフォトが額に手を当てて、大きなため息をついていた。
「やはり、あなたは最強のコミュ障の怪盗なのですね」
 あまりのショックで一瞬、走馬灯が見えた。今までのは全て夢かと信じたかったが、残念ながら現実だ。
 終わった。全てが終わった。やはり僕には無理だったんだ。
 くそ! そんな目で僕を見るな。ここにいる全員が今日の事は『忘れてくれ』!
「はいはい、ヤケにならない。ご安心を。私がきちんとフォローしてあげますよ」
 フォロー? そういえば失敗しても、フォトには切り札があると言っていた。いったいどうやってこの状況を覆すというのか?
『やあ、失礼。ちょっと緊張して、噛んじまったぜ』
「っ!?」
 いきなり『僕の声』が辺りに響き渡った。でも僕は声を出していないぞ。
 つまりこれは僕以外の誰かが喋っている。そんな事をするのは一人しかいない。
(驚きましたか? これぞ私の持つ『変声機』の力ですよ!)
 やはり彼女が犯人だったらしい。つまり、今はフォトが僕の声を使って喋っている。
(マスター、今回はよく頑張りました。後は私にお任せください。決め台詞の基本を見せてあげましょう。マスターは私の言葉にあわせて動いてくれるだけで結構ですよ)
 この先はフォトが決め台詞を言ってくれるらしい。これが切り札ってワケか。
 なるほど。これなら僕が台詞を失敗してもフォローが効く。普段からよく喋るフォトなら、きっとうまくやってくれるはず……
『ふっ。僕の姿に見とれちゃったかい? 子猫ちゃんたち』
 って、ちょっと待て! 何だその台詞!? 僕、そんなこと絶対に言わないんだけど!?
『ではさらばだ。また会おう。シーユーアゲイン!』
 僕はフォトの言葉通りにその場を後にする。口に出すのができない以上、僕はフォトの言う通りに動く操り人形となるしかない。
 僕は文句を言いたい気持ちを抑えてその場を後にした。……しーゆーあげいん。

 × × ×

「こら、フォト。なんてことをしてくれたんだ!」
 ライブ会場から離れた僕は、人気の無い路地裏へと移動してフォトを睨み付ける。
「はて、マスター。何を怒っているのですか?」
「あんなの全然僕じゃないし。というか、あんな変なことを言っちゃったら、もう怪盗なんてできないよ。どうするのさ」
「ああ、決め台詞を気にしているのですか? あれくらい普通ですよ。まあ、ちょっとお客様の好感度を上げるためにサービスをしましたが……あ、物足りなかったです?」
「逆だよ! やりすぎって事!」
「そんなことないですよ。むしろアピールが弱いくらいです。あれでいいのです」
「…………そういうものなの? ほんと?」
 やたらと自信満々のフォト。確かに僕には決め台詞関連の事はよく分からないが……
「でも、マスター。勝手に自分の声を使われたくなかったら、きちんと自分で決め台詞を言えるようになりましょうね♪」
 く、そこは正論だ。僕が初めから自分で決め台詞を言えたら、フォトが僕の声を使う必要も無くなる。ここは素直に反省して、精進することにしよう。
 とにかく、これでようやく怪盗の仕事も終わりだ。長い一日だった。
「はう! 怪盗さん!?」
 その時、可憐な声が僕の耳に入った。しかもこれは聞いたことのある声だ。
 見てみると、そこにいたのは姫咲さんであった。こんな路地裏で会うとは意外だ。
 センス抜群の私服姿である姫咲さんは、普段よりも三割り増しくらいで美少女である。さすがはオシャレの達人にして学園のアイドルである。
 どうして彼女がこんなところに? もしや僕のライブを見に来ていたのか?
「ああ、なんてこと。家への近道を使ったら、怪盗さんに会えちゃったよ」
 この路地裏は姫咲さんの家への裏道だったらしい。偶然出会ってしまったわけだ。
 年頃の女の子がこんな人気の無い路地裏を通るなんて、注意したい所だが、当然ながら僕にそんなコミュ力は皆無である。どちらにしても最底辺の僕が説教などおこがましい話だ。
(これは緊急事態ですよ。一般人に見つかってしまいました!)
 警戒したフォトが僕の脳内へと話しかけてくる。そこで僕はルールを思い出した。
 怪盗は一般人に正体を知られてはいけない。つまり、怪盗行為が終わったにもかかわらず、この姿を見られるのはあまりよろしくないという事になる。
「えっと。あの……私、怪盗さんのファンなんです。サイン……貰えないですか?」
 そんな事を考えていたら、姫咲さんが上目遣いで僕に話しかけて来た。普段の彼女からは想像もできない表情だ。妙にそそられてしまう。
(む? 相手は戸惑っていますね。これはチャンスです。私に任せてください)
 フォトが何か打開策を見出したらしい。どうするつもりだろうか。
『やあ、可愛いお嬢さん。見つかってしまったね』
「っ!?」
 再び僕の声を勝手に使うフォト。しかもこの上なくキザな台詞だ。
 勝手に声を使われたら困る……と言いたいが、今は緊急事態なので仕方ない。
「ええ!? 可愛いって……私のことですか!?」
 姫咲さんは顔を真っ赤にして潤んだ瞳を僕に見せてきた。それは完全に恋に落ちた乙女の瞳だった。フォトが今まで発した台詞、ひょっとして本当に効果が高いのかもしれない。
 女の子ってこんな台詞でも喜んでくれるんだな。僕は心の中でフォトに謝ると同時に、いつかは自力で同じような事をしなければならないのかと、ちょっとハードルが上がった気もした。
 それにしても、あの憧れの姫咲さんが一人の女の子として僕に恋い焦がれる目を向けている。普段は決して見られないそんな彼女の姿に、僕は少しドキリとしてしまった。
(こら。何でマスターまでボーとしているんですか。彼女が戸惑っている今がチャンスですよ。急いで離脱してください。相手が可愛いからってデレデレしてやがるんじゃありません!)
 フォトめ。いちいち一言多い奴である! 全部正解なんだけどさ!
 とりあえず、フォトの言う通り、そのまま飛び上がって場を離脱する。
「……あっ」
 去り際に姫咲さんの恋しそうな顔が目に入る。……ちょっとかわいそうだったかな。

 × × ×

 そのまま帰宅。元の姿に戻った僕は、速攻でベットに倒れ込んだ。
「ふう。なんとかなりました。最後はとんだトラブルでしたね」
「本当だよ。まさか、姫咲さんに会うなんて思わなかった」
「おや、あの子とはお知合いでしたか」
「クラスメイトだよ。凄く人気があって学園のアイドルなんだ」
「ふ〜ん、確かに。彼女、可愛い子でしたね」
「…………この前、僕に話しかけてくれたけど、返事も出来ずに逃げてしまった」
「あらら。でも、今日の彼女は恋する瞳でマスターを見ていましたよ」
「……関係ないさ」
 姫咲さんは怪盗の姿の僕に惚れたのだろう。もし憧れの怪盗の正体が僕だと知ったら、むしろ失望するに違いない。知らぬが仏ってやつだ。
「とにかくお疲れ様です。マスターの実力も分かったし、得るものは多かったです」
「僕がガチのコミュ障ってのも、よく分かっただろ」
「ふふ、そうですね。そちらの方も計算外でした」
「…………失望した?」
「まさか。想定内ですよ。高性能な私がその程度で戸惑うはずないでしょう」
 計算外とか言ったくせに。まあいいけど。
「……あなたこそ、私の失敗を見ても失望しなかったですしね」
「まあ、想定内だし」
「やかましいです! こんな時だけは口が回りますね!」
 文句を言いながらもフォトは満足した表情だ。僕も同じ気持ちである。
「いつかはご自分で決め台詞を言えればいいですね。それでコミュ障は克服です」
「……ああ」
 最終目標は決め台詞。今回は失敗してしまったが、こうやって場数を踏んでいけば、いつかは僕も自分の口からかっこいい決め台詞を言えるようになるのかもしれない。
「とりあえず、いい経験にはなったよ。ちょっと楽しかったしね」
「へえ。意外と前向きじゃないですか。そういう部分は好きですよ、マスター」
「…………そりゃどうも」
 『好き』とか言われて思わず顔を逸らしてしまう。僕は人形相手に何やってるんだ。
「ですが、焦る事はありません。いつかきっと、あなたは人に見られることが逆に嬉しくなる日が来ます。少しでいいから想像してください。『かっこいい怪盗』になった自分を……」
 かっこいい怪盗か。もし、本当にそんなものになれたのなら、僕はその時……
「でも前にも言った通り、うまく喋れないマスターだからこその可愛いさがあるんですけどね。一般人にはまだこの萌えは理解できませんかね」
「それ、きっと誰も理解できないと思うよ」
 怪盗か。意外と悪くなかったかな。決め台詞さえ無ければ楽しかったと言ってもいい。本当にゲームの世界を体験できた事を考えたらまさに夢のような出来事だろう。
 一応だが、フォトのきちんとフォローしてくれた。このまま続けていればいつかは僕のコミュ障が治る可能性もゼロではない。やる意味はきちんとある。
 コミュ障克服のための怪盗活動……まだまだこれからだな。

 第三話 ポンコツ怪盗コンビ、学校へ行く

 翌日、僕はいつも通りに学校へ通っていた。再び僕の日常が始まる。
 怪盗という現実離れした出来事を体験した僕だが、普段の生活が大きく変わることはない。
 夜が明ければ存在感の無いただのコミュ障に戻って、学校生活を送るだけだ。
「ただいま」
「おや、おかえりなさいませ」
 家に帰ると、フォトがベッドに寝転んで、おやつを食べながら漫画を読んでいた。
「……フォト、だらけすぎ」
「よいではありませんか。戦士のしばしの休息です」
「誰が戦士だよ。そもそも人形がおやつを食べるなよ」
 フォトはその小さな体で頑張ってページをめくっては、ハムスターのように必死におやつを食べている。人形なのに何故が食事をするようだ。僕の漫画が汚れるからやめてほしい。
 話によると、怪盗とサポーターはパートナーなので寝食も共にするとか。
 正直、僕のプライベートが無くなってしまうので、ずっと一緒にいるのは勘弁してほしい。
「言っておきますが、サポーターに対してプライベートなんて気にする怪盗はいませんよ。どうぞ、私のことは置物とでも思って、エッチな本でも読み始めてくださいね」
「そんな本とか無いから。僕の事をなんだと思っているんだ」
「おっと失礼。あなたはそんな人じゃないですよね」
「そもそも、コミュ障の僕がそんなのを買えるはずがない!」
「ああ、そっちですか。あなたはそんな人でしたね」
 やれやれ、とフォトが馬鹿にしたようなため息をつく。やっぱりムカつく人形である。
「フォトは妙に人間っぽい所があるから、人に見られているみたいで落ち着かないんだよ。そういえば、テレパシーも使えるんだよね。逆に言えば、僕の考えていることも分かるの?」
 勝手に考えていることを知られるとか、プライベートも何もあったものじゃないぞ。
「ご安心ください。マスターが聞かれたくないと思ったことは意図的にカットすることも可能ですよ。心の中で聞かれたくないと思えば大丈夫です」
 よかった。思ったことを全部知られるのはさすがに勘弁である。僕は平穏を好むんだ。
「なので、安心してエッチな妄想とかもしてくださいね!」
 そんな事はしません! …………………ちょっとしか。
「ちなみに視界を共有することもできます。あ、それも任意で無効にできるので、女の子のお風呂を覗く時などは切っていただいて結構ですよ」
「覗くかっ! 犯罪だよ!」
 フォトはお菓子を食べ終えて満足したのか、軽く伸びをする。やっと仕事モードになったらしい。ずいぶんとギアが上がるのが遅い子である。
「さて、そろそろ怪盗クチナシの話題が広まっている頃でしょう。新人であれほど早く宝を盗んだ怪盗なんて初めてですからね。SNSなどで検索してみましょう」
 フォトの目が光りだした。どうやらこの人形はネット検索機能もあるらしい。
 話によると僕はかなりの好成績を収めたのだとか。歴代でも新人ではあそこまで早く宝石を盗んだ怪盗はいないらしい。つまり僕は誰もできなかった快挙をやり遂げてしまった事になる。
 本当に話題になっているかもしれない。ひょっとしたら、このまま何も喋らなくても人気者となれるのではないだろうか。目標とずれるが、それならありがたい。
「なにいぃぃ!? そんな馬鹿な!」
 そんなことを思っていたら、いきなりフォトの叫び声を上げた。
「マスターのことが全く話題になっていません! あんなに活躍したのに!」
「……そうなの?」
 頭を抱えるフォト。これは僕にとっても意外だ。好成績を収めたと思っていたのだが、印象に残らなかったのか? さらに強烈なインパクトが必要なのだろうか。
「あ! 分かりました! マスターの『ステルス能力』! これが原因です!」
「……どういうこと?」
「マスター。あなたは存在感が無さすぎたのです。それで観客の記憶も消えてしまったのです」
「ステルスが強すぎて、忘れられたって事? そんな事あり得る?」
「マスターが意図的に自分を隠そうとすれば、あり得ます。例えばあなた、昨日に『目立ちたくない』とか『忘れて欲しい』と客に対して強く願った記憶はありませんか?」
「…………あ」
 思い当たる節がある。決め台詞が失敗した時、僕は観客に『忘れてくれ』と願った。
「マスターが自分に自信を持たなければ、この現象は永遠に続くと考えていいでしょう」
 僕はこのままではずっと人々から認知されない怪盗となるわけだ。
「ま、まずいです。これは大ピンチです!」
 血も通っていないのに完全に顔が青くなっているフォト。無駄によくできている機能だ。
「この町の怪盗は人気が全てなのです。いくら実力が最強でも、認知されなければただのゴミです! 今のマスターは、まさにゴミクズ怪盗なのです!」
「あの、フォトさん? ちょっとくらい言葉を選んでくれませんか?」
「いや。まあ、それはいいとして」
 よくないし。かなり傷ついたぞ。
「このままではあなたは町に貢献できない怪盗として『粛清』されてしまう可能性もあります」
「ちょっと待った! 粛清ってなんだ!?」
「あまりにも町に貢献できない怪盗は、サボりの罰として怪盗の能力を剥奪される場合があります。その時に悪質と判断された場合、町の秘密を知ってしまった事で存在を消されてしまうという噂もあるのです」
「はああああああ!?」
 衝撃の事実だ。話が凄く危ない方向へ進んできた。存在を消されるとは、つまり……
「ええ。命を奪われるという事です。死にます。殺されます。あの世へ行かされてしまいます」
「なんだよそれ! そんな話は聞いてないぞ! 僕を騙したのか!? この詐欺師!」
「わ、私もこんなことになるんて思ってなかったんですよぅ。本当はコミュ障を個性にして、コツコツと人気を上げていくつもりだったのに……」
 コミュ障を克服するための怪盗生活は、いつの間にか生命の危機へと変化してしまった。
「まとめましょう。あなたは一刻も早く『コミュ障を克服して人気を得なければならない』。それができなければ近い将来、『死』が待っているでしょう」
「待て待て。そんな簡単にコミュ障を克服できないから困っているんだけど!?」
「そうですね。どうやらもっとマスターの事をよく知らなければならないようです。よし! ならば、明日からは私も学校にいきましょう!」
「…………は?」
 突然の爆弾発言。さすがにそれは予想外だし、どうしてそんな話になる?
「いやいや、誰かに見られたら危険だよ」
「大丈夫ですよ。学校で私は人形のフリをしておきます。基本は鞄の中にいますし、認識疎外の効果もあります。マスターとはテレパシーで会話もできるので問題ありません」
「そもそも、なんで学校に来るの? 必要ある?」
「学校こそが最もコミュ力を上げる練習の場ではないですか。私が傍に付いて、学校生活の中で会話のコツを教えて差し上げます。明日からは私の事をフォト先生と呼びなさい」
 これから学校では、フォト先生によるコミュ力口座が始まるらしい。なぜこんなことに?
「学校か。ふふ、楽しみだな〜。マスターはどんな学園生活しているのでしょう」
 何故かワクワクした表情のフォト。本人はよほど学校へ行きたかったようだ。
 まさか、これまでの話は全部フォトが学校へ行くがために仕向けた作戦じゃないだろうな?
「というわけで、明日からよろしくお願いしますね。マスター」
 こうなっては止めることは出来ない。コミュ障の僕に説得なんて高等技術は不可能である。
 果たして僕の学校生活は……そして僕の命はどうなってしまうのだろうか。

 × × ×

 翌日、僕はフォトを鞄の中に入れて学校へと登校する。
(おええ〜。気持ち悪い。マスター、もっとゆっくり歩いてください。鞄の中は揺れます)
 五分おきくらいにフォトからの苦情が頭に入ってきた。正直、かなりウザい。
(あの、それくらい我慢できないの? フォトは高性能なんだろ?)
(高性能でも無理なものは無理です。もうここで吐いちゃっていいですか? いいですよね?)
(ダメだっつーの! ゆっくり歩くから、頑張って耐えなさい!)
 というか、なんでロボットなのに酔うの? 本当に無駄に人間っぽい機能がついているよな。
 揺らさないようにフォトに気を使いながら学校向かう。なんだって朝からこんなに疲れなければならないのか。
 そうして死闘の末、ようやく学校に到着。着くころには、ほぼ揺らさずに歩くテクニックを僕は習得していた。自分で自分を誉めたくなる。
(おお! これが学校なのですね! たくさんの人がいます! JKの宝庫です!)
 当の本人は僕の苦労など全くお構いなしにはしゃいでいる。さっきまで死にそうにしていたのが嘘みたいだ。
(外の様子が見えるの?)
(舐めないでください。私に搭載された透視カメラは物質を透き通して、外を見ることができるのです。おかげでここからでも可愛いJKが透けて見放題ですよ。ぐへへ)
(おっさんか!)
 本当にこういう所だけ無駄に高性能だな! つーか犯罪だろ、この人形!
 そうして僕は自分の教室に入って席に着く。存在感の無い僕に相応しい窓際の席だ。
 フォトもクラス内の状況に興味があるらしく、透視能力を使って周りを見渡せているようだ。時折「おお」みたいな声が脳内に響いてくるのがその証拠である。
(お、あの周りから囲まれている可愛い子は、昨日の方ではありませんか)
 姫咲さんのことを言っているのだろう。彼女はいつでも人々から親しまれる人気者だ。
(ねえ、マスター、あなたもあの輪に加わってはどうですか?)
(無茶言うなよ。そんな事が不可能なのは、誰よりも君がよく分かっているだろ)
(おっと、そうでしたね。まずはコミュ力を引き上げなければどうにもなりませんな。そのために学校に来たのでした)
 こいつ、完全に目的を忘れていただろ。やっぱり遊びたいだけなんじゃないのか?
「ねえねえ、私さ。昨日、怪盗さんと会っちゃったよ!」
 姫咲さんは怪盗について話題にしていた。この教室ではいつでも怪盗の話題でいっぱいだ。
 それにしても姫咲さん、怪盗と出会ったんだ。凄いな。いったい誰と会ったのだろう?
(いやいや、どう考えてもマスターの事でしょ!?)
 はっ!? そうだった。僕も怪盗だったんだ。どうも現実味の無い話でどこか他人事に思えてしまった。もっと怪盗としての自覚を持たねば……
 そうなると、姫咲さんは僕の話をしているという事になる。本当に他人事じゃない。
「それで、サイン貰おうとしたんだけど、逃げられちゃったよ〜」
「当たり前だよ。怪盗は正体を知られたらダメなんだから。というかその怪盗、一般人に見つかるとか、かなりドジな怪盗よね」
 ドジで悪かったですね! ……これからは、もう少し気を付けます。
(この姫咲さんという方、ずいぶんと怪盗の話に熱が入っていますね)
(彼女は大の怪盗好きなんだよ。怪盗の事になると人格が変わるとの噂だよ)
(おや。だったら昨日はチャンスだったのですね。悪い事をしましたね)
(別に。正体がバレそうだったし、あの対応でよかったよ)
(そうですか。ま、あの人気なら彼氏の一人はいるでしょうしね)
(それが、姫咲さんは怪盗が好きすぎて、怪盗以外と付き合う気はないらしい)
(なんと! だったら昨日に食ってしまったらよかったですね。しまった)
 食うって……。この子、人形のくせに妙に下劣な性知識を持っているな。
「怪盗さんって、普段は何をしているんだろうね」
「きっと目立たないように普通に生活しているんだよ。このクラスにも潜んでいたりしてね」
「つまり、このクラスの目立たない奴が怪盗じゃねえのか?」
 教室が騒めく。いつの間にかクラスの男子までも会話に参加していた。クラスのアイドルである姫咲さんの話題はすぐに広まるのだ。
「よし、みんな。このクラスで目立たない奴を探すんだ! そいつが怪盗だ!」
 しかも、なぜかいきなりクラス全員で怪盗探しが始まってしまった。
 これ、まずくない? クラスで目立たない奴って、僕しかいないぞ。
(マスター。覚えていると思いますが、正体を知られたら怪盗の資格は剥奪です)
 もちろん、覚えている。さらに怪盗の正体を当てた人は賞金が貰える。それだけ皆は必死に僕の正体を暴こうとするわけだ。
 これは僕にたどり着くまで時間の問題か!? もうダメかもしれない!
「ち、よく考えたら、このクラスに目立たない奴なんて誰もいねーよ」
「そうだよな〜。簡単に怪盗が見つかったら苦労はしねーよな」
 その声を聞いた僕は、その場でこけそうになった。……僕の事は無視ですか。
(マスターは『目立たないという認識すらされていない』みたいですね。さすがでございます)
 褒められているようだが、全く嬉しくない。本当に透明人間にでもなった気分だ。
 ともかく、今回の危機は去った。いきなりこんなピンチになるなんて思ってもいなかった。
 学校……今まではなんとなくで過ごしていたが、本当はかなり危険な場所なのかもしれない。これからはもっと注意した方がいいようだ。
(まったくです。油断は禁物ですよ)
(ちなみにこんなのは今日が初めてだからね。フォトが来たらこうなったんだ。君、実は疫病神なんじゃないのか?)
(失礼な! 私はどちらかというと女神です!)
 女神ならもう少しその毒舌を何とかして欲しいものである。
「目立たない子……か。ふむん」
 姫咲さんが真剣な表情で腕組みをしていたのが少しだけ気になった。

 × × ×

 一時は危うかったが、他は特に問題なく、その日の授業は全て終えた。
(ふう、なんとか正体を知られずに乗り切りましたね)
(まあ、これが普通なんだけどね。今日が特別なんだよ)
(マスターの学校生活はよく分かりました。本当に存在感がありません)
(学校へ来ても何も面白くなかっただろ? それじゃあ、帰ろうか)
 結局フォトに嫌な部分を見られてしまっただけだ。気分はモヤモヤである。
(ちょっと待ってください。最後に屋上へ行ってもらってもいいですか?)
 フォトはなぜか屋上へ行きたがっている。何か用でもあるのだろうか?
 真っ先に思いついたのは、バカと煙は高い所が好きという言葉だが……
(聞こえましたよ! 失敬な! いいからさっさと屋上へ行きなさい)
(はいはい)
 つい思考が漏れてしまったらしい。フォトの機嫌を直す為にも言う通りにしておこう。
 屋上……昔は危険なので立ち入りは禁止されていたらしいが、この怪盗指定都市は安全性が完璧に確立されているので、自由に出入りが可能である。
 とはいえ、好き好んで屋上に行きたがる人なんて珍しいので、滅多に人はいない。
「はい、着いたよ」
 屋上へ到着。予想通り、誰もいなかった。いい景色で僕的にはスポットなんだけどな。
 ただ、今日の屋上は太陽が雲に覆われていて、お世辞にも絶景とは言えない。ちょっとタイミングが悪かったか。
 そんな事を考えていると、フォトが勢いよく鞄から飛び出した。
「はあ〜。鞄の中は窮屈でいいかげん息が詰まります。ああ、太陽! なんて素晴らしい光でしょうか!」
「……今は曇っているんだけど」
 僕のツッコミも無視して伸びをするフォト。屋上へ来た理由はずっと鞄の中にいて窮屈だったかららしい。まあ、丸一日狭い鞄にいたら外に出たくなる気は分かるが……
「ねえ、フォト。姿を見せていいの? 誰かに見られたらまずくない?」
「大丈夫ですよ。どうせ誰も来ません」
 さっき自分で油断禁物とか言っていたのは綺麗さっぱりに忘れているらしい。
 まあいい。僕は人の気配には敏感だ。もし誰かが来ても、ここに入ってくる前にフォトを鞄に押し込んでやれば問題は無いだろう。
「さて、マスター。今日一日マスターの行動を見させてもらいましたが、全く喋っていませんでしたね。このままではコミュ障なんぞ永久に治りません」
「辛辣だね。その通りだけどさ」
「というわけで、今からフォト先生の授業を開始します。コミュ障克服の練習をする約束でしたよね? 今日から放課後はここで練習ですよ」
 そういえばそんな話もあった。忘れっぽいくせにこういう部分はよく覚えている。
 自分に都合の良い部分に関してはポンコツではなくなるのだろうか。いい性格しているよ。
「とりあえず、コミュ障克服は置いておいて、まずは決め台詞の練習からです。怪盗として人気を取れるようになって粛清を回避しましょう。話はそれからですね」
 現状の最大の難点は勝手にステルスが発動してしまって、僕の存在が認知されない部分だ。決め台詞に慣れてビビらないようになれば、観客も僕の事を忘れないようになるという話だ。
「ではマスター。今から私が言う台詞をできるだけかっこよく言ってください。台詞は『やあ、子猫ちゃん。俺に惚れちまったかい?』です。さあ!」
 ……いきなりハードルが高くない!? できれば普通の台詞からがよかったのだが……
「えっと……や、やあ。子猫……ちゃん。俺に惚れ……惚れ……ってだあああ! 無理だよ!」
「この程度で恥ずかしがっていたら永遠に人気なんて上がりませんよ。あなたはまずはその照れ屋な性格を何とかしなさい」
 どこから取り出したのか、小型の鞭で地面をピシピシとたたくフォト。ノリノリである。
「ほれ! もっと声を大きく、そしてキザったらしく!」
 キザな奴は嫌いとか言ってなかった? なぜそんな臭い台詞を言わせたがるのか。
「ふふ、恥ずかしがっているマスターは可愛いです。これは良いストレス解消になりますな」
 こいつ、僕を使って遊んでやがる! というか、なんで人形にストレス解消が必要なんだよ!
 フォトめ。完全に僕が言えないと思っているな?
 馬鹿にされてたまるか! 僕だって本気になったらそれくらい言えるんだぞ!
「や、や、やあ、子猫ちゃん。お、俺に惚れちまったかい?」
 恥ずかしさを堪えて言ってやった。どうだ?
「お、おお。やりますね。では今度はもっと大きな声で!」
「まだ言うの!?」
「当然です。大きくハキハキと言えなければ意味がありません、さあ!」
 くそ、この人形。無駄にスパルタにハマっている。仕方ないちょっと付き合ってやるか。
 しかし、こんな歯の浮く台詞を一人屋上で吐いているとか、誰かに見られたら一生の恥だな。

「えっと、梔子君? こんな所で何をやっているのかな?」

 そう思った瞬間、女子の声が屋上の入り口付近から聞こえてきた。
「………………あ」
 視線を入り口に向けてみると、そこいたのは姫咲さんであった。
 こ、これはまずい! 大ピンチだ! 完全に見られてしまった!?
 僕は人の気配には敏感だった。しかし、決め台詞を言う為に全神経を言葉に集中していたので、今回は気付くことができなかった。
「あの、ごめん。覗くつもりは無かったんだけど」
「いつから、見ていたの?」
 この大ピンチに僕は一時的にコミュ障を克服出来ていた。
「…………『やあ、子猫ちゃん』の辺りから、かな」
 最も聞かれたくない部分を聞かれていたぁぁ!?
 このままでは僕が屋上で一人で歯の浮く寝言を言っていた頭のおかしい男として学校中の噂になってしまう。何とか誤魔化さないと!
「あ、あのね。姫咲さん。これは……そう! 怪盗の訓練に必要な事なんだ。だから、僕は一人で変な台詞を言っていたわけじゃないんだよ」
 おお、凄く自然に誤魔化せた! コミュ障の僕がこんなことができるんて奇跡である。やはりピンチは人を成長させる!
「え? 怪盗!? やっぱり、梔子君が怪盗だったの? 思った通りだ!」
「あ、しまった」
 僕は今、自分のことを怪盗だと言ってしまった! 誤魔化すことに夢中で、最も言ってはいけないことを言ってしまった。やはりピンチは人から正常な思考を奪う!
 姫咲さんは僕を疑って屋上に追ってきたのだ。視野の広い彼女は僕を認識している。もっと怪しまれていることに気付くべきだった。
「バカですかぁぁぁ! なんで自分から怪盗って名乗るんですか! あなたはアホですか! このおっちょこちょいのスカポンタン!」
 ここぞとばかりに毒を吐きまくるフォト。そして、その様子をまじまじと見る姫咲さん。
「この人形、喋ってる?」
「あ、しまった」
 今度はフォトの顔が青くなる。フォトの奴もブチ切れすぎて、ついつい人前で言葉を発してしまっていたみたいだ。
 フォトには認識疎外の効果が働いているが、あんな大声で罵詈雑言をぶちかましてしまったら、流石に認識されてしまったようだ。姫咲さんが相手なら尚更である。
 そして僕はここで反撃の機会を見逃さない。日頃の恨みだ!
「あのさ、フォト。今のはその気になったら、勘違いとか誤魔化せる話だったよね? 例えば『自分は怪盗じゃなくて怪盗を目指しているだけなんだ』って言えば、切り抜けられたよね。フォトのせいで僕が怪盗であることが確定しちゃったよ? どうするの?」
「うるさいです! 怪盗たるもの、人の気配くらい感じられるようにしなさい! マスターのせいです! そもそもコミュ障なのが悪いのです!」
「責任転嫁かよ! いいや、フォトが悪いね!」
 睨み合う僕とフォト。そしてそんな僕たちを交互に見る姫咲さん。
「うん。今のやり取りで、梔子君が怪盗さんだと確信したよ」
 もう言い逃れも無いほど完全にばれてしまった。さっきのやり取りがとどめである。
 こうして僕たちポンコツコンビは、二人仲良く自爆したのであった。

 × × ×

「う〜ん。それにしても、驚いたよ」
 それが姫咲さんの最初の感想だった。まあ、僕みたいな冴えない男が怪盗だったとか、普通の人間なら信じられなくて当然か。さぞ驚いたことだろう。
「梔子君があんなに喋っていたのを始めて見たよ」
 あ、そっち? でも、そうだよね。さっきのは僕が今までの学園生活の交わした全ての会話量を既に超えていた。普段まるで喋らない奴がここまで喋ったら驚かれて当然か。
「えっと。フォトちゃんだっけ? あなたが噂のサポーターさんなんだね!」
「む? 私の事を知っているのですか?」
「うん。私、怪盗さんが大好きだから、よ〜く調べているんだよ。この町には怪盗をサポートする妖精のような人形がいる。どうやらその噂は本当だったみたいだね?」
 そう言えば妖精が怪盗に勧誘するという噂は僕も聞いたことがある。情報は完璧に統制できてはいないようだ。
 僕の存在にもあっさり気付ける姫咲さんだし、フォトの認識疎外の効果も薄いのだろうな。
「そうですか。それは光栄な事ですが……」
 いつもなら真っ先に自慢しそうなフォトだが、今回に限っては気落ちしていた。
「マスター。あなたとのコンビもここまでです。儚い夢を見ているみたいでした」
「粛清とかされるまでも無かったね。これが僕の器だったんだ」
 二人で揃ってため息をつく。正体が知られてしまった以上、怪盗を辞めなければならない。
「わっ! ちょっと待って。どうしてそうなるの!? 私のせい?」
 姫咲さんが慌てて両手を振っていた。責任を感じているようだ。
「怪盗は正体を知られてしまったら辞めなければいけないルールのです。でも、姫咲さんのせいではありませんよ。隣にいる愚か者が全て悪いです」
「なんで僕なんだよ。フォトのせいだろ」
 この期に及んで罪を擦り付け合う僕達。ポンコツ怪盗にはふさわしい末路である。
「ねえ、それってさ。私が黙っていたら問題は無いんじゃないかな?」
「え? 黙っていてくれるのですか!? 本当にいいのですか!」
 フォトの目が輝きだす。どうやら正体を知られても本人が黙認してくれるならセーフらしい。
「で、でも、我々の情報を売れば一生遊べるほどのお金が手に入るのですよ? 姫咲さんはそれを蹴るというのですか?」
「私、お金なんていらないよ。それより怪盗さんが辞めちゃう方が嫌だよ。むしろお金を払ってでも続けて欲しい。だって、私は本気で怪盗さんが好きだから!」
「おお! 神です。このお方は女神です!」
 そうか! 姫咲さんは怪盗マニア! そんな姫咲さんが怪盗を辞めされる事をやるはずがなかった。どうやら首の皮一枚で僕の怪盗生命は繋がったようだ。
「マスター。姫咲さんが怪盗好きでよかったですね! ラッキーでしたね!」
「そうだね」
 不運と思った今回の出来事だが、まだ僕たちは運に見放されていなかった。本当に見つかったのが姫咲さんで良かった。
「あ、でもさ。その代わりに私の『お願い』を聞いてもらっちゃってもいいかな?」
「…………お願い?」
 フォトと顔を見合わせる。なんだろう。僕の正体を黙っていてくれるのだから、できる事なら叶えてあげたいが……
「あのね、私ね。怪盗さんに盗みに入って欲しい場所があるんだ」
「つまり、マスターの怪盗行為が見たいと。ふふふ、なるほど。マスターのかっこいい姿を見たいわけですな。いいでしょう。構いませんね、マスター?」
「もちろんだよ。でも、あまりハードルを上げないでくれよ」
 それが僕の正体を黙っていてくれるための交換条件だったら、むしろ破格である。こっちからお願いしたくらいだ。
 でも、なんだろう。なんか姫咲さんの目がちょっと普通じゃないような……気のせいか?
「場所はね。ここなんだ」
 住所を指定する姫咲さん。僕に行って欲しい所はあらかじめ決まっていたようだ。
「了解です。では予告状を送りますね。ちなみに姫咲さん。マスターの怪盗名なのですが……」
「知ってるよ。怪盗クチナシさんだよね?」
「げっ! 正解ですが、なぜ分かったのですか!? やはり、名前ですか?」
 僕も驚いた。自分がどの怪盗かまでは言ってなかったはずだ。もし名前から連想されたのだとしたら、これは改名の余地がある。
「う〜ん。なんとなく、かな。昨日に会ったでしょ? 雰囲気がその時の怪盗さんと似ていたんだ。だから、今回も梔子君の事を追ってきたんだよ」
「なんとなくって……フォト。雰囲気で正体を見抜かれる事とかあるの?」
「いえいえ、そんなことができるは姫咲さんだけですよ。一般人は認識疎外の壁を突破できないのが普通です。よほど怪盗が好きなのでしょうね」
 この町の科学力すら凌駕するとか、姫咲さんの怪盗好きは異常と言っていいレベルだ。
「ちなみにお仕事の件ですが……相手が予告状を拒否する可能性もあります。その場合は申し訳ないですが諦めてください」
 予告状を受け入れるかどうかは相手次第なので、これだけはどうしようもない。
「大丈夫。ここは絶対に予告状を受理するよ。ウェルカムです」
 何故か確信しているような口ぶりの姫咲さん。知っている場所なのか?
「だってここ、私の家なんだもん」
「え、そうなの!?」
 ターゲットは姫咲さんの家だった。そういえば、彼女の家はお金持ちだ。ミッションの場所に選ばれても不思議ではない。
 でも、クラスメイトの家に盗みを働くとか、ちょっと罪悪感がある。
「姫咲さん。あなたは自分の家の物を盗んで欲しいと言っているのですが、その意味を理解しているのですか?」
「うん。自分の家だから、むしろ遠慮しなくていいんだよ」
 確かに他人の家の物を盗んでくれ、とか言うよりは気が楽なのかもしれないが……
「ここは私がパパから貰った自由にできる屋敷なんだ。怪盗さん専用に作り替えちゃった」
 屋敷一つを自由にできるとか姫咲さんの家、ヤバすぎだろ! 僕なんかとは住む世界が違う。
「それでも、かなりの高級品を盗まれるのですよ。先に言っておくと、我がマスターは最強の怪盗です。盗まれるのは確定だと思っていいでしょう」
 それはちょっと過大評価だ、と言いたいが黙っていた。僕もやるからには失敗をするつもりは無い。『物を盗む』という点に関してだけは本当に自信はある。
「ふふ、『高級品』…………か」
 それを聞いた姫咲さんは何故か悪戯っぽく笑っていた。どういう反応だろう?
「まあいいです、それなら姫咲さん。盗むものを教えていただきませんか?」
 お宝が何かはどうせ後で分かる。ここで聞いてもいいだろう。
 姫咲家の物なので、何をお宝にしているのかも知っているはずだ。先ほどの含み笑いから察するに、かなり特殊な物を『お宝』にしていると見た。
 僕が盗むものは果たしてどんなものなのか。
「今回のお宝はね。なんとこの私、『姫咲莉愛』なのです!」
「「…………は?」」
 僕とフォトの声が重なった。『お宝』が姫咲さん? どういう事?
 彼女の心を盗んで欲しいとか? あれをガチでやれと?
 ちなみに姫咲さん本人は、両頬に手を当てて顔を赤らめていた。……なにその反応?
「えっと、姫咲さん? 説明してもらえますか?」
 フォトも困惑しながら姫咲さんを問い詰める。あのフォトが戸惑っているとは珍しい。
「このお宝は特殊でね。盗む対象は『人間』なんだ。だから簡単に言うと、私をさらってくれれば成功ってことだよ」
 盗む対象が『人間』。つまり姫咲さんの言う通り、彼女自身が『お宝』ということになる。
「……本当みたいです。ターゲットの部分に『姫咲莉愛』と書いてありました」
「ちょっと待って! 『お宝』として盗まれた姫咲さんは、どうなるの?」
「怪盗さんの『所有物』になっちゃうね。テヘ」
「はあああああああ!?」
 いやいやいや、それってヤバいだろ! 『所有物』って……姫咲さんを手に入れた怪盗は、彼女を使って好き放題してもいいって話じゃないの?
 というか、人間をモノとして扱っているってことだよね。大問題だよ!
「ひ、姫咲さん。もう一度だけ聞きますが、あなたは自分が何を言っているのか分かっているのですか?」
「もちろん。だって私、怪盗さんが大好きだもん。好きで好きで好きで好きで、もう我慢できないの! ああ、怪盗さんに盗まれたいよぉ! 私を所有物にしてください!」
 この子、何言ってんの!? 目がまともじゃないんだけど!?
 もう怪盗好きとか、そんなレベルじゃない。常軌を逸脱している。これは狂気だ。
 フォトでさえポカンと口を開けて姫咲さんを見ていた。こんな人間は初めてなのだろう
「でもね。もし、悪い怪盗さんの所有物になっちゃったら、私の人生がとんでもない事になっちゃうよね。私はとても危ない事をしていたのだと、最近になって気付いちゃったんだ」
 それ、最近なの!? 最初に気付くべき所だよね!?
「というわけで、良心がある怪盗さんに助けてもらおうと思ったのです。かっこいい怪盗さんに助けてもらうのも私の夢だったんだ。うん、ワクワクするよ〜」
「マ、マスターが良心的とも限りませんよ。違ったらどうするつもりですか?」
「それは大丈夫。私、人を見る目はあるつもりだから。梔子君は私を助けてくれるよね?」
「…………う」
 全てを見透かしたような目で僕を見る姫咲さん。すでに彼女の手の内だ。
 確かに僕が姫咲さんを盗んでも何もせずに解放してあげれば特に問題は起こらない。そして今の彼女を助けられるのも僕だけだ。他の怪盗に奪われる前に僕が奪えば解決だ。
(マスター、ここは彼女の依頼を受けるしかありません。断ったらヤケになって我々の正体を言いふらしたりするかもしれません。愛が強い人間ほど裏切られた憎しみも強くなるのです)
 怖っ! 憧れの姫咲さんに憎まれるとか、冗談じゃない。しかも完璧人間である彼女から恨まれたら、後々とてつもなく酷い事になりそうな気もするのが恐ろしい。
(まあ、難しく考える必要はありません。言うならばこれはごっこ遊びです。怪盗に盗まれるというちょっぴり危ない遊びを体験しよう。それだけの事ですよ)
 確かにそう言われたら大した問題も無い気がしてきた。彼女の危ない遊びに付き合ってあげる。それだけだ。ちと火遊びが過ぎる気もするが……
「分かりました。姫咲さん、あなたの願いはこの怪盗クチナシが叶えて差し上げましょう」
「ありがと! そう言ってくれると思ったよ。私、楽しみにしているからね。怪盗さん!」
 満面の笑み。まるでこの結末が分かっていたかのような態度である。これも成績トップである彼女の計算なのだろうか。その才能はもっと社会の為に使った方がいいと思います。
(ねえフォト、もしかして僕たちは一番知られてはいけない人に正体がバレちゃったんじゃないのかな?)
(……むう)
 最初は姫咲さんで良かったと思っていたが、今やその判断は裏返りつつあった。
「そういえば、梔子君っていつも黙っているけど、それは自分が怪盗である事を秘密にするためなのかな? 目立たないようにしているのもそれが理由なの?」
「え、いや。それは……」
 何気に痛い部分を突かれた。どう説明しよう。
 『実は僕、コミュ障なんです』とか言ってしまって大丈夫だろうか? 憧れの怪盗がコミュ障とか、それで失望されてそれこそ怨まれたりしないかな?
「あ、姫咲さん。それは違いますよ。実はマスター、コミュ障なんです」
 って、この人形! 簡単に暴露しやがった!? マスターの弱点を簡単に晒すじゃない!
「へえ、そうなんだ。コミュ障の怪盗さんなんてすごく珍しい! うん、可愛い!」
 姫咲さんの答えを聞いた僕はその場でズッコケそうになった。……本日二度目である。
 というか、なにその反応? もしかして、姫咲さんもフォトと同じタイプ?
「ふっ。思った通りです。彼女からは私と同じ属性を感じました」
 マジか。いや、まあコミュ障を気持ち悪がられないってのはありがたい話なんだけどさ。
「そうだ。姫咲さん、先ほども会話の練習をしていたのですが、よろしければあなたもマスターの会話の練習に付き合っていただけませんか?」
「え? いいの? やった! 怪盗さんとたくさん会話ができるなんて、夢みたい!」
 そしていつの間にか姫咲さんも会話の練習相手に加えられてしまった。なんだか僕の意志は無視してどんどん話が進んでいる気がする。
 彼女と会話の練習が出来るのは嬉しい反面、緊張の方が気持ちの方が幅としては大きい。クラスのアイドルと会話とか、僕にはまだレベルが高いのではないか?
 ただ、人気者で誰とも仲良くなれる彼女だからこそ、得る部分が大きいのは間違いない。ただ可愛いだけじゃあそこまでの人気は出ないだろう。確実にコミュ力の影響もあるはずだ。
 あわよくば、その会話術を盗むことができれば、僕にとってこれほどの収穫はあるまい。
「怪盗さん。会話のコツはね。『信頼』する事だよ。私を信頼してくれたら怪盗さんも会話できるようになるよ。早く私を信頼してくれたら嬉しいな。その時を待っているからね」
 信頼……それが誰とも会話が出来る姫咲さんの極意らしい。一応、意識してみるか。
「でも、その前にまずは私の『お願い』を叶えてもらわないとダメだだよ、怪盗さん♪」
「…………はい」
 本当にとんでもない人に正体を知られてしまったな。フォトが学校に来た途端にこれだ。
 本当にこの子は不幸を呼ぶ死神か何かではなかろうか? 本人曰く女神らしいけど。

 第四話 鬼畜怪盗は変装ができない

 あれから解散となり、僕は家に帰った。今日一日だけで本当に色々な事があった。
 もうトラブルはお腹いっぱいだし、ちょっと早いけどそろそろ寝よう。一度気持ちをリセットさせておきたい。
「しまったぁぁぁぁぁ!」
 そう思った所でフォトの叫び声が響いてきた。どうやらまだ安眠するわけにいかないらしい。
「フォト、どうしたの?」
「マスター。私、やってしまいました」
「まあ、フォトがやってしまうのはいつもの事だよね」
 僕の軽口にも乗ってこようとしないフォト。どうやら本格的に問題が起きたらしい。
「実は、礼の姫咲さんの件、ランクが『Aランク』なのです!」
「……なるほど」
 前回は初心者向けのEランク。Aランクは最高難易度で完全に上級者向けだ。
 まだ怪盗活動が二回目である僕が挑むのは自殺行為と言ってもいい。
「考えたら、『人を盗む』なんて内容が低ランクのわけありません。こんなのは明らかにAランクの依頼です。そこに気付かなかったとは不覚! マスターに恥をかかせてしまうとは……」
 フォトが悔しそうに握りこぶしを作っていた。すでに僕の失敗を確定している反応だが……
「ねえ、フォト。一応ゲームだったら、僕はAランクでも一人で成功させていたよ」
「そ、そうか! 確かに最強のマスターならば、Aランクの突破も不可能ではありません!」
「ただ、できればもっと強力な『アイテム』が欲しい」
 怪盗には強力なアイテムが必要不可欠だ。アイテムの強さが怪盗の強さと言っても過言ではない。スタンナイフだけでAランクの突破はかなり骨が折れる。
「フォト、アイテムを手に入れる方法は?」
「お金をいただければ、ランダムでアイテムが一つ貰えます」
「……………ああ、ガチャだね?」
「はい。ガチャです」
 怪盗ゲームは成功報酬でガチャを引いて、アイテムを手に入れるシステムだった。それ以外は課金要素となるのだが、これは実際の怪盗でも同じらしい。
「ガチャは一回いくらなの?」
「最低で十万円からです」
「高っ!? そんなお金無いぞ!」
「一応、前回の成功報酬があるのですが……」
 そうだった。前回の宝石の価値は一千万。報酬がその一パーセントなのでちょうど十万だ。
「このお金で豪遊してもいいのですが、個人的にはアイテムに投資することをお勧めします。強力なアイテムが手に入れば、その分だけ高難易度に挑める。そうなればさらに貰える賞金額は上がるでしょう。将来的に見れば、アイテム投資につぎ込んだ方が効率はいいです」
「……ふむ」
 間違いない。高ランクで手に入る賞金は低ランクと比較にならないほど大きい。十万なんてはした金になるレベルだ。強力なアイテムで高ランクを成功させる方が賢いやり方だろう。
 だからこそ全ての怪盗は手に入れた莫大な賞金を全てガチャに投資する。そのお金は全て町の発展費へと回される。それで町が潤うのだ。本当によくできたシステムである。
「分かった。十万円でガチャを引くよ」
「了解です。さて、どんなアイテムが手に入るのか」
 ゲームでは課金した場合、手に入るアイテムは確実にレアとなる。恐らく同じ仕様だろう。その部分は良心的かもしれない。
 僕の狙いは『銃』である。飛び道具が手に入るだけで攻略は一気に楽となる。
「出ました! 今回手に入ったアイテムは……激レアアイテムです! SSRですよ!」
「本当!? どんなアイテム?」
「『変装グッズ』です! 一度だけしか使えませんが、他人と完全に同じ姿となれますよ!」
「………………ああ、そう」
 思ったのと違った。個人的には武器が欲しかったのだが……
「え? 何でそんな反応なのです? これほど怪盗らしいアイテムはありませんよ! 多くの怪盗が喉から手が出るほど欲しがっているアイテムです。『ばかもん! そいつがクチナシだ!』とかを実現できるのです。絶対にウケがいいですよ」
「まあ、そうかもしれないね」
 ある意味では怪盗の夢とも言えるアイテムなのだろうか。怪盗と言えば変装だし。
 便利と言えば便利だし、このアイテムで何とか乗り切るしかないか。
「そういえば、フォト。最強のアイテムってやっぱり銃なのかな?」
「最強ですか? いえいえ、銃なんてチャチなものじゃないですよ。使いやすさを考えたら最強の定義は難しいですが……私が思う最強アイテムはズバリ『アリスリング』です」
「アリスリング?」
 僕の聞いたことの無いアイテムだ。ゲームには存在しないものらしい。
「炎や氷などを発射できる指輪です。このアイテムの何が凄いのかって、持ち手の想像力によって無限に威力が増大する部分です。本人のイメージを具現化できるのです」
「使い手によって威力が変わるって事?」
「その通り。最強のマスターがアリスリングを使えばどれほどの威力になるのか、考えるだけでワクワクします。ちなみに属性は火や水など様々で、その属性での具現化しかできません」
 種類はたくさんあるらしい。手に入れた属性の分、自分好みに具現化できるという事か。
 かなり現実離れしたアイテムである。高レベルになるとそんな戦い方もできるらしい。
「そういった異能が混じったアイテムをうまく使えることが怪盗としての本当の強さでもあります。この部分はゲームとは違うので覚えておいてください」
 異能に近い力を使えるアイテム。現実はゲーム以上にぶっ飛んだ代物があるんだな。
「まあ、まだまだ先の話です。残念ながらアリスリングを引き当てるには最高レベルのガチャを引かなければなりません。その中でも激レアなので持っている怪盗は一握りです。しかも、想像力が強い怪盗でないと高威力を引き出せないので、扱い切れない怪盗も多いのです」
 怪盗の想像力によって威力が増減するからこそ、その使いどころも難しいようだ。最強の威力を引き出すにはかなり限定された条件がいるってわけだ。
「いつか、マスターがアリスリングを使った時、それがどんなものになるのか。それを楽しみに怪盗を続けるのもいいかもしれませんね」
 僕が想像する最強。今はまだイメージもつかないが、いずれそんな日も来るのかもしれない。

 × × ×

 いよいよ姫咲さんを盗む予告の日付がやってきた。同時にAランクへの初挑戦でもある。
 開始時間は前回と同じく午後八時。僕は三十分前に姫咲家に到着していたが、場は既に前回とは比べ物にならないほど異常な盛り上がりを見せていた。
『さあ! 今回のライブはかなり特殊でございます。なんとお宝が可愛い女の子なのです!』
 心なしか、実況の方も声に熱が入っている気がする。息も荒く目が煌めいて見える。
 今回はビッグスクリーンが配置されており、そこに姫咲さんの姿が映っていた。さすがは姫咲家というか、とんでもない財力である。
 そして姫咲さんはなぜかドレス姿であり、映像では牢屋の中にいる。その表情は少し儚く、天上を見上げている彼女は実に絵になっていた。さしずめ囚われの姫といったところだ。
『正直、今回はさすがの私もドン引きです。こんな可憐な美少女をお宝扱いするなんて、倫理に反します。ですがここは怪盗指定都市。倫理よりも面白さが優先されるのです!』
 普通なら許されざる様な行為もこの怪盗指定都市ならば許容範囲だという事か。恐ろしい町である。怪盗指定都市の闇を見てしまった気分だ。
「ふえ〜ん。私、怪盗さんに好き放題されちゃうのかな? くすん」
「いいぞ〜姉ちゃん。ぐへへへへ」
 ちなみに囚われの我が姫はノリノリであった。おまけに観客もノリノリである。この町の闇以上に姫咲さんの闇の方が強大な気がするのは気のせいだろうか。
『しかし、普通はいくら怪盗でもこんなバカげた依頼は受けません。こんな非人道的な報酬は人気が落ちる危険がありますからね』
 言われてみれば、この目的は『好き放題できる女を手に入れる』というものだ。
 人気が重要であるこの怪盗指定都市でこんなのを受けるのは自殺行為じゃなかろうか?
『よほど女に飢えていない限りはスルーするはずです。ですがここに女の体の事しか考えていない鬼畜怪盗が存在しました。その名も怪盗クチナシ!』
 ちょっと待て! その言い方じゃ僕が性欲の事しか頭にない奴みたいじゃないか!
「うおおおお!」
 ちなみに実況の言葉になぜか場が大きく盛り上がり、歓声も上がっていた。
「凄いぞ! ここまで性欲に素直な怪盗はそうはいない! 逆に好感が持てる!」
 一部の性欲マニアの心を掴んでいたようだ。ちなみにほとんどが男である。
『普通なら女を好き放題する内容とか、叩かれる行為なのですが、彼はあえてそれを恐れずに受注しました。怪盗クチナシの勇気と性欲に拍手を!』
 会場が拍手で満たされる。それを見た僕は何とも言えない虚しい気持ちになっていた。
「マスター、良かったですね。褒められていますよ!」
「嬉しくない!」
「ファンが増えるかもしれませんよ。いっそ鬼畜怪盗の路線で人気を狙ってみませんか?」
「嫌だよ。というか、僕にそんなのが出来るわけないだろ」
「冗談です。まあ、男ばかりですものね。やはり人気が出るなら女の子がいいですよね」
「そういう意味じゃないんだけど……」
 よく考えたら、この依頼は放置してもよかったんじゃないだろうか? 誰もこんなの受けないだろう。まあ、僕は正体を知られているわけだし、断る選択肢は無かったんだけど……。
『さあ、いよいよライブが始まります! 果たして警察は姫を守り切れるのか? それとも姫は怪盗に奪いさられて、その純潔を散らしてしまうのか? 怪盗ライブの始まりです!』
 これだけ聞くと完全にこちらが悪役側である。いや、状況的には間違っていないか。
「フォト、今回は一気に終わらせる。『本気』を出すよ」
「え? どういう意味ですか? もしかして、前は本気じゃなかったとか?」
 そう。実のところ前回は自分がどこまで動けるか試していた。言うならば試運転だ。
 怪盗の力はだいたい理解できたし、今回は出し惜しみ無しでいいだろう。
 完全に集中する。ゲームでラストステージに挑む時の、あの感覚だ。
 見えてきた。どのルートが一番効率的にお宝にたどり着けるのか。
 特にフォトを通じて姫咲邸の構造が全て見えるのはありがたい。入り口は数十か所あるが、その中でも警備の薄い場所を僕は真っ先に把握した。
 ステルスを最大に意識してその場所まで移動。そのまま侵入に成功する。
(まさか!? Aランクの侵入をいとも簡単に?)
 そこから屋敷内を進む。警備は最高レベルに厳重だが、僕のステルス能力もそれに負けない。
 最速かつ、最短距離で宝まで距離を算出。今回は一切無駄な行動はしない。
 単独で行動している警察は一瞬で気絶させ、二人以上で警備されている場所は迅速に通り抜ける。途中で落とし穴や鉄球などの罠も見受けられたが全て回避。監視カメラやセンサーには絶対に触れないように進んだ。
 最高難易度のAランク。だが、僕の本気はそれを遥かに上回っていた。
(馬鹿な……なんという進行速度。これが本気を出したマスターなのですか! この調子なら本当に突破できてしまいそうです。あなたはまたしても私の予想を上回ったのですね」
 特に今回は絶好調である。絶対に失敗できない思いからいつも以上に集中が出来ている。
 既に半分ほど問題なく進んでいた。姫咲さんの所まであと少しだ。
(女体の為なら能力以上の力を発揮するという事ですか。さすがはマスターです!)
(聞こえの悪い事を言うんじゃない!)
 次の大広間を抜けたら、姫咲さんが捉えられている場所へ到着だ。もうお宝は目の前である。
(ち、ここはかなりキツイ)
 だが、その広場には十人以上の警察が交代をしながら徘徊していた。質がかなり高く、隙も無い。ここは僕でも正面から突破するのは難しい。
 とりあえずは、目立たない場所に隠れよう。作戦を練る必要がある。
(ここは最終防衛ラインですね)
(最終防衛ライン?)
(お宝前の最後の砦。一番難しい部分です。ゲームで言うなら、ボスステージですね。高ランクではこういうギミックも発生するのです)
 最終防衛ライン。確かにその名にふさわしい警備だ。並みの怪盗では突破は不可能だろう。
(しかも、彼らは銃を所持しています。見つかったらハチの巣です)
(下手すれば死ぬだろ、それ)
(大丈夫です。実弾ではなく、電撃を伴うテーザー銃です。怪盗の体は頑丈なので、死ぬことはありません。ただ、死んだほうがマシというほど痛いだけです)
(そっか。それなら安心……できねーよ!)
 これだけの人数から銃撃されたら、いくら僕でもひとたまりも無い。いや、どれほどの怪盗でもここを楽に突破するのは不可能だろう。現最強といわれるアメジストでも難しいはずだ。
 だが、僕には最後の切り札があった。そのために大金を払っていたのだ。
(よし、フォト。ここで変装グッズを使おう)
(そうですね。今が使いどころでしょう。異論はありません)
 前回のガチャで手に入れた変装グッズ。高価なレアアイテムであるが、決して失敗できない今こそこのアイテムを使う時だろう。
(それでは変装セットを使用します。警察に化けるという事でよろしいですね?)
(うん。それでいい)
(了解です。それではいきますよ。ワン、ツー、ドロン!)
 フォトが手品師みたいな台詞を発した瞬間、僕は煙に包まれた。
 一瞬視界が塞がれたが、煙が解けた頃には自分の服装が変わっていた。
(こんな感じでいいですか?)
 客観的に見れるように、フォトが僕の姿を小型のバーチャル映像にして見せてくれた。
 そこにはどこをどう見ても、普通の警察にしか見えない自分がいる。
(か、完璧じゃないか。これは驚いたよ)
(ふふふ。そうでしょう? これがレアアイテムの力ですよ)
 さすがに激レアだと言うだけある。他の人が見ても怪盗が変装しているなんて、絶対に気付かれない。まさか怪盗が紛れているなんて夢にも思わないだろう。
(これなら楽々突破できますね。後々になって『ばかもん、そいつがクチナシだ』とか言わせてやれば完璧ですな。くははは)
(はいはい。ま、安心なのは間違いないね)
 僕は素知らぬ顔で物陰から登場した。そして、そのまま最終防衛ラインを進んでいく。
(く……ですが、もし万が一この場で変装が見破られてしまった場合、我々は完全に終わりです。どんな怪盗でも突破する術は無いでしょう。絶対にバレてはなりませんぞ)
(……分かってる)
 ここは完全に警備のど真ん中で、言うならば囲まれている状態だ。この状態で正体を見破られてしまったら確実に詰みである。嫌でも心に緊張が走った。
 フォトも彼女にしては珍しく、不安げな感覚が伝わってくる。今は最大のチャンスであると同時に、最大のピンチであるとも悟っているようだ。
(マスター。こんな時、絶対にやってはいけないのは『パニックになる』事です。逆に言うならば『常に冷静である』。これが怪盗としての極意だと思ってください)
(確かに……パニックになったら終わりだよね)
(ええ。怪盗にトラブルはつきものです。ですがそんな時、どう落ち着いて対処できるかで怪盗の真価が問われます。大丈夫、もしパニックに陥りそうになったら私の目を見てください。きっと私があなたを落ち着かせて見せますから)
 初めてフォトが頼もしく思えたかもしれない。そうだな、何かあった時は焦らずフォトと相談すればいい。二人ならきっと何とかなるだろう。
 ただ、警察の反応を見る限りでは全く怪しまれていない。大丈夫、このまま行けるはずだ。
「異常は無いか?」
「はっ! 異常無しであります!」
 目の前の警察がお互いに敬礼をして、状況を確認していた。よく見たら周りは全員が同じような事をしている。俗に言う定時連絡というやつだろうか。
 当然ながら、僕の前に現れた警察も同じように敬礼をしていた。
(マスター! このまま何もしなければ怪しまれてしまいます。相手に向かって敬礼を返してください。ピシっと背筋を伸ばしてやるのですよ)
(了解)
 言われた通りきちんと意識して敬礼をした。自分ではなかなか悪くないと思う。
(おお! 完璧じゃないですか。どう見ても警察そのものですよ)
 フォト先生からも絶賛の言葉を頂いた。なんとなくだが、うまくいったようでなによりだ。
「ふむ、異常は無いか?」
 続いて警察が僕に質問してきた。鋭い目線が僕を突き刺すように睨み付けてくる。
(この調子で質問にも答えてください。黙っていては不審に思われます)
(任せろ!)
「は、は、は、はい。い、い、異常は……あ、あ、あり、ありま……せんでございます」
「………………………」
 一瞬の静寂。そして……
「貴様ぁぁ! 何者だぁぁぁ!」
「マスターのバカぁぁぁ!」
 警察の怒鳴り声とフォトの叫び声が同時に聞こえてきた。
 周りの警察が一斉に腰から拳銃を抜いて僕に標準を合わせて来る。
「く、どうして気付かれたんだ!」
「気付かれるに決まってます! このコミュ障!」
 勢いで行けるかなと思ったが、そんなことはなかったよ。コミュ障は辛いよ。
 僕は変装グッズを脱ぎ捨てて、臨戦態勢を取る。こうなればやるしかない。
「あいつがクチナシだ。あのコミュ障っぽくて、まぬけな怪盗だ!」
「おお、フォト。夢が叶ったじゃないか。こんな感じの台詞を言わせたかったんだよね?」
「全然嬉しくありません! ダサいです!」
 完全に囲まれていて不利な状況。いくら僕でもこの場面の突破はかなり厳しい。
 だがこんな時、決して忘れてはいけないのが『パニックにならない』だ。さっき言われたばかりじゃないか。これは僕の怪盗としての真価が問われる時なのだ。
 冷静に、落ち着いて対処すれば、きっと巧妙は見えるはずだ。ここは力を合わせるんだ。
「フォト、突破口を切り開こう。何かいい案はあるか?」
「あわわわわ。終わりです、我々はもう終わったんです。あわ、あわわ」
 って、こいつ。完璧にパニックになってやがる! 言った本人がパニックになってどうする!? 本当にメンタル面でもポンコツだな!
 ええい、もういい! 僕一人で何とかする! このポンコツに頼ろうとしたのが間違いだ。
 それに僕はゲームではこういった高難易度ほど燃える性格だ。この状況はゲームで最終ステージに挑んだあの時に似ている。その高揚感を思い出す。
 機械のように感覚を研ぎ澄まし、全ての銃撃の射線を予想。誰がどの方向から銃を構えているのか把握。そこから安全な回避ポイントを見極める。
 見えた! 全て順弾を回避できるルートをついに発見したぞ!
 僕がそう思った瞬間に敵は一斉射撃を開始。だが一瞬遅い。僕は既に計算を完了している。
「なにい! 馬鹿な!」
 全ての銃撃を回避されて、警察は大きく動揺する。そう、この瞬間を待っていた!
 相手はAランクの警察。まともに戦えば苦戦は必至だったが、動揺したその瞬間だけは大きな隙が生まれ、連携が崩れる。このタイミングなら、今の装備でも突破が可能だ!
「ぐわ!」
 最速で一気に警察を気絶させることに成功。数さえ減らせば僕の実力なら制圧は十分に可能だ。この好機を逃さずに畳みかけるぞ!
 思った以上に相手の動揺が大きく、さらに尾をを引いたことが幸いした。僕はその場の警察全員を制圧した。運の味方もあったのだが、計算通りに事が運んでよかった。
「おお、神よ。我がまぬけなマスターをお許しください。アーメン」
 敵を全員倒したというのに、フォトさんは虚ろな目で神に祈っている。状況を全く把握できていないようだ。というか、完全な現実逃避である。
 なんで人形のくせにこんなにメンタルが弱いんだ? これではまるで僕が機械みたいだよ。
「フォト、戻ってきて。敵は全員倒したから、もう安全だよ。あと、まぬけで悪かったね」
「はっ!? ……って、ええ!? マスターが全員倒したのですか! あの状況で!? しかもノーダメージとは…………えっと、これって夢? おお、神よ。アーメン」
 状況を把握したフォトがまたしても現実逃避しかけている。こら、無限ループするな!
 まあ、気持ちは分からなくもない。自分でも信じられなくらいうまくいったのは確かだ。
 あの状況はスタンナイフだけで突破できた怪盗は僕だけだろう。もしかしたら有名人になってしまうのかもしれない。
「今回は頑張ったよね。これで僕の評価もうなぎ登りなんじゃないかな」
 実はこのフロアに隠しカメラが設置されていることは知っていた。僕の神がかった動きは観客の目にしっかりと届いているはずだ。
「えっと、その、すみません。ぶっちゃけ、かなりまぬけなミスで変装を見破られたので、実際の所、評価はダダ下がりだと思います。それに動きが早すぎて観客の皆様は見えていません」
「…………あ、そう」
 世知辛い世の中である。せっかく頑張ったのに誰も見てくれてないとは……
 もういいや。さっさと終わらせてしまおう。敵も倒したし、後はこの先に進んで姫咲さんを救出するだけだ。早く終わらせて家で泣こう。
 正面の大きな扉を開けた先に姫咲さんはいた。姿だけは本当に儚いお姫様だ。
「え? 怪盗さん!? もう来てくれたんだ! 感激だよ!」
 僕の顔を見た瞬間、彼女の顔が一気に嬉しそうになった。とんでもない目に付き合わされたが、この無邪気な顔を見ると許してしまいそうになる辺り、僕もまだまだ甘い。
 どうせなら『今の君の笑顔が最高の報酬だよ』とか言ってみたいが、コミュ障の僕にはあまりにも難易度が高い。そんな台詞を言えるのはもっと先の話だろう。
「マスター、姫咲さんの笑顔が何よりの報酬ですってさ」
「え? それ……本当? 怪盗さん、そんな風に思ってくれているの?」
「ちょ………フォト? 勝手に心の中の台詞を言わないでくれる?」
「いいじゃないですか。良い台詞でしたよ。ご自分で言えたら百点満点です」
 台詞自体は悪くなかったらしい。まあ、ご自分で言えるのは何年先になるか分からないが。
「でもよかったよ〜。よく考えたら、新人さんにAランクをお願いするなんて無茶だったよね」
「まあね。正直、かなり骨が折れたよ。本気で捕まる所だった」
「あれは単なるマスターの自爆ですけどね」
「うっさい!」
「うん、今回は『巨大怪獣ベヒモス』が出なかったからまだマシだったかもしれないね」
 …………なにそのヤバそうな名前。怪獣?
「前に言っていた巨大ロボですよ。あれはもっと大掛かりなミッションにしか登場しません」
 さすがの僕も怪獣の相手はできない。そんなのが出なくてよかったよ。
 檻を開けて姫咲さんを解放する。この檻は中からは開かないが、外からは簡単に開けられる構造のようだ。これにて、今宵のお宝はいただきである。
「ふふふ、これで私、怪盗さんの『所有物』になっちゃったね」
 ちょっと誘うような笑顔の姫咲さん。怖いです。何故だか食べられそうな予感がした。
 なんで誘拐する側の僕がこんなにビビらなければならないのか。立場、おかしくない?
「まあ、そうですね。マスター、どうせならこの機会に童貞を卒業させていただいたらどうですか? 今のあなたにはその権利がありますよ」
「なんで僕が童貞って前提で話が進んでいる?」
「おや、これは失礼。経験がおありでしたか?」
「……………………無い」
「ぷっ」
 くそ! こいつ、笑いやがった! 本当に人形のくせに生意気だ!
「別にいいけどね! さ、行こう。姫咲さん。…………姫咲さん?」
 姫咲さんの方を見ると、彼女は顔を真っ赤にして俯いていた。珍しく乙女の表情である。
「む? この反応……ひょっとして、姫咲さんも処女なのですか?」
「はう!」
 どうやら図星らしい。姫咲さんの反応もそうだが、僕としても意外な事実であった。
「はあ〜、クラスカーストのトップのリア充がまだ未経験とは嘆かわしい。この手の経験は多い方が女としての魅力は磨かれるのですよ。あなたもまだまだお子様というわけですな〜」
 何で人間ですらないフォトさんがクラスカーストを気にして、処女がどうとかでマウントを取っているんだろう。いつも思うけど、変な所に拘りがあるよな。
 それを聞いている姫咲さんは笑顔なのだが、次第にこめかみに血管が浮き出てきた。
 あ……姫咲さん、珍しく怒っているな。ちょっとレアな場面かもしれない。
「愛しい私の怪盗さん、お願いがあります。フォトちゃんを黙らせてください」
「了解しました、姫」
 フォトに特大のデコピンをかましてやると、彼女は「ぎゃふん」と叫び声を上げて目を回す。
「ざまあみろ。童貞を馬鹿にしたら、こうなるんだぞ」
「やったね! 私たちの勝ちだね。ふふ」
 二人で笑い合う。今、一瞬だけあの姫咲さんと良いコミュニケーションを取れた気がした。
「それじゃ、行こっか。……あ、そうだ。怪盗さん、もう一つお願いしてもいいですか?」
 姫咲さんが上目遣いでこちらを見て来る。なんだろう。
「えっとね、『お姫様抱っこ』で連れて行って欲しいな」
「……う」
 簡単なようで難しい注文。童貞の僕には刺激が強すぎる内容だ。
 ただ、非常に理にはかなっている。まだ外には警察がうようよしているだろう。
 警察の追撃をかわし、決め台詞を言って逃げ切らなければならないが、ドレス姿の姫咲さんは当然ながら俊敏な行動などできない。
 それなら両手が塞がってでもお姫様抱っこをした方が効率は良い。
「分かったよ。……えっと、失礼します」
 ひょいっとひざ元から姫咲さんを抱える。怪盗の力のおかげでもあるが、とても軽かった。
 しかもめちゃくちゃ柔らかくていい匂いがします。これは理性を抑えるのが大変だぞ。
「えへへ〜。怪盗さんがお姫様抱っこをしてくれたよ〜。あ、写メ取っちゃおう」
 こっちの気も知らずに嬉しそうな姫咲さん。無邪気なものである。
 本当にこの場で童貞を捨ててやろうか、と思いつつ、そんな大それたことができないのは誰よりも僕自身がよく分かっていたのであった。

 × × ×

 窓から飛び出して、屋上まで一気に駆け上がる。ここが決め台詞を言うのに適した場所だ。
 周りからは大きな歓声。気付いた警察が向かってきているが、かなり遠い。ここなら決め台詞を言って離脱するくらい時間の余裕はありそうだ。
『おおっと、怪盗クチナシ。お姫様抱っこをして出てきたぞ! 羨ましいですな〜』
 実況うるさい。こっちは緊張で気絶しそうなんだぞ。童貞の苦労を少しは分かれ!
 気苦労もさることながら、警察も迫ってきている事だし、さっさと終わらせてしまおう。
「ごめん、フォト。それじゃ、決め台詞をよろしく」
 今回は失敗できないし、決め台詞はフォトに決めてもらっていいだろう。練習はお休みです。
「はらひれほろ〜」
「ってフォト? お前、まだ気絶してたのかよ!?」
 さっきは強くデコピンをかましすぎたか。ちょっと怒りで力みすぎたかもしれない。
 童貞の怒りが強すぎたせいで、何気に大ピンチである。このままでは決め台詞が言えないぞ。
「怪盗さん? どうしたの?」
「いや、その……」
「あ、そっか。会話が苦手だから、決め台詞はフォトちゃんに任せていたんだね?」
 さすがは成績トップの姫咲さん。あっさりと僕たちのカラクリに気付いたようだ。
「よし。それなら私がフォトちゃんの代わりに台詞を考えてあげるよ。怪盗さんは私の言葉通りに言ってくれたらいいからね」
 それは助かる。フォトがダウンしている今、姫咲さんの助けは非常に心強い。
 僕はスピーカーをオンにして、姫咲さんが耳打ちしてくる言葉をそのまま発した。
『この娘は僕が頂いて結婚する。今から好き放題してやるぜ。ぐへへへ』
 って、ちょっと待った! なんだこの台詞!?
『おお、なんという鬼畜怪盗! 哀れ。純真な美少女は怪盗の毒牙にかかってしまったのでした。警察は彼女を守りきることがでなかったのです。これにてバットエンドでございます!』
 バットエンド扱いされてしまったし。僕、完全に悪者じゃん!
 今のは僕じゃない、と叫びたいがコミュ障にそれは不可能である。諦めて帰ろう。
 なぜが沸きあがる歓声を背に僕はその場を離脱。人気の無い場所まで移動して、姫咲さんを地面に降ろした。
「はあ〜。もう、姫咲さん。意外と悪戯好きなんだね」
「あはは、ごめんね。やりすぎちゃったかな」
 悪戯っぽい笑顔で舌を出す姫咲さん。ようやく終わったものの、とんでもない遊びに突き合せれてしまったものである。
「でも、楽しかったな」
 姫咲さんが夜空を見上げる、つられて僕も見上げると、星が綺麗に輝いていた。
 都会なので空気が悪いと思っていたがそうでも無いらしい。これも町の科学力なのだろうか。
「私さ、昔は社長令嬢として生きていくために、パパからとても厳しくしつけられていたんだ。毎日とても辛かったんだよ。でもそんなある日、怪盗さんが外の世界に連れ出してくれた」
 姫咲さんの横顔を見る。それは教室では絶対に見せないような儚い表情だった。
「凄く楽しかったな。世界には夢みたいなことがあるんだって思ったよ。でもそれは一晩だけの怪盗さんの気まぐれだった。もう一度でいいからあんな夢みたいな体験がしたかったんだ」
「それで、あんな無茶なお願いをしたのか」
「うん。怪盗さんは今度こそしっかりと私を盗んでくれた。おかげで私は満足だよ」
 そして、姫咲さんは僕の方に向き直ってクスリと笑う。満足してもらえたようで何よりだ。
「でも、こんなことをしてよかったの? お父さんに知られてしまったら怒られるんじゃ……」
「あはは、大丈夫だよ。もう今は私の方が『上』だから。私の手腕を見たら誰にも文句は言わせない。それがたとえパパでもね」
 父の厳しい躾よりも姫咲さんの怪盗愛の方が勝ったようだ。最後は愛が勝つというわけだ。
「怪盗さんがいなかったら私、きっと捻くれて歪んだ子になっちゃったんだと思う。まあ、怪盗さんのせいで別方向に歪んじゃったかもしれないけどね、あはは」
 そうかもしれないが、そっちの方が姫咲さんらしいし、それでいいと思う。それに僕も歪み具合なら人の事は言えない。ベクトルは別だが僕たちは似た者同士かもしれない。
「夢を叶えてくれてありがとう。たくさん迷惑かけて、ごめんね。もう、これっきりだから」
 姫咲さんが深く頭を下げる。それは決別の意味にも見えた。賢い彼女の事だから、本当は自分が我儘だと気付いていたんだ。
 僕の方はというと、確かに今回は振り回されてしまった。ただ、それでも……
「あのさ、また遊びたくなったら言ってよ。人と関わるのは会話の練習になるし、僕の為にもなるからね。僕で良ければ付き合うよ。……まあ、今回もちょっとだけ面白かったしね」
 自分でも驚くほど言葉が出た。いつの間にか姫咲さんに対しては普通に喋れるようになっている。もしかしたら僕の中で彼女に対する『信頼』が生まれたのかもしれない。
 姫咲さんの方は大きく目を見開いていた。よほど今の言葉が意外だったようだ。
「本当にいいの!? 私、怪盗さんと一緒にいても迷惑じゃない?」
「というか、会話の練習に付き合ってほしいし、それはこっちの台詞だよ」
「……っ! ありがと! やっぱり私、怪盗さんが大好き!」
 コミュ障の僕と怪盗が好きすぎる姫咲さん。傍から見たら変な友達関係に見えるかもしれないけど、それでもいいんじゃないだろうか。ある意味、僕にはぴったりかもしれない。
「ふん。マスターも少しは成長したようですね」
 胸元からフォトの声が聞こえてきた。いつの間にか目を覚ましていたらしい。
「たった今、目覚めたんです。まったく、パートナーにデコピンするんじゃありません!」
 プンプンと頬を膨らますフォト。ちょっといい雰囲気だったのに台無しである。
「姫咲さんも時間がある時でいいのでマスターの会話の練習に付き合ってあげてください。このコミュ障を少しでも直すのです。今回は本当に酷い目に遭いましたよ」
「はいはい、悪かったね」
「ふふ、そうだね。楽しみだよ。これからもたくさんお喋りしようね、怪盗さん」
 クラスのアイドルで怪盗好き。でも色々まともじゃなかった姫咲さん。これからは会話の練習相手としても付き合う事となりそうだ。

 第五話 怪盗大集合

 翌日。僕はいつもと変わらず教室でクラスメイトの会話に耳を傾けていた。
「ねえねえ、みんなはどんな怪盗さんが好きなのかな?」
 今日も姫咲さんグループは怪盗についての話題で盛り上がっている。
 毎日の練習の結果、姫咲さんが相手ならほぼ自然に近い形で会話が出来るようになった。だが、グループの方々との会話は流石にまだきつい。それはもっとレベルを上げてからだ。
 ちなみにフォトは前回のことで色々と懲りたのか、家で待機していた。平和でよろしい。
 姫咲さんグループの今回の議題は、『好きな怪盗』についてだ。この話題が一番盛り上がる。
 この町には怪盗が百人以上いるのだが、その個性も様々だ。人気がある怪盗もいれば、そうでない怪盗もいる。僕は新人でかつ、存在感が無いので後者なのは言うまでもない。
 人気はランキング制となっており、上位に食い込むほど有名度は上がっていく。話題になっているのは、だいたいランキング上位の怪盗だ。僕にはまだ雲の上の話である。
「やっぱり一番は怪盗アメジスト様でしょ。あの方の美しさに敵う人なんていないわ。なんたってランキング一位だものね」
 真っ先に上がったのはやはり怪盗アメジスト。人気ランキング一位は伊達じゃない。
 アメジストがトップになって以降、怪盗を将来の夢にする女子が一気に増え始めたという。それだけ強烈な影響があったのだろう。
 元々、怪盗は男が基本だと思われていた。事実、つい最近までライトニングという男の怪盗がトップを独占していた。だが、女怪盗であるアメジストがそれを覆したのだ。
 これは怪盗革命とまで呼ばれる衝撃的な出来事だったらしい。それから女怪盗の認知が一気に広がり始め、今ではむしろ男よりも女の方が人気が出やすいとまでになった。
「私は怪盗メギド様かな〜。罵倒されたい」
「うわっ、マニアック! でも分かるかも。そういう人って多いよね。人気ランキング二位だし、かっこいいもんね」
 次に出てきたのが怪盗メギド。前回のランキングでは二位だった怪盗だ。
 その性格は非常に荒っぽい事で有名である。口が悪く、爽やかな怪盗のイメージとはかけ離れているのだが、その部分が一定の層に受けているらしい。これも個性の一部なのだろうか。
「私はライトニング様が好きだったけど……。もう怪盗を辞めちゃったんだってね」
 昔は人気ナンバーワンの怪盗だったライトニングは、アメジストがトップとなってからはさっぱりその名を聞かなくなった。どうやら怪盗は辞めていたらしい。
「ふふ。いいよいいよ。みんな本当に怪盗さんが好きなんだね!」
 それぞれの主張を姫咲さんは目を輝かせて聞いている。でも、この中で誰よりも怪盗が好きなのは間違いなく彼女だけどね! その愛は計り知れないレベルである。
「そういえば姫の好きな怪盗は誰なの?」
「私? ふふふ〜。私のお気に入りは、この怪盗さんだよ」
 姫咲さんがスマホの写真を周りに見せた。怪盗の力で視力がアップした僕は遠目からでもその写真が見える。写っていたのは怪盗クチナシ。僕である。
「うわ、近っ! 至近距離じゃん。どうやって撮ったの!?」
「へへ〜。内緒だよ〜」
 角度的にこの前にお姫様抱っこした時のものだ。そういえば、写メを取っていたな。
 いつの間にか自分が映っていないバージョンも何枚か取っていたらしい。恐るべき早業だ。
「う〜ん。この怪盗、見たことあるような……確か、怪盗カオナシだっけ?」
 惜しい! クチナシです。カオナシではありません。
 でも、おぼろげに名前くらいは憶えられているのか。ちょっとは認知が広まってきたのかな。
「あまり見ないし、新人だよね。相変わらず姫はレアな怪盗が好きだね」
「まあね。でも、この怪盗クチナシさんは、将来間違いなくビッグな怪盗さんになるよ。これは私の予言です」
「おお、出た。姫の予言! 面白そうだし、あたしも注目してみようかな」
 そんな姫咲さんは僕を見てウインクをしていた。果たして僕は彼女に恥をかかせぬようにビッグな怪盗になれるのだろうか?

 × × ×

「おかえりなさい。ご飯にしますか? お風呂にしますか? それとも……わ、た、し?」
 帰宅すると、いきなり三つ指をついたフォトに出迎えられた。まるで新妻である。
「というか君、お風呂を沸かしたり、ご飯を作ったりできるの?」
「できません。こんな小さな体では無理です」
「じゃあ、なんでそんなこと言ったの!?」
「新妻気分を味わってみたかったのです。マスター、何もできない私ですが、最後の選択が残っていますよ。さあ、私を存分に味わってください! 好きにしてもいいですよ」
「そう言われても、人形相手じゃ何もできないよ」
「そうですか。マスターなら人形相手に欲情できる変態さんだと期待したのですが」
「勝手にマスターを変態認定しないでくれる?」
 そうしてフォトは立ちあがって僕の懐へ飛び込んでくる。心なしか機嫌が悪そうだ。
「マスター。実は私、怒っているのです! あなたはまた『ステルス』を強めましたね? 前回はせっかくAランクに成功したというのに、全くマスターの事が話題になっていません!」
「ああ、それか。当たり前だろ。鬼畜怪盗なんてごめんだからね」
 悪いけど、前回のは意図的にステルスを最大限まで強めさせてもらった。あんな記憶は皆から削除してもらった方がいい。黒歴史をいつまでも残すほど僕は愚かではない。
「『粛清』の件をお忘れですか? あなたは一刻も早く人気を取らねばならないのですよ!」
「はっ!? そうだった」
 姫咲さんの件でうやむやとなってすっかり忘れていた。僕は大ピンチだったんだ。
 このままで人気を取らなければ役立たず怪盗として、粛清されてしまうかもしれない。
「まあいいです。天才のフォトちゃんは、すでに解決策を思いついているのです」
 フォトには案があるらしい。僕のコミュ障を克服する方法。あるいは一気に有名になる方法だろうか。
「その方法とはズバリ……『他の怪盗とタッグを組む』です。人気怪盗と組めれば、自然にマスターも目立つはずです」
 タッグ……つまりはペアで仕事をやるという事だ。現パートナーであるフォトとは別に正真正銘、人間の相棒を見つけ出す作戦である。
 実は怪盗の任務に人数の制限はない。専用のチームを組んで仕事をしている怪盗も多い。
「いや、コミュ障の僕にタッグなんて不可能だよ。仲良くやれる自信が無い」
「そこは私に任せてください! この可愛いフォトちゃんがうまく仲を取り持ちましょう」
 毒舌でポンコツである彼女にそんな高等技術ができるのだろうか。むしろ喧嘩になるんじゃなかろうか。いや、でも詐欺の天才であるフォトだし、案外うまくやるのかもしれない。
「こら! 誰が詐欺の天才ですか」
 あ、しまった。心を読まれてしまった。この子、隙あらば無断でマスターの心を読みやがる。
「でもさ、フォト。どうやって他の怪盗とコンタクトをとるのさ」
「ふふふ。マスター、明日が何の日か知っていますか?」
「明日? なんか特別な日だっけ?」
「明日は『全国怪盗ランキング』の発表日です! そこには全ての怪盗が集まるのです」
 この怪盗指定都市では月に一度、どの怪盗が人気なのかランキングが更新されて発表される。怪盗は『怪盗本部』でその情報をいち早く入手できるのだが、それが明日というわけだ。
「本部で出会った怪盗にタッグを組んでもらえるようにお願いしましょう!」
「……僕みたいなコミュ障とタッグを組んでくれる怪盗なんているかな?」
「ふっ。大丈夫ですよ。フォト先生の交渉術を信用してください」
 フォトの方は自身があるようだが、本当にうまくいくのだろうか。まあ、他に柵も無いのだし、その作戦に乗っかかってみようか。
 全ての怪盗が集うランキング発表会。コミュ障の僕には気が重くなる場所の予感もした。

 × × ×

 翌日。今日は全国怪盗ランキング発表の日だ。ちなみに学校の方はお休みなので今日は丸一日使えることになる。
「さて、マスター。今から怪盗本部へと移動します」
「そういえば怪盗本部って、どこにあるんだ?」
 怪盗本部は全ての怪盗を統括する機関として噂になっている。だが、そこがどこなのかは不明である。完全に謎に包まれた場所なのだ。
「実はですね。私のワープ機能を使って移動するのです」
「ワープ!? 君、そんなことができたんだ」
 そんな便利な機能があったら、是非とも怪盗活動でも使いたい。
「残念ながら、ワープできるのは本部のみです。これは秘密を保持するための機能です」
 そのためだけのワープ機能なのか。それだけ怪盗本部は謎に満ちているという事だ。ちょっとワクワクしてしまうのは僕の怪盗としての血がそうさせているかもしれない。
「では、早速行きましょう。ワン、ツー、ドロン!」
 フォトの掛け声とともに目の前が真っ暗となった。
 一瞬だけ平衡感覚が無くなる。まるで無重力の世界に放り込まれたような感覚。どうやらこれが『ワープしている』状態らしい。
 一瞬のような永遠のような謎の感覚を体験した後、気付いたら僕は知らない場所にいた。
 見た目はパーティ会場のような場所だ。今からダンス会でも始まりそうな雰囲気である。
「さあ、着きましたよ。ようこそ、怪盗本部へ!」
 自慢の家に友達を招待するような声を上げたフォトが僕の胸元へ飛び込んできた。
「ちなみにこの場所は現実と異次元の狭間にあります。だから、絶対に一般人が見つけることはできません。誰も怪盗本部を発見できていない理由がこれです」
「異次元って……そんなものが発見されていたのか」
「ふふ、さらに驚きの情報を教えてあげましょうか? 怪盗の力は異世界からの技術が使われているという噂もあるのです。我々は知らずに別世界の力を使用していたかもしれませんね」
「……マジか」
 信じられない話だが、これまでの事を考えたら逆に納得かもしれない。むしろ異世界の力とか言われた方がしっくりくるほどだ。怪盗の秘密をまた一つ知ってしまった。
 会場にはすでに何人かの怪盗が到着して、談笑していた。怪盗の間で交流は深いらしい。
「えっと、フォト。緊張してきた。挨拶とかいる? 無理だ。よし、帰ろう」
「ヘタレるんじゃありません! まあ、怪盗に上下関係とか無いので無視でいいですよ」
 さらに増えていく怪盗たち。一人、また一人と空間転移のようにいきなり現れる。全員がワープ機能を使っているのだから当然か。
 中にはテレビで見るような有名怪盗までいた。そう思うと、酷く場違いな感覚に襲われる。
 ここにいる怪盗は皆が自信に満ち溢れているのだ。いや、それが本来の怪盗の姿なんだろう。
「ふっ。今回のランキングは自信がある。たくさんの子猫ちゃんに応援されたからね」
「あら、大した自信ね。でも、その子たちは私の子猫ちゃんかも知れないわよ。あの子たちが投票するのはあなたじゃなくて私の方ね」
 ……本当に子猫ちゃんとか言うんだ。フォトの言っていた決め台詞が普通だというのは、まんざら嘘でも無いかもしれない。これも怪盗世界の常識なのだろう。
 とりあえず、端っこへ移動してステルスを発動させよう。僕みたいな陰キャはこんな陽の気に当てられたら干からびてしまう。他の怪盗を観察するいい機会だし。
 存在感の無い事の一番の利点は、外の視点から観察がやり放題という部分だな。
 しかし、見れば見るほどコミュ障の怪盗が異質だと分かる。もう、オーラからして違う。きっとここにいる怪盗達は、それぞれが人生において何らかの成功者なのだろう。
 僕なんかただゲームが上手いだけだからな。フォト曰く、それが一番の強さに繋がるらしいが、やはり華やかさで言えば明らかに欠けている。
 フォトはこの状況を見て何を思っているのだろう。また、説教が始まりそうな予感だ。
「九点、八点、九点……ふん、この場の怪盗の点数はこんなものですね」
 ……他の怪盗を点数付けしていた。この状況でよく他人のランク付けなんかできるな。
「でも、フォトにしては基本的に高得点が多いね。やっぱり怪盗は凄い人ばかりだもんね」
「何を言ってるのですか。言っておきますが百点満点ですよ。奴らはまるで話になりません」
「百点満点かよ! 評価厳しすぎだろ!」
「マスターも早く百点を取れるように頑張ってくださいね。あなたにはその素質があります」
「ちなみに今の僕は何点なの?」
「聞きたいですか?」
「……いいや。やめとく」
 輝いている他の怪盗が十点未満なら、僕なんてマイナスを付けられるんじゃないか?
「それより、ここにいる怪盗とペアを組んでもらうんだよね。どうやって勧誘するの?」
「まあ、それは後にしましょう。今は発表前なので皆さんもそれどころではありません」
 よく見るとほんのわずか、会場にはピリピリした雰囲気を感じた。皆が自分の順位を気にしているのだろう。フォトの言う通り、確かに勧誘するなら発表後の方が良さそうだ。
「む? 現れました! 九十点です!」
 敵視と恐怖を込めて『とある怪盗』を見るフォト。思わぬ高得点である。
 彼女にここまで言わせるのはどんな怪盗なのかと僕も目を向けてみると、そこにはこの世のものとは思えないほど美しい女性が歩いていた。
 宝石のような綺麗な瑠璃色の瞳に紫の髪。すらりと伸び切った手足は女性にしては高身長であり、その目つきは男に負けてないくらい鋭い。そこには凛とした気高さのようなものがある。
「お疲れ様です! アメジスト様!」
 周りにいる怪盗たちが頭を下げて彼女の名前を呼んでいた。僕でも知っている有名怪盗だ。
「怪盗アメジスト。ランキング一位の怪盗です。つまり、怪盗のトップですね」
 あれがアメジストか。実際に間近で見るのは初めてだが、動画で見る以上のオーラを放っていた。人気が一位なのも自然と納得してしまう。
 彼女は周りの怪盗の目も気にせず、真っ直ぐ歩いている。まるで自分以外の何も目に入っていないかのようだ。
「彼女、かなり強いね」
「む、マスター。分かるのですか?」
「その怪盗を見れば、なんとなく分かるよ」
 僕は雰囲気で相手の強さが分かる。アメジストからは、かつてないプレッシャーのようなものを感じた。きっといくつもの修羅場をくぐってきたのだろう。
「ち、気に入らねえぜ。なんであんなクソ女がトップなんだよ」
 そんなアメジストを見て、一人の男が吐き捨てるように漏らした。
 全身には多数のアクセサリーを付けていて、ドクロを中心としたそれは攻撃的と言っていいほどの派手さだ。
 俺はヤバい奴だぞ、と全身を使って表現しているようにも見える。実際にガラはかなり悪い。
 特に指には高級そうな指輪をいくつもつけていた。アイテムの一種なのだろうか?
 そして僕はこの怪盗も動画で見たことがあった。こちらも有名怪盗だ。
「ふん、メギドの奴。相変わらず荒れていますね」
 怪盗メギド。ランキングは二位で荒々しさが有名な怪盗である。
 危ない怪盗と言えばメギド。そう呼ばれるほど彼の話は町中の噂となっている。
「あんな怖そうな怪盗なのに、人気は二位なんだね」
「そういうのが好きなのもいるのです。キラキラ光るアクセサリーに引き寄せられているのでしょう。ファンは蛾か何かですかね。ちなみに私から見た点数は一点です」
 特に辛辣なフォト。まあ、彼女の嫌いなタイプっぽいのは分かる。僕も苦手だ。
「ああ見えて、実はいい人だとか言う噂も流れていますが、恐らく信者共の妄言でしょうな」
 確かに現時点ではいい人には見えない。どう考えても危ない人だ。
 強さとしても、あまり強そうには見えない。怖そうではあるのだが。
「まあ、所詮イキっているだけの雑魚です。人気はありますが、ああいった態度の奴は弱いと相場が決まっているものですよ。マスターの敵ではありません。ワンパン確定ですな」
「いやいや、なんだよその偏見」
 イキリ具合ならフォトも負けてないと言おうが、それは黙っておくことにする。
 アメジストはそんなメギドの強烈な悪意にも気に留めずまっすぐに進んでいた。大した肝だ。
 そのまま通り過ぎていく…………と思いきや、なんと僕の前で止まった。
 しかも真っ直ぐにこっちを見ている。……なんで僕!?
 ステルスは最大にしているはずだが、アメジストには通じていないのか?
 他の怪盗は首を傾げていた。なんで誰もいないところで止まるの? と言いたげな表情だ。
「ふ〜ん?」
 そのまま顔を近づけて来るアメジスト。絶世の美少女の顔が目の前にあるのだが、認知されている恐怖からそれどころではない。
「あからさまに存在感を消していると、それが逆に目立つわよ。特に私レベルの怪盗にはね」
 アメジストはニヤリと笑った。隠されたお宝を発見したような少し自慢げな笑みである。
 やはり彼女は僕のステルスが効かないらしい。さすがはトップ怪盗といった所か。
「怪盗クチナシだっけ? 初めまして。新人よね?」
 名前まで知られている。全く話題にはなっていないのに。全ての怪盗のチェックでもしているのだろうか。
 いや、それよりまずい。挨拶と質問をしてきたぞ。コミュ障の僕は返事ができない!
「アメジスト様、初めまして。ええ、まだ怪盗になって間も無い未熟者ではありますが、どうぞよろしくお願い致します」
 フォトが懐から顔を出して代わりに返事をしてくれた。ナイスフォローだ。このピンチでうまく助け船を出してくれるこの子を初めて頼もしく感じた。今度こそだ。
 しかもいつもの毒が無い。さすがのフォトもこのレベルに対しては毒を吐けないか。
(けっ。ちょっと厄介な相手なので、へりくだっているだけですよ。いつかは目にものを見せてやります。あんな女はマスターの敵ではありません)
 と思ったら、内心では敵対心バリバリだった。やはりフォトはフォトである。ある意味では大物かもしれない。
「未熟者? ふふ、面白い冗談ね」
 更に目を細めるアメジストだが、やがて軽く笑ってそのまま立ち去っていった。
「マスター。メギドではありませんが、いつか彼女を引きずりおろすと怪盗がいるとしたら、それは我々ですよ。あなたの才能ならそれが可能です」
「それはまだまだ先の話だと思うけどね」
 少なくとも人気面なら現段階では足元にも及ばない。勝負なんてのは雲の上の話である。
「む、そろそろランキングが発表されますよ」
 いつの間にか会場には巨大なスクリーンが出現していた。あの画面に表示されるのだろうか。
「とりあえず、我々の順位を見てみましょう。まあ、話題になっていないだけで、あれだけの功績を残したのだから、実はかなり上位に食い込んでいる可能性もありますぞ」
 フォトは期待に満ちた表情である。確かに誰もSNSとかで話題にしないだけで、実は実力が評価されていて、蓋を開けたら凄く人気でした、ってパターンもゼロではない。
『お待たせしました。それでは人気ランキングを発表します!』
 会場に響く声に各怪盗が息を飲むのが分かった。僕も少しだけ緊張してしまう。
 ドキドキ感とワクワク感。人気ランキングも一つの目標として悪くないのかもしれない。
 そしてスクリーンに最初の怪盗の名前が映し出された。その名前は……怪盗クチナシ!
「え? 僕が最初!?」
 思わず声が出てしまう。まさか一番手に名前が載るのが僕とは思わなかった。
「げふああああ!」
 懐からフォトの悲鳴のような叫び声が聞こえて来た。よく見ると白目で痙攣している。
「マ、マスター。気を強く持って聞いてください。ランキングは順位の低い怪盗から発表されるのです。それが発表のルールです」
「へえ、そうなんだ。ってことは………………あ」
「はい。マスターは最下位です」
「おうふ」
 むう、やっぱりダメだったか。現実は甘くない。結局僕は誰にも認知されていなかった。
 それにしてもまさか最下位とは。やはりステルス能力を何とかしないと希望は無いようだ。
「こ、このままでは我々の命が危ないです。マジで粛清されてしまいます」
「はあ〜。そうだね」
 人気ランキングとか元々興味は無かったが、無能な怪盗が粛清されてしまうというのなら最下位の僕たちがその第一候補となるだろう。命が掛かっているならやらないわけにはいかない。
 コミュ障怪盗である僕が、本格的に人気をもぎ取らなければならなくなった。
「まあ、せっかくだし、ランキングも最後まで見ておこうか」
「ふん、私としてはもう見たくありませんがね」
 そのまま次々と怪盗の名前が映し出されていく。会場からはそれぞれの反応が返ってきた。
「ふ、ランクアップね」
「ぬう! ランクが下がっている!」
 喜んでいる怪盗がいれば、悔しがっている怪盗もいた。反応はそれぞれだ。
 最後に発表された名前は怪盗アメジストだった。つまり今回も彼女がトップだったわけだ。
「くそが! また二位かよ! あのクソ女、許せねえ!」
 一段と荒れているのは、その一つ前に名前が表示された怪盗メギド。悪鬼のような目でアメジストを睨みながら壁を蹴りつけている。かなり嫉妬深い性格らしい。
「さて、マスター。発表も終わったことだし、これで満足したでしょう。ここからは本来の目的に向けて動きますよ」
 本来の目的。つまりペアを組む怪盗を探し出す事だ。最下位である以上、やはり自力で人気を上げるのは難しく、他の怪盗の手を借りる他ないだろう。
 だが、これは僕には難しい仕事だ。本人曰く交渉術の達人らしいフォトに任せるしかない。
「しかし、まさか最下位とは。これは少々苦戦するかもしれません」
 珍しく不安そうなフォト。どうやらその予感は、悪い方には当たってしまうようだ。

 × × ×

「だう〜。ダメだ〜。まるで話を聞いてくれません〜」
 フォトは僕の手のひらで大の字になって寝転んでいる。ギブアップらしい。
 先に結論から言うと、誰も僕たちとペアを組んでくれなかった。
 最初は人気怪盗にペアを申し出ていたフォト。素人の僕であるが、その交渉術は確かに悪くないように見えた。
 うまく僕の長所……つまり、強さをアピールして相手にもきちんとメリットがあるかのような話術で期待感を抱かせていた。交渉を持ちかけられた怪盗も始めは興味深そうな目で聞いていたのだが、僕のランキングに気付いた瞬間、交渉は全て決裂に終わる。
 ある者は苦笑いで、ある者は馬鹿にするような目をして、その場を去っていくのだ。
 やはりランキングが最下位の怪盗とペアを組む気にはなれなかったらしい。フォトの口だけではどうしても相手にメリットが伝わらない。
 いかに僕が自分で最強の怪盗だ、とのたまっても、そのランキングが最下位なら、それはむしろ自分の実力を正当に評価できていない無能者の烙印を押されるだけであった。
 こうなればと、ランキングが低い怪盗にも交渉を持ちかけたフォトだが、逆に低い怪盗ほど飢えているというか、失敗できない焦りを持つ怪盗が多いようで、やはりランキング最下位の僕とは組んでくれる余裕は無かったようだ。
 ちなみに一つ気になったのが、僕ではなく、フォトを見て逃げるように去っていく怪盗も見られた点だ。ひょっとすると、フォトもポンコツとして有名なのかもしれない。
 悪名が広まっているフォトと、ランキング最下位の僕。これはどう頑張ってもペアを組めないような気もしてきた。
「あ〜。お疲れ。まあ、仕方ないよね」
 今回に限ってはフォトを責める気にはなれない。むしろよく粘ってくれた。交渉術も悪くなかったし、少なくとも会話の練習という点なら参考になった。
「おのれ! こうなれば、最後の手段です!」
 起き上がったフォトを血走った目で怒りの声を上げる。嫌な予感がした。
「他の怪盗に喧嘩を売りましょう! 協力はやめて、相手をぶちのめして人気を得るのです!」
 思った通り、その作戦は予想以上に物騒であった。フォトさん、暴走が開始である。
「フォトさん? 落ち着こう。そんな事をしたら、それこそ粛清されるんじゃない?」
「おっと、失礼。言い方が悪かったです。つまり、誰か他の怪盗と『対戦』するのです」
「ああ、対戦か」
 そういえば、怪盗同士で『対戦』をするシステムも存在するのであった。
 あまり需要は無いのだが、どちらが先にお宝を先に盗めるのか競争するのだ。
 基本的に怪盗は手を組んでお宝を盗むのが多いため、対戦を好む怪盗は珍しい。正直、血の気の多い怪盗のマニアックな手段と言ってもいいだろう。
 だが、だからこそ、物珍しさから人々の目に留まる可能性も高いのかもしれない。
「マスター、どうでしょう。対戦は得意ですか?」
「そうだね。嫌いじゃないね」
「ほう、意外です。性格的に争ったりするのは苦手だと思いましたが……」
「対人戦の方がやりごたえはあるからね。ゲームは難しいほど挑戦したくなるんだ」
「なるほど。そうでなくては一人であのゲームをクリアーするなんて酔狂はできませんか」
 難しいゲームに挑む事自体は好きである。特にコミュニケーションを必要としない対戦だとしたら歓迎とまである。
「でも、対戦を受けてくれる怪盗なんているのかな?」
「ふふ、それに関してはマスターの場合、むしろ有利ですよ。なにせランキング最下位です。周りの奴らはマスターの事をよい『カモ』だと思って、対戦を受けるに違いありません」
 なるほど。理にかなっている。ペアとして協力するなら、ランキング最下位である僕と組んでも不利になるだけだが、対戦なら簡単に勝てる相手という認識で受けてくれる可能性が高い。
「おまけに敵は油断している可能性が高いです。マスターなら油断した雑魚なら余裕でしょう」
 ニヤニヤと悪い笑みを作るフォト。悪知恵に関しては有能となるのは、褒めるべきなのか微妙な所であるが、有効な作戦には違いない。今の僕だからこそできる戦略だ。
「相手はむしろ高ランクの方が良いですね。イキッた高ランク怪盗を実は低ランクだけど最強だったマスターが瞬殺する。くはっ! 何と素晴らしきざまぁか! ぐふ、ふふふ」
 いつの間にかフォトが妄想にふけって気持ち悪い顔で笑っていた。心なしか、ちょっとよだれが垂れている気もする。
「フォト、性格悪いよ」
「黙らっしゃい! 今はそういうのがウケるんです! 流行も知らぬにわかめが!」
「はあ、すいません」
 我がブレインであるフォトさんは、この作戦がかなりのお気に入りらしい。まあ、仕方ない。作戦自体が有効な手段であることは否定できない。
「相手は……そうですね。怪盗メギドがいいですね。ああいうイキった雑魚をぶちのめすのが最高の快感です。マスター、ワンパンでお願いしますね!」
「いやいや、相手はランキング二位だよ。むしろ返り討ちに遭う可能性もあるよ」
「はっ、何言ってるんですか。あんなの雑魚ですよ。マスターが勝つに決まっています!」
 もう勝った気でいるフォト。やるのは僕だというのに調子のいい子である。
「おいこら。てめえ……聞こえたぜ。誰が雑魚だって?」
「…………へ?」
 急に誰かから話しかけられたので振り向くと、そこにいたのは紛れもなく怪盗メギドだった。
 あ、やばい。めちゃくちゃ怒ってらっしゃる。顔は笑顔だが、血管が十個くらい浮き出ている。確実にさっきのフォトの言葉を聞かれた反応だ。
「…………っ!?」
 しかもなんだろう。なんかやばい雰囲気を感じた。僕の中で謎の『警戒信号』が鳴っている。正体不明の危険な何かを持っているような、そんな嫌な予感だ。
(ねえ、フォト。やっぱりこの人、危険かもしれない。ここは謝って……)
「おっと、聞こえちゃいましたぁ? 真実を言ってしまってすいませんねぇ。この飛んで火にいる夏の虫さんめが!」
 聞いてねえ! むしろめちゃくちゃ煽ってる。相変わらずマスターの意向を読めない子だ。
 どうしよう。僕がさっさと謝ればいいのだが、困ったことにコミュ障の僕は謝る事ができない。こんな威圧的な態度で来られたら「あ……」とか「う……」しか言えないのである。
「最下位の分際で生意気な奴だ。そうだよな、ミケ?」
『はい、マスター。生意気ですニャ!』
 メギドの肩に乗っているネコミミの人形が返事をした。彼のサポーターのようだ。
 ただ、なんだろう。ちょっとした違和感だ。妙に機械的みたいな、そんな気がした。
「はっ、あなたこそ万年二位のくせに、何を偉そうにしているのです?」
 フォトの煽りで更に目が鋭くなるメギド。僕の嫌な予感も同じように増大する。
「てめえ……言いやがったな? なら勝負するか?」
「はいはい。仕方ねーな。勝負してやりますよ。やれやれだぜ」
 うわっ、この人形、凄くムカつく。これはメギドじゃなくてもキレるぞ。
 ちなみにずっと俯いて唸っている僕の事は完全に無視です。なんで僕の意見は聞かずに話が進んでいるのでしょうか?
(やりました、マスター。見事勝負にもつれ込むことができましたぜ。誉めてくださいませ)
(いや、むしろ怖いんだけど。これ、勝っても恨まれたりするんじゃない?)
(勝負に勝って恨みも買うと? はっはっは。うまいこと言いますな)
(笑い事じゃない!)
(確かに怨恨は怖いですな。よし、そうならないように仕返しする気も起きないくらいボコボコにしてやりましょう。なんなら殺してしまって構いません)
 そんなことをしたら、どっちにせよ僕は粛清だよ!
「勝負は三日後だ。内容は『ライブでどれだけ人気が取れるか』でいいな?」
「………………へ? 人気?」
 さっきまで勇み足だったフォトが一気に真顔となった。顔が青くなっていくのが分かる。
「ちょうど三日後に全ての怪盗たちが集う『怪盗バトルロイヤル』がある。その大会で人気の数の多かった方が勝ちだ」
「…………えっと、あの、そういうのより、なんというか、バトルで決着をつけません? 男らしく、殴り合いで決闘をした方が分かりやすいですよ?」
「いつの時代の話だよ。どれだけ人気が多いか。それが怪盗としての価値だろ?」
「いやいやいや、やっぱり勝負と言えば戦いでしょ? バトルでしょ? それとも、あなたは弱いんですか? 自信が無いんですか?」
「こっちの台詞だよ。お前こそ人気で勝つ自信が無いんだろ? やっぱ最下位だよな〜」
「な、なにおう! そんなわけありません。いいでしょう、受けて立ちます!」
 フォトさんがあっさり人気勝負を了承してしまう。それを見たメギドがニヤリと笑った。
「そこの怪盗! さっきからずっと黙ったままだが、勝負を受けるって事でいいよな?」
 ダメ! ………と言いたいけど、やっぱり言葉が出ない! こんな怖そうなのとコミュ障の僕が会話できるわけないだろ!
「ふん、この俺を前にして無表情なのは褒めてやる。肝は据わっているようだな」
 いや、そうじゃなくて僕はただのコミュ障で……もういいです。
「じゃあな。楽しみにしているぜ、最下位さん……そして『失敗作』さんよ」
「…………失敗作?」
 メギドの口からちょっと気にかかる単語が飛び出した。恐らくフォトの事だろう。
「なんだ? 知らなかったのか。お前も運がないな。そのサポーターは外れだ。なぜなら……」
「マスター! 余計な事は聞かなくていいです。行きましょう!」
 メギドの言葉を遮るようなフォト。まるで何かを隠したいようにも見える。
 きっとフォトが欠陥品的な事を言いたいのだろう。今さら驚くような事でもないが……
「そいつはな。『人間』なんだよ」
「……え!?」
 しかし、メギドの口から出た言葉は僕の予想をはるかに上回っていた。

 × × ×

「マスター。こうなっては仕方ありません。人気勝負です! それしか粛清を回避する手段はありません! 頑張って勝ちましょう! エイエイオー」
 明らかにフォトがおかしい。さっきの言葉を誤魔化すように勢いよく手をあげている。
「ねえ、フォト。さっきのメギドの言葉だけど……」
「いずれお話しします。今は勝つ事だけに集中してください」
 どうやらフォトもメギドの言葉が聞こえていたようだ。そして詳細については話したくないらしい。まあ、フォトがそう言うなら仕方ない。今はそれ以上に相談することがある。
「でもフォト。人気勝負とか、絶対に勝てないよ」
「そうですね。正直、かなり厳しいです。何か作戦が必要でしょう」
「それなら今から帰って作戦会議をやろうか」
「ええ。今日はもうここにいる意味は無いでしょう」
 なにより疲れた。こんなに人の多い場所に……それも怪盗なんてキラキラした人種が大量にいる場所なんて僕みたいなコミュ障には激しく精神が削られる。
「ねえ、ちょっといいかしら」
 ようやく帰れる……そう思った所で誰かが僕の肩を叩いた。
「ア、ア、アメジスト……様!?」
 その人物を見たフォトが思わず声を上げた。僕は逆に驚きで声が出ない。
 またしてもアメジストから声を掛けられてしまった。そういえば、さっきも何か言いたげだったような気がする。本格的に僕に用があるのだろうか。
「こっちに来てもらえる?」
 手招きするアメジスト。彼女の言う通りに近づいて行く。
「……え?」
 次の瞬間、僕は見たことも無いような部屋にいた。さっきまでいたダンスホールのような広場ではなく、人一人が暮らすような普通の部屋だ。
「ここは私専用の空間であり、プライベートルームよ。トップ怪盗にはこういった特典もあるの。どう? なかなかいい部屋でしょう?」
「ぬうう! 確かにこれは羨ましいです!」
 これはどんなお宝よりも便利かもしれない。引きこもりの夢のような部屋だ。
 さっきは普通の部屋と言ったが、よく見ると綺麗な宝石などで飾りつけされていて、美しいものに拘る彼女の性格が伺えた。
「つまり、我々はあなた専用の部屋に招待された……と」
 絶世の美少女とプライベートルームで二人きり。言葉だけを見れば、羨ましいと捉えられるかもしれないが、僕はコミュ障なので緊張の方が割合が大きいのです。
(そういえばフォト。アメジストにはペアのお願いをしていなかったね」
 一番人気の怪盗だから真っ先に交渉に行くものだと思っていたが、そうでもなかった。
(さすがに断られるでしょ。最高ランクが最低ランクと組むなんてあり得ません。プライド高そうだし、あまりに美人すぎるのでいけ好かないのです)
 後半はただの君の好みのだよね? こっちに選ぶ余裕なんて無いだろうに。
(それに彼女は誰ともペアを組まない事で有名です)
 そうか。それだったら仕方ないな。相手からペアを申し出てくれる雰囲気でもない。
 とにかく、まずは彼女の要件を聞こう。でも、なんだろう。僕の中でまたしても警戒信号がなっている。基本的に外れたことの無い危機感だ。
(フォト。何か嫌な予感がする)
(む? 本当ですか? 実はクビ通告とかだったりして……)
 まさか……と言いたいが、あり得る。ランキングでは最下位だったし。
(むしろ私達、ここで粛清されてしまう可能性もあります)
(いやいや、さすがにいきなりそんな事は…………っ!?)
 そう思ったら、いきなり殺気と悪寒が僕を襲った。
 とっさに身を屈める。瞬間、頭上を剣閃が通り過ぎた。
 アメジストが僕に剣を振りかざしてきたのだ。その一撃には正確に僕の首を狙っていた。
 速度は音速に近く、常人なら避けられない速さだ。僕じゃなければ直撃だった。
「く、くび」
「……くびです」
 僕とフォトが同時に声を上げた。二人揃って驚きを隠せない。
 本当にクビだった。いや、クビって強制退職の意味のクビじゃなくて、人体の首だけど!
 アメジストの手にはさっきまで剣なんて無かった。高速で出現させて振りぬいたようだ。完全に不意打ちである。
「…………避けた。やっぱり!」
 アメジストは驚きで目を見開く。同時に何かを確信したような表情でもある。
「なななな、何をするのですか! やはり粛清ですか!?」
「……粛清? 何の話? 私はただ、貴方たちの力を確かめただけよ」
「確かめるって、当たったらどうするつもりだったのです! 我々は死ぬところでしたよ!」
「ああ、失礼。実はこの剣、回復アイテムなのよね。一瞬で傷も疲れも取れるわ」
 そうして今度は剣の切っ先を僕に向けてくる。瞬間、体が軽くなった。いや、というより、疲労が消えたらしい。
「中々ユニークでしょ? これは激レアアイテムなのよ。私以外は誰も知らない」
 僕たちは開いた口が塞がらない。つまり、一杯食わされたという事なのだろうか。
 アメジストは悪戯っぽい表情で舌を出していた。さっきとは違って子供のような無邪気な笑顔である。今までの雰囲気とはまるで別人だ。
「ふふふ、驚かせてしまったかしら。ごめんなさいね」
「あ、あなた! さっきと全然態度が違うではありませんか!」
「いつまでも肩ひじ張っていても疲れるだけでしょ? ここは二人きりなのだから、気にする必要は無いわよ」
 プライベートでは態度を変えるタイプらしい。でも、そんな彼女を見ても失望するようなことも無く、むしろその態度に愛嬌も感じられた。これもトップの魅力かもしれない。
「言っておくけど、これは貴方にも言える事よ。怪盗クチナシ」
 態度は柔らかくなってもその目つきは変わらない。鋭い眼光が僕を睨み付ける。
「そろそろ貴方の正体を話してもらおうかしら。さっきからずっと黙っているのだけど、もう隠し事は無しよ。貴方、何者なの?」
 疑うような眼差しのアメジスト。自分が砕けた態度を見せたのは、僕が何かを隠していると思って、それを聞きだす為だったらしい。
「雪那(せつな)。彼の情報を提示してもらえる?」
『了解しました。マスター』
 アメジストの肩に乗っている人形の目が光る。彼女のサポーターだ。見た目は雪女みたいで可愛らしさと同時に美しさも表現された精巧な作りだ。
『怪盗クチナシ。初めての怪盗活動で新人としては異例の速度で宝を盗む。その次はAランクミッションを成功。それも最速の結果を記録しています』
「彼の戦闘能力は?」
『不明。計測不可です』
 なんと相手の強さまで分かるらしい。かなり高性能なサポーターだ。優秀な怪盗には優秀なサポーターがつくのだろうか。僕の強さは分からないらしいので万能ではないようだが……
 でも、またしても違和感だ。やはり、妙に機械的に感じる。フォトが特殊なのだろうか。
 これがメギドの言っていた『人間』と関係しているのかもしれない。
「これだけの成績にも関わらず全く話題にならない。おまけにランキングは最下位。これはどう考えてもおかしいわ。というわけで、教えてもらおうかしら。いったい何を企んでいるの?」
「え? それは……その……あ……う」
「へえ、やっぱり言えないんだ。ひょっとして、不正かしら?」
 違います! コミュ障の僕は言えないんじゃなくて、喋れないんです!
 ただ、アメジストの言いたいことは分かった。どうやら不正を疑っているらしい。
 粛清じゃなかったのはよかったが、不正だと思われるのも同じくらい厄介である。
「でも、不正だとしたら妙なのよね。貴方は私の攻撃を避けた。つまり、実力は本物だという事。不正なんかする意味は無い。最下位なのは何か別の理由があるのね?」
 まるで名探偵のように推理を始めるアメジスト。しかも割と当たっている。
「そういえば、貴方は無駄にステルスを発動させているわね。もしかして、自分でステルスを止められないって事かしら?」
「おお、正解です! 流石ですね、アメジスト様」
 フォトは思わず拍手をしていた。自力でここまでたどり着いたのは姫咲さんを除けば彼女が初めてではないだろうか。いや、同じクラスで過ごした姫咲さんと違って、初対面で見破った分、さらに恐ろしい推理力を誇っている。
「でも、それだとまだ疑問が残るわ。別にステルスが止められなくても、決め台詞の時にでもアピールすればいいじゃない。貴方はむしろ決め台詞の時の方がステルスが強くなっている」
 …………う、それは正論だ。まだ完璧に疑惑が晴れたわけじゃないようだ。
(フォト。こうなったら仕方ない。姫咲さんの時みたいに僕がコミュ障だと伝えてくれ)
(いや、それはやめた方がいいです。そんな事を知られたら、本当に粛清されてしまうかもしれませんよ。特にアメジストほどの怪盗なら粛清の権限も持っていそうなので、下手な弱点は教えない方がいいです)
 なるほど。確かに今回は粛清では無かったみたいだが、いつその時が来るのか分からない。最下位の僕は崖っぷちだという事を自覚しなければならない。
 逆に言えば、アメジストには絶対に僕のコミュ障を隠し通す必要がある。
 アメジストも僕の考えに気付いたようで、その鋭い目つきを更に細くする。
「ふん。そこは秘密にしておきたいわけね?」
「ええ、申し訳ありませんが、我々にも事情があるのです」
 まるでと凄まじい力を隠し持っているかようにニヤリと笑うフォト。とんでもないブラフだ。
 アメジストの方は腕を組んで僕の正体を考えているが、答えは分からないらしい。さすがのアメジスト様も、僕が黙っている理由がコミュ障だとはたどり着かなかったようだ。
 ……僕がコミュ障だと知られたら、彼女はどんな顔をするのだろうか。
「気に入らないわね。私は『我慢』が嫌いなの。特に貴方はとてつもない力を持っているのに、それを我慢して、押さえつけているいるように見える。許せないわ」
 な、なんか怒ってる!? 何やら彼女の気に触ってしまったらしい。普段からきつめな瞳が更に鋭くなっている。今は相手も周りを気にしていないので尚更怖い。
「ゆ、許せないとしたら、どうするというのですか?」
 フォトも反抗的だが、少し威圧されているようで声が上擦っていた。
「そうね。私とも勝負してもらおうかしら? メギドと勝負するみたいだけど、敵は彼だけじゃなくなるかもしれないわね」
 不敵な笑みのアメジスト。なんという事か、彼女からも目を付けられてしまったようだ。
「いいわ。貴方の秘密はこのアメジストが暴いて見せる。考えたら怪盗が教えてもらうなんて屈辱的な話よ。やはり自らの手で暴き出すのが怪盗よね。怪盗バトルロイヤルが楽しみだわ」
 当然ながらトップであるアメジストも怪盗バトルロイヤルに参加する。ランキング一位のアメジストと二位のメギド。上位二人から目を付けられているって、ヤバすぎない?
「謎の怪盗クチナシか。どっちの方が強いか勝負ね。ふふ、面白くなってきた」
 挑戦的でかつ、強気。そして何より『楽しそう』だ。これが怪盗アメジストらしい。
 悪戯好きでもあり、純粋に勝負を楽しむ性格でもあり、そして普段は凛としたクールな態度でもある。その全てがアメジストであり、どれもがこの上なく彼女に似合っていた。
 場によって態度をコロコロ変える……というのではなく、それぞれに使い分けた自分を演じていて、それを楽しんでいるのかもしれない。これが一流怪盗のコツなのだろうか。
「ライトニングもいなくなったことだし、最近は退屈していたのよ」
 ああ、そう言えば少し前までは怪盗ライトニングがトップだった。アメジストと対峙することで分かったけど、ライトニングは相手が悪すぎたのだと思う。
「彼、私に負けてたショックで怪盗を辞めたらしいわね。残念だわ」
「ま、ライトニングはメンタルが弱いし、それほど大した怪盗ではありませんでしたよ」
 ……? フォトの奴、妙に詳しいな。サポーターだからデータも豊富なのだろうか。
「貴方は簡単に辞めないでね。またお気に入りの『オモチャ』がいなくなったらつまらないわ」
「わ、我々はあなたの玩具ではありません!」
 彼女にとって目を付けた怪盗は遊び道具らしい。ライトニングはショックで怪盗を辞めたらしいが、そんな風に見られていたのが原因かもしれない。
「まあ、貴方が『脅迫状』の犯人じゃないと分かっただけよかったわ」
「……脅迫状?」
「ええ。こんなものが送られてきたの。ちなみに極秘事項だから、誰にも言わないでね」
 アメジストのサポーターが空間に文字を出現させる。それを見た僕は背筋が震えた。
『三日後。怪盗バトルロイヤルに参加する全ての人間が死ぬことになるだろう』
 なんだこれ。雰囲気は予告状に似ているが、明らかに異質だ。
「悪戯だと思うけど、一応は調査していたの。特に実力がある怪盗の嫉妬からくるものだったら危険だわ。だから貴方に接触したわけ。でも対面してみて分かったけど、怪盗クチナシはそんなタイプの怪盗じゃない。疑って悪かったわね」
 アメジストの本当の目的は脅迫状の犯人捜しだったのか。それなら確かに僕は怪しいかもしれない。強いのに人気が低いとか、人によっては発狂ものなのだろう。
「まあ、全く会話をしないのはちょっと怪しいけどね」
 それについてはごめんなさい。コミュ障が完治すればきちんと喋るようにします。
「ふん。ですが犯人も怪盗相手にずいぶんと強気な奴ですね。いいでしょう。我々も協力しましょう。怪しい奴を見つけたら報告しますね」
 アメジストの話によると、脅迫状は怪盗の予告状を改良して作られたものなので、犯人は怪盗の可能性が高い。さらに文面から嫉妬深い人物だと予想されるらしい。
 思うように結果が出てなくて嫉妬深い怪盗……僕は一人だけ該当する怪盗が思い浮かんだ。
 ただ確証は無いので黙っておく。この手の推理は苦手で、結構外すことが多いのだ。
 でも僕はこの大会で何かとんでもない事件が起きるような、そんな嫌な予感がしていた。

 第六話 決め台詞の最終兵器!

「へえ、怪盗さん、あの怪盗バトルロイヤルに出るんだ」
 翌日、僕とフォトと姫咲さんは三人で屋上に集まっていた。基本的に放課後はここで会話の練習をする事になっている。
 今日の議題は怪盗ランキング発表会での出来事だ。これについては喋る事がたくさんある。
 脅迫状の件は気になるが、僕たちにはそれ以上に粛清の危機が迫っている。こちらも捨て置く事はできないだろう。やはり大会には本気で挑む必要がある。
「フォト、怪盗バトルロイヤルについて詳しく教えてくれないかな?」
 年に一度行われる大規模な怪盗の大会というのは聞いたことがある。ただ、具体的な詳細についてはあまりよく知らない。
「そうですね。怪盗バトルロイヤルは、ほとんど全ての怪盗が一斉に集まって競い合うお祭りイベントだと思ってください。参加資格はどの怪盗にもありますよ」
「全ての怪盗って凄いね。競うってのは、誰が早く宝石を盗めるか競争でもするの?」
「いえ、大会では特殊ルールとなっており、その日は町中に専用の宝石が配置されます。その隠された宝石をより多く見つけ出した怪盗が優勝です。『速さ』ではなく、『数』で勝負です」
「一つの宝石を奪い合うんじゃなくて、たくさんの宝石を見つけあう勝負って事か」
「はい。最後には人気投票もあって、上位の怪盗だけが決め台詞を言ってアピールをすることができるのです。もちろん、優勝した怪盗が最も持ち時間が長いです」
「その人気投票でメギドと勝負ってわけだね」
 僕の言葉を聞いて姫咲さんが信じられないといった表情で両手を口に当てる。
「ええ!? 怪盗さん、あのメギド様と勝負するの?」
「そうなんだよ、フォトのせいでそうなってしまった」
「うっさいです。あんなイキリ野郎は敵ではありません!」
 そして謎の自信を持つフォト。というか、現実逃避しているだけか。
「しかも、もしかしたらアメジストとも勝負することになるかもしれない」
「アメジスト様まで!? か、怪盗さん、チャレンジャーだね」
「正直、このままじゃ絶対に負けるけどね」
「そんなことはありません。マスターは最強です! 優勝を狙える自信はあるのでしょう?」
「それは……まあ、無理ではないと思うけど」
 ただ、優勝してアピールしたところで今の僕の人気ではメギドには勝てない。そもそも人気ランキングが二位のメギドにはファンによる『固定票』が存在するのだ。
 ファンどころか例のステルスによって存在すらほとんど認知されていない僕は、その固定票だけで負けが確定である。この勝負は既に始まる前から決まっているのだ。
「ううん、そうでもないよ。怪盗クチナシさんにも勝ち目はある」
 しかし、姫咲さんが自信に満ちた目で僕を見つめてきた。何か考えがあるのだろうか?
「あのね。人気が最下位って逆にチャンスなんだよ。意外な人が勝っちゃったりしたら、それだけ一気に注目されて人気が上がるんだ。この状況はむしろ好都合かもね」
「そうか! ダークホース! 客は番狂わせが起きればそれだけ喜びます!」
 なるほど、それは考えが及ばなかった。確かに人気が最下位の僕が優勝すればそれだけインパクトは大きいのかもしれない。人気が最下位だからこそできる戦略もあるわけだ。
「怪盗バトルロイヤルは大規模です。そこで優勝して、さらに番狂わせまで起こせば、さすがにマスターのステルスも貫通できるに違いありません!」
「逆に言えばメギド様は負ける事で失望しちゃう子も出るだろうから、一気に人気を落とすかもしれないね。クチナシさんが優勝するのは相手に与えるダメージも大きいんだ」
「ほほう、いいですね。あのイキリ野郎が失望されるのはスカッとしますよ! ざまぁ!」
「こう言うと失礼だけど、メギド様はあまり褒められるタイプの怪盗じゃないからその分、アンチさんも多いんだ。負けたりしたら、そこを突かれて炎上する可能性も高いかもね」
 さすが姫咲さん。そこまで計算していたのか。成績トップの実力を垣間見てしまった。
「普通にやればいいだけじゃないですか! 単純な実力勝負なら結局はマスターの独壇場です! マスター、もう一度聞きますが、宝石の取得数でトップに立つのは可能なのですよね?」
「ああ、そっちには自信がある。探索は得意なんだ」
 コミュ力が関係しない真っ向勝負だったらむしろ望むところまである。
「ただ、ごめん。やっぱりそれだけじゃ弱いと思う。決め台詞で強烈なアピールしないと、メギド様の人気を超えるのは難しいね」
「そっか。でも、それはもうフォト先生に任せるしかないね」
 決め台詞はフォトに僕の声を使って言ってもらおう。キザな台詞なら彼女の十八番だ。
 フォトなら姫咲さんの言う『強烈なアピール』が十分できるだろう。この子の本領発揮といった所だ。普段の過剰ともいえる自信をここで発揮するのだ。
 そう思ってフォトの方を見ると、なぜか全身汗まみれとなっていた。
「フォト、どうしたの? 何か問題でもある?」
 どうでもいいが、汗をかいたり白目を剥いたり目が血走ったり、フォトは本当に多機能な人形である。……あえて無駄な機能とは言わないでやろう。
「いや、あの……言いにくいのですが、実は本番で私がマスターの代わりに決め台詞を言うのは不可能なのです」
「ええ!? なんで?」
「安全のために大会の決め台詞は、スピーカー以外の全てのアイテムが没収になるのです。それはサポーターも含まれます。だから、私がマスターのそばに行くことは出来ないのです」
 衝撃の事実が発覚した。それはつまり……
「本番は、マスターご自身が決め台詞を言うしかありません」
「……マジか」
 とんでもない事になってしまった。本番は僕一人で決め台詞に挑まなければならない。
 コミュ障である僕が決め台詞で強烈にアピールするなんてできるのだろうか?
「決め台詞対策を練らなければなりません。私の方でも作戦を考えておきましょう」
 フォトが作戦を考えてくれるらしいが、本番までに間に合うかどうかは際どい部分だ。

 × × ×

(うぬぬぬぬぬぬ。どうしましょう、何も思い浮かびません。明日が大会なのに!)
 次の日、フォトは僕の決め台詞対策をずっと考えてくれているのだが、良い提案は思い浮かばないようだ。常に唸り声が僕の頭に響いている。
 ちなみになぜテレパシーで脳内に語り掛けて来るかというと、今が授業中だからである。
 つまり、僕は授業中にフォトの唸り声をずっと聞かされているわけだ。とても迷惑だと言いたいが、僕の為に唸ってくれているので文句は言えません。
「それでは教科書の次のページを読み上げてください。今日は八日なので、出席番号が八番の人に読んでもらいますね」
 先生の言葉を聞いた僕は急いで意識を授業に戻した。その出席番号の生徒は僕である。
「えっと、出席番号八番の生徒は……梔子君ですね。お願いします」
 その前に一瞬、「梔子君って誰だっけ?」なんて言葉を先生が漏らした気がするが、聞かなかったことにしておこう。相変わらず僕は存在感が無い。
(し、しまった! ついにこの日が来てしまいました! Xデーです! マスターが先生に当てられてしまったのです。これは……終わった!)
 フォトがこの世の終わりみたいな声で脳内に話しかけてきた。一瞬、姫咲さんとも目が合うが、なぜか彼女も心の底から心配そうな表情で僕を見ている。
 ずいぶんと大げさだ。さすがの僕も教科書を読み上げるくらいはできる。
 僕はそのまま席を立って、普通に詰まることなく教科書を読み上げて、再び席に着いた。
(はあああああああ!?)
 脳内でフォトの驚愕の声が聞こえて来る。よく見ると姫咲さんも同じような表情だ。
(なんだよ、フォト)
(いえ、だって……まあ、いいです。放課後に言います)
 そして、放課後。屋上に集合すると同時に、フォトが懐から飛び出して僕を睨み付ける。
「この詐欺師!」
「はあ!? 急になんだよ」
「なんでコミュ障なのにあんなスラスラと教科書を読めるんですか!? 普通、あんな時はオロオロしたり、あたふたして大恥をかくのがコミュ障というものでしょ! せっかく大笑いしてやろうと……じゃない、慰めてあげようと思っていたのに!」
 ちょっと待て。今、一瞬マスターを笑いものにしようとしていたな?
「わ、私もちょっとびっくりした。怪盗さん、全然コミュ障じゃなかったよ」
 姫咲さんの方も同じ感想らしい。よほど僕のしたことがコミュ障として意外だったようだ。
「さてはあなた。本当はコミュ障じゃありませんね。普段はサボっているだけですね!」
「むむ、それはダメだよ。怪盗さん、嘘つきは泥棒の始まりだよ。……あ、でも泥棒って怪盗さんの事だから、それでいいのかな?」
「いやいや、ちょっと待って。話を聞いて!」
 二人の言いたいことは分かった。コミュ障イコール本読みが苦手と思われていたらしい。
「あれは『朗読』だから大丈夫なんだよ。本を読むのは好きだし、誰かと会話しているわけじゃないから問題は無いんだ」
「な、なんですと! つまりマスター。あなたは『朗読』なら可能だというのですか!?」
「そうだよ」
「なぜそれをもっと早く言わんのです!」
 怒られた……と思ったのだが、フォトの表情は笑っていた。勝利を確信した顔である。
「マスター、これで決め台詞の問題は解決です。我々の勝ちですな。はっはっは」
 フォトは妙案が閃いていたらしい。僕が朗読できるのと関係ある事だろうか?
「最終兵器、『カンペ』を作ればよいのです。これにて解決です。勝利です!」
「……カンペ?」
「カンニングペーパーです。確かに本番は私がそばにいません。ただし、台詞を用意することは出来ます。あらかじめ台詞を小さな紙に書いて、マスターがそれを読み上げればいいのです」
「ああ、なるほど」
 カンニングペーパー。単純であるが、意外と効果的な作戦じゃないだろうか。
 決め台詞は高い所に立って言う。恐らく客席からはカンペは見えないはずだ。
「でも、朗読しかできないから、棒読みになるよ。感情を込めて言うのは苦手なんだ」
「む、確かに。となると、無難な台詞を用意したいです。ですが、私が考える台詞だとキザな台詞になるので、どうしても違和感ですよね」
 無難でかつ、心に響くような台詞。これはこれで難しい。少なくともコミュ障の僕には想像もできない台詞だ。誰か言葉のスペシャリストのような人がいれば……
「そうだ! 姫咲さん、あなたが決め台詞を考えてもらってもいいですか?」
「へ? 私?」
 まさかそこで自分とは思っていないかったらしく、姫咲さんが首を傾げていた。
「姫咲さんにはピッタリです。あなたはクラスのアイドル……つまりリア充であり、クラスカーストのトップです。きっと全て人間に好かれるような言葉が思いつくはずでしょう」
「フォトちゃん。それ、褒めてる?」
「もちろんです! あなたにしかできないお仕事です。マスターも大喜びです。これができれば怪盗から好かれることは間違いありません。マスターが喜んでくれますよ」
「む? 怪盗さんから好かれる。……喜んでくれる」
 フォトの詐欺のような言葉で姫咲さんは目の光が失っていく。彼女が将来悪い怪盗に騙されないか心配になって来た。
「あなたは頭がいい。特に国語の成績は常に学年一位です。つまり文章力が並外れているのです。作者の気持ちとか理解できそうだし、その道のプロなのです! 自信を持ってください」
 それは偏見ではなかろうか。しかも、なんでそんなデータを知っているのか。
 相変わらず人間様のプライベートを無視する人形である。
「…………う〜ん。どうしようかな」
 しかし、姫咲さんはあまり乗り気ではないようにも見える。さすがに怪しんでいるか。
「むう、やはり無理ですか?」
「無理じゃないけど……怪盗さんは私が考えた台詞を言ってくれるんだよね?」
「そうです。おかげでマスターは大助かりです。憧れの怪盗から感謝されますよ!」
「それは嬉しいけど、私が作った言葉じゃなくて、『怪盗さん自身の言葉』が聞きたいよ。偽物じゃない本物の言葉が楽しみなんだよ」
「……む」
 フォトもつられて複雑そうな表情となる。少し納得できる部分もあるようだ。
 姫咲さんがカンペを作るのに乗り気じゃない理由。それは彼女のカンペは結局『姫咲さんが作った言葉』という部分だ。彼女が望むのは怪盗の本心だから、別人が作ったカンペ……それも自分が作った言葉を聞かされても、複雑な気分になるのは当然である。
「私とてその方が良いとは思います。口先だけ立派な奴なんかより、中身が立派な怪盗こそが本物ですからね」
 フォトもチャラい怪盗が嫌いと言っていた。アピール力を上げるという行為は今やっていることは、普段フォトが言っている事と真逆である。
「ですが、まだマスターには時期尚早かと。下手をしたら本番で全く喋れなくなる危険もあります。そうなったらショックでマスターは廃人となってしまうかもしれません」
「いや、さすがに廃人にはならないと思うけど!?」
「そうでなくても、トラウマになる可能性はあります。そうなってしまったら、余計にコミュ障が悪化するかもしれませんよ。マスターはそうならないと断言できますかな?」
「む……」
 それに関してはフォトが正論だ。今回に限っては、本当に僕の事を考えてくれている。
 実際にカンペがあればかなりありがたいし、心強いのは確かだ。特に粛清の事を考えれば今回は急を要する勝負だし、フォトの案に乗った方がいい気がしてきた。
「えっと。ごめん、姫咲さん。僕もカンペがあった方がありがたいかも……」
「……そっか。分かったよ。怪盗さんがどうしてもって言うなら。この前のお礼もあるしね。明日の大会前までに完成させておくから、それまで待ってね」
 姫咲さんは渋々ながらも納得してくれた。こんな無茶なオーダーを受け入れてくれるとは、むしろこちらの方に大きな借りが出来てしまった。
「これで対策が決まりましたね。うまくいけば人気でも勝てるでしょう」
 正直、まだ勝率はかなり低いのだが、それでもお先真っ暗という訳でもなくなった。進むべき方針が決まっただけでも良しとしよう。

 × × ×

 そうしてその日はお開きとなり、僕たちは帰宅する。後は姫咲さんのカンペ待ちか。
「マスター、まだやれることはありますよ。別の人気対策を練りましょう」
「人気対策か。何かできる事はあるかな?」
「ええ。例えば『コスチューム』に拘ってみるとかはどうですかな?」
 そういえば僕の怪盗時のコスチュームはフォトが勝手に決めたものだけど、これは変更が可能というのを聞いたことがある。ゲームみたいに自分の好みでデザインが出来るのだ。
「でも、それって有料じゃないの? 今の僕にお金は無いよ」
「おっと、そうでした。これは失礼」
 前回は姫咲さん本人が報酬であるため、お金を貰えなかったのだ。これは仕方ない。
「そういえば、マスターはゲーム内で全くコスチュームを使っていませんでしたね」
「まあ、そうだね。弱いしね」
 コスチュームは通称オシャレ装備とも呼ばれており、戦闘能力は皆無である。
 僕はゲームでも効率を重視するので、かっこいい見た目のアイテムは無視して、使えるアイテムのみを使用していた。
「というか、なんで僕のゲーム内情報を知っているんだ?」
「サポーターたるもの、常にマスターの情報を知る必要があります。特にこのフォト、ハッキングはお手の物です。どうです? 凄いでしょ!」
「いや、君さ。プライバシーって言葉を知ってる?」
 どうやら僕のプレイスタイルは全てフォトに掌握されているようだ。
「人気を取る一番有効な戦法は『強さ』ではありません。『かっこよさ』です。本来はアイテムよりオシャレなコスチュームにお金を投資した方が有効なのですよ」
 フォト的はアイテムよりコスチュームにお金をかける方が重要らしい。
 確かに人気怪盗は皆が専用のコスチュームを着ていた。アメジストも自分専用のオリジナルだし、メギドは大量のアクセサリーを身に着けていた。かなりのお金をかけているはずだ。
「むしろ実力より衣装センスの方が重要とまであります。これを見てください!」
 フォトがバーチャル画面に映像を映し出した。それはバーチャルで作られたキャラによる怪盗ゲームの実況動画だった。
 この町で怪盗が流行っているという事は、その怪盗ゲームを使った実況動画も人気で言えば負けていないという事だ。下手をすれば実際の怪盗より人気とまである。
「この動画の主、実力はちょっぴり控えめですが、そのたぐい稀なる衣装センスによって莫大な人気を得ているのです。弱くても、見た目さえ充実していれば人気は取れるのです」
「へえ」
 見てみると、確かにキャラの見た目が綺麗だ。色々なパーツを組み合わせてとても可愛くコーディネートしている。これに魅かれるのは僕もよく分かった。
 この実況者は一体どんな人物なのだろう。その中身が気になる所だ。
『みなさ〜ん。今日も視聴ありがとうございます! とっても可愛いフォトちゃんのゲーム実況動画、略してフォトチャンネルです! 応援よろしくお願いしますね〜』
「って、フォト!?」
「はい、正解です。まあこれ、私なんですよね」
 お前かよ! ロボットがバーチャルアイドルとか、ガチじゃないか!
「とっても可愛くてオシャレのセンスが抜群の美少女は誰でしょう? そう、私です!」
 画面とシンクロしてフォトがおでこにピースサインを作った。ノリノリである。
 おまけにどこかで聞いたことのあるフレーズなんだけど! パクリじゃん!
「…………でも、めちゃくちゃ下手だね」
 肝心のゲーム内容は壊滅的であった。初心者の方がマシレベルである。なぜ機械である彼女がここまで操作がおぼつかないのか。これもメギドの言う『人間』に関係するのだろうか。
「うっさいです! 可愛いからいいんです! 可愛いは正義です!」
 ちなみにアンチから腕前を批評されると同じようにブチ切れている。信者からは『またフォトちゃんがキレた』『キレるフォトちゃんも可愛い』などのコメントでフォローされていた。
 ただ、この動画で真面目に学べる部分も多い。しっかりと人気は取れているのだ。
「言っておきますが、チャンネル登録はどんどん増えていっています。人気は上位なのですよ」
 自慢げなフォトであるが、確かに自慢できる確実な実績だ。本当に凄いと思う。
「大事なのは見た目と愛嬌です。ちょっと下手だったり弱かったりしても、きちんと自分の味方をしてくれる人はいます。いかにコスチュームが大事というのかが分かるでしょう?」
「……そうだね」
 逆に言うならどれだけ実力があっても、見た目や性格が悪ければ人気は取れないという事だ。
「でもごめん、実は僕、そういうのが無理なんだ」
「無理? それはどういうことですか?」
 真面目なニュアンスで話す僕にフォトが首を傾げた。言葉に驚いたというより、真剣な表情に驚いているようだ。
「センスが無いって言えばいいかな。僕には『デザインのイメージ』ができないんだ。どうやれば『敵を倒せる』かはいくらでもイメージできる。でも、どうやったら『かっこよく見える』のかは、どうしても想像することができないんだ」
「なるほど。つまり、それがコミュ障の原因にも繋がっていると……」
「そうかもしれない」
 デザインをイメージできないから、会話もイメージもできない。これを理解してくれる人はいないだろう。これは余計なことを言ってしまったかもしれない。
「ふ〜ん。ま、いいでしょう。では、この話は忘れてください。マスター」
「…………へえ、意外だね。怒らないんだ」
 てっきり『甘えるな』とか言われるかと思ったのに。まさか分かってくれるとは……
「要はコスチューム関連は私がデザインしてあげればいいだけですね。お任せください。私好みにマスターをカスタマイズしてやりましょう。ぐふふふ」
 違った。この子は僕を着せ替え人形にしたいだけであった。人間の僕が人形の思うがままになってしまうのである。………まあ、別にいいけど。
 色々な人から気味悪がられていた『デザインができない』という僕の人間的に故障した部分。それを否定されたかった事が、僕はちょっとだけ嬉しかった。
「でも、今はお金がないから無理だね」
「ち、そうでした。まあ、いつかのお楽しみに取っておきましょう」
 それから僕たちは無言の時間を過ごした。いつも何かと喋っているフォトが今は黙っている。
 僕は何故かそれが心地よく感じた。無言が心地いいとか、コミュ障で悩んでいたのが馬鹿らしくなる。『無言』も一つのコミュニケーションなのかもしれない。
「マスター。その代わり、大会では絶対に勝ちますよ。我々の命が掛かっているのです」
「はいはい。分かってるよ。まあ、ゲームは難しい方がやりがいはある」
「そっち方面だけは頼りになりますね。ええ、サクッと勝って台詞もバシッと決めましょう」
「き、決め台詞……忘れてた。ダメだ。僕が一人で決め台詞なんて無理に決まっている!」
「急にヘタレるんじゃありません! 姫咲さんのカンペを信じなさい! まったく、負ければ粛清の可能性もあるのですからね。これは最終決戦にして、最後のチャンスと思ってください」
 僕の怪盗としての最後のチャンスか。そうだな。やるしかない。
 ああ、やってやる。今の僕ならやれるはずだ。不思議とそんな予感がした。

 × × ×

 その夜、僕は夢を見た。それは僕がコミュ障になっていく過程であった。
 僕は昔から好みが普通の人とはずれていた。センスがまともじゃなかった。
 皆がAが好きだと言えば、僕が好きなのはいつもBになる。その主張を毎回繰り返していれば、どうなるかは言うまでもない。
 『おかしい』とか『変わっている』などはまだ可愛い。それが次第に『空気が読めないムカつく男』とか『逆張りして喜んでいるくだらない人間』といった言葉に変化するまで、そう時間はかからなかった。その段階になってようやく僕は初めて気づいたんだ。
 どうやら僕が口を開く事で不快になる人間は思ったよりも多かったらしい。僕はただ、それぞれの好みについて話し合いたかっただけなのに、皆はそうは思ってくれなかったようだ。
 別に皆を否定したいわけじゃなかった。ただ、僕にも好みがある事を知って欲しかっただけなんだけど……な。周り人たちの方は僕を否定する。
 だから僕は常識を覚えることにした。皆がAが好きと言えば、それに合わせて僕もAが好きだと言えばいい。なんだ。簡単な事じゃないか。
 むしろ楽だ。ただ周りが言っていることに賛同すればいいだけだ。きっとこれでうまくいく。
 そう思っていたが、僕は自分で思っていた以上に不器用な人間だったようだ。うまく合わせているつもりが、それは周りからどうしても不自然で不格好に思われたらしい。
『ねえ、この服、いいよね!』
『うん、いいと思う』
『いや、私はこっちの服の方がいいと思うけど……』
『うん、それもいいと思う』
『……なにそれ。本当はどっちがいいと思っているの?』
『それは……』
 今度は『適当に合わせているだけ』とか『思ってもいないくせに……』と周りから言われ始めた。怒りに満ちた目で『分かったフリをしているにわか』と罵られたこともあった。
 嘘をつくのが苦手。かといって正直に言っても相手を怒らせるだけ。まるでで出口の見えない迷路へと迷い込んだ気分だった。どんどん自分が沼にはまっていくのが分かる。
 次第に不自然な言動になっていく。自分でそれが分かっているくらいだから、周りからはよりおかしく見えたのだろう。不自然を隠すための行動は更に僕の違和感を広げていった。
 ある日、クラスで一番の人気者であるイケメン男子にこう言われた。
『お前が喋るだけでみんなが楽しくなくなる。お前、もう二度と口を開くな』
 その言葉を聞いた時、とうとう僕はどうやって喋ったらいいのか分からなくなった。コミュ障である梔子真人の完成だ。この先の人生はそれを受け止めてただ生きていくだけだ。

 × × ×

「…………ち」
 そこで目が覚めた。起きていきなり舌打ちをしたのは生まれて初めてかもしれない。
 今日はいよいよ怪盗バトルロイヤルの日。でも寝る前の充実した気力は既に消えうせていた。
 最悪だ。よりによって、大会当日にこんな夢を見るとか、まるで運命の呪いだ。
「おはようございます、マスター。良い朝ですね」
 隣ではフォトが座っていて天井を見上げていた。それが妙に絵になっており、不覚にも綺麗だと思ってしまう。本当に黙っていたら綺麗な子である。
 ただ、少し違和感だ。妙に真面目な雰囲気を感じる。フォトにしては珍しい。
「マスター、何を恐れているのです? 今のあなたは怪盗です。周りの無能どもに怖がる必要は無いのです」
「……え?」
 フォトは天井を見上げたまま語る。まるで今の僕の気分を知っているかのような言い回しだ。
「まあ、その……夢は無防備というか、サポーターと繋がりやすいので……」
 く、フォトの奴。僕の夢を覗いていたのか。嫌な過去を見られてしまったじゃないか。
「マスターが喋る事を止める必要など最初から無かったのです。今のマスターの周りは味方しかいませんよ。だから、ライブでも決め台詞でも恐れる必要はありません」
「君はあの過去を見たうえで、それでも恐れなくてもいいと言うのか?」
「ええ。なに無能共が言うくだらない事を真に受けているんですか。あなたの価値はあなたが決めなさい。それで不安なら私がいます。私があなたの価値を証明して見せますよ」
 僕の価値……か。どうしてフォトはこんな僕にそこまで価値を見出すのだろうか。
「あなたの夢を見て気付いたのです。マスター、昔はきちんと認知されていましたよね? 無能共の言う事を真に受けて、あなたは自ら存在感を消した。無意識に……ね」
 確かに……僕の存在感が薄れてきたのもあの日からだ。
「きっと本当のあなたは人より『持つ』人間だったのでしょう。それを察知した無能共が慌ててあなたを抑え込みに来たのです。無能ほど他人を下げて自分を大きく見せようとします」
 僕が『持つ』人間? まったく、本当にこの子は厨二病だな。でも、僕の為に言ってくれているのはよく分かる。フォトの事だからどうせこじつけだろうけど、それでも嬉しかった。
「どうです? 少しは気が楽になってきましたか?」
「そうだね。ま、一応はお礼を言っておくよ」
「ふっ、当たり前のことをしただけですよ。私は高性能ですからね!」
「ああ、僕から見た君は紛れもなく『高性能』だ」
「…………へ?」
 フォトが意外そうな表情となった。本人的には自虐でツッコミ待ちだったらしい。
 でも、本当にそこまで『自分』を出せるフォトは高性能だと思う。
「こ、こほん。とにかくマスター。勝っても負けても今日で全てが変わります。でも、どうせなら勝って変わりましょう。落ち込んでいる余裕なんてありませんよ?」
「それに関しては同意だよ。『非効率』だからね」
「では、行きましょうか。大会で見せつけてやります。ここに愚民どもが知らない最強怪盗がいるのだとね」
 最悪だったコンディションはいつの間にか最高になっていた。さっきまでの自分が嘘のようだ。今なら逆に『勝てる』ビジョンしか浮かばない。
 コミュ障怪盗クチナシ。ポンコツサポーターのフォト。間違った僕たちが全ての怪盗の頂点に立つみたいな夢物語を少しは信じてもいい気がしてきた。
 この大会が終わった時、僕は自分が大きく変われる。本当にそんな予感がしていた。

 第七話 怪盗バトルロイヤル

「怪盗さん、おはよ!」
 大会の会場に向かう前に僕は学校の屋上へ来ていた。姫咲さんとの待ち合わせである。
 目的はカンニングペーパー。姫咲さん曰く、かなり拘りたいので直前まで待ってほしいとの事だった。それだけ本気で取り組んでくれたという事なのだろう。
「お待たせだね! なんとか完成したよ〜。はい、カンペ」
 少し疲労困憊気味の姫咲さん。もしかして、寝てないのだろうか?
 そんな彼女から受け取ったカンペのサイズは掌よりもさらに小さい。だが、僕の視力なら十分に見ることが可能である。そこもきちんと計算されているらしい。
「申し訳ありませんが、カンペの内容をチェックさせていただきますね」
 フォトが確認する。結構な文字数に見えたが、そこは流石に機械と言うべきか、一瞬で読み終えたようだ。
「むう、完璧です! これ以上のものを書ける人はこの世に存在しません!」
 フォトの口から大絶賛の言葉が出て、つい面食らってしまった。
「フォトがこんなに褒めるなんて珍しいね。明日は雪かな?」
「私は良い物はきちんと褒めるんですぅ! マスターも見てください」
 フォトからカンペを渡された。読んでみると、本当にその内容に驚いた。
 なんだこれ。驚くほどしっくりとくる。まるで自然に僕が喋ったかのような、それでいて、無理な感情的な言葉が一切無い。
 多少は淡々としているが、そのおかげで丸読みしても違和感が無いように思えた。この部分も完璧に計算しつくされていたのだろう。
 さらに言うなら、とても字が綺麗だった。ただ綺麗なだけじゃない。読みやすさに特化した完璧な書き方だ。
 うん、天才だ。フォトが思い付きで頼んだだけだったのに、それがとてつもない天才を生み出す結果となってしまった。
 一番は頼もしさだ。自信を持って読める。だからこそ詰まらずにそのまま言葉にすることができるんだ。こんな気持ちになったのは生まれて初めてである。
「これなら感情を込めなくてもある程度は伝わると思う。本読み感覚でいけるから、気は楽だとなはずだよ」
 自信のある言葉とは対照的に、姫咲さんは少しだけ複雑そうな表情となっていた。
「えっと、姫咲さん? どうしたの?」
「あ、ごめん。ただ、私の考えた台詞でいいのかな……って思っただけ。やっぱり私は不器用だったとしても怪盗さんの本音が聞きたかった……かも」
「それは……」
「うん。本当にごめん。それは私の我儘だよね。怪盗さんは上手く喋れなくて苦しんでいるのに、無理やりを押し付けたらダメだよね」
 そうだった。姫咲さんは本来、怪盗の本音を聞きたかったんだ。今回の事で複雑な気分になるのは当然か。本当に無理をさせてしまったようだ。
「ごめん、いつか必ず、コミュ障を克服出来た時には僕の本当の言葉をきちんと口にできるようにする。絶対に約束するよ」
「良い決意です。その思いがあればきっと大丈夫です。近い未来、マスターはコミュ障を克服できることでしょう」
「うん。怪盗さんには怪盗さんの戦いがあるもんね。頑張ってね、私も見に行くから!」
 最後にどうなるかは分からない。カンペがあっても喋れなくなるのかもしれない。そもそも優勝できるかどうかも分からない。普通に考えたら最下位が優勝なんて思い上がりだ。
 それでも、やるだけはやってみよう。それも僕の戦いだ。
「ええ。私にも自分の戦いがあります」
「へえ。どんな戦い?」
「ここで有名になって周りの奴らを見返してやるのです。フォト様凄い〜、みたいなことを言われたいのです!」
「ずいぶんと欲にまみれているね」
「ふん。欲のない人間は成功しませんぞ?」
「なるほど」
 まあ、それぞれに戦いはある。色々な思いを胸に秘め、怪盗バトルロイヤルが今始まる。

 × × ×

 午後七時半。体を落ち着かせて準備を整えた僕は、会場へ到着した。
 開始時刻は八時。あと三十分でいよいよ怪盗バトルロイヤルが始まる。
 既に会場にはたくさんの怪盗がいた。町中の怪盗が今回は集まっているのだ。
 それぞれが野心に満ちた表情であり、なおかつ輝きを放っていた。
 僕はここにいる全ての怪盗に勝たなければならない。それがどれだけ困難なのかは今の会場の雰囲気を感じていれば分かる。
『さあ、皆さんお待ちかね! ほとんどの怪盗が参加するバトルロイヤルの始まりです!』
 実況の方も熱のこもった声が聞こえて来る。いや、実況だけじゃない。観客の熱量も普段のそれとは比べ物にならないくらい膨大であった。
『観客の皆様、盛り上がってますか〜?』
「うおおおおおおおお!」
 実況の声に煽られた観客が声を揃って上げる。本当にお祭り状態である。
 この日だけは衛星を通じて町の様子がモニターに映し出されるらしい。観客はそこで目当ての怪盗を応援して楽しむという仕様のようだ。
「怪盗様! 素敵です! 結婚してくださいぃぃ!」
 ひときわ大きな声。僕が何度か聞いたことのある声だ。そしてついさっき聞いた気がする声。
 よく見ると、姫咲さんだった。前から僕に求婚していた人の正体は彼女だったようだ。場の雰囲気に飲まれて言っているだけだろうけど、感極まりすぎだと思います。
『さて、今回はかなり特殊形態であります。なんと町全体がフィールドとなります!』
 実況のからの説明が入る。一応はフォトからも説明を受けたが、確認がてら僕も聞いておく。
『現在、町中に大会専用に作られたビー玉サイズの小さな宝石が隠されています。最終的にこの宝石の総取得が多い怪盗が優勝として決め台詞を言える権利を得られるのです』
 町全体に散らばる小さな宝石を見つけるのが今回の目的だ。僕は一つでも多く宝石を集めてトップに立たなければならない。
「マスター。宝石は何処にあるのか分かりません。その辺の草むらにひょっこり落ちているかも知れませんし、あるいはどこかのビルの屋上に転がっているもしれません。ちなみに今回はサポーターによるレーダーも無効です。虹色に光っているので分かりやすくはありますが……」
 町全体から自力でビー玉ほどの宝石を探し出す。これはかなり大変だろう。
 とにかく探索して、宝石を多く所得する事が重要となる。時間との勝負だな。
 逆に考えれば、戦闘は時間の無駄だ。できれば戦わずに宝石探しに専念したい。多くの怪盗が同じ事を考えているだろう。
「いや、そうでもありませんよ。宝石は他の怪盗から奪う事も可能です。色々な怪盗に喧嘩を売って、宝石を奪いまくった方が有利と言えるかもしれません」
「なるほど。でも、その怪盗が宝石を持っていない可能性もあるよね?」
「ええ。特に低ランクほど宝石は持っていないと思われています」
 通常、低ランクは能力が低いと思われるのが定説だ。それには探索能力も含まれる。
 だから低ランクと戦っても宝石を持っていないので、無駄足となる可能性も高い。低ランクほど狙われにくいのだ。
「僕は最低ランクだし、しかもステルスもある。これは有利だと考えていいよね?」
「もちろんです。うまくいけば誰からも襲われずに終われるかもしれませんね」
 探索に専念できればそれだけ宝石の取得数も上がる。本当に優勝も夢ではなくなった。
『さて、皆様。もちろん警察も出現いたしますよ! 数も通常の比ではありません。今回のランクはなんと『EX』! 警察の能力はピンキリです!』
「ランク、EXなんだ」
「ええ、これは全てのランクの警察が出現するという意味です。怪盗だけでなく、警察も全員集合ってわけですね」
 強い警察もいれば、弱い警察もいる。誰とぶつかるかは運しだいってわけか。
 本当にかなり運が絡むようだ。だからこそ、最下位にもチャンスはあるのだろう。
『今回は捕まえた怪盗に対してボーナスもつくので、警察の方々の気力も充実しております!』
 警察も多いが、怪盗の数も多いので狙いは分散される。しかも、上位の怪盗ほど警察の報酬が高い。つまり、ランキング上位ほど狙われて、下位は狙われにくい。
 この部分も最下位である僕たちが有利な部分だな。警察にも妨害される可能性は低いようだ。
『更に警察以外にもとんでもない敵もいますよ。あそこをご覧ください!』
 スポットライトが当てられる。そこにいたのはとんでもない代物だった。
「な、なんだあれは!」
 思わず声を上げてしまった。だって、いくら何でも現実離れしすぎている。
 それは全長三十メートルにもなる『巨大ロボット』だ。これを見てビビらない奴はいない。
『これは怪盗バトルロイヤル名物である巨大怪獣ベヒモスでございます! 怪盗の敵は警察だけではございません! あのベヒモスにも要注意ですよ』
 あれがフォトが言っていた巨大ロボか。僕が思っていた以上にヤバそうな代物だった。
 まるで怪獣のような禍々しい見た目。特に長い尻尾が特徴的だ。恐竜に似てはいるが腕は大きく発達しており、振り下ろせばかなりの威力が予想される。
「ベヒモスはランダムで町に徘徊して、我々に攻撃を仕掛けてきます。見つからないように立ち回る必要がありますね」
 宝石の探索と同時にベヒモスを回避するルートを探さねばならないわけか。思ったより厄介だな。ロボットなので恐らくセンサーで怪盗を認知するのだろう。
 つまり、僕のステルスは全く効かない。この部分は要注意だそ。
『怪盗の皆様、ベヒモスを倒せばボーナスとして百の宝石が手に入ります。優勝は確実ですよ! ベヒモス撃破を目指すのも面白いかもしれませんね。挑戦してみてはいかがでしょう?』
 不可能だと分かって喋っているような口ぶりの実況。恐らくは冗談のつもりなのだろう。
「やはりマスターでもベヒモスを倒すのは無理でしょうか? あれを倒せば優勝確定ですが」
「無理だね。見た限り、装甲が厚すぎる。少なくとも、もっと強力なアイテムが必要だ」
「へえ。逆に言えば、強力なアイテムがあれば、倒せる可能性はあると?」
「あくまで可能性だよ。今は言っても仕方ない事だし、逃げる方に専念するよ」
 特にあの腕は壊せそうにない。恐らくどんなアイテムを使っても破壊は不可能だろう。
『さて、怪盗の皆様は上位十チームまでアピールが可能です! 一位の持ち時間が最大で、そこから時間が短くなります。頑張って上位を目指しましょう! 最後に人気投票もありますよ』
 この人気投票で多く人気が取った方の勝ち。それが僕とメギドとの勝負だ。
 普通に人気投票をしたのなら全く勝ち目は無かった。だが、大会なら優勝すればかなり目立つことは出来るので、人気での勝ち目もゼロではない。
「おおっ!」
 会場に歓声が上がる。見てみると、そこにメギドを始めとした怪盗の集団が到着していた。
「ふん、やはり『チームメギド』で来ましたか。雑魚は群れるのが好きですな」
 怪盗には集団行動を好むタイプもいる。人数は多いほどやれることは増えるので間違った作戦ではない。むしろ、有効なやり方だと言えるだろう。
 ただし、報酬や人気が分散してしまう弱点もある。更に怪盗には我が強い人が多く、まとめるのはかなり強いリーダーシップが必要だ。メギドはその自信があるというわけだ。
 チームの人数は十人。男女比は半々だ。思ったより女子比が高い。花を狙っての事だろうか。
「ちなみにチームメギドに入れるのは、彼に認められた実力がある怪盗だけです。風の噂では面接とかもあるらしいですよ」
「うえっ。僕だったら、書類選考で落ちそうだね」
 まあ、こんなイケイケのチームに入ってしまったら、空気だけで死にそうなので誘われても入るつもりは無いけどね。陰キャにとってチームは地獄のような環境である。
「奴のチームは全員が少なくとも人気ランキング二十位以内を確保いるらしいです。曰くチームメギドに入れば上位は確実だと言われています。あんなヤバそうな奴らなのに安定したチームだと憧れられているのです。周りは人気が目当てのコバンザメかもしれませんな」
 在籍すると確実に人気を得られる。これがチームメギドの魅力らしい。
 チームの他の面々もメギドに続くように攻撃的なファッションセンスだ。明らかに『危ない集団』だというのが分かる。まるで自らの力を誇示しているかのような服装である。
 そんなチームメギドが歩くだけで周りは道を譲っていく。効果に関しては絶大のようだ。
「きゃああ! メギド様ぁぁぁ!」
 歓声のほとんどがメギドに向いている。人気ランキングが二位なので当然だが、有名チームに所属しているというのもポイントらしい。チームを作るのは人気の面でも有効のようだ。
 僕も周りに習って道を譲ろうとしたが、メギドの方が僕に向かって進んできた。
「よう、最下位に失敗作。逃げずにきちんと来たらしいな?」
 そして話しかけてきた。相変わらず『嫌な予感』を漂わせる男である。
「テメエがメギド様に喧嘩を売ったっていう最下位か?」
「身の程知らずな男ね。メギド様、いっそここで消してしまいますか?」
 今日はメギドだけでなく、周りの皆さんも威圧的に接してくる。怖いんですけど!?
「はっ、群がる事しかできない雑魚どもが。まるでアリですな。チーム名は『アント』
にした方がいいんじゃないんですかぁ?」
「な、なにい!?」
 フォトの奴、臆さずに周りの怪盗を煽りやがった。馬鹿なのか大物なのか分からない子だ。
 当然、チームメギドの面々は怒り心頭である。完全に目を付けられてしまった。
(もう、フォト。あまり余計なことを言うものじゃないよ。みんな凄く怒っているよ?)
(ふっ、その割にはあまり恐れていないように見えますが?)
(まあ、それは……)
 怒りは怖い。ただ、その分『予測』がつくので対応がしやすいのだ。なので怒りを向けられた方が『戦闘』というカテゴリーで見れば、逆に安心だったりする。
(本当に機械みたいな効率性ですね。そこがマスターらしいんですけどね)
(ほっといてくれ。自分でも気にして……っ!?)
 ただ一人、リーダーであるメギドだけは観察するようにじっと僕を見つめていた。怒りに満ちた怪盗たちの表情より、僕はそちらの方に脅威を感じる。
 なんだろう。やはり彼からは得体のしれない『嫌な予感』がした。油断はできない。
「てめえ、あんま舐めてっとここでぶっ殺すぞ!」
 血の気の多いメンバーが詰め寄って来る。手を振りかぶっているので、これは攻撃の合図だ。
 やはり『見える』怒りは予測できる分、脅威ではない。とりあえず、避けておこう。
「こ、この野郎! 避けやがった! 生意気な!」
「しかも無言だぜ。きっと馬鹿にしてやがるんだ。すました野郎だぜ!」
 違います! コミュ障なだけです! 別に馬鹿にはしていませんよ!
 でも避けた事で余計に相手の怒りに火をつけてしまったのは確かだ。ちょっと厄介である。
「ふん、ずっと黙っていやがる。何を企んでいるのか分からない不気味な怪盗だ」
 意味ありげな目で僕を見るメギドだが、ごめんなさい。何も企んでいません。コミュ障なだけです。本当に申し訳ありません。
「あら、ごきげんよう。ふふ、盛り上がっているわね」
 その時、美しく透明な声が辺りに響いた。怒りさえも一瞬で凍り付かすような冷たい声。
 誰もが聞き惚れてしまうその声は、一瞬で空気が変わるほどの存在感を放っていた。
 そして今までチームメギドに黄色い歓声を送っていた女性客も既に彼らに眼中が無いとでも言ったかのようにその声の主を見ていた。目は完全にハートマークだ。
「アメジスト様ぁぁぁぁぁ!」
「ああ、なんて美しい。見るだけで涙が出るわ!」
 ハートマークどころか泣いている!? 本当にとんでもないお方である。
 既にチームメギドは僕の事など忘れてアメジストに敵意を全開にしていた。まあ、ありがたいんだけど、ちょっと寂しいというか、複雑な気持ちである。
「アメジスト。俺らに話しかけて来るとか、珍しいじゃねえか」
「ごめんなさい。貴方たちに用は無いの」
「……ああ? なんだと!」
 アメジストさん、この上なく美しい笑顔でこの上なくバカにした表情だ。さすが他の怪盗を『オモチャ』と呼ぶだけはある。
 そのままメギドの横を通り過ぎて、彼女は僕の方へ近づいてきた。
「いよいよね。怪盗クチナシ。貴方の本当の強さと正体。今日、このアメジストが暴いて見せる。楽しみにしておくことね」
 そして耳打ち。正直、緊張するので至近距離はやめて欲しい所です。
 一気に会場が騒めいた。怪盗も観客も揃って「あいつ、何者だ?」という目で僕を見ている。
 中でも聞こえてくる声は「知ってる?」「ううん、知らない」「あんな怪盗いたっけ?」みたいな声だ。やはり僕は存在感が無いらしい。
 そういえば、脅迫状の件はどうなったのだろう。僕の方でも密かに犯人捜しをしていたのだが、めぼしい人物は見つからなかった。僕の行動範囲で見つけるのは不可能だろう。
「アメジスト様。例の脅迫状の犯人は見つかりましたか?」
 僕の心を読んだフォトが小さな声でアメジストに質問。彼女も気になっていたようだ。
「いいえ。怪盗方面を調査したのだけど、怪しい人物は見つからなかったわ。ひょっとしたら、貴方以上のステルスの強い怪盗の仕業かもしれない」
 アメジストの調査にも引っかからなかったらしい。脅迫状が怪盗の使う予告状に似た形で使われている為、怪盗の仕業であるのは間違いないと僕も睨んでいるのだが……
「まあ、この大会で尻尾を掴んでやるわよ。確実に参加しているはずだろうからね」
 アメジストの言葉で僕も周囲を見渡した。この中にいる怪盗が脅迫状の犯人なのだろうか。
「一人だけ、怪しい怪盗はいるのだけどね。ただ、証拠が無い」
 それについては僕も同感だ。恐らくアメジストと同じ人物が思い浮かんでいる。さっき話したばかりの『彼』だ。
 でも、なんだろう。重大何かを見落としているような、そんな予感も頭から離れない。
『さて、怪盗の皆様! いよいよ開始時間が近くなってきましたよ!』
 実況の声を聞いて時計を見ると、残り時間は五分を切っていた。始まりの時は近い。
 僕もそろそろ心の準備をやらないといけない。まずは宝石を一番集めて優勝だ。
『今回の大会の優勝者は果たして誰なのか? いつも通りランキングのトップ達が優勝を攫ってしまうのか? それともまだ見ぬ怪盗による番狂わせが起きるのか!?』
 興奮した実況が場を盛り上げる。観客の方もそれに乗せられて声を上げた。
『さあ、開始まで残り一分。準備はいいですか?』
 実況の声を聞いてフォトが念を押すようにこちらを見る。
「作戦を再確認します。まずはとにかく宝石をたくさん手に入れて成績でトップに立つ。そうすれば嫌でも目立ちますし、怪盗としての強さは確実に評価に繋がります。最後の決め台詞に関しては無難にカンペで乗り切りましょう。うまくいけばメギドより人気が取れますでしょう」
「了解。やる事は分かったよ」
「恐らく開始と同時に全ての怪盗が散らばります。それぞれが警察の目を掻い潜って宝石を探し始めるはずです。ですが、我々は警察のボーナス的には旨味が低いので狙われにくいです。じっくりと行きましょう。そして観客たちの目を驚きに変えてやりましょう!」
 警察に追われにくいのは僕たちのアドバンテージだ。戦闘は避けるに越したことは無い。
『いよいよカウントダウンが始まります。残り五秒』
 全ての怪盗の準備が整った。カウントがゼロになると皆が行動に移す。
「四、三、二、一…………スタート!」
 開始と同時に全ての怪盗が散らばった。フォトの予想通りである。
 僕も人影のない場所へと飛ぶ。様子を見ながらじっくりと宝石を探すとしよう。
「おや、場にとどまっている怪盗が二名おります!」
 実況が声を荒げる。散らばらなかった怪盗もいたらしい。
 見てみると、場に残った怪盗はアメジストとメギドだった。
「おお! なんと、ランキング一位と二位がまさかの行動に出ております!」
 しかも残っていたのは一番狙われやすい二人だ。いったい何を考えているのか。
「どうやらお二人は最後の『人気』を視野に入れて行動しているようです」
「どういうこと?」
「『普通じゃない』事をすれば、周りから注目されるってことです。パフォーマンスですね」
 つまりは目立って人気を集めるのが目的か。既に最後の人気投票を意識しているわけだ。
「下位の怪盗なら無能な怪盗として罵倒される行動ですが、あの二人なら危険を冒しても『さすが』と絶賛されるわけです。人気と信用を利用した作戦ってわけです」
 確かに観客は全員が二人に注目していた。危険を冒してまで行う最大のファンサービスだ。
「今から二人の『アピール』が始まります。時間があれば見ていきませんか? 決め台詞の参考になりますよ」
 人気上位二人のアピールか。確かにちょっと見ておきたい。宝石集めに関してはそこま急いでも効率で言えば変わらないし、警察も現れるはずなので二人の実力も見れる。
 ベヒモスの位置も離れているし、今なら邪魔されることも無い。そこも計算済みなのだろう。
「アメジスト様ぁぁ! 最高ですぅぅ!」
「メギド様! こっちを向いてぇぇ!」
 割れんばかりの歓声。効果は絶大のようだ。フォトの言う人気を利用した作戦というのもうなずける。
『みんな、今日は来てくれてありがとう。感謝しているわ』
 アメジストがスピーカーを使って全体に声を届ける。先に彼女がアピールを始めるらしい。
「きゃああ! アメジスト様が私に感謝してくれたわっっ!」
「いいえ、私に感謝したのよ!」
 もうこれだけで感極まった観客が多数である。とてつもない一体感だ。
『私は『我慢』するのが嫌い。だから貴方たちも我慢する必要は無いわ。私の事が好きなら大声でそれを叫べばいい。私は逃げも隠れもしない。それを受け入れて見せるわ』
 不敵な笑みで誰に向けてか指を指すアメジスト。その瞬間、今まで聞いたことの無い最大級の歓声が沸き上がった。まるで世界の全てが彼女の味方をしているかのようだ。
 アメジストがこんな表情になるのは僕と二人だけの時だと思ったが違った。彼女は人を喜ばせなければならないこの場面であえて『自分』を出したのだ。凄まじい自信である。
『私も我慢なんてしないわ。私は私を応援してくれる貴方たちが大好き。心から愛している。この体が動く限り、一生を掛けて貴方たちの思いに答えて見せる!』
 更に湧き上がる歓声。もはや留まる所を知らない。
 なんだろう。言葉にならない感動のようなものがある。絶対に違うはずなのに、なぜかアメジストから『貴方もこうなれる』と言われている気がした。これも彼女のテクニックなのか。
 しかもこれはただのアピール。きっと決め台詞はこれ以上の感動があるのだろう。
「ま、これが大成功の例ですね。マスターだってこんな風になれるのですよ」
「……信じられないよ」
「そうですか。なら、今はそれでいいです。ただ、自分の味方は思ったよりも多い。それだけ分かってください。後は目指すべきものが見えたのなら十分です」
 ただ怖いと思っていた決め台詞。でも一瞬だけこの場に『憧れ』のような物を感じてしまった。見られることが嬉しいと思った。もし、こんな風になれるというのなら、きっと僕も……
『はっ、くだらねえ!』
 その時、歓声をかき消すようにメギドの声が響いた。
 全員が彼に注目する。いつの間にか本当に歓声も消えていた。
『ああ、くだらねえ。本当に世界はくだらねえよ。世の中にはクソみたいな奴しかいない。俺は俺を舐めた奴の事を絶対に忘れねえ。そいつには必ず報いを与えて、後悔させてやる!』
 野獣のような目つきのメギド。その目を見た観客たちは少なからず息を飲む。
 え? なにこれ。本当にアピールなの? ただ怖いだけのような気が……
『だが俺は俺を応援した奴のことも絶対に忘れねえ。そいつは必ず幸せにしてみせる。それがどんな奴だろうと……だ! だから俺を一位にしろ。お前らに最高の幸せをくれてやるぞ!』
 その言を聞いて場が大きく盛り上がった。気のせいだろうか、さっきの歓声よりも大きい気がした。しかも、あろうことか僅かな『共感』まで僕は覚えてしまった。
「あのイキリ野郎も心得はあるようですね。生意気な男です」
 フォトの思う所があるのか、敵なのに感心した表情をメギドに向けている。
「ですがマスター。あれもいい例です。あんなイキリでも味方をしてくれる奴はいるのです。世の中には変わった奴がいるものですが、だからこそマスターの味方をしてくれる人もきちんといるはずです。姫咲さんがその最初の例ではありませんか」
 確かにあんな態度のメギドにも味方がいるのというのはある意味では希望である。
「あなたは自分が人と違うと思っているようですが、世の中にはもっと変人がいます。メギドに比べたらあなたなどまだマシの方ですよ。だから、自信を持っていいんです」
 フォトの言いたいことは分かった。確かに本当に参考になったよ。
 もし、この大会で優勝して決め台詞を言う時が来たら、僕も勇気を出してみよう。
「うおおお! アメジストを捕まえたら一生遊んで暮らせるぞ!」
「メギドでもいい! どっちでもいいから、捕まえるんだ!」
 そんな二人に向かってようやく警察達が追いついてきた。完全にターゲットにされている。
 瞳をドルマークにしている警察達。彼らからしたら絶好のチャンスだ。
『おおっと。警察達が一気に動き出したぞ。果たして人気怪盗の運命はいかに!?』
 実況にも熱が入っていた。彼女やファンたちからしたら美味しいイベントである。
 ただ、見た限り警察の方はランクが低めらしい。高ランクは何をしているのだろう?
「高ランクが出てくるのは後半です。いきなり現れては弱い怪盗は速攻で捕まってしまいますからね。緊張感と盛り上げのために強敵は最後に出て来るシステムなのです」
 最初は弱い警察しか出てこない。二人はそれを計算して、目立つアピールをした訳だ。
 低ランクの警察としても、強い警察が出てきてしまっては、そいつらに獲物を奪われてしまう可能性がある。だからこそ、今のチャンスに報酬の高い怪盗を捕まえておきたいのだ。
「さあ、来いよ。まとめて相手をしてやる!」
 囲まれていた状態のメギドがニヤリと笑う。次の瞬間、警察が一気に吹っ飛ばされた。
 殺傷力は無いらしく、大きく飛ばされたはずの警察は、なぜか大きなダメージは負っていない。触れた相手を吹き飛ばすアイテムを使っているようだ。
「オラァ! くたばれ!」
 凄まじい掛け声とダイナミックな動きだ。次から次へと警察は吹き飛ばされていく。
「メギド様! 素敵です!」
「あいつ、やべえよ。強すぎだろ」
 観客たちも彼を見て、尊敬と共に恐怖の眼差しを向けていた。中々のインパクトだ。
「ぬう。少しはやるようですな。マスター、仮に戦いとなった場合、奴には勝てそうですか?」
 フォトが少し不安げな目を向けて来る。あの豪快な動きを見れば当然か。
 だが、僕としての感想は周りとは全くの逆である。あの姿はそこまで脅威ではない。
「確かに思ったよりは強敵みたいだ。でも、負ける事は無いと思う」
「おお! 本当ですか!」
「動きが派手すぎるんだ。ダイナミックだけど、その分隙が大きく、読みやすい。カウンターを決めれば勝ちだね」
 さらに接近戦を好むタイプというのがありがたい。僕は遠距離武器を持っていないので、遠くから攻撃されたら厄介だが、向こうが近づいてきてくれるのならその手間も省ける。
 ただ、やはり嫌な予感は消えない。僕の方が強いはずなのに、直感による警笛が鳴りっぱなしだ。これについては覚えておいた方がいいかもしれない。
 ちなみにアメジストの方はメギドとは違って繊細な動きで警察を無力化していた。近距離と遠距離をうまく使い分けての立ち回りだ。オールラウンダーなタイプなのだろう。
 その完璧な動きはとにかく美しい。観客は歓声を上げるというより、声も出なくてアメジストに釘付けになっているという感じである。
 まさに絶妙のテクニック。メギドのようなダイナミックさは無いが、見惚れるほど綺麗だ。
「アメジストはさすがというべきか、かなりやるね。しかも、まだ本気じゃないみたいだ」
「むう、マスターがそう言うなら間違いないでしょう。まあ、私でもなんとなく分かります」
「とにかく、色々な意味で参考になったよ。そろそろこちらも動き出そうか」
 いつまでも見ているわけにはいかない。警察の方も人気トップ二人組の確保は諦めかけているように見える。下手をすれば今度は弱そうな僕たちをターゲットにしてくるかもしれない。
 現状、人気の面では不利だ。その分こちらは成績で勝負をしなければならない。
「よし。それじゃあ、行こうか!」
 今度はこちらが本気を出す番だ。誰よりも多く宝石を取得しなければならない。

 × × ×

 僕はまず、この町で一番高い建物の上に上った。そこで地上の様子を眺める。
 怪盗になって強化された視力で町中の全てが手に取るように分かった。
 そのまま、じっと動かずに観察だ。その間は長い沈黙が続く。
「マスター。何をしているのです? 宝石は探さなくてもいいのですか?」
「ああ、こうやって全体を見ることの方が大事なんだ。そうすればどこに宝石があるのか分かるようになる。他の怪盗や警察、ベヒモスの位置も把握できるしね」
「そ、そういうものなのですか?」
 フォトはやや疑った様子だが、それを無視して僕はひたすら町の様子を観察する。
 警察は上位二人に夢中だろうし、他の怪盗は宝石探しに専念しているはずだ。確実に邪魔は入らないだろう。こっちも観察に集中できる。
「……ん?」
 なんだろう。警察の動きに何か違和感だ。具体的にどういうものか分からないが、何かがおかしい予感がした。よく分からない計算された動きを感じる。
 でも、今はそれを考えても仕方ない。どちらにしても出会わないようにすればいいだろう。
 そうして長い観察期間を終えた後、僕は怪しそうな場所へと移動した。
「よし、まず一つ発見だ」
 そして草むらからビー玉ほどの宝石を見つけ出す。虹色に光っていて実に綺麗である。
「な!? どうしてここにあると分かったのですか?」
「僕が主催者ならここに隠すんじゃないかな、と思ったんだ。後は一瞬だけ光が見えた。町の光と混同してややこしかったから、ちょっと時間はかかったけどね」
 この宝石はどうやらほんの僅かだけ虹色に輝いているようだ。その輝きの種類を特定して、後は怪しそうな場所に移動して探索をすればいい。
「町中の怪しい場所は全てチェックしたから、そこを重点的に探索しよう。怪盗と警察の位置も把握しているから、密集している場所やベヒモスが近い所は避けるようにするよ」
 そうして僕は次々に宝石を発見していく。予想以上に読みは当たっており、成果が高い。
「うおおお! かなりの宝石を集めています! この調子ですよ!」
 警察や怪盗の位置も把握してかち合わないようにしているので、安全に仕事を進められている。ステルスも全開にしているから、今の僕を発見するのは難しいはずだ。
「隠に対して特化している。つまりは陰を極めし者。これからマスターの事を『陰の王』と呼びましょう。どうです? かっこいいでしょ?」
「嫌な呼ばれ方だよ!」
 とにかく、かなりの数の宝石を手に入れた。現状での成績は上位だと思う。
「平均では宝石は五個集めると優秀だと言われています。こちらの手持ちはいくらですか?」
「たった今、三十個になったところだよ」
「マジですか! これもう、我々の勝ちは確定ですな。がははは」
 高笑いするフォト。でも、この子がそうやって笑うとそれが失敗フラグのような気がするのは気のせいだろうか。後、マスターの集めた宝石の数くらい把握しておいてください。
 町ではそこら中から歓声が聞こえる。人気怪盗が宝石を手に入れる度に注目されるようだ。
 メギドもアメジストもすでに警察を巻いていて、宝石を集める方に専念していた。ただ、二人が宝石を手に入れる度に歓声が溢れるので警察もそちらにおびき寄せられていく。
 誰も僕が宝石を独占しているとは思っていない。おかげでさらに宝石を集められる。
 フォトじゃないけど、本当に勝ちは確定したんじゃないのかな。第一目標は達成間近だ。
『さあ、怪盗並び観客の皆様! 盛り上がっていますね! ここで中間発表を行います!』
 そんな時、実況の声が聞こえてきた。それと共に歓声も止む。
 目の前にバーチャル画面が出現した。全ての怪盗が任意で見ることができるようだ。
「し、しまったぁぁぁぁぁ!」
 すると、フォトが大声を上げる。この声には鬼気迫るものがあった。
「ど、どうしたんだよ。フォト」
「大変です。『中間発表』を忘れていました! 大ピンチです!」
「中間発表で大ピンチ? なんで?」
「分かりませんか? 今、誰が一番宝石を持っているのか、全員に知られてしまうのですよ!」
「…………あ」
 気付いた時にはすでに遅い。確かにこんなシステムは予想もしていなかった。
『現在のトップは……なんと、怪盗クチナシ!? え? 誰これ?』
 最初は困惑した実況の声。しかしすぐに熱を帯びた声へと変わる。
『凄い! しかも、三十個も保有しており、独走状態だ! 出だぞダークホース! その正体は……え? ランキング最下位? まさか展開だぁぁぁぁ!』
 バーチャル画面にはでかでかと僕の顔と名前が表示されていた。ご丁寧に宝石の取得数まで提示されている。周りからはどよめきの声上がって、僕が注目されるのは良いことかもしれないが、今はタイミングが早すぎた!
「これにより、マスターが宝石を独占していることを知られてしまいました。この先は全員が群れをなしてマスターへと襲い掛かって来る事でしょう」
「しまったな。もっと後半に一気に集める作戦で行けばよかった」
「実際、他の怪盗はそのつもりかもしれません。取得率があまりにも低い」
 つまり、誰かに宝石を集めさせて、そいつから一気に奪う作戦か。
 僕はまんまとその『誰か』を名乗り出てしまったのか。しかも最下位はいいカモだ
「はあ、この手の心理戦みたいな戦略は苦手だよ」
「人間を理解できないコミュ障のマスターだから仕方ありません。気にしないでください!」
「慰めになってない! ……じゃなくて、対策を練らないと」
「とにかく、どこかへ隠れましょう。ステルスを全開にしたらいけそうですか?」
「無理だ。僕を認識していない相手だったら有効だけど、一度でも強く認識されてしまえば効果は弱い。というか、もう遅い」
 二人の怪盗が空から降りて来た。ビルの上から僕の姿を探していたようだ。
「く、こうなっては戦うしかありません。よいですか、マスター。対怪盗戦の一番のコツは『相手を騙す』ことです。油断を誘う事が勝利への鍵なのです」
 フォトの言いたいことは分かる。同じ怪盗同士の戦いでは正面から戦っても決着はつきにくい。いくら僕が最強でも簡単に勝つのは難しいだろう。警察相手とは根本的に違うのだ。
 つまり、相手の予想を上回って、意識が向いていない時を狙うのが重要なのだが……
「ふっ、悪いが君の持つ宝石は、この私が頂くよ!」
「おっと。抜け駆けはいかんな。奴の宝石は我の物だよ!」
 目の前の怪盗たちはお互いに牽制し合っている。既に僕に目が行っていない。
 それは大きな隙ともいえる。裏を突かなくても最初からチャンスが目の前にあるのだ。
「今だ!」
 僕は一気に距離を詰めてスタンナイフで二人に突き刺した。相手にとっては予想外だろう。
「ぐっ。しまった」
 二人まとめてその場に倒れる。ついでなので二人が持っていた宝石もいただいた。
「おお! さすがはマスターです!」
「…………これは、意外といけるかもしれない」
「ふっ。最強のマスターにとって、普通の怪盗など敵ではないですか」
「いや、そうじゃなくて、僕は餌として旨味がありすぎる。だから、僕の奪い合いになるんだ。その分、相手に隙ができる。僕にはステルスが働いているから尚更だよ」
 今倒した怪盗の強さがどれほどなのかは分からない。でも、勝てた理由は『不意打ち』が効いたからだ。相手にとってランキングが最下位の僕は警戒する必要が無く、彼らの最大のライバルは周りの怪盗となる。それこそが大きな隙に繋がるというわけだ。
「見つけた! 怪盗クチナシだ!」
「奴は俺の物だ! どけ!」
 またしても怪盗が二人。彼らはすぐに僕を取り合う為に戦い出す。
 僕は同じようにその隙をついて、二人を気絶させて宝石を頂いた。
「おお、マスターを巡って怪盗たちが争う。モテモテですね! よかったですね!」
「相手が全員男じゃなかったら、嬉しかったけどね」
「女性の怪盗で好戦的なタイプは少ないのです。来るのは全て男でしょう」
 まあ、女の子を気絶させるのは気が引けるから、むしろ気は楽でいいんだけど。
「あのアメジストだけは例外ですけどね。かなり好戦的な性格らしいですよ」
 彼女が相手だったらさすがに一筋縄では行かなさそうだ。何とか見つからないように立ち回りたい。一応アメジストのルートは把握して、離れた場所を選択しているが……
 宝石の所持数も増えてきた。もう優勝に必要数は十分だ。むしろもういらない。
 こうなるとスタミナが持つのか微妙だ。先も戦い続けるのは精神的にもきつい。
 時間は中間地点が発表されたばかりなのでまだ半分近くある。何か相手が襲ってこなくなるいい方法はないだろうか。
「ひ、ひいい!」
 そんな事を考えていると、次に襲ってきた怪盗が急に方向を変えて逃げていった。
 他にも別の怪盗が現れるが、何かに気付いてすぐに撤退していく。
 なんだろう。襲われなくなってよかったと思いつつ、気配がして振り返った僕は、今まで以上に厄介な存在がいた事に気付いてしまった。
「……怪盗メギド」
 そこにいたのはチームメギドの面々。ビルの上、月影でシルエットのように立ち尽くす彼らは実に絵になっている。だが、それは誰もが逃げ出したくなる威圧感も同時に放たれていた。
 見るだけで圧巻される凄まじいオーラ。まるでゲームのラスボスのような存在感である。
「よう、最下位に失敗作。宝石を独占するとはやるじゃねえか。正直、俺の予想以上だったぜ」
 そうして手を差し伸べて来るメギド。だが、そこに友好的な雰囲気はない。
「お前が持っている宝石を全て渡せ。それで見逃してやる」
 目的は宝石の要求か。どうするか。いくら僕でもこれはかなり分が悪い。
 場合によっては要求を呑むことも視野に入れておいた方がいいだろう。
「ふざけるな、です! 貴様達なんぞに大事な宝石を渡すわけないでしょうが! どうしても欲しければ、力づくできなさい!」
「ほう、そうか。それじゃあ、そうさせてもらうぜ」
 しかし、思考する僕にフォトがあっさり答えを出してしまう。交渉決裂である。
「へへ、マスター。ガツンと言ってやりましたぜ」
「いや、勝手に決めないで欲しいんだけど。はっきり言ってピンチだよ」
「ええ!?」
 メギドの方を見ると、完全に臨戦態勢となっている。今にも襲い掛かってきそうだ。
「マスター、勝てるって言ったじゃないですか!」
「それは一対一の話だよ。十人を同時に相手するなんて想定していない」
 警察と違い、怪盗は一人の戦闘力が高い。警察の倍以上は手ごわいと言ってもいいだろう。それが十人もいるのだから、実際の戦力は二十倍以上である。
 メギドだけならともかく、これだけの人数の怪盗を相手するのは、この前のAランクを遥かに上回る難易度だ。勝率は限りなく低いだろう。
「ど、ど、どうしましょう?」
「まあ、宝石を渡すのも痛いんだし、こうなったらやるしかない」
「そ、そうですね。頑張ってください。私が応援しています!」
 難しい戦いにはゲームで慣れている。僕はいつでも一人でやり続けていたんだ。かなりのダメージを受けるだろうし、下手をすればやられてしまうだろうが、それでも戦うしかない。
 そうして覚悟を決めて、戦いに挑もうとしたその時……
「あら、楽しそうね」
 場に似合わない綺麗な声が響いた。それはこの緊張感であっても聞き入ってしまうほどの心が魅かれる声であった。
「……アメジスト」
 メギドが声の主を呼んだ。彼が初めて見せる警戒の声色であった。

 第八話 怪盗大決戦!

 再び場に緊張が生まれた。状況は完全に三つ巴のようになっている。
 まさかアメジストにも見つかるとは……ルートは避けていたはずだが、それも読んでいたようだ。やはり油断ならない怪盗である。
「まったく、本当に強力なステルスね。探すのに苦労したわよ。先を越されたみたいでちょっと悔しいわ。でも貴方、あからさまに私を避けていたわよね?」
 楽しそうに周りを見渡すアメジスト。誰もそんな彼女に声をかけようとしない。
「マ、マスター。アメジストまで来てしまいました。ど、どうしましょう」
「分からない。彼女も僕の宝石を狙っているのか?」
 アメジストはたった一人なのに場にいる全員を飲み込むほどの存在感を放っている。
 メギド達は全員が一歩後ずさった。恐らく無意識だろう。
 他の全ての怪盗を恐れさせるチームメギドが、たった一人の怪盗を警戒しているのだ。
「アメジスト。お前もこいつの宝石が狙いか。まあ妥当だが、宝石を頂くのは俺たちだぜ」
 理想を言えばメギドとアメジストが争ってくれること。そうすれば今までのように漁夫の利で二人を倒せるかもしれない。それが無理でも離脱なら出来そうだ。
 ただ、二人が組んで僕を襲う可能性もある。そうなった場合はかなりキツイ。
「いいえ、違うわ。私の狙いは貴方たちよ」
「はあ!?」
 僕を含めた全員が目を見開いた。完全に誰もが予想していなかった言葉だ。
 彼女は『僕と組む』という答えを示しだしたのだ。一番あり得ない答えだ。
 アメジストが僕の隣に移動する。そしてこちらを見てウインクをした。
「クチナシ、今回は貴方に協力してあげる。奴らの宝石は山分けでよろしくね」
「ア、アメジスト様。いいのですか?」
「ま、本当は貴方と戦いたかったけど、それはいつかのお楽しみにしておくわ」
 なんと僕はここに来て最強の援軍を得てしまったみたいだ。信じられないが、同時に心強い。
「おいおい、そいつと組むってのか。いくらお前でも無謀だぞ。こっちは十人でそっちは二人だ。しかも、お前の相方はランキング最下位なんだぞ」
「やってみなくちゃ分からないでしょ? こっちの方が楽しそうだし、なにより私のパートナーは最強クラスだからね」
 その言葉にどこからか歓声が聞こえてきた。
『おおっと! なんと! あのアメジストが名も無き怪盗と手を組んだ! これは盛り上がってきました! ついにランキング一位と二位が対決します!』
 実況である。この状況はライブでも流れているらしい。もしかしたらアメジストはこの盛り上がりも狙った行動だったのかもしれない。
 フォトの話によるとアメジストは好戦的らしいが、それはこちらが考える更に予想の斜め上を行くものだったようだ。結果的にはありがたいのだが……
 ちなみに僕の名前は完全に忘れられています。謎の怪盗じゃありません。怪盗クチナシです! 実況さんならきちんと覚えておいてください!
「バカめが。いいだろう。お前らはアメジストを狙え。クチナシとは俺がやる」
 メギドの指示を聞いて少し驚いた。てっきり彼がアメジストと勝負すると思っていた。
 いや、アメジストを強敵と踏んで、僕を速攻で倒して宝石を奪い、離脱するつもりだ。
 さらに格下の僕を派手に倒すことにより、自分の人気を底上げする作戦だろう。
 そしてそれは僕の作戦通りだ。奴はきっと油断したまま嬉々として襲い掛かって来る。
(おお! やりました! ついにこの時が来たのです。イキったクソ野郎をマスターがワンパンするのです! タイマンなら勝てるんですよね?)
(そうだね。相手は僕が最下位だと油断している。接近戦を仕掛けてくるだろうから、そこ狙ってカウンターを仕掛ければ簡単に勝てるけど……)
「いくぞ!」
 メギド以外のメンバーがアメジストに襲い掛かった。メギド本人はまだ動く気配が無い。
 僕も狙いがカウンターなので同じく動けない。今はアメジストの様子を見るしかない。
 九対一。さすがのアメジストでもこの人数は分が悪いか?
「なにい!?」
 だがアメジストは驚くべきことに九人もの怪盗の相手をして、なお優勢に立ちまわっていた。
 スピードがさっき警察と戦った時とは明らかに違う。何かのアイテムの効果なのか、残像のようなものを残して動き回るアメジストは、九人でも追い付くことができていなかった。
 下手をすれば全員に勝ってしまうのではないか、という勢いだ。
「あら、どうしたの? それだけの人数がいて、その程度?」
 さっきの警察との戦いは全然本気じゃなかったようだ。むしろその動きに慣れさせて、初手でそれ以上の動きを見せて相手の裏を突くのが彼女の作戦だったかもしれない。
 ランキング一位になるわけだ。戦闘力においても並みの怪盗とは頭一つ抜けている。しかも、優雅さも消えていない。これは人気が出ない方がおかしい。
「ち……これは急がねえとな」
 メギドもこれは予想外だったのか、慌てた様子で僕の方に向き直る。
「お前、最初は俺と戦いたがっていたよな。これで望み通りだぜ」
 大きく握りこぶしを作って僕に向けてくるメギド。得意である大ぶりの攻撃を使って一撃で決めてくるつもりだろう。僕を急いで倒して離脱する為である。
 それは同時に僕のチャンスだ。油断して大ぶりの攻撃を仕掛けてきた所を、カウンターで一気に決める。それで終わりだ。奇しくもフォトの言うワンパン狙いとなった。
 そのはずなのだが、やっぱり嫌な予感がする。この予感は一体……
「……っつ!?」
 その時、いきなり銃弾が僕の額に向かって飛んできた。完全に不意打ちである。
 僕は間一髪でその弾丸を躱す。『予感』による警戒が無ければ確実に命中していた。
「こいつ……避けやがった」
 メギドが銃を撃って来たらしい。かなり高いレベルの早撃ちで、相当の技術力だ。
 完全に出鼻を挫かれた状態だ。その間にメギドは大きく距離をとってまた銃を撃って来る。
「こ、こら! 遠くからチマチマ撃ってないで近付いて勝負なさい! このヘタレ!」
「バーカ。誰が近づくかよ。俺は遠距離戦が得意なんだよ」
 その言葉を聞いて、僕とフォトは揃って驚愕の表情となる。
「はあ!? じゃあさっきの警察との戦いは何だったのですか!」
「…………まさか」
 先ほどの警察戦で見せたメギドの隙だらけの攻撃。もしやあれは全てフェイントだったのではないか? 彼はあえて『苦手』とする近距離攻撃をしていたのだ。こうやって騙すために。
 思えば初めからメギドに対しては嫌な予感がしていた。その正体がようやく分かった。彼はわざと『弱いふり』をして実力を隠していたのだ。
「そういう事だ。俺の普段の立ち振る舞いは威圧の為もあるが、『自分の頭を弱いように見せかける』意味でもあったんだ。なあ、鬼畜怪盗クチナシさんよ!」
 それは姫咲さんを盗んだ時、僕が呼ばれた名前だ。つまり彼は僕の事を最初から知っていた。ステルスが効いてなかったんだ。僕についてのデータも完璧だったというわけだ。
「フォトが俺を舐めていたのは一目瞭然だったからな。誰も俺を見て計算高い人間とは思うまいよ。イキった力押しだけの弱い怪盗だと思わせて、油断を誘った所で早撃ちを決めてやればだいたい決まる。ま、お前には避けられちまったがな」
 僕も最初はメギドの事を『弱い』という評価だった。そういうイメージを植え付けて、油断した所を一撃で決めるのが彼の真の戦法だったらしい。
「うぬぬぬ、おのれ! なんと小癪な怪盗ですか!」
「相手を騙す。それが怪盗のやり方だろ。お前の方は俺を狩ろうとしていたのが見え見えだったぜ。利用しがいがあったよ」
 派手な見た目や、怒りで八つ当たりして頭が悪そうに見せかけていたのも全て相手を騙す為のパフォーマンスだったのか。本当は知略的でとんでもない怪盗だったようだ。
「怪盗クチナシ。お前のデータもすでに揃っているぞ。実力は桁外れだが、武器は接近しかない。だから、遠距離攻撃がお前の弱点だ」
 すでに最初の奇襲からメギドは自分の得意な間合いと有利な地形を得ている。出遅れた僕は逆に苦手な間合いを強いられていた。この状態から立て直すのは困難だ。
「もう一度言う。怪盗は相手を騙せれば勝てる。例え相手があのアメジストだとしてもな!」
 アメジストの方を見るメギド。釣られて僕も見てみると、いつの間にか形勢は逆転していた。
「やるわね。まさか、実力を隠していたなんて……」
 チームメギドが最初にかく乱されていたように見えたのも演技だったらしい。彼らはいつの間にか残像にも完全に対応して、アメジストの死角をついて立ち回っていた。
 彼女も裏を突かれたのだ。その不意打ちのせいで実力を発揮できていない。しかも相手は九人だ。このままではアメジストと言えどかなり厳しいだろう。
 完全に罠にハマってしまった。怪盗となって初めての危機感だ。
「……………………ふふ」
 だが、僕もそれについては読んでいたんだ。厳密には嫌な予感としての直感だが……
 それでも予想は当たった。メギドがこちらが思う以上の強敵だった事。それは僕にとってこの上なく『嬉しい』ことなんだ。
「え? マスター?」
「こいつ、笑ってやがる!? これだけ煽ってやったのに、怒りも動揺もしないだと!」
 確かに一撃で決めた方が効率はいいし、その方が楽だ。ただ、それじゃあやっぱり寂しいんだよ。フォトには悪いけど、ワンパンするよりこっちの方が楽しんだ。
 一人でゲームの最終ステージに挑んだ時の事を思い出す。不可能に挑戦するあの感覚。あの時と同じ……いや、あの時以上のワクワク感が体中に広がってきた。
 まずは近づく。少しずつだ。絶え間なく銃を撃ち続けるメギドは確かに相性が悪い。
 だが、リロードの一瞬だけ隙があるのを発見した。彼のリロードは達人級の速さで普通ならその隙には気づかないだろうが、僕はそれを見逃さない。
「この野郎、大人しそうな顔をしてとんだ戦闘狂だぜ。動揺させるつもりだったんだがな!」
 どうやらメギドは僕の動揺を狙って全てを話したらしいが、僕にとってそれは高揚感に繋がる材料だった。僕は相手が強いゲームほど燃えてしまうんだ。
「ふ、ふはは! その通り。我がマスター、見た目は大人しそうですが、実は戦闘狂なのです。これも全て私の作戦ですよ。騙されたのはメギド、あなただったのです!」
「嘘つくんじゃねーよ! ほんの三秒前までお前もめちゃくちゃ驚いていただろーが!」
 少しずつ距離を詰められていくメギドは初めて焦りを見せた表情となる。
 僕の予想外の動き。つまりメギドも結果的に裏を突かれた状態だ。ここで一気に距離を詰めれば僕の勝ちとなるが……
「舐めるな。こっちも修羅場は潜り抜けているんだ」
 だが、相手も思った以上にうまく逃げる。メギドを仕留めるにはもう一手が足りない。
 どうやら更なる『裏』を突かねばならないようだ。よし、ここは一つ作戦を立てようか。
「フォト、ごめん。僕の考えていることをアメジストに伝えて欲しい」
「……っ! 了解しました!」
 僕の心を読んで瞬時に理解したフォトがアメジストに向かって叫ぶ。
「アメジストさん! マスターに武器を……『あの剣』をこちらに投げてください!」
 フォトの叫び声を聞いたアメジストは一瞬だけ怪訝な表情となったが、すぐにこちらの意図を察知したのかニヤリと笑う。
「ふふ、分かったわ。それ!」
 剣を出現させたアメジストは、僕とメギドの中間地点に向かってその剣を投げる。
「させるか!」
 アメジストが僕に剣を投げた瞬間、メギドが飛び出した。
 僕も剣に向かうが、銃による牽制で遅れてしまう。剣を掴もうとしたその手は空を切り、剣はメギドに奪われてしまった。しかもそれでバランスを崩して着地した時に大きくよろめいた。
「いただきだ。味方の武器でくたばりな!」
 メギドがそのままの勢いで一気に近づいてきて、手に入れた剣で僕の腹を貫いた。
「ごふっ!」
 僕はそのまま地面に倒れ込み、そんな僕を見下ろすメギド。
「残念だったな。お前の負けだ」
「…………ふふ、ふふふ」
 しかし、アメジストがいきなり笑いだす。はた目には気がふれたようにも見えるが……
「馬鹿めぇぇぇ! くたばるのは貴様の方ですぅぅ!」
「っ!? なに!」
 フォトの声にメギドが振り向くが、すでに遅い。僕はスタンナイフを突き刺す瞬間だった。
 スタンナイフはメギドの腕に突き刺さる。本当は胴体に当てたかったが、ギリギリで相手の防御が間に合ったらしい。思ったよりも彼の反応が良かったようだ。
「なんで動ける!? 思い切りぶっ刺したはずだぞ!」
「残念。その剣は回復アイテムだったのよ。かなりのレアアイテムだから、貴方でも知らなかったでしょ? 今度は貴方が騙されたのよ」
 悪戯が成功したように無邪気な笑みのアメジスト。さらに彼女は動揺する周りの怪盗の隙も見逃さない。
 ダンスを踊るようにその場で高速回転。瞬間、全体にナイフによる乱れ撃ちが放たれる。完全に隙を突かれた周りの怪盗はそれに対応できずに次々と直撃。揃って膝をついた。
 メギドだけは反応してもう一つの腕で防御したが、ダメージは大きいようで、周りと同じように膝をついていた。
「て、てめえ! なんだその技は! なんで最初に使わなかった!?」
「切り札は最後にとっておくものでしょ? それに本気の実力を隠すのは怪盗として当然よね。もしかして、自分たちだけが隠せていたつもりなのかしら」
 ちなみを言うと、僕の方にもナイフが飛んできていました。避けたけど。
「ついでにクチナシも始末できたら最高だったけど、避けられたわ。さすがね」
 実は僕も倒して宝石を独り占めにするつもりだったらしい。恐ろしい女である。
 結果的にこの場にいた怪盗の全てが実力を隠していた事になる。まあ、僕はステルスなので意図的なものではなかったが……
 怪盗は実力を隠すもの。この町には僕以上の実力を秘めた怪盗がいるのかもしれない。
「くうう! あの女、最低です!」
 フォトが唸り声をあげているよそにメギドが一瞬で立ち上がって距離をとった。彼を含め、周りの怪盗もまだ完全に戦闘不能では無いらしい。予想以上に防御力が高い。
「むう。メギドも仕留めきれませんでしたか。厄介ですね」
「……ちなみにフォト」
「なんでしょう?」
「さっき君が大声で叫ばなければ勝っていたよ。あの声のせいで攻撃がばれたんだ」
「はう! だってチャンスだったし! ついつい声が出ちゃったんですよぅ!」
「ま、いいけどね。宝石も手に入ったし」
 僕が手を広げて見せると、そこには大量の宝石があった。彼が集めていた宝石だ。
 さっきスタンナイフで攻撃した時、ついでに拝借しせてもらった。
「お、俺の宝石を盗みやがったのか。ったく、なんて奴だ」
 これでメギドに更に精神的動揺を与えることができた。他の怪盗もアメジストのナイフによるダメージが見える。これは間違いなく僕たちが有利な状況だろう。
「お前ら、撤収だ! 引くぞ!」
 有利だと、僕がそう思った瞬間にメギドは周りに向かって撤退命令を出した。
 一瞬で不利を察知して、逃げた方がいいと判断したらしい。何気に判断力が高い。
「あらら。逃げられちゃったわね。本当にゴキブリ並みの逃げ足の速さだわ」
 少し名残惜しそうなアメジスト。ひょっとすると、もっと戦いたかったのだろうか。本当の戦闘狂は彼女の方だと思います。
「それじゃ、約束通りメギドから奪った宝石は山分けでいいわね?」
「いや、全部あげるよ」
 メギトの宝石は全てアメジストに渡す。彼女のおかげで勝てたみたいなものだし、その報酬で言えばまだ少ないくらいだ。
「それはどうも。遠慮なく頂くわ。それでも貴方には全然追い付けないけどね」
 アメジストの宝石の所持数は三十個には追い付いていないようだ。彼女は警察から集中攻撃されつつ、探索していたので当然である。
 普通に同条件で探索を始めていたらどちらが勝っていたのかは分からない。
「本当は今からそっちの宝石も全て奪いたい所だけど、今日は勘弁してあげる。そんな気分じゃないしね。私、楽しみは後にとっておくタイプなの」
「おや、我慢は嫌いじゃなかったんですか? まあ、こちらとしてはありがたいですが……」
 アメジストはこれ以上僕と構えるつもりは無いらしい。助かった。
 とりあえず、危機は去った。これで勝利は確実のはずだ。
 でも、なんだろう。何かを見落としている気がする。……というより、直感だ。
 まだ重大な敵が残っている。そんな嫌な予感が僕の脳裏から離れない。
「…………ん?」
 そんな時、怪盗の集団がこちらに向かってきた。それはさっき見たばかりの連中だ。
 チームメギド。しかも彼らは誰かに追われている。相手は……
「っ! おっと!」
 僕とアメジストは殺気を感じて飛んだ。そして元いた場所に大量の銃弾が撃ち込まれる。
 更に周りの建物から一気に人影が飛び出した。人影は全員が同じ制服を着ている。
「警察……いつの間に」
 それは警察の集団だった。彼らは僕たちに気付かれないように包囲していたのだ。
 気付けなかった。メギドが思った以上の強敵だったから、そちらに意識を向けすぎたか。
 それでも僕たち全員に気付かれないとは大したものだ。かなり練度の高い集団である。
「最高ランクの警察の皆さんね。そういえば登場する時間だったわ」
 そうか。始まってから結構な時間が経つ。高ランクの警察達が解放されたんだ。
 しかも、ここにはランキング二位と一位が揃っていた。そんな美味しい獲物を彼らが見逃すはずがなかった。メギド達は一足早く彼らの網に引っかかってしまったようだ。
 警察に押しとどめられるようにメギド達が接近してくる。今ならこちらの攻撃が届く。
 だが、メギドを攻撃した隙に警察に狙い撃ちされる。高ランクである警察にはほんのわずかな隙でも見せたくない。それはアメジストも同じだろう。
 僕たちの考えを読んだかのようにメギド達がこちらと合流。彼らを追ってきた警察も追いついて、全員が集合した状態となった。
「よう、お二人さん。ここは手を組んで逃げようぜ。お前らも捕まるのはごめんだろ?」
「分かったわ。不本意だけど、協力しましょう」
 ここで僕たちが争ったら警察の思うつぼだ。全員まとめて掴まってしまう。一瞬で協力する判断をしたメギドもさながら、迷わずに提案を飲んだアメジストもいい判断力である。
「今の私たちは味方だから、ナイフとか投げちゃダメよ?」
「「お前が言うな!」」
 メギドとフォトの声が重なった。味方になると妙に気が合う二人である。
 そんな話をしていると、一人の警察が一歩踏み出してきた。
「怪盗ども、お前らの命は今日で終わりだ」
 帽子を深くかぶっており、顔つきはよく見えない。警察のリーダーだろうか。
「あら、怖い。冗談でもそんなことを言わないで欲しいわ」
「いや、俺は冗談で言っていない。今日をもって怪盗は全滅する!」
 そう言った男が帽子を脱いだ。その顔が露わになり、それを見たフォトが声を上げた。
「あ、あなたは……怪盗ライトニング!?」
「えっ!?」
 僕は思わず声を上げてしまった。フォトが口にしたのが知っている名前だったからだ。
 怪盗ライトニング。少し前まで人気ランキングで一位だった怪盗だ。確かアメジストに負けたショックで怪盗を辞めたと聞いていたが、その後は警察となっていたのか。
 高ランクの警察は元怪盗がいると聞いていたが、本当だったわけだ。
 彼の特徴は一言で述べるなら、異常なほど整った顔立ち。そう、イケメンであった。
 年齢は僕と同い年に見える。これがかつてランキング一位だった怪盗の素顔か。
「へえ、貴方があのライトニングなの?」
 意外そうな表情のアメジストとメギド。怪盗の姿を知っている二人も中身までは知らない。
「そうだ。俺が元ライトニングだ。お前のせいで怪盗を追われた男だよ」
 認めた。フォトが言っていたことが正しかった。高ランクの警察は元怪盗も少なくないと聞くが、本当だったらしい。これは苦戦が予想されるぞ。
『な、なんと! 警察だと思っていた彼は、あの怪盗ライトニングでした!』
 実況もかなり興奮していた。元一位の怪盗が警察に紛れ込んでいたのだから当然か。
「ねえ、フォト。君はなんであいつがライトニングだって分かったの?」
「私は以前、奴のサポーターをしていたのですよ。速攻で捨てられましたけどね。これだから、イケメンは嫌いなのです」
 フォトは一時的にライトニングのサポーターをしていたらしい。サポーターは怪盗のプライベートを熟知しているので、素の姿を知っていても不思議ではない。
 ただ、その思い出は非常に苦いものだったようだ。速攻で捨てられたらしい。
 フォトがイケメンを嫌うのはライトニングとの出来事が原因だったわけだ。
「フォト。お前はまともな服のデザインもできなかったよな。この役立たずが」
「失礼な。私のデザインは完璧でしたよ。現にネットでは評価が高かったです」
「ネットのお遊びで喜んでどうする。だから、お前は出来損ないなんだ」
「怪盗の出来損ないよりはマシだと思いますが?」
 ライトニングが怒りの籠った目でフォトを睨む。この子、口喧嘩は本当に物怖じしないよな。
「この欠陥品め。お前はこの世に必要とされていないんだ。お前は人を不幸にしかできない。生まれてくれべきじゃなかったんだ」
「あなたにそんな事を決められたくありませんね。自分の価値は自分で決めますよ」
 フォトはどれだけ酷く言われても折れるつもりは無いらしい。自分の価値は自分で決める、か。今、フォトがこの言葉を口にしたのは、僕にとって衝撃的であった。
「雑魚みたいな怪盗に取り入るしかなかったくせによく言う。どうせ行く所も無かったんだろ? ランキング最下位のカスとか、お前にはピッタリだな」
「マスターはお前なんかより千倍は優秀です! 取り消しなさい! ぶっ殺しますよ!」
 ここに来てフォトが、初めて怒りで我を忘れていた。
「ちょ……フォト、落ち着きなよ」
「ふん、失礼しましたね」
 まあ、でも自分の事は何を言われても笑っていたフォトが、僕を馬鹿にされた瞬間、真剣に怒ってくれた。僕はそれが少しだけ嬉しかったりする。
「ライトニング。まさか貴方が警察になっていたとはね。ずいぶんと早い転職じゃない。もう怪盗では私に勝てないって悟っちゃったのかしら?」
「だまれ。お前に負けたせいで俺は怪盗を辞めなければならなかった。俺は完璧でなくてはいけなかったんだ。それをお前が……お前が俺の完璧を壊したんだ!」
 今度は憎しみに満ちた目でアメジストを睨むライトニング。イケメンではあるが、余裕の無いその態度が彼の魅力を大きく削っているようにも見えた。
「完璧? そんなくだらないものを愛しているの? それよりもっと自分の歪みを愛してあげた方がいいと思うわよ。それができないから、貴方は私に負けたのよ」
「……く、やはりお前たち怪盗はまともじゃない。予告通り、皆殺しにしてやる!」
「なるほど。脅迫状の犯人は貴方だったのね。まさか警察が犯人だとは思わなかったわ」
 脅迫状の犯人は警察となったライトニングだった。どれだけ怪盗側を洗っても出てこなかったわけだ。怪盗に詳しい彼だからこそ予告状を改良した脅迫状を作れたのだ。
「まあ、そっちから来てくれて探す手間が省けたわ。それでどうするの? 貴方がたった一人で全ての怪盗を倒すの? それは無理だと思うけど」
「いや、俺には切り札がある。見ろ!」
 ライトニングが手を翳す。その瞬間、どこからともなく地響きが近づいてきた。
「ベヒモスだと! なんでこっちに!?」
 なんとベヒモスがビルをなぎ倒しながらこちらに突進してきた。全員が驚きを隠せない。
 僕もそうだったが、ここにいる三人はベヒモスの位置を常に注意していた。今までは離れた場所にいることも分かっていた。僕たちを狙い撃ちしていない限りここまでの接近は許さない。
 明らかに尋常じゃない動きだ。何かに操られている。
「俺は密かにベヒモスを改造していたのさ。今やベヒモスは俺の『武器』だ」
 そうして周りの警察全員を吹っ飛ばして、ライトニングの前で止まるベヒモス。もはや味方を巻き込むことも躊躇していないようだ。
 結果的に敵はライトニング一人になったが、その一人が限りなく厄介である。
 ベヒモスの腹の部分が開いてコックピットのような場所が見える。ライトニングがそこに乗り込んだ。この部分も彼が改造したのか最初から存在したのかは分からない。
「先に観客から潰してやる。お前らのせいで客は犠牲になるんだ。せいぜい悔しがれ」
 僕たちに襲い掛かってくるわけでもなく、観客席の方へ向けて進軍を始めるベヒモス。
「な、なんて奴ですか! 無関係な一般人を狙う気です!」
『ひえ!? な、なんと、我々が狙われるようです! 大ピンチです! 皆様、焦らず落ち着いて全力で周りに迷惑をかけず自分優先で逃げてくださいぃぃ!』
 恐怖にかられる実況は既にパニックになっている、もちろん、それが周りに伝染して適切な非難はできていない。
 姫咲さんが冷静に非難を誘導していたが、やはり一人の力では限界がある。観客を逃がすのは不可能だと思った方がいい。ベヒモスが観客近づく前に僕らが倒さなければならない。
「ち、観客をやらせるわけにはいかねえ! お前ら、奴は絶対にここで倒すぞ!」
 ベヒモスに立ち向かおうとするメギドをアメジストが意外そうな目で見ていた。
「貴方、そんなことを言うタイプだったっけ?」
「うるせえ。俺は俺を応援してくれる客は絶対に守るって決めているんだよ」
「……そう。ごめんなさい。私、貴方が脅迫状の犯人だと思っていたわ」
「はあ!?」
 ちなみに僕もアメジストと同意見であった。ごめんなさい。
 メギドが嫉妬深そうに見えたのは、自分を弱く見せかける戦略の為だったが、それに引っ張られてこちらも彼を疑ってしまった。ある意味では本人のせいであるが……
「ったく、脅迫状があるなら、なぜ俺にそれを知らせなかった」
「だって、犯人に教えるわけにはいかないでしょ?」
「だから、俺は犯人じゃねえっつーの!」
 とりあえず、彼の濡れ衣もはれた事だし、ここは三人で協力してベヒモスを倒すことが先決だ。ランキング一位と二位が揃ったこの状況は、心強いとは言える。
 まずメギドが速度を上げて、一番手にベヒモスに追い付いた。
「よう、ライトニングさんよ。あんたの事は嫌いじゃなかったが、トチ狂いやがったな?」
「黙れ! 頭の悪そうな怪盗の分際で!」
「なんだ、見た目で判断するのか。そいつは助かる。騙しやすそうな雑魚でありがたいぜ」
 メギドの言葉で真っ直ぐに進んでいたベヒモスの足が止まる。間違いなく彼の挑発だろうが、効果は抜群らしい。アメジストもメギドの隣に並ぶ。
「相手がベヒモスならちょうどいいわ。あいつを倒した怪盗が宝石を独り占めって事でどう?」
「いいぜ。撃破ボーナスを頂くのはこの俺だ」
 ベヒモスの内部には百個分の宝石があるので、撃破したら優勝は確定だ。僕の宝石の取得数を超えるだろう。
 意気揚々と銃を放つ二人。だが、強烈な硬さを誇るベヒモスの装甲はまるで傷つかない。
 そもそも殺傷力の無いテーザー銃なので、やはり決定打には欠けるようだ。
「ち、とにかく全員で撃て!」
 チームメギドも二人に追い付いて銃を連射する。これだけの人数で撃てばベヒモスにも傷をつけられそうではある。
「あら、クチナシは撃たないの? ……ああ、そうか。銃を持っていないのね?」
 その通りで僕には攻撃手段が無い。スタンナイフなど効くはずもないので現状では見ているしかない。観客を守らなければならないし、ベヒモスを倒せば優勝だが、それでも動けない。
「ぬうう。ここに来て見ている事しかできないとは……無念です」
「まあ、仕方ないね。でもよく見たら弱点が…………っ!? 危ない!」
 僕が叫ぶのと同時にベヒモスの尻尾が大きく薙ぎ払われた。
 僕とメギド、アメジストの三人は避けたが、他の怪盗は直撃を受けてしまい、チームメギドは半壊状態となってしまった。これで火力が一気に落ちる。
「チームメギドの動きが鈍いわ。さっきまでのキレが無い。どうしてなの?」
「さっきテメエがナイフで刺したからだよっっ!」
「あら、そうだったわね。失礼。ちなみにあのスタンナイフは改造版で、より痺れるようにしていたのよ。素敵でしょ?」
 アメジストさん……絶対わざと言っている。やはり恐ろしい女である。
「くそ……仕方ねえ。切り札を使う」
 メギドがベヒモスに向かって手を向けた。その瞬間、彼の手が輝きだす。
 よく見ると、指輪のような物をはめており、光はそこから出ていた。
「あ、あれは……最強のアイテム、『アリスリング』です!」
 アリスリング。異能の力を発揮し、使う怪盗によって威力が無限に増幅するアイテムだ。激レアなので持っている怪盗は限られているという話だったがメギドは入手していたらしい。
「へえ〜。いいものを持っているじゃない。羨ましいわ。残りの使用回数は?」
「二回だ。お前を倒すための切り札だったが、ここで使うことにする。このままじゃ仲間も観客もやられちまうからな。俺は仲間と観客だけは絶対に守るって決めているんだよ」
「はあ〜。貴方、あまり似合わないことを言うものじゃないわよ?」
「うるせえ! 相変わらずムカつく女だな! とにかく、具現化するのには少し時間が掛かる。お前ら二人はその間に時間稼ぎをしろ。いいな!」
「はいはい。じゃあ、行くわよ。クチナシ」
 言うが早いが、アメジストが飛び出した。相変わらず判断が早い。
 決め手はメギドの持つアリスリングに任せるしかない。僕たちはその間の時間稼ぎだ。
 僕もアメジストに続いて後をついていく。彼女が先に回り込んでベヒモスの前に立った。
「ほら、私が憎いんでしょ? 遊んであげるから、かかって来なさい」
「アメジスト!」
 彼女に恨みを持つライトニングは狙いを定めたようだ。囮としては最適である。
 アメジストが狙い撃ちをされている間、僕がベヒモスに飛び乗って、肩の関節部にスタンナイフを刺す。
 だが、ほんのわずかな手ごたえがあったものの、残念ながらほぼ効いていない。『肩の関節部が弱点』という予想は当たりのようだが、やはりスタンナイフでは火力が無さすぎる。
「あの〜。私だけ集中攻撃されているのだけど……クチナシさん?」
「ぬうう。こら! ライトニング! マスターも狙いなさい!」
 フォトが叫んでいるが、ライトニングはまるでこちらを見ない。僕が目に入っていないのだ。
 きっと僕の存在を認知していないのだろう。考えたら僕だけ一度も話しかけられていない。
「くう、マスターの存在感の無さが仇となりましたか! 残念です。アメジスト様、申し訳ありませんがお一人で頑張ってください。死んだら骨は拾ってあげます」
「ふふ、なに? さっきのお返し? まあいいけどね」
 アメジストの方は集中狙いされているにもかかわらず、メギド戦で見せた残像のアイテムを使って優雅に攻撃は避けていた。この辺りは流石といった所で、彼女に死角はない。
「さて、メギド。そろそろ行けるんじゃない?」
 そうしている間にメギドの指輪からとてつもない光が溢れ出す。準備は完了したようだ。
「今だ! 食らいつくせ、炎の龍!」
 メギドの指輪からは炎をまとった巨大な『龍』が出現。それはベヒモスよりもさらに大きい。
 ベヒモスは腕で防除するが、龍はその腕ごとベヒモスを飲み込んだ。
「凄いな。炎が竜の形になったりするんだ」
「そうですね。アリスリングは怪盗のイメージを具現化します。メギドのは炎属性で、あれが彼の深層心理なのでしょう。奴にはピッタリのイメージでありますな」
 ベヒモスの体が燃える。その巨体を燃やし尽くすのは『紫色』の炎だった。
「あれもメギドが想像した炎です。赤と紫が混ざった彼らしい禍々しさを感じます。アリスリングは『この世に存在しないもの』を作り出すことができるのです」
 紫の炎。色を見ただけで危険だと一発で分かる。確かにメギドの性格がよく出ていた。
 その炎はいつまでも勢いが止まらず、ベヒモスを燃やし尽くしていた。このしつこさも彼の性格の影響を受けているのだろうか?
 長い時間をかけて少しずつ炎が収まっていく。これならあのベヒモスもひとたまりもない。
「なに!?」
 だが、ベヒモスは健在だった。所々が焼けているが、致命傷とも言い難い。
 特に防御していた腕が全くの無傷だ。本来なら最も損傷が激しくなるはずなのに。
「アリスリングか。だが残念だったな、この腕はどんな攻撃でも防ぐことができる」
 信じられない。あの炎を受けて傷一つないなんて、あの腕は何でできているんだ?
「……ち」
 メギドが大きな舌打ちをする。だが、その目線はベヒモスではなく、別の方向を向いていた。
 僕も視線を追うと、そこにいたのはベヒモスに向かって手をかざすアメジスト。しかも、その指から眩しいほどの青い光が輝いていた。
「アメジスト。お前もアリスリングを隠し持っていたのかよ。本当に性格の悪い女だ」
「ふふ、そういう事。長い隙を作ってくれたおかげで、私の具現化も終わったわ」
 どうやらメギドが竜を出現したと同時に敵を倒せないのを予想して指輪を起動したらしい。
「アメジストのは氷属性。メギドの攻撃を時間稼ぎとして利用したみたいですね」
「その通り。さあ、美しき蒼の鳳凰よ。敵を抱きしめてあげなさい!」
 彼女が作り出したのは青い鳥だ。いや、鳥というより……色的に表現が間違っているかもしれないが、それは鳳凰と呼ぶのが一番しっくりくる。
 氷の鳳凰。メギドのような派手さは無いが、思わず見とれてしまうような美しさ。華麗なアメジストの必殺技に相応しいイメージだ。やはり本人の心理状況が強く表現されるらしい。
 さっきと同じように腕で防御するベヒモス。今度は視界が青で満たされる。
 奇しくも炎と氷。偶然だろうが、金属疲労的な意味合いでかなりの効果を発揮するだろう。しかもアメジストの方が光が強く、威力も高く見える。
「…………驚いた。呆れた固さね」
 だが、青い光が止む前にアメジストがため息をついた。その後、僕たちが目にしたのは健在であるベヒモスだった。
「ははは! だから言っただろう。誰であろうとこの腕を突破するのは不可能だ。ベヒモスは最強なのだよ」
 メギドの龍よりさらに高威力に見えたアメジストの鳳凰。それでもベヒモスの腕は全くの無傷だった。本当にあの腕を破壊するのは不可能らしい。
 これで詰み。そう思ったが、アメジストの目が諦めていなかった。
「いいえ。まだ最後の手段が残っているわ。ねえ、メギド?」
「ち、そういう事か。まあいい。俺も興味はある」
 アメジストに話しかけられたメギドは、何故か僕の方をじっと見ている。
「……え? 僕?」
「ええ、そうよ。私たち最後の切り札は貴方よ。これ、使ってみない?」
 そう言ってアメジストはアリスリングをこちらに投げて来る。メギドもそれに続いた。
「ふふ、どんなものが具現化できるのか、楽しみにさせてもらうわよ、クチナシ?」
 僕の両手にある赤と青の指輪。僕が最後の切り札であるこのアイテムを使って、最強の技を具現化し、ベヒモスを倒さなければならないようだ。
「ふ、ふはは! いいでしょう。あなたたちに本物の『最強』を見せてあげましょう!」
 何故か自慢げなフォト。やるのは僕なんですけど!?
「それじゃ、私たちが奴を止めておくわ。その間に貴方はイメージを固定しなさいな」
 そうしてアメジストとメギドがベヒモスに向かっていった。時間稼ぎをしてくれるらしい。
 あのアメジストの事だから、ベヒモスを倒す別の方法を知っていそうなものだが、今回は僕に賭ける事にしたらしい。ずいぶんと買ってくれているものだ。
 メギドもそれに乗ったのが意外だった。彼も興味があるということなのだろうか。一つ言えることは、こうなってはやるしかない。
「イメージの固定か、どうやればいいんだろう」
「指輪を握り締めてあなたが望む『最強』を想像すればいいです。それでマスターだけが作れる最強の攻撃アイテムとなりますよ」
「僕だけの……」
 言われた通りイメージしてみた。『僕が望む』最強だ。
「ふふふ、どんな物になるのか楽しみですね! 個人的にはドラゴンと鳳凰が混ざった生物とか、そんなとてつもないものが出来ると予想しています」
 ワクワクした表情のフォト。大きく期待しているらしい。でも、僕は……
「おや? マスター、複雑な顔をして、どうしました?」
「いや、なんでもない」
 今はとりあえず、集中しよう。大丈夫、きっと僕ならできるはずだ。
 二人はかなり長い間時間を稼いでくれていた。だが、ついにメギドがベヒモスの尻尾による攻撃を受けてしまった。
「く、しまった!」
「むう、メギドの動きが鈍いです。さっきまでのキレがありません。どうしてこんなことに?」
「だからてめえらがナイフで刺したからだよっっ! 二回もな!」
 ……フォト、君も絶対分かって言っているよね? 時間稼ぎしてくれている相手に煽るんじゃない。メギドはむしろその状態でよくやってくれているよ。
 アメジストがメギドに肩を貸して少しずつ離脱していく。これ以上の時間稼ぎは無理だろう。
「悪いわね。お荷物がいるからここまでよ。でも、十分にイメージは固定できたんじゃない?」
「お荷物言うな! くそ……後は任せたからな!」
 悔しそうなメギドと楽しそうに離脱していくアメジスト。メギドは意外と真面目であり、アメジストは思った以上に悪戯好きな性格だった。そういう意味でも対極な二人だ。
「マスター。もう大丈夫でしょうか?」
「そうだね。どっちにしても行くしかない」
 僕はそのまま回り込んで道を阻むようにベヒモスの前に立った。目の前に立たたれてはさすがにライトニングも僕を認識せざるを得ないだろう。
「……なんだお前は?」
 相手は意外そうな表情。こんな名も無い怪盗がいきなり現れたんじゃ当然か。
 でも、僕は彼と『会話』をしなければならない。どうしてもその必要があった。
 実は、彼の事は昔から知っていたんだ。僕にとって、少しだけ因縁のある相手だ。
「えっと、その、久しぶり……だね。梔子って言えば分かるかな?」
「梔子? 誰だ?」
 ああ、そうか。分からない……か。そうだよな。きっとその程度だったんだろうな。
 ガッカリしたような安心したような不思議な感覚だ。いや、僕が気にしすぎていたんだ。
 あの時、僕に『もう二度と口を開くな』と怒りの籠った目で訴えかけてきた人気者でイケメンの彼。同じクラスだったとはいえ、いちいち僕の名前なんて覚えていないか。
 こっちは全員の名前を覚えているが、自分の無駄な記憶力がこんな時はもどかしいものだ。
「マスター、そうだったのですね。これはあなたにとっても復讐だった。運命を感じます」
「復讐なんて、そんな大層なものじゃないよ」
 でも、ほんの少しだけ心が軽くなった。きっと彼にとってもクラスにとってもなんてことない言葉で、なんてことない出来事だったんだ。気にしていたのは僕だけだ。
 それが分かっただけで満足だ。そろそろ僕も前に進む時なのかもしれない。
 それにさっきの彼とフォトのやり取りが僕にとって衝撃的だった。
 ライトニングはフォトに向かって言った。『生まれてくるべきじゃなかった』と。彼はいつもそうやって人を絶望に叩き起こす。
 でも、フォトはそんな彼の言葉を聞いてこういった。『自分の価値は自分で決める』。ポンコツだけど、彼女は誰よりも自分を持っていたんだ。
 そうだよな。僕もあの時、フォトみたいに言えたらコミュ障になることなんて無かった。
 今さら過去の事を言っても仕方ない。でも、この先の事は変えられる。
 僕は軽く首を振って、ベヒモスに向かって手を広げた。
「アリスリングか。何度やっても無駄だ。この腕は突破できない」
 腕で防御の姿勢を取るベヒモス。傷一つ無い強大な腕だ。
「さあ、マスター。奴にあなたの最強の力を思い知らせてください!」
「…………」
「マ、マスター?」
 しかし、何も起こらない。僕は手を広げたまま静止している。
 時間が経つにつれてメギドとアメジストも怪訝な表情になっているのが伝わってきた。
「ああ、そうか。分かったぞ」
 次に嬉しそうに罵倒するかのようなライトニングの声。
「お前、『イメージ』が出来なかったんだろ?」
「え! そんな馬鹿な! マスター、嘘ですよね?」
 今度はフォトがすがるようなの声を上げる。でも僕の答えは……
「フォト、ごめん。やっぱり僕には無理だった。巨大な龍も、美しい鳳凰も、どうしても『イメージ』することができなかったんだ」
 『デザイン』ができない。それは以前、フォトに伝えた事だった。
「し、しまった。そうでした。あなたはデザインのイメージはできない」
 フォトも思い出したらしい。アリスリングが想像力のセンスに影響するのだとしたら、こうなることも予想は出来た。これが僕の答えだった。
「まさに宝の持ち腐れだな」
 ライトニングの声からは愚弄と共に失望も漏れている。
「俺が一番許せない奴を教えてやる。それは勘違いしている奴だ。力が無いくせに、弱いくせに自分が強いと……最強に勝てると勘違いしている奴。そんな奴を見るために俺は心底腹が立つ。殺したいほどにな!」
 そのままベヒモスが拳を振り上げた。僕は手を広げたまま動けない。
「マ、マスター。今は逃げましょう! 今回は仕方ないです。次のチャンスを待ちましょう!」
 フォトが逃げるように叫ぶがそれでも僕は動かない。
「今回は私のせいです! 私が余計に期待を煽ってしまったのです! 全て私の責任にすればいいんです! だから、逃げて!」
 フォトの悲痛な声が辺りに響く。だが、無情にも動けない僕に腕は振り下ろされた。
「……………………へ?」
 だが、フォトの悲痛な声が驚きへと変化した。いや、あるいはライトニングの声だったかもしれない。それだけ普通の人が見たら『信じられない光景』が目の前で起きていた。
 その腕は空中で制止したのだ。僕の手に阻まれて、ピクリとも動かない。
「まさか、受け止めたのか!?」
 ライトニングも驚いている。はた目には受け止めているように見えるだろう。
 でも、実際は違う。さすがにこんな巨大な腕を受け止める腕力は僕に無い。
「フォト、僕はどうしてもかっこいい龍や鳳凰の『デザイン』はイメージできなかった。『絶対に勝てる効率的な武器』しかイメージできなかったよ」
「マスター? 何を言っているのです? ……絶対に勝てる効率的な武器?」
 フォトが戸惑うのは当然だ。僕の広げた手からは何も出現していない。
 だが、そう見えるだけだ。本当は僕の手にはきちんと『武器』が存在している。
「あ!」
 フォトが気付いた。それは僕とベヒモスの間にある小さな『空間』。この空間にあるものが僕の作り出した『武器』だったんだ。
 最強の炎と氷。僕もメギドのように巨大な龍や、アメジストみたいな美しい鳳凰を想像しようと頑張った。でも、どうしても無理だった。僕にはそれがイメージできない。
 その代わりに大きな『疑問』しか湧いてこなかった。『効率』に徹底した大きな疑問。
 どうしてみんなは巨大な龍や鳳凰をイメージするの? 小さい方が当てやすいじゃないか。
 どうしてみんなは目立つ色の炎や氷をイメージするの? 透明の方が避けにくいじゃないか。
 僕がイメージできたのはその『疑問』だけだった。それを現実にしただけだ。
「これは……『見えない氷の盾』。これがマスターの……『存在感の無さ』を究極まで極めたマスターにしか作り出すことができない最強のイメージだったのですね!」
 サイズは最小。しかし強度は最強で無色透明の氷の盾。欲を言えばこれでベヒモスの腕を破壊できれば理想だったが、それは無理だったようだ。本当にあの腕は絶対に壊れない。
 となると、どうやらもう一つの武器も使わなければならないようだ。
 僕が残った手で空間を切り裂く。瞬間、いきなりベヒモスの『肩』が爆発して、腕が落ちた。
「なにい!? 馬鹿な!」
 これは僕が作った炎の武器である。こちらも無色透明で相手には見えない『ワイヤー』だ。
 攻撃色の強い極細ワイヤーは、破壊力を極限まで圧縮しており、どんなものでも切り裂ける。リーチはやや長めの十メートルあるように具現化した。
 これでベヒモスの腕が切れるかは不明だが、それよりも『肩の関節部が弱点』というのは分かっていたので、そこを狙い撃ちすればいいだけだ。
 もちろんワイヤーも見えなくしている為、相手が僕の不意打ちに気付くのは不可能である。
「どこから攻撃したんだ!? くそ、くそぉぉ!」
 ベヒモスは一心不乱に残った腕を振り回す。だが、それは僕にとってはチャンスだ。
 怪盗は相手の裏を突くのが重要。ライトニングほどの男なら見えなくてもワイヤーを防御するくらいはできただろう。だが、焦りと不安に支配された今の彼では無理だ。
「まったく、結局あなたは最後まで『ステルス』なのですね。でもまさかこの世にあるはずもない透明の炎と氷が出来上がるなんて思いもしなかったです。実にマスターらしい答えです」
「……フォトのおかげだよ」
「え? 私ですか?」
 僕が自分を認めることができなかったらこのイメージは固定できなかった。フォトが僕の存在感の無さを武器として認めてくれたから、僕は自分を信じてこの武器を作ることができた。
「マスター、追撃と行きましょう!」
 フォトの指示と共にベヒモスの足の関節部をワイヤーで切る。足は綺麗に千切れ飛んだ。
「うお!?」
 足を失ったことにより、ベヒモスはバランスを崩して地面に片手をつく。チャンスだ。
「僕が一番許せない奴を教えてやる。それは勘違いしている奴だ。力が無いくせに、弱いくせ自分が強いと……『最強』に勝てると勘違いしている奴」
 氷の盾もフリスビーの要領で投げつけ、それに加えてワイヤーによる攻撃。
 炎と氷の同時攻撃により、ベヒモスの各所から爆発が起きる。その衝撃でライトニングはコックピットから投げ出され、僕の目の前に転がってきた。
「そんな奴を見るために僕は心底腹が立つ。殺したいほどにな!」
「……ひ」
 僕の声を聞いたライトニングが完全に戦意喪失。これで決着だ。
 周りからは大歓声が聞こえてきた。実況が映像を映していたようだ。
「……あのさ、フォト」
「はい、なんでしょう」
「勝手に僕の声で喋らないでくれる?」
 ちなみに先ほどの台詞は僕じゃない。フォトが僕の声を使っていただけである。
 コミュ障の僕にあんな大胆な台詞は言えません。
「いいじゃないですか。相手の言葉を利用した憎い演出……今のが理想の決め台詞です。覚えておいてください。……かっこよかったでしょ?」
 まあ、いいけど。ちょっとはかっこよかった……のかな?

 最終話 僕の本当の最終決戦

「しかし、マスターも演出家ですな。なんであんな謝り方をしたのです。私はてっきりライトニングに負けると思っていました」
「いや、フォトはかっこいいのを具現化して欲しかったんだろ? 透明だとかっこよさはまるで無いから、ちょっと申し訳なかったんだ」
「そんなのを気にしていたのですか。変に律儀ですね。まあ、あれも十分かっこよかったです」
「そ、そう?」
 とりあえず。僕はめでたく優勝となった。元々宝石の取得数もトップだったし、ベヒモスを撃破したボーナスも加算されたので断トツの優勝である。
「ええ、やりました! ま、予定通りなんですけどね。最初から分かっていた結果なので、別に嬉しくもありませんよ。がははは!」
 その割に凄く嬉しそうなフォト。確かに優勝する予定だったけど、こんなトラブルが起きるとは思わなかった。でもまあ、結果的に優勝できてよかったか。
『さあ、皆様! 今回はトラブルに番狂わせのオンパレード! そしてとんでもない結果となりました。最終的に優勝したのは、なんと無名の怪盗であるクチナシ! 宝石数ではトップを走り続けた彼は、ベヒモスも倒して歴代最多数の宝石を取得しました!』
 周りから聞いたことも無いような歓声が聞こえてきた。やはり番狂わせは盛り上がるようだ。一応フォトの計算通りとなる。
「さて、最終決戦は制しました。後は表彰台に移動してカンペを読めば終わりです」
 優勝した怪盗は『表彰台』と呼ばれる目立つ場所へ案内される。周りに人はいなくて、かなり高い優勝者専用の場所で、周りも広い範囲で見渡せる。
 そこでカンペを朗読するだけ。かなり緊張するが、これは僕用に姫咲さんが練ってくれた台詞なので、問題なく決め台詞として言う事ができる。
「別に緊張しなくていいですよ。いつもの本読みの要領で無心で読むだけです。あの内容ならそれで十分に人気は取れます」
 そう。後は何も考えずにカンペを読めばいいだけ。それだけで全て終われるんだ。
 姫咲さんが考えてくれた完璧に客受けする台詞。でも僕は……僕の答えは…………
「マスター? …………あなた、まさか」
 フォトが僕の考えを読んだようだ。その綺麗な琥珀色の瞳が大きく開く。
 ああ。悪いけど、僕の『本当の最終決戦』はこれからなんだ。
 あのベヒモスとの戦いなんて比べ物にならない強大な敵と僕はこれから戦わなければならない。あまりにも無謀で、それでいて僕が最も立ち向かわなければならない相手だ。
「はあああ〜。本当にあなたは仕方のない人です」
 そしてフォトは大きくため息をついた。呆れたような表情だったが、口元は笑っていた。
「分かりました。あなたの好きになさい」
「……ありがとう。それと、ごめん」
「いいんです。むしろ私は嬉しいです」
 そうして真剣な表情でフォトが僕を真っ直ぐに見つめてきた。
「マスター。フォト先生からの最後の授業です。よくお聞きなさい」
 授業……そういえば、元々はそんな話でフォトは学校についてきたんだと思い出して、少し苦笑した。もうずいぶん昔の事のように思える。
「待って。当ててみるよ。『周りのみんなを信じろ』だろ?」
「ハズレです。『自分』を信じなさい。これが出来れば、あなたはもうコミュ障卒業です」
 自分を信じる……か。簡単なようで、今の僕にとっては最も難しい課題だ。
「不安になったら、私の事を見なさい」
「……なんでフォトを?」
「そこには毒舌しかない役立たずのポンコツがいます。でも、そのポンコツはそれでも好き勝手に自分らしく生きているのです。だから、あなたも気にせず自分を信じればいいんです」
 自らをポンコツと自称するフォトは、なぜか誰よりも胸を張っていた。
 言われてみれば、いつでもフォトはそうだった。
「ま、最初の答えも完全に間違いではありません。誰からも必要とされていない私とは違って、あなたはきちんと求められています。それを自信としてください」
 そうだった。あれだけライトニングに否定されたフォトがここまで胸を張っているんだ。
 だったら、僕も……
「分かった。頑張るよ、フォト」
「いい返事です。特別に百点を差し上げましょう」
 そうして少し笑った後、フォトが真面目な目でこちらを真っ直ぐ見つめてきた。
「ねえ、マスター。前にメギドが言っていた事ですが……ここでお話してもいいですか?」
「…………それって、フォトが人間だって話?」
 それはあれからずっとうやむやになっていた事だ。ここで話してくれる気になったらしい。
「あれ、本当の事なんです。私の正体は……人間なのです」
 人間。本当の彼女は機械ではなく、見た目が人形なだけの人だったわけだ。
 でも、フォトの見た目はどう見ても人形にしか見えない。いったいどういう事なのか?
「あ、分かった。もしかして、本当の君は遠隔操作でその人形を操っているとか?」
「惜しいですが不正解です。厳密には私が人形に同化していると思ってもらった方がいいです」
「…………マジか」
 とんでもない技術だ。これも異世界の力を使ったものなのだろうか。
「私はとても体が弱く、病室から出られない状態でした。そんな時、サポーターとして魂を人形に乗り移らせる技術のテストを持ちかけられたのです。外の世界に憧れていた私は二つ返事で了承しました。初めて人間の能力を持ったサポーターとしてデビューしたわけです」
 本当ならとてつもない快挙だ。まさしく人形の体を持った人間である。
 だが、フォトの表情は重かった。どうやらその快挙はうまくいかなかったようだ。
「ええ、始まってみればミスのオンパレード。人間のように感情が豊かなことは、怪盗にとって何のメリットも無かったのです。いや、むしろ私の感情は不快でしかなかったみたいです。つまり、テストは失敗。私以外にサポーターに人間の魂を移す制度は実装されませんでした」
 普通に考えたらサポーターが人間みたいに振舞っても、それは不便以外何者でもない。
 なぜなら人間とは『ミス』をする生物だからだ。サポーターとしてそれは致命的である。特にフォトはミスが多いし毒舌だ。それを許容できる怪盗なんていなかったのだろう。
「今まで黙っていてすみません。どうしても言い出せなかったのです」
「それは……自分が欠陥品だって事を知られたくなかったから?」
 フォトらしいとは思う。ただ、別にそこまでして隠すような事でもない気がする。彼女がポンコツだってのは早い段階で分かった事だし。
「いえ、その……私の正体が人間だと分かったら、マスターは私とも会話が出来なくなると思ったのです。そうなったら、凄く申し訳なくて……だから、ごめんなさい」
 なんだそれ。じゃあ、ずっとフォトが隠していた理由は『僕の為』だったのか。
 フォトが人形だから会話が可能。確かに初めて会った時、僕はそう言った。それを彼女はずっと覚えて気にかけてくれていたんだ。本当に僕のコミュ障の事を真剣に考えてくれていた。
 そう思うとなんか笑いそうになった。普段は毒しか吐かないのに、大事な部分は気を遣ってくれていたんだな。
 普通の怪盗にとっては役立たずでしかない『人間』としての機能を持つフォト。でも、コミュ障の僕にとってはこれ以上は無い素敵な機能だったのかもしれない。
「むう、なぜ笑うのです?」
「いや、ごめん。…………ねえ、フォト。これが終わったら、本当の君に会いに行っていいかな? 多分、僕はそれでも普通に話すことができると思う」
「ええっ! マジですか!? いや、別にいいんですけど、私を本体を見たら、きっとマスターはびっくりしますよ」
「もしかして、中身はおっさんとか、そういうオチ?」
「んなわけありますか! 私はピチピチの十四歳です! めちゃくちゃ美少女だから驚くって言いたかったんですぅ!」
 そうしてジト目で僕を見たフォトは一度コホンと息をついて今度は優しい表情となった。
「まあ、まずはこの決め台詞を終わらすことです。言っておきますが、私が誰よりもマスターを応援していますからね。だから……頑張ってくださいね」
 軽く僕の胸を叩いたフォトはそのまま飛び出して観客席の方へ歩いていく。
 そんなフォトを見送りながら、僕は思ったことを口にする。
「なんだよ。十四歳って、僕より年下じゃんか」
 やたら性知識でマウントを取って来たけど、絶対に本人も未経験だろ。むしろ年頃のませた子がそう言った知識を口にしたかっただけの気もする。
「…………さて、行くか」
 表彰台へ向かう。高さは地上十メートルといった所だ。
 風が強い。たかが風なのに、ピリピリと肌を刺すような痛みを感じる。
 今、僕の前には何千……いや、何万にもなる観客がいる。
 姫咲さんは最前列にいた。フォトはいつの間にか彼女の肩に乗っている。認識疎外の効果なのか、周りの人は気付いていない。
『さあ、今回の優勝者にして、ダークホースのクチナシ。一体どのような決め台詞を放ってくれるか!?』
 煽る実況。高まる期待。ここで失敗すれば、悪い意味で印象が大きくなる。それは恐らく僕のステルスでも消しきれないだろう。
 失敗が許されない状況。ならば無難に決めてしまえばいい。僕の心がそう叫び始めた。
 それに触発されるように僕はカンニングペーパーを取り出す。
 僕はそのカンニングペーパーを大きく広げて………………そして、真っ二つに裂いた。
 姫咲さんの目が大きく見開かれ、両手を口に当てる。最初からこの結末を予想していたフォトは、微動だにせず僕を見つめていた。
 僕は……どうしても自分の言葉を伝えたかったんだ。他人の言葉ではなく、自分で決め台詞に挑戦してみたかった。観客と、そして自分自身とぶつかってみたかった。
 それが僕の……怪盗クチナシの本当の最終決戦だ。
 もうカンニングペーパーは無い。その事実を認識した瞬間、目の前が真っ暗となる。
 心臓の音が大きく高鳴る。手足が震える。止まらない。
 バカなことをした。やはりやめておくべきだったんだ。心の中に潜むもう一人の僕が笑っている気がする。
 本当ならもっと相応しい怪盗が優勝するはずだった、何でお前みたいな無名が優勝しているんだ、もっと空気を読めよ。そんな聞こえないはずの声が僕の心に伝わってくる。
 胸元が寂しい。いつもそこにある温かさはフォトの機械による熱だろうが、それがいつしか安心感につながる心の支えになっていたことにたった今気が付いた。
 怖い。やっぱりダメだ。フォト、助けてくれよ。僕みたいな奴は誰も認めてくれない。どうせまた否定されるに決まっている。そんな恐怖がどうしても拭えないんだ。
『こら、いつまでもヘタレているんじゃありません!』
 一瞬、フォトの声が聞こえた気がした。…………気のせいか。
 でも、実際ここにフォトがいたら絶対こんな台詞を言うと思う。
 ああ、そうだ。いつまでもビビっているわけにはいかない。決めたんだ。
 一度目を瞑る。頭に思い浮かんだのはフォトの言葉だ。『自分を信じる』。
 目を開けて最初に見えたのが姫咲さんだった。彼女はもう驚いていない。
 祈るように両手を組んで僕を見つめる彼女の唇が動く。『頑張って』。
 観客席から少し離れた建物の頂上に二人の怪盗がいた。アメジストとメギドだ。
 二人とも不敵な笑みをこちらに向けている。アメジストの唇が動く。『楽しみにさせてもらうわ』。メギドの唇も動く。『お前の全てを見せてみろ』。
 フォトの言う通りだった。僕の事を見てくれる人もいるんだ。
 本当は目の前にいる僕が誰よりも自分から逃げていた。
 僕がコミュ障だった本当の理由は、言葉が下手な事でも、あがり症であることでもなかった。
 僕はただ、どうしようもなく自分のことが好きになれなかった。それだけだったんだ。
 最後にフォトを見る。何も言わない。ただ、こくんと頷いただけだった。
 もう迷うことはない。僕は今日、何十年かぶりに自分の本当の気持ちをを言葉にする。
 それがどんな結果に終わろうと、きっと僕は後悔しないだろう。それだけは確信していた。
 こんな晴れやかな気持ちは初めてだ。さあ、自分と……そして過去と向き合おう。
 大きく一呼吸おいて、そうして僕は口を開いた。

 エピローグ 初めまして

「申し訳ございませんでしたぁぁ!」
 翌日の放課後、僕は屋上で土下座をしていた。
 あの大会を経て、僕は自分を乗り越えた。そして自分に自信をつけることができたんだ。
 なのに僕は今、みっともなく土下座をしている。それは何故なのか?
「あのですね、マスター。なにもカンペを破る必要は無かったですよね? あれは姫咲さんが寝る間も惜しんで、真心を込めて作ってくれたものなのですが、そこは理解していましたか?」
「…………はい」
「では、なぜわざわざカンペを破ったのですか? あなたは姫咲さんがお嫌いなのですか?」
「いや、あれがあったら決心が揺らぎそうだから……そう、あれは僕の決意表明なんだ! 僕が頑張って自分の声で喋るのを姫咲さんに知って欲しかったんだ!」
「なるほど。マスターの気持ちは分かりました。あなたも成長しましたね。では次のステップと行きましょう。コミュニケーションとは相手の気持ちも考えねばなりません。一生懸命作ったカンペが目の前で引き裂かれた気持ちがどういうものか、あなたは考えましたか?」
「ひいい! ごめんなさい!」
 フォト先生。カンカンである。いや、確かに今考えたら酷いことをしちゃったけどさ!
「あはは。もういいよ、フォトちゃん。ありがとね。私は怪盗さんの本音がきちんと聞けて、凄く嬉しかったんだよ」
「……姫咲さん。怒ってないの?」
「うん。怪盗クチナシさんらしいな〜って思っただけだよ。ふふふふふふふ」
 やっぱり怒ってる!? いや、僕の反応を見てからかっているだけだろうか。
「そうだね。じゃあ、お詫びにまた何かお願いでも聞いてもらっちゃおうかな♪」
「……はい」
 やはり姫咲さんには敵わない。少なくともあと十倍くらいコミュ力を磨かなければならない。
「うう、今回の事がトラウマになって、また話せなくなりそうだ。やっぱり僕に人の気持ちなんて理解できないんだ」
「はっはっは。そうかもしれませんね。でも、いいじゃないですか。何回でも失敗したらいいんです。その度に私が説教をしてあげます。なので、ご安心ください」
「全然安心できないんだけど……」
 と言いながらも少しそれを頼りにしている僕がいる。そうだな。失敗してもきっとフォトが何とかしてくれる。だったら、このまま前に進むだけだ。
「でも、結局は人気投票でメギドに勝てなかったな」
「ま、客受けする決め台詞ではありませんでしたからね」
 具体的になんと言ったのかはよく覚えていない。感謝の言葉とか、これからの決意とかを伝えたような気がする。だが、少なくても綺麗な言葉でなかった。
 むしろかなり詰まりまくっていた気がする。コミュ障がいきなりスラスラと喋れるような奇跡は残念ながら起きなかったようだ。
 結果、最後の人気投票で言えば、僕はメギドよりも大きく下回っていた。
 それでも後悔はない。それに、何人か僕にも投票してくれた。自分を偽らない僕の姿を好きになってくれた人が数人でもいれば、それで僕は満足なのだ。
「まだまだマスターの存在感は低いままです。あまり話題になっていません。決め台詞もぎこちないです。点数で言えば、五点です」
「手厳しいね、フォト先生」
 今回の事で僕は大きく変われた気がしたが、状況はあまり変化が無かったようだ。
「これは私のサポートがもっと必要って事ですね!」
「そうだね。まだまだ怪盗さんとたくさんお喋りしないといけないよね!」
 フォトと姫咲さんも笑顔を向けて来る。やはり応援してくれる人がいるのはありがたい。
「でも、怪盗さん。今回の事で少し有名にはなれたんじゃないかな?」
「……どうだろう」
 僕の中でとある回想が蘇ってきた。

 × × ×

 大会に優勝したことで僕は優勝メダルを受け取りに怪盗本部へ来ていた。優勝者には記念にメダルを進呈されるらしいが、特に価値のあるものではなく、売っても金にならない。
 それより人の多い所が苦手なので、僕的には早く帰りたいという思いの方が強かった。
「おい、クチナシ」
 その時、偶然チームメギドと居合わせてしまった。彼らは鋭い目つきで僕を睨んでいる。
 やばい。あれだけ偉そうに言って人気も取れなかったから、怒っているのだろうか。もしくは馬鹿にしているのかもしれない。
「お前、俺のチームに入れ」
「…………はい?」
 しかし、メギドの口から出た言葉は予想外のものだった。チームに入るよう勧誘されたのだ。
「負けた方がなんでもいう事を聞く約束だったよな? いいから入れ」
「こらこら、そんな約束はしていませんよ」
「俺たちはいずれ怪盗のトップに立つ。その時はお前が俺の隣にいるんだ。お前には頂点の景色ってやつを見せてやるよ」
 なぜか異常に熱い勧誘。どうしてだか彼のお気に入りにされたようだ。
「いいえ。メギドの言葉に騙されてはダメよ、クチナシ」
 そんな時、アメジストまで現れた。火と油がここで混ざり合ってしまった。
「彼は貴方が自分より上だと気付いたのよ。だから自分の部下に置いて、上手く利用しようとしているだけ。組むなら私とにしなさい」
 アメジストからもペアを持ちかけられた!? 彼女は誰からもタッグを組まない事で有名だったはずだが……
「そりゃこっちの台詞だ。おいクチナシ。その女だけはやめておけ。そいつはお前を使って遊びたいだけだ。そいつの所へ行くと後悔することになるぞ」
 にらみ合うメギドとアメジスト。いつのまにか僕は完全に挟み撃ちを食らっている。
「それとも女がいいのか? だったら安心しろ。俺と組めばその程度のレベルの女ならいくらでも抱ける環境を作り出してやる。どっちと組んだ方が得なのかは、聞くまでもないな?」
「下品な男ね。貴方と組んだら、クチナシの品が落ちるんじゃないの?」
「はっ。品なんてくだらない常識はこいつに似合わねえよ。お前らみたいなつまらん女の妄想をクチナシに押し付けるなって話を俺はしているんだぜ」
 両者の間で激しい火花が散っていた。なんか僕、過大評価されてない?
 僕はメギドほど強欲でもないし、アメジストが求めるほど特別な怪盗でもないんだけど。
「ふふ、今回も人気投票で私に負けたくせに、ずいぶんと口だけは大きいわね」
「うるせえ! なんでこんなクソ女がトップなんだよ!」
 ゲシゲシと壁を蹴るメギド。自分を弱く見せるパフォーマンスらしいが、素も出てません?
 メギドは僕に宝石を奪われたせいで取得数が少なかったため、評価が炎上中である。だが僕に恨みを言わずにアメジストにキレている辺り、彼がいつも怒っていたのはアメジストの方が必要以上に煽るせいだったのではないだろうか。
「それよりクチナシ。あの透明の氷の作り方を教えなさいよ。あれから私も試してみたけど、どうもうまくいかないのよね。何かコツはあるの?」
「え、えっと。目立ちたくないって気持ちをそのまま具現化すれば、できると思う」
「私、目立ちたくないとか思ったこと無いんだけど……」
「…………う」
 え、そんな人がいるの? いや、もしかしてそれが普通なのか?
「ふん。諦めた方がいいぞ。あれは俺たちには作り出せない代物だ。こいつは普通の怪盗とは根本的に考え方が違うんだ。だからこそ、俺たちのチームに必要なんだよ」
「貴方と一緒にしないでくれる? 私にできない事なんて無いわ。そんなわけでクチナシ、私とペアを組んで練習に付き合いなさい。お礼にいいことしてあげるから…………ね?」
 なんか誘惑してきた!? よほど具現化できないのが悔しいようだ。負けず嫌いのアメジストらしい。さっき品がどうとか言っていたのは何だったのだ。
「ではアメジスト様。これだけの功績をもたらした我々ですから、人気は最下位でも粛清は勘弁していただける……という条件でどうですか?」
 フォトの目がキラリと光る。その手があったか! 一番大事な事だ。
「粛清? そう言えば前もそんなこと言っていた気がするけど、何の話?」
 そんなアメジストは怪訝な目で僕を見ていた。あれ? 話がかみ合っていない?
「そういえば、どこかの陰謀論好きが人気の低い怪盗は粛清されるとかいうデマをネットで流しているみたいだけど、まさか……信じてはいないわよね?」
 え! つまり、粛清の話はガセだったって事!? ただフォトがネット情報に踊らされていただけだったのか!
 安心感と共に脱力感。いったい僕たちは何を無駄に恐れていたのか。
「………………フォト先生?」
 僕はフォトを睨み付ける。全て情弱な彼女が原因である。
 そんなフォト先生は体中から大量の汗を流していた。……本当に多機能な人形だよ。
「さ、さてマスター。要件も終わった事ですし、帰りましょうか」
 フォトは僕の家に向けてテレポートを開始。……こいつ、逃げやがったな?

 × × ×

 回想終わり。今まで焦ってたいのは何だったのかを振り返りたくなる瞬間だった。
「……まあ、怪盗の人達からの評価は上がったと思う。やたらチームに引き入れようとするし」
「ふふ、他の怪盗さんも素敵な宝石を見つけると手に入れずにはいられないんだよ。それが隠された素晴らしい宝石なら尚更だろうね」
「その通り。マスターこそが何よりも代えがたい宝石だったのです。これにてめでたしですな」
「そうだね。フォトのポンコツぶりも証明されたし、めでたしだね」
「うぐっ!」
 フォト的には自らのミスを隠ぺいするためにうまくいって終わらせたかったようだが、そうはいかない。マスターに余計な精神的負担を食らわせた罪は償ってもらう。
 ま、結果的には悪くなかったかもしれないけどね。粛清の話が無くてもまた大会に出て、自身のコミュ力の強化に努めてもいいのかもしれない。
「あ、今日は私、家の用事があるんだった。ごめんね、怪盗さん」
 何かを思い出したように手を打った姫咲さんが慌てて出て行く。そう言えば彼女は社長令嬢なので忙しい身なのだ。今まで付き合ってくれていたのが奇跡である。
 屋上に取り残される僕とフォト。大きく時間が空いてしまった。
 これから僕たちにできる事と言えば……
「それじゃ、フォト。君が入院している病院を教えてくれないか? 会う約束だったよね」
「むう、本当に来るつもりですか? あなた、意外と行動的ですよね。それともこれもあなたの成長というわけですか?」
「そうかもね」
「はあ、まあいいです」
 フォトが落ち着かない様子で僕の脳内に地図を送り付けてくる。意外と緊張しているようだ。
「それでは、私は一度落ちます。準備とかがありますので……」
「準備ってなんの?」
「うるさいです! 女の子は色々あるのです!」
 そうしてフォトの目から光が無くなる。その後に機械の起動音のような音が聞こえてきた。
『回線が切れました。以下はオートモードで行動します』
 もしかしてこれが本来のサポーターとしてのフォトなのだろうか。本当に機械そのものである印象を受けた。メギドやアメジストのサポーターと同じ雰囲気だ。
 逆に言うなら、ずっとフォトは僕といるために繋がっていてくれたのだろう。
 フォトが送ってくれた地図通りの所に病院はあった。かなり大きな病院だ。
 ずっと病室から出られないと言っていたが、本人曰く命には関わらない状態らしい。
 面会を希望して病室まで移動。この扉の前に本当のフォトがいる。
 初対面の人間と話す。これは本来の僕なら絶対にできないことだ。
 でも、フォトだけは特別だ。彼女が人間だったとしても、僕は普通に会話が出来る。それを証明しなければならない。
 少しだけ息を飲んでドアをノック。嫌でも緊張はしてしまうが……
「ひゃ、ひゃい!」
 めちゃくちゃ噛んだ返事が返ってきた。でも、声はそのままのフォトである。
 ドアを開けるとそこに彼女はいた。ソワソワと肩まである綺麗な黒髪をいじっている。
 ……まあ、美少女である。本人が自分で言うだけある。本当に美的感覚だけは間違いないんだよな。僕には無い才能で、羨ましいとか場違いな事を思ってしまった。
 でも、本当に驚いた。というのも、白い入院着に包まれたその姿はとても『可憐』な少女に見えたからだ。いつもうるさい彼女のイメージとはずいぶんとかけ離れていた。
 モジモジと顔を真っ赤にしていて、まるで小動物のような可愛らしさである。
 ただ、目つきだけはちょっときつい感じ。そこにフォトのイメージがあった。
「え、えっと。あの、その」
「初めまして、梔子真人です」
 彼女の言葉を遮るような形でそれを口にする僕。これだけは先に言っておきたかった。
 相手がどんな姿だとしても、例え人間だとしてもきちんと会話が出来る。これからも変わらない毎日を過ごすことができる。僕はそれを証明しなければならなし、僕の成長も見て欲しかった。
 まあ、隠れてこの挨拶の練習をしまくっていたのは内緒だけど……
「………ぷ」
 そんな僕を見た少女は笑う。くそ、やっぱり練習がバレているな。あれだけ僕と一緒にいたのだから、違和感に気付くのは当然か。
 やっぱり彼女は僕の事を何でも分かっている。この先もきっと二人で変なトラブルを抱えながらも怪盗を続けていく。そうして僕は会話の練習をしていくのだろう。
 結局、心配することは何も無かった。僕たちの日常は変わらない。わざわざ会いに来る必要も無かったかもしれない。
 まあ、でもこれも僕のけじめだ。これからもよろしく、と。そんな意味が込められている。
 そして目の前の少女は安心したかのように笑みを見せる。それは太陽のように明るい笑顔だ。
「初めまして、マスター。これからもよろしくお願いします!」

でんでんむし 

2021年01月21日(木)15時19分 公開
■この作品の著作権はでんでんむしさんにあります。無断転載は禁止です。

■作者からのメッセージ
お久しぶりです。でんでんむしです。

ライトノベルの新人賞用の作品が完成したのですが、今回は投稿前に感想を聞いてみたいと思いました。

怪盗らしくない怪盗をテーマにラノベっぽく仕上げてみました。自分で考えておいてなんですが、題材に結構苦しめられたかもしれません。

途中まででも大丈夫ですし、どんな事でもいいので思ったことを言っていただけたら嬉しいです。

もし面白いと思った文章や設定、台詞やキャラやシーンなどがあれば教えていただけるとありがたいです。他にも削った方がいい部分や「こうすればもっと面白くなるんじゃないだろうか?」と思った部分があれば教えていただければと思います。

まだ完成したてでお見苦しい部分もあるかもしれませんが宜しくお願い致します。


この作品の感想をお寄せください。

2022年04月06日(水)09時07分 でんでんむし  作者レス
みずしろ様 感想ありがとうございました!

『面白い』とストレートに言っていただける事に感謝です!また対称的な主人公とヒロイン、会話のテンポ、主人公の性格に対する怪盗というギャップ、それぞれこちらがウリとして伝えたいと思っていた部分が伝わったのは嬉しい限りです。

シンプルながらも熱がこもった感想をありがとうございました!みずしろ様の作品の方も是非読ませていただきますね!

pass
2022年04月04日(月)23時29分 みずしろ  +40点
はじめまして!

まだ序盤しか読んでおりませんが、最初は違和感を覚えた世界観が、後にそういうことかと納得させられる面白い設定、そして一見噛み合わさることの無い凹凸な二人組、会話のテンポの良さ、主人公のコミュ障でありながらよく目立つ職業(なのか?)というギャップ、面白さを語ったら尽きることのないストーリーでした!

すみません、他の方が素晴らしいアドバイスをされているので、私は面白い!と告げることしかできません。しかし面白かった!本当に!


良い作品をありがとうございます!


25

pass
2022年02月14日(月)20時16分 でんでんむし  作者レス
かもめし様 最後まで読んでいただきありがとうございました!

吸引力、読みやすさ、掛け合いと今後を期待させる展開。この部分は一番自分が力を入れた部分なので褒めていただいてとても嬉しかったです。

ヒロインに関して今作ではかなり悩みました。性格もですが、ヒロインが人形というのが斬新と思われるのか、それともラノベとしてあり得ないと取られてしまうのか。最終的にちょっとしたギミックも用意しましたが、これもどう思われるのか。

結果としては良い評価を頂くことが多くてよかったです。方向性の一つとしてこういうのもありかもです。

しかしその分、設定の甘さが悪目立ちしているかもしれません。自分は設定を読まされるのが苦手で、それよりストーリーやキャラに力を入れて欲しいと思う派なのですが、今作は差別化のために異世界等のテンプレを避けてみたせいで読者様にとって馴染みのない世界観になってしまっているようです。

特に慣れない序盤はそれだけで違和感が大きく最も大事なスタートを外してしまう危険性が高いかもしれません。ここにきてテンプレの偉大さと斬新の難しさが身に染みて理解できました。
できるだけ世界観設定の説明に文字数を使いたくない所ですが、この部分を上手くできるようになればよりレベルアップにつながるかもしれませんね。

それでは失礼します。かもめし様も作品を載せられているみたいですね。こちらも近日中に読ませていただこうと思います。

pass
2022年02月13日(日)13時42分 かもめし upMT8OuaYE +30点
初めまして、かもめしと申します。
作品を拝読しました。さすが評価の高さだけあって、プロローグから掃除機並みの吸引力で引き込まれてしまいました。

読みやすい文章、魅力的なキャラ同士の掛け合い、今後を期待させる展開はとても勉強になります。
ただ世界観が掴みにくく、町や建物の描写もなかったので主人公の逃走シーンがあまり想像できなかったのが残念です。それでも躍動感がでていたので、でんでんむし様の文才には慄いております。
個人的には周辺の描写があればもっと躍動感がでてよかったと思います。

ヒロインが人形なのは斬新でした。フォトちゃんの毒舌だけどポンコツ設定が個人的にかなり刺さり、主人公とのテンポの良い掛け合いはでんでんむし様の才能を感じます。

怪盗行為が政府公認とはとても斬新な設定でした。怪盗がエンターテイナーってどういうこと!?と最初は戸惑いましたが、読んでいくうちにそういう世界観かぁっと納得しましたが、この納得感をもう少し早く感じたかったかなっと思いました。

全体的に完成度が高く、とても素晴らしい作品です。
ベヒモス戦はとても迫力があり、ライトノベルの読者世代には受けると思います。
以上で感想を終了させていただきます。
より良い結果がでることをお祈りいたします。お互いに頑張りましょう。
39

pass
2022年01月12日(水)21時44分 でんでんむし  作者レス
大中英夫様、はじめまして。最後まで読んでいただきありがとうございます!

楽しんでいただけたようで幸いです。完成度を誉めていただいた点も嬉しかったです。
序盤、世界観設定をミスってしまいましたが、その状態でも楽しんでいただいたのはとても感謝ですね。

フォトの性格や設定はちょっと受け入れてもらえるか不安だったのでこれも評価していただけて良かったです。主人公の成長青春モノは読むのは好きだったのですが、これまで一度も書いた事は無く新しい挑戦でした。

実は初期プロットではもっとバトル要素の強い作品でした。でもバトルは大好きなのですが、どうも自分はそれだけをうまく武器にする自信がありませんでした。それならばと成長要素や青春モノらしさを取り入れてみて、それに個人的に得意かなと思っているコメディ要素を組み込んだところ、思った以上にしっくり来て現在の形になりました。最後にそれだけだと盛り上がりに欠ける作品になってしまうのでシリアス要素も少し混ぜてみたのですが、個人的にこの部分の調整が最も悩みましたね。ちなみに四話の姫咲邸で変装がバレるシーンは本作で最もやりたかったシーンの一つでした。変装× コミュ障と言えばこのネタをやるしかないだろう!……みたいな(笑)

コミュ障の主人公というのが自分の中ではかなり難しく、どうすれば能動的に物語に絡んでいけるようになるのか凄く考えたので特に後半になって主人公を応援する気持ちを感じていただけたのはこの上ない喜びですね。

また、キャラクターもできる限り全員の魅力を引き出そうと思っていたので、そこが伝わった部分も嬉しかったです。

気になった点についてですが……

>>最初は、近未来SF要素もある作品なのかな、と誤解してました。
>>それゆえに、読者が序盤で読む手を止めてしまうかもです。勿体ないと思います。
それなら最初から異世界の技術と科学技術を兼ね備えた特殊な町という説明にしたほうがよいのではないかと。

世界観設定は自分が最も苦手とする部分で、この手のアドバイスはとてもありがたいです。仰られたように序盤に異世界の技術と科学技術を兼ね備えた特殊な町という部分を強調できるように調整してみます。特にそこで読み手が違和感を覚えてしまって物語に集中できなくなるのは本当にもったいないですね。

>怪盗として活躍できなかったら殺される設定はやり過ぎだと思ってました。

これは作者にとって予想外で勉強になりました。ここは危機感を作る事で緊張感を演出するため、かなり強めの表現をしたのですが、それが逆に雰囲気を損ねてしまう結果となってしまったみたいですね。ここはデリケートな部分で難しいですね。社会的に死ぬくらいでいいかもしれません。

姫咲さんが後半は目立っていない部分とライトニングの魅力の不足については間違いなく今作の最大の弱点です。特にライトニングについてはまだまだ作中で語り切れていない部分も多いです。ですが今作の主人公にとってのラスボスは自分自身であり、そのためライトニングは前哨戦みたいなイメージで表現したかったのです。ただバトルで考えた場合、ライトニングこそがラスボスとなるので、その彼が魅力不足だと評価は大きく下がってしまいますね。この部分をうまく伝えられないのは完全に作者の修行不足です。

姫咲さんはもう少し何とかしたい思いがあるのですが、ページ数で考えると現状では悩んでいる最中です。頂いた案も組み込んで色々考えてみようと思います。

文章についてもアドバイスありがとうございます。こちらも例を出していただいてとても助かります。参考にさせてもらいますね。

それでは失礼します。たくさんの感想とアドバイス本当にありがとうございました。大中英夫様の作品も上げられているようで、そちらも読ませていただきますね!

pass
2022年01月11日(火)17時48分 大中英夫 CWCkPYJQLQ +30点
はじめまして、大中英夫と申します。
さっそくですが、感想をば。

『良かった点』
非常に完成度の高い作品でした。
一人称の利点をちゃんと活かしてらっしゃる。
コミュ障な分、心の中(地の文)では多弁なのがキャラ立ちに繋がっていました。
主人公が怪盗として動くシーンから始まるのが構成的にイイですね。出だしのインパクトを意識されてらっしゃる。
次の教室の一幕で、怪盗行為がエンタメ化した世界だという説明がなされ、
クラスのアイドル姫咲が怪盗マニアだということから主人公が怪盗になるモチベがちゃんとあって、これからの流れにすんなり入り込めました。
姫咲に話しかけられ、ドモる主人公もコミュ障っぽさが出ていました。「普通ってなんだよ」という苦悩がクドくなく簡潔に伝わってきました。
ゲームが上手いという設定も入れているので、今後、そのスキルが怪盗活動に活きてくるのだろうな、と端的に理解できました。

フォトのキャラがよいですね。最初の出会い。主人公との掛け合いが軽妙でキャラが出てました。
毒舌台詞は、僕個人的にはあまり刺さらなかったのですが、
ポンコツ設定が出てからグッと惹きつけられました。
コミュ障とポンコツのコンビ好きです。
「元は人間だった」という気になる台詞からさらに惹きつけられました。
実際にどういう意味か分かったとき、非常に趣深く感じました。

コミュ障克服のため、という怪盗になる動機も納得できました。
主人公が無双していても、決め台詞を言えなかったり存在感が薄すぎて活躍しても目立てなかったり。弱点があって、それを克服していく過程を描いてらっしゃるので、成長青春モノとしてよかったです。
姫咲に正体がバレて、コミュ障克服を手伝ってもらうようになる展開もテンポがよいです
姫咲誘拐のシーンはクスリとしました。鬼畜扱いされ、せっかく変装してもバレるくだりはサイコーです。

姫咲もいいですね。主人公と仲良くなっていく過程にホクホクしました。

第五話の冒頭、アメジストについてクラスメイトが言及してるシーン。怪盗ランキングなど世界観の広がりが説明されワクワクしました。バトルロイヤルや脅迫など飽きさせない展開でした。

メギドとの対決の流れも自然で違和感なく没入できました。フォトの過去の出し方もうまいです
バトルロイヤルではフォトに代わりに台詞を言ってもらえないという制約がついたり、主人公をうまく追い詰めてらっしゃる。

主人公がコミュ障になった理由もすごく説得力がありました。ヘイト管理が上手いですね。『もう二度と喋るな』。キツいですが、イジメかどうかギリギリのラインをついてらっしゃる。
その後、フォトが主人公の価値を認めてくれるシーンもいい。ここからトラウマ克服が鮮明になってます。
ここらへんから主人公を積極的に応援していました。
ライトニングの正体と主人公との関係性、主人公が過去と決別するシーンもよかったです。
頑張ったあとにメギドやアメジストから認められ、勧誘される展開も爽快でした。

アメジストのキャラもいい。バトルロイヤル開始直後のアピールシーン。主人公の独白を介してその魅力が伝わってきました。
メギドのバカに見せかけて計算高いところも好きです。
>>「ふ、ふはは! その通り。我がマスター、見た目は大人しそうですが、実は戦闘狂なのです。これも全て私の作戦ですよ。騙されたのはメギド、あなただったのです!」
>>「嘘つくんじゃねーよ! ほんの三秒前までお前もめちゃくちゃ驚いていただろーが!」
ここのやり取りが個人的に一番面白かったです。
>>「うるせえ。俺は俺を応援してくれる客は絶対に守るって決めているんだよ」
悪い奴と見せかけて熱い男ってのはテンプレですが、いいですよね。
読み終わった後、登場キャラぜんぶに愛着を持っておりました。ライトニング以外。

【気になった点】
最初は、近未来SF要素もある作品なのかな、と誤解してました。
なので「ナイフを具現化する」と一言で説明され、未来技術についての解説がない事に違和感を覚えました。
じつは異世界と繋がっていて、魔法的な技術と科学技術を融合させてるという説明が入るまで、物語の中に没入できませんでした。
それゆえに、読者が序盤で読む手を止めてしまうかもです。勿体ないと思います。
それなら最初から異世界の技術と科学技術を兼ね備えた特殊な町という説明にしたほうがよいのではないかと。

じつはフォトの勘違いだったと明かされるまで、
怪盗として活躍できなかったら殺される設定はやり過ぎだと思ってました。
シリアスなバトルモノではなく、コミカルな作風なので。もう少し軽いほうがよいのではとモヤモヤしました。
これについても読んでる途中の読者は結末を知らないので、作風とのミスマッチを感じさせてしまうかもです。
たとえば、資格はく奪、記憶を消去された挙げ句、全身の毛を永久脱毛される
みたいな、地味に嫌なギャグテイストにするとよいかと。
>>あなたは一刻も早く『コミュ障を克服して人気を得なければならない』。それができなければ近い将来、『死』が待っているでしょう
ここを『社会的な死』に変える感じで。

後半、姫咲の出番がないのが気になりました。とはいえ、バトルロイヤルで活躍できないとは思いますが。別の形で主人公を支援してほしかったかな、と。
たとえば、ライトニングが主人公の正体に気付いて、「こいつ陰キャだわー」的な煽りを入れてくる。
主人公、昔のトラウマ再発。そこに姫咲が応援の声を上げて再起
的な感じでしょうか?
でも、そうすると中継しているので、主人公の正体がバレてしまうし……むずいですね

これはあくまで個人的な感想です。シリアスなバトルが好きで、ラスボスにはある程度の格が必要だと考えている者としては、ライトニングが小物すぎて肩透かしを食らいました。ネタキャラとしての面白みもないですし。
とはいえ、この作品の主題は主人公がいかにトラウマを乗り越えるかであり、バトルはそんなに大事じゃないので、聞き流してください。


以下、細かい指摘です。受賞できるかどうかのポイントにはならないと思います。

>>午後八時。町が眠るには早すぎる時間である『が』、それでも町は異常な熱気に包まれていた。
日本語的にこの逆説詞の使い方はおかしいと思います。意味は通じますが。
改稿例:午後八時。町がボチボチまどろみ始めた頃合いだというのに、あたりは異常な熱気に包まれていた。
『町』を二回連続で使用するのはクドいように感じます。

>>『最愛』のパートナーはちょっとかわいそうな子を見るような目で僕を見ていた。
まだ出会ったばかりで最愛は言い過ぎかと。パートナーだけで十分に感じました。

>>彼女のように『目線』が広い人間なら
目線ではなく視野です。

以上です。長文失礼しました。
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2021年12月13日(月)20時01分 でんでんむし  作者レス
きゃつきゃつお様、はじめまして。感想をいただきありがとうございます!

まず読みやすく内容がスラスラと頭に入ってくると言って頂いたのが嬉しかったです。今作は特にその部分を意識していたので……

また今回はテーマはやや重めなものの、コメディ色も強くしてなんだかんだで読んでいて楽しい気分になって欲しい思いも込めていましたので、そこを感じ取ってくれたのもよかったです。

伏線も褒めていただきありがとうございます。パズルみたいに伏線を考えるのは大好きで名前や設定だけちょっとずつ小出しして、それで興味を持って続きが気になってくれたら嬉しいな〜と思いながら作ったので、そこが少しでも伝われば幸いです。読み手様が混乱しない程度でかつ「そこで繋がったか〜」みたいな風に思ってもらえたら完璧ですね(これが難しい!)

それでは繰り返しになりますが最後まで読んでいただきありがとうございました! きゃつきゃつお様も作品を投稿されたようでそちらも読ませていただこうと思っております。その時にまたよろしくお願いしますね。


pass
2021年12月12日(日)17時25分 きゃつきゃつお  +40点
  はじめまして、でんでんむしさん。きゃつきゃつおと言います。

 でんでんむしさんの作品は読みやすく内容もスラスラと入って来ました。面白かったです。こんな優しい怪盗のいる世界って楽しいだろうなと素直に思いました。読んでいる間は現実を忘れることができ、とても幸せでした。読者をこういう風に思わせるのが大切と改めて感じました。
 伏線のはり方も上手で非常に参考になりました。
 アメジストやメギドといったキャラクターの能力を、物語を進めながら小出しに伝えられるので、読者としてどんどんと惹きこまれ一気に読んでしまいました。
 
 私もこの度拙作ではありますが、「長編の間」に投稿させていただきましたので、お時間が許す限りで結構ですので、ぜひご意見、ご感想をお聞かせください。
 私の作品などは冒頭を読んでいただいただけで、ド素人と見抜かれて呆れてしまうとは思いますが、読んでいただいた範囲で構いませんので、よろしくお願いします。

きゃつきゃつお



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2021年05月17日(月)00時49分 でんでんむし  作者レス
日暮れ様、誤字脱字と言い回しの提案、本当にありがとうございました!

これはもう、自分が思った以上に充実した内容でした。

直ちに修正作業に入らせていただきますm(_ _)m

pass
2021年05月17日(月)00時29分 日暮れ  +40点
「私ならここはこう書くのに……」みたいなことを載せていきます。
このコメントを読む際の注意事項は、前コメに張り巡らせた予防線の通りとなっております。またその性質上、ネガティブな意見が多いです。あくまでも私の偏った趣味趣向なので、真に受けすぎないでください。
少しでも新人賞でのお力になれたら、という思いで書いております。

先ずは、言い回し関連。

1>この子は長所をいったい何処へ忘れてきてしまったのだ。
 ⇒しまったのか。
2>逆に言うならば、もし怪盗になることができれば、あの姫咲さんのハートですら射止めることが可能という事になる。
 ⇒『裏を返せば、』のような気がします。自信はあまりないですが。
3>普通に思った事を呟けばいいよ、思われるのだろうが、やはりその『普通』が僕には分からない。
 ⇒(確信はないですけど)『思われる』の前に『そう』が抜けている?
4>簡単に信じて痛い目を見るのは間違いないだろう。
 ⇒簡単に信じようものなら、痛い目を〜
5>「逆だよ! 多すぎだろ! 百人はいるぞ!?」
 ⇒直前の地の文に『百人近い観客』とあるので、セリフで『百人はいる』と繰り返し伝える必要はないかと。
6>それは不法侵入なのですが……まあ、そこは追及しないでおこう。
 ⇒『なのですが』、ここだけ主人公の物言いが変。
7>本当に飛べるなんて思ってなかったし、フォトを下に置いたまま飛んでしまったのだ。
 ⇒本当に飛べるなんて思っていなくて、フォトを下に置いたまま飛んでしまったのだ。
8>怪盗は一人に対して、警察は集団で襲い掛かって来る。
 ⇒怪盗は一人なのに対して、
↓次の行です。
9>数の利を持つ警察に対して、怪盗には強化された身体能力と、サポーターがいる。
 ⇒数の利を持つ警察に、怪盗は強化された身体能力とサポーターがいる。
10>信じられない話だが、僕の存在感の無さはゲームですら影響を及ぼしていたらしい。
 ⇒信じられない話だが、僕の存在感の無さはゲームにも(あるいは、ゲーム内でも)影響を及ぼしていたらしい。
11>ゲームでも難易度によってAからEまでランクがあった。
 ⇒文脈からランクの話をしているのは分かるので、ここの『ランク』は削ってもいいかも。
12>僕も同様で、危険な予感を察知していた。
 ⇒『な予感』はない方が好みです。(『危険』自体に、『予感』に近いニュアンスが含まれています)
13>シャンゼリア
 ⇒シャン『デ』リア、の方が一般的かと。
14>僕は文句を言いたい気持ちを抑えてその場を後にした。
 ⇒直前に『その場を後にする。』とあるので、どちらかを削ってしまっていいかと。
15>速攻でベットに倒れ込んだ。
 ⇒ベットでも間違いではないですが、ベッドの方が一般的かと。ちなみに、『ベッド』と表記されていた箇所もありました。
16>そうして死闘の末、ようやく学校に到着。
 ⇒『激闘』くらいの方が私の好みです。
17>(お、あの周りから囲まれている可愛い子は、昨日の方ではありませんか)
 ⇒『周りから』はない方が好みです。
18>彼女はいつでも人々から親しまれる人気者だ。
 ⇒『人々』が急に固い言い方に感じます。『々』はない方が好み。
19>有名度
 ⇒知名度or認知度の方がしっくりきます。
20>アピール力を上げるという行為は今やっていることは、普段フォトが言っている事と真逆である。
 ⇒日本語が不自然に感じる。
21>僕は一気に距離を詰めてスタンナイフで二人に突き刺した。
 ⇒僕は一気に距離を詰めて、スタンナイフを二人に突き刺した。
22>まあ、僕は正体を知られているわけだし、断る選択肢は無かったんだけど……。
 ⇒まあ、僕は正体を知られて脅されているわけだし、断る選択肢は無かったんだけど……。
23>町が眠るには早すぎる時間であるが、それでも町は異常な熱気に包まれていた。
 逆接の使い方に違和感があります。
 ⇒町が眠るには早すぎる時間帯。町は異常な熱気に包まれていた。
24>怪盗が実際に宝を盗む姿を、人々がお金を払って見学することができるのだ。
 ⇒見物ではないですか? 見学でも意味は通りますが、エンタメを見て楽しむという感覚であれば、見物の方が合っているように思います。
25>乙女チックな目をして天井を見上げている一人の美少女が目についた。彼女の名前は姫咲莉愛(ひめさきりあ)さん。このクラスでトップの成績を持ち、アイドル的存在でもある。
 ⇒『目についた』はない方が好みです。
26>僕みたいな存在にもきちんと気付いて、気にかけてくれたのだろう。
 ⇒主人公は謙っているのだけど、『きちんと』という表現が偉そうでちぐはぐ。きちんと、は削った方が好み。

ここからは設定などでメモしたところ。

1>まあ、丸一日狭い鞄にいたら外に出たくなる気は分かるが……
 ⇒丸一日は大げさな気がします。約半日、程度ではないでしょうか。
2>中には『指定席』という、間近で怪盗を拝むことが可能な高額チケットなんてものも存在するらしい。
 ⇒犯行中の怪盗を間近で拝めるということは、事前に経路を知ることができるってことですよね。警察はいったいなにをしているのだろう……。
3>僕は特に秀でた才能も無い人間だが唯一ゲームの腕前だけは人並み以上の能力を持っていた。
 ⇒僕は特に秀でた才能も無い人間だが、唯一アクションゲームの腕前だけは人より優れた才を持っていた。
 ↑通読後でもゲームがどう言う仕様なのか、今ひとつピンと来なかった。おそらくアクション系なのだとは思いますが。
4>ついさっきまで女子達とその話をしていたところだ。
 ⇒主人公って女子達と怪盗の話してましたっけ?姫咲さんとはしてましたけど。
5・フォトとの邂逅シーンで、ヘッドギアを外しているのか、ダイブ中なのかがわかりづらい。
6>そして警察を雇って怪盗を迎え撃つ。
 ⇒この時点では、警察を雇っているのは国では? と無用な引っ掛かりを覚える。警察=傭兵とのことなので、ここで『警察役として雇われた傭兵』であることを説明したほうが良さそう。
7>僕のステルス力を全開にして隠れたら、このレベルの警察なら恐らく僕の目の前を通り過ぎても気付かないだろう。
 説明が分かりにくい気がする。
 ⇒『僕が隠れていない状態で警察が近くを通っても、警察は気付かない』ということでしょうか。
8>屋上……昔は危険なので立ち入りは禁止されていたらしいが、この怪盗指定都市は安全性が完璧に確立されているので、自由に出入りが可能である。
 ⇒この説明だけでは、怪盗指定都市と屋上の安全性との因果関係がよく分からない。怪盗指定都市固有の特殊な柵で屋上は囲まれている、とかでしょうか?
9>「えっと、その、すみません。ぶっちゃけ、かなりまぬけなミスで変装を見破られたので、実際の所、評価はダダ下がりだと思います。それに動きが早すぎて観客の皆様は見えていません」
 ⇒フォトは主人公が警察を倒すのを見ていないと思っていたのですが、見ていたのでしょうか?
10・全長三十メートルのロボットが町を徘徊するのがちょっと想像できない。少し移動するだけで建物や物を破壊しそうだけど、その辺はどうなっているのだろう。『恐竜に似てはいる』とはありますが、ビジュアルを上手く想像できなかったです。

ポジティブな内容のメモ。
>彼女は学園で一番の美貌を誇っており、さらに抜群のコミュ力も搭載している。
 ⇒『搭載』という表現が面白かったです。パソコンや車なんかに新たな機能を付け加えるときに使う言葉ですが、主人公は姫咲さんのことを凄すぎて人外の何かにちょっとだけ見えていたのかな、なんて思いました。
>普通の顔をすればいいじゃん、思うかもしれないが、僕はその普通というのが……以下略。
 ⇒以下略の使い方に笑いました。主人公のげんなりとした心理がよく表れていて、面白いです。
>敵も倒したし、後はこの先に進んで姫咲さんを救出するだけだ。早く終わらせて家で泣こう。
 ⇒家で泣こう、は面白かったです。主人公から哀愁が……。
>「とっても可愛くてオシャレのセンスが抜群の美少女は誰でしょう? そう、私です!」
 ⇒どっかで聞いたことのあるセリフ(笑)。遊び心ありますね!
・観客や周囲の人の扱いが上手い。セリフだけで熱狂っぷりをよく表現できている。
・一話と二話はプロローグからして『物語の前座』といった印象でした。三話から物語が始まる感じがしました。前座としては丁寧で分かりやすかったのですが、展開としてはやや勢いに欠ける造りかもしれません。それでも一・二話で期待感はかなり煽られたので、これからのお話が楽しみでした。

↓すみません、誤字脱字の書き漏れ分です↓
49>人形は世にも信じられないような目で僕を見ているが、それをこっちも同じである。
 ⇒それ『は』こっちも
50>シャンゼリアの間を通り抜けた警棒は、その上に設置されてある小さなセンサーをで貫く。
 ⇒『で』が不要。
51>ルールなのだし、やるしかないか。僕にとっての最大の難関がである
 ⇒『が』が不要。
52>このまま続けていればいつかは僕のコミュ障が治る可能性もゼロではない。
 ⇒この場合の『なおる』は『直る』な気がします。(同じ物で他にも一箇所有り)。ちなみに、『直る』と表記されていた箇所もありました。
53>透視能力を使って周りを見渡せているようだ。
 ⇒見渡『し』ているようだ。でしょうか?
54>緊張の方が気持ちの方が幅としては大きい。
 ⇒二つ目の『方が』は不要かと。

我ながらネガティブなことばかり書いていますが、評価点からも察していただきたいのですが、個人的に御作はかなり面白かったです。それだけは誤解なきようお願いします。
色々と勉強させていただいたこともあります。ありがとうございました。
(私は基本、再訪した場合は返信がなくても気にしません)
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pass
2021年05月16日(日)22時41分 日暮れ  +40点
ご要望をいただきましたので、僭越ながら書いていこうと思います。

まずは誤字脱字の類から載せていきます。数が多いので、分かりやすいよう番号を振っておきます。自信がないものも幾つか混じっておりますので(特に疑問形のコメント付きのものは)、取捨選択は慎重に。

1>舌を出して可愛らしさをアピールしているが、僕から見ればただあざといだけである。
 ⇒僕からして見ればor僕からすれば、でしょうか。
2>そろそろ学園に広まっているらしく、告白の話も最近は聞かない。
 ⇒そろそろ?
3>そして今日、僕は最終ステージ立っていた。
 ⇒ステージ『に』立ってた。
4>人形は世にも信じられないような目で僕を見ているが、それをこっちも同じである。
 ⇒それ『は』こっちも
5>せっかくの機会なんだ。このチャンスを生かしてみよう。
 ⇒『いかす』は活用する、という意味合いなので『活かす』の方が適当かと。
6>姫咲さん、なんて優しい子なんだ。彼女はとても気が利くし、目線が広い。
 ⇒広いのは目線ではなく、視野ではありませんか?(同じ物で他にも一箇所有り)
7>「怪盗か。全く実感が沸かないよ」
 ⇒『沸く』だと水のイメージ。なので『湧く』か『わく』の誤字かと。(同じ物で他にも一箇所有り)
8>早すぎだろ! 予告状を送って十秒も立ってないぞ!
 ⇒経つ、または、たつ。
9>それ以前に僕自身があまりカメラに写りたくないというのもある。
 ⇒『うつりたくない』の主体は『うつったモノ』つまり『映像』なので、『映る』が適当かと。
10>必要の応じて念じてください
 ⇒必要『に』応じて
11>一応だが、フォトのきちんとフォローしてくれた。
 ⇒『の』が誤字だと思う。
12>人形なのに何故が食事をするようだ。
 ⇒何故『か』食事を
13>これから学校では、フォト先生によるコミュ力口座が始まるらしい。
 ⇒コミュ力『講座』が
14>「いえいえ、そんなことができるは姫咲さんだけですよ。〜
 ⇒できる『の』は
15>マスターの弱点を簡単に晒すじゃない!
 ⇒晒す『ん』じゃない! で、脱字でしょうか。違っていたらごめんなさい。
16>「でも、その前にまずは私の『お願い』を叶えてもらわないとダメだだよ、怪盗さん♪」
 ⇒『だ』の重複。
17>(馬鹿な……なんという進行速度。これが本気を出したマスターなのですか! この調子なら本当に突破できてしまいそうです。あなたはまたしても私の予想を上回ったのですね」
 ⇒最後の『」』が最初の『(』と対応していない。
18>冷静に、落ち着いて対処すれば、きっと巧妙は見えるはずだ。
 ⇒きっと『光明』は
19>見えた! 全て順弾を回避できるルートをついに発見したぞ!
 ⇒順弾? 自信ないですけど、『銃弾』の誤字ですかね?
20>思った以上に相手の動揺が大きく、さらに尾をを引いたことが幸いした。
 ⇒『を』の重複。
21>なぜが沸きあがる歓声を背に僕はその場を離脱。
 ⇒なぜ『か』
22>ようやく終わったものの、とんでもない遊びに突き合せれてしまったものである。
 ⇒『付』き合『わさ』れて
23>まあ、他に柵も無いのだし、その作戦に乗っかかってみようか。
 ⇒他に『策』も
 ⇒『か』の重複?
24>「マスター。メギドではありませんが、いつか彼女を引きずりおろすと怪盗がいるとしたら、それは我々ですよ。あなたの才能ならそれが可能です」
 ⇒『引きずりおろすと怪盗が』の『と』が不要。
25>あまり需要は無いのだが、どちらが先にお宝を先に盗めるのか競争するのだ。
 ⇒『先に』は一つでいいように思う。
26>まるでと凄まじい力を隠し持っているかようにニヤリと笑うフォト。
 ⇒まるで『と』、が不要。
27>きっと全て人間に好かれるような言葉が思いつくはずでしょう
 ⇒『全ての』の脱字?
28>どうやら僕のプレイスタイルは全てフォトに掌握されているようだ。
 ⇒『掌握』というより『把握』のような気がします。
29>フォト的はアイテムよりコスチュームにお金をかける方が重要らしい。
 ⇒フォト的『に』は
30>それを否定されたかった事が、僕はちょっとだけ嬉しかった。
 ⇒『されなかった事が』の間違い?
31>本読み感覚でいけるから、気は楽だとなはずだよ
 ⇒『だと』が不要。
32>実況のからの説明が入る。
 ⇒『のから』が不要。
33>ベヒモスはランダムで町に徘徊して、我々に攻撃を仕掛けてきます。
 ⇒町『を』徘徊して、の間違い? 自信はない……。
34>重大何かを見落としているような、そんな予感も頭から離れない。
 ⇒重大『な』何か
35>宝石集めに関してはそこま急いでも効率で言えば変わらないし、警察も現れるはずなので二人の実力も見れる。
 ⇒そこま『で』急いでも
36>フォトの思う所があるのか、敵なのに感心した表情をメギドに向けている。
 ⇒フォト『は』、でしょうか?
37>まさか展開だぁぁぁぁ!
 ⇒『の』抜け? 違ってたらごめんなさい。
38>周りからはどよめきの声上がって、僕が注目されるのは良いことかもしれないが、今はタイミングが早すぎた!
 ⇒声『が』上がって、では?
39>しかも最下位はいいカモだ
 ⇒『。』抜け。
40>「まあ、宝石を渡すのも痛いんだし、こうなったらやるしかない」
 ⇒痛いんだし? 誤字の類でしょうか?
41>彼女は『僕と組む』という答えを示しだしたのだ。
 ⇒『示したのだ』でしょうか。
42>接近戦を仕掛けてくるだろうから、そこ狙ってカウンターを仕掛ければ簡単に勝てるけど……
 ⇒そこ『を』狙って。
43>むしろその動きに慣れさせて、初手でそれ以上の動きを見せて相手の裏を突くのが彼女の作戦だったかもしれない。
 ⇒作戦だった『の』かもしれない。でしょうか?
44>さっきスタンナイフで攻撃した時、ついでに拝借しせてもらった。
 ⇒拝借『さ』せてもらった。
45>ベヒモスは腕で防除するが、龍はその腕ごとベヒモスを飲み込んだ。
 ⇒防御
46>彼はいつもそうやって人を絶望に叩き起こす。
 ⇒叩き『落とす』では?
47>いや、別にいいんですけど、私を本体を見たら、きっとマスターはびっくりしますよ
 ⇒私『の』本体を見たら、
48>僕はそれを証明しなければならなし、僕の成長も見て欲しかった。
 ⇒ならな『い』し、
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2021年05月16日(日)20時28分 でんでんむし  作者レス
日暮れ様、感想ありがとうございました! 長編の本作を読んでいただいて本当に感謝です!

今回、作者的に一番の嬉しい誤算は後半の評価が思った以上に高かったことです。実は結構ビクビクしながら書いていたので、この部分は本当に収穫でした。

それだけに序盤は特に気合を入れて構成を練ったのですが、やはり序盤に引っ張るというのは難しいですね。個人的に序盤で期待感を持てず、退屈だと思われたらリカバリーはかなり困難だと思っています。それだけに最後まで読んでいただけたのは本当にありがたいです。

序盤からもう少しだけフォトの秘密や主人公の過去について伏線を入れようと思います。恐らくはそれくらいでテンポは崩れない……はず。

実の所、フォトもかなり心配していて、今の時代に毒舌のヒロインって大丈夫なのか? とか思いつつ全力で可愛らしさや愛嬌、「こう見えては本当はいい子なんだよ!」みたいなのを表現していたのですがこの部分も伝わって嬉しかったです。

おっしゃる通り、フォトは『弱いけど強気に自分を信じる』。主人公は『弱気で自分を信じられないけど本当は強い』を対比としてテーマにしていました。逆に言うなら主人公のテーマをもう少し強調できれば違和感も少しは無くなるかもしれませんね。

>主人公が実際にコミュ障であることと、主人公が自分をコミュ障だと思い込んでいることとは、同じに考えちゃダメなんだと、途中から思い直しました。主人公の場合はたぶん後者だから、実際のコミュ障である必要はないと思います。

ここは目からウロコでした。うまく表現できればこれも違和感を無くすヒントになるかもしれません。

指摘の方もありがとうございます。町の表記、最底辺という言葉の置き換えなどは文字数も取らず修正が難しくないと思うので特に参考にさせていただこうと思います。

誤字と文章に関しては新たな発見となるかもしれないので、もしお手数でなければ教えていただいてもよろしいでしょうか? こちらで取捨選択という形になりますが、参考にさせていただきたいと思います。

それでは失礼します。最後までお付き合いいただき本当にありがとうございました!

pass
2021年05月16日(日)16時49分 日暮れ  +40点
先日は短編の間の拙作をお読みいただき、ありがとうございました。
『最強のコミュ障怪盗とポンコツ毒舌人形』読ませていただきました。

とても面白かったです!
特に八話以降の怒涛の胸熱展開には、思わず涙腺がゆるくなりました。
敵・ライバルだと思っていた相手に認められて助力を得て、自身の力を最大限に活かして真っ向からボスに挑んで勝利する展開は、やっぱ恰好いいですね。主人公が最高に主人公していたと思います。

>「そこには毒舌しかない役立たずのポンコツがいます。でも、そのポンコツはそれでも好き勝手に自分らしく生きているのです。だから、あなたも気にせず自分を信じればいいんです」
これは、中でも心に染みる台詞でした(泣

ちなみに、私のお気に入りのキャラはフォトです。
>「私もサポートしますよ。敵の数は……『十人』です!」
>「……………………えっと、敵の数、『五人』なんだけど」
>「あ、本当だ。誤認してしまいました。五人なだけに……てへ♪」
ポンコツゥーー(笑)。
粛清の話もフォトがネットのデマに踊らされていただけというオチも、良かったです。物語が軽すぎず、けれど重くならない上手い設定と展開だと思いました。
フォトのことだから、そんなことじゃないかなとちょっと思っていて、やっぱりか(笑)と行った感じでした。

随所にあるポンコツな所がとても可愛かったです。それでいて毒舌!これはこれでコミュ障になる素質があるように思いますが、フォトには自分自身を信じる力があって、へこたれない性格でしたね。この辺は主人公との対比もある気がしました。
実際は、誰かの手を借りないと生きれない人間の少女だったワケですが、彼女の人間らしい弱さを知れたことで、主人公とのデコボコながらもガッチリとハマった間柄が、今後も続いていくだろうなと想像できました。

名前に関して、キャラの性格が表れていて覚えやすかったです。
文章はわかり易さ重視で書かれていたと感じました。実際、分かりりやすく読みやすかったです。


他の方と違った意見であった場合、たぶん私が間違っております……。私は適当を言うことがありますので、取捨選択は慎重に。私の趣味嗜好の塊のような指摘(もはや難癖レベル)もあると思います、合わないところは切って捨ててくださいませ。あと、自分のことを完全に棚上げしておりますが、何卒ご容赦を。

と、全力で予防線を張り巡らせたところで、個人的に気になったことを書いていきたいと思います。

まずは他の方と重なっているところを軽く触れます。
『町』という規模が世界観に合っていないように感じました。怪盗指定都市ならば、町よりも都市、と言われた方がしっくりくる気がします。
造形の描写が弱いところがある。また、『美』という言葉を色んなキャラに多用しすぎているように感じました。美しさの有り難みが薄れてしまう気がしました。

プロローグでは、時代設定や情景がわかりづらく感じました。私は『町・屋敷・怪盗』の言葉から、石川五右衛門のような世界・時代を想像しました。ですが全然違いました。

主人公がコミュ障っぽくない、というのは読んでいて早い段階から感じました。どちらかといえば、あがり症や吃音寄りなのではないか、とフォトとの会話などから思いました。
でもね、主人公が実際にコミュ障であることと、主人公が自分をコミュ障だと思い込んでいることとは、同じに考えちゃダメなんだと、途中から思い直しました。主人公の場合はたぶん後者だから、実際のコミュ障である必要はないと思います。
そう考えますと、最後にコミュ障を克服して決めゼリフを言ったであろうシーンには、違和感はありませんでした。
これは現実の話ですが、特に思春期なんかでは対人関係で悩みやすい時期ですから、自分をコミュ障だと思い込んでいる人って結構いるんじゃないかと思います。(思春期でなくとも)そういう人が御作を読んだときに、前向きに考えられるようになるかどうか、が一つの分岐点な気が致します。
読んでいてネガティブな感情になったり嫌な思いをしたら、どんなに内容がエンタメでも、一定の評価は越えられないように思うのです。
その点、御作はコミュ障を前向きに捉えられるような作りになっていましたので、その辺も私の好感度は高めです。
『僕は自分で自分のことをコミュ障だと思っている』的な文章が早めにあれば良かったかな、とは思います。現状ですと、『僕はコミュ障だ』と断言しているようなものなので、一般論的なコミュ障と比べた際に、主人公はコミュ障っぽくなくない? と思われるのは仕方ないことのように思います。

この観点から、気になった箇所もあります。
>どちらにしても最底辺の僕が説教などおこがましい話だ。
御作は、コミュ障が読んでも楽しめるのが良さだと思っているので、コミュ障=最底辺と安易にするのは読者の心にはキツいかも、と思いました。もっとマイルドな表現が私好みです。

あとはそうですね、もっと早くにコミュ障になった原因・回想が欲しかったです。
御作は、『新しい設定・要素の説明が入る⇒それがあたかも自然な流れのように、そのように物語が展開していく』節があるように感じました。有り体に言ってしまうと、伏線がなくて唐突に物語が進む。(まるでテコ入れ現場に遭遇したような感じと言いましょうか)
もちろん伏線があるところもあるのですが、無いところは全くないように思いました。(私の抜けだったらごめんなさい)
キャラの掛け合いが楽しいからゴリ押せてる感があって、それは良しと取るか悪しと取るべきか……。難しいところだと思います。
私は展開に伏線の楽しみをあまり感じなかった『フォトが人間である説』が浮上するまでの間、『先の展開を予想する楽しみ』がほとんどなかった、というのが正直なところです。(まあ私だけかもしれませんね。個人的には物語が展開する前にもっと伏線が欲しかったように思います)

>「マスター。あなたは存在感が無さすぎたのです。それで観客の記憶も消えてしまったのです」
これが許されるなら、割りと何でもありな世界観になってしまうような……。
極端な話でいうと、特殊能力を得た怪盗たちが怪盗業務そっちのけで異能バトルを勃発させるような、そんなハチャメチャが押し寄せくる感じが致します。
設定としては面白いです。ただ、しっかりとタズナを握るのが難しそうな設定だと思います。

>怪盗の想像力によって威力が増減するからこそ、その使いどころも難しいようだ。
怪盗の設定が増えていく・明かされていく度に、私が期待した怪盗指定都市の世界観が遠ざかっていく感じがします。
怪盗指定都市を舞台の中心として見据えてはいるのですが、他の説明がポンポンと出てくるたびに相対的に存在価値が小さくなっていくイメージです。
設定や展開の根拠や理屈をある程度は納得して読みたいと思っていた私には、ちょっとだけご都合主義なようにも思えてしまった。
(私の考えは、御作を楽しもうとするスタンスからは外れているのかもしれませんね。あくまでも参考程度に)

主人公が怪盗指定都市のシステムに詳しい時と詳しくない時があって、このあたりも『ちょっと都合良いな……』とネガティブに感じました。
例えば、メギドの相手を油断させる戦法も、怪盗ランキング2位の取れる戦法ではないと思いました。それだけ有名なら知れ渡っていて使えない戦法だと思うんですよね。

スタンナイフについて、ほぼほぼ私の嗜好による意見になりますが。
殺傷能力がないのなら、ナイフである意味が薄いように思う。杖の類の方が、怪盗の基本武器として似合っているんじゃないでしょうか。(アメジスト様が周囲に投げたナイフは、ガチャで獲得した特別性ということで)

本当に細かいところなので、間に受ける必要は全然ありませんが。
一話二話という括りは、話しの中に起承転結があって一つの出来事がある程度纏まって描かれているイメージです。そう考えますと、別の表記にしたほうが良いような気がします。
かと言って『章』とするのも大げさな気がします。となると『一幕二幕、あるいは、第一幕第二幕……』でしょうか。こちらの方が作風ともなんとなく合っているような気がします。

私なんぞが色々と好き勝手なことを言ってしまって申し訳ない。
少しでも応募の手助けになれれば幸いです。また上位にいけるよう祈っております。
本当は誤字脱字を見つけ次第メモっていたのですが、文量が多くなるので自重しておきます。「私ならここはこう書くのに……」みたいなことも合わせてメモっていましたが、これは本当に私の趣味嗜好の塊ですので、一先ず封印しておきます。
この二点、ご要望がありましたら載せさせていただきますが、不要であるようでしたらスルーしてくださいませ。
では、執筆お疲れ様でした。次回作にも期待しております。
50

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2021年05月15日(土)21時54分 でんでんむし  作者レス
金木犀様、感想ありがとうございます!

とても熱量のある感想を頂き本当に感謝です。凄く作品に寄り添ってくれたのが伝わってきました。よく考えたら自分は流し読みだったのに三十倍近い文量の本作を読んでいただいて、本当にありがたいです。

まずは面白かったを頂いて安心しました。構成や伏線、キャラも気に入ってもらって良かったです。

主人公についてですが、今回は性格もさることながら実は成長を作品に取り入れるタイプの主人公も初めてでした。普段はある程度完成した性格の主人公ばかりだっただけに今回は慣れない部分もあってかなり手を焼きましたね。それだけに愛着も強かったりもします。

フォトについても愛嬌が伝わるかちょっと心配だったのですが、作者が思った以上に評価が高く、意外とうまくいっていたみたいです。

アメジストについては悪くはない表現はできたと思うのですが、登場が遅い事もあって、ちょっとキャラクターの中では(特にヒロイン枠として考えた場合)存在感が薄かったのかもしれませんね。苦肉の策で序盤から名前だけは登場させていたのですが、それが返って肩透かし感が出てしまう可能性もあります。
ちなみに元々はアメジストとペアを組んで最難関レベルに挑むシナリオもあったのですがページ数の関係でカットしました。この部分も影響が出ているかもしれません。
後は主人公のステルスと同レベルの特性で『どんな人でも魅了してしまう』みたいな能力を持つ予定もあったのですが、これも色々あって削除しました。こういった部分も強調したら少しは存在感も出たかもしれませんね。

>最初町一番人気という紹介だったのですが、混乱しました。町だとそれほど大したものだとは思えないし、印象として弱いです。怪盗の中で一番人気、と最初から書いた方が混乱しないと思います。

アドバイスありがとうございます。その通りに修正しようと思います。


姫咲さんは序盤はかなり筆が乗ってうまく表現できたのですが、後半はちょっと尻すぼみ感があったかもしれません。主人公と完全に対比しているキャラなので、ライバルキャラとしても面白かったかもしれませんね。陰キャに対する陽キャみたいな。

実は作者的に一番意外だったのはメギドです。このキャラは作者の我儘な好みをかなり取り入れたキャラで、流行りを考えた場合、読者ウケはしないだろうな〜。一番指摘を食らうんだろうな〜と思っていたので気に入っていただけた人がいたのは嬉しい限りです。意外と作者の好みを直でぶつけるのも大事かもしれません。

他にも気になった部分の指摘に関しては、それぞれが非常に鋭く、かつ的確であると感じました。この部分も向き合って頑張っていこうと思います。特に町を街や都市と表記する部分や大会で一位を取った時の仕様、アメジストの剣の名前などは修正のイメージが付きそうなので取り入れさせて頂こうと思います。

>カリオストロは名作っすよね。

にやり。古いと言われようが怪盗をテーマにするならこのネタを取り入れずにはいられんのです!!(血涙)

>やはりピンチは人を成長させる!→やはりピンチは人から正常な思考を奪う!

これ、実は作者的に今作一番の出来だったので、これで笑ってもらったのがめちゃ嬉しかったりします。

実況については……うむむ、作者もお気に入りだったのですが、改稿版はページ数稼ぎのために結構台詞をカットしてしまったんですよね。実はメギドも台詞、活躍共に結構カットしちゃってたんですが戻そうかな。だがそうなるとページ数の上限が……ううむ。悩む。

レーベル候補もありがとうございます! 小学館ライトノベル大賞は候補に入ってなかったので、情報が凄く助かりました。候補に入れてみますね。

GA文庫は憧れのりんごかげき先生がいるからという不純な動機もあったりします。推しカワを始めて読んだ時の衝撃は凄まじかったです。

最後に充実した感想をありがとうございます! とても愛を感じました。それでは失礼します。

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2021年05月15日(土)08時31分 金木犀 gGaqjBJ1LM
(1/3)

こんにちは、でんでんむしさん。
作品拝読させていただきました。

まず総じて面白かったです。
構成がよく考えられており、伏線の張り方もちゃんとしており、強引な設定であっても読者が受け入れられるように書かれてありました。
またキャラも素晴らしかった。
僕が一番好きなのはメギドですね。怪盗というわりにバトルがメインの本作で、一番怪盗らしいキャラでした。

「怪盗× コミュ障× 毒舌ポンコツ(変態)ヒロイン」を前面に出していて、売りもわかりやすい。

読んでいてとても勉強になる作品でした。
さてこれからは項目ごとに、良かったところを重点的に書き連ねていきたいと思います。

なお点数評価は50点でも良いんですが、ビビリなもんで、点数評価を気にしないスタイルにしました。よろしくお願いします。

項目
1/3:キャラ、ストーリー。
2/3:特に気になったところ。
3/3:設定周りその他の指摘

となってます。



●キャラ

梔子真人……主人公。コミュ障だが怪盗(エンタメ、アイドル)という職業に就いている。ゲームでは無言タイプ。。実況にも名前を忘れられる。
【コミュ障背景】好みが昔から違う。周りに否定され続けたすえ、周囲に同調すればいいと考えたが、それも「適当だ」と馬鹿にされるだけだった。ついにクラスのイケメンに「もうしゃべるな」と言われたことがトラウマになり、コミュ障になる。
良かったところ。
・主人公として、ポンコツのヒロインをカバーするところは、めっちゃかっこよかったです。
・ちゃんと成長したストーリーになっていて、主人公の成長ぶりが素敵でした。

気になったところ。
・あまりにも存在感がなさ過ぎてステルス能力が最強になっている。→ステルス能力の伏線として存在感のなさを上げるなら、もっと存在感がないことを大げさに印象付ける必要があるのではないだろうか。
・コミュ障? というかコミュより存在感がないっていうほうが強い印象ですね。終始こいつコミュ障ではないんじゃないか疑惑が晴れませんでした。

フォト……妖精サイズのポンコツ人形ロボット。実は人間。イケメンは嫌いらしいが、その理由は「すぐに周りの可愛い女の子に言い寄られて私を捨てようとする」から。テレパシーが使える。なにより凄い怪盗を見抜ける力はあるようだ。ゲーム実況者でもある。ゲームは下手なようだが、見た目が可愛いため信者がたくさんいるようだ。アンチから腕前を批評されるとブチ切れている。もともとライトニングのサポーターだった。
【人間がサポートしている事情】体が弱く、病室から出られない状態だった。あるときサポーターとして魂を人形に乗り移らせる技術のテストを持ちかけられ、了承したことからだった。しかし人間はミスを繰り返すため、サポーターとしては不完全だった。結局テストは失敗とされ、人間の魂は実装されなかった。

良かったところ。
・可愛かったです。ポンコツなところも、すぐに他人に喧嘩を売るところも。
・実は人間で、最後人間の姿のヒロインと出会うというストーリーは素晴らしかったと思います。

怪盗アメジスト……町一番人気の怪盗。元々怪盗は男がやるものだと思われていたが、アメジストが登場したことにより女性も怪盗になりたいという人が増えた。パイオニア的存在。フォト点数90点。高い!
宝石のような綺麗な瑠璃色の瞳に紫の髪。すらりと伸び切った手足は女性にしては高身長であり、その目つきは男に負けてないくらい鋭い。そこには凛とした気高さのようなものがある。
我慢が嫌い。

良かったところ。
・可もなく不可もなく、という印象です。怪盗として実力があり美女である……凛としてかっこいい女怪盗というイメージです。

気になったところ。
・最初町一番人気という紹介だったのですが、混乱しました。町だとそれほど大したものだとは思えないし、印象として弱いです。怪盗の中で一番人気、と最初から書いた方が混乱しないと思います。
・一番人気と書かれてありますが、そこまで人気になる要素がなかったのは不満でした。

姫咲莉愛……学園一の才色兼備な美少女。しかし怪盗以外には興味なく、告白されても「怪盗さんじゃないと無理」と断る。処女である。
【怪盗好きの背景】息詰まるような期待に押しつぶされた子供のころ、怪盗に外に連れ出されたことがある。
良かったところ。
・なぜか影が薄いはずの主人公を認識できるたぐいまれなる存在でしたね。存在感はありました。怪盗しか興味ない、という振り切った設定どおりのキャラで、まさにこの作品を代表するキャラクターになりえる片鱗がありました。

気になったところ。
・後半になるとモブキャラ感がありました。もっとライバル的な立ち位置でもよかったかもしれません。
・主人公のステルス能力が効かないという設定なので、それをもっと活かして、主人公との関係性が特別なものであるという印象をもっと強めてもいいかもしれません。

怪盗メギド……ランキング二位。さわやかな怪盗、という外見に反して非常に荒っぽい性格として知られている。口が悪く、相反した外見と相まって人気があるようだ。実は頭脳派。データを分析し対策を立ててきっちり望むタイプ。ってかこれほんま「怪盗」って感じの設定。
全身には多数のアクセサリーを付けていて、ドクロを中心としたそれは攻撃的と言っていいほどの派手さだ。
フォト点数一点。えぇ。

→今作で個人的に一番気に入ったキャラですね。
 一番怪盗、ってかんじする。主人公たちは怪盗というよりチートしてるだけって感じなので。

怪盗ライトニング……元ランキング一位。怪盗をやめたようだ。今作のラスボス。

→いいやられ役でした。

●ストーリー

〇プロローグ

→話の趣旨がわかりやすく、とても魅力的な冒頭になっていたと思います。

〇一話

→ちゃんとしたボーイミーツガールになっていて、これからどうなるんだろうとわくわくさせていただきました。

〇二話

→冒頭の話のシンクロ回でしたね。怪盗という世界観を説明しつつ、うまく物語を盛り上げていたと思います。

〇三話

→コミュ障害を克服しようとしたら、クラスメイトにばれてしまい一気に怪盗としてのピンチに陥ってしまう、という展開はとても意外性があったと思います。ここで一話に出てきた姫咲さんがメインになるわけですが、とても魅力的な出来になっていたのではないかと思います。自分を宝に指定してくるインパクト。うん、変態や。カリオストロすぎるだろ、とわらちゃいました。

〇四話

→変装グッズという小道具を使って笑いを取っていたのが印象的な回でしたね。無事姫咲さんを盗み、ちょっとイチャラブしてるところエモかったです。

・世知辛い世の中である。せっかく頑張ったのに誰も見てくれてないとは……
→句点が抜けてますね。

〇五話

→これから登場する人物の紹介回という印象です。最終回の小道具の伏線をちりばめた大事な回でもあります。回復の剣をこんな使い方して伏線にするのは巧みだったと思います。

〇六話

→主人公がコミュ障になった原因を明らかにする回。ストーリーの腰の部分になる重要な話でしたね。

〇七話

→メギドとアメジストの三つ巴かと思いきや、アメジストと共闘し、勝ったかと思ったら黒幕が出てくる、という二転三転する展開。クライマックスらしくて舌を巻くほど面白かったです。

〇最終話。

→カンペを破り捨て、ヒロインに会いに行くと約束する主人公がひたすら尊いお話だったと思います。

エピローグ

→ヒロインが、可愛かったです!

42

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2021年05月15日(土)08時31分 金木犀 gGaqjBJ1LM
(2/3)


★レーベル候補
・ファンタジア文庫
・GA文庫大賞
・小学館ライトノベル大賞

→作品の印象から判断しました。
 とくに小学館ライトノベルは、もしかしたら作者さんの考えとも合致するのかな、と思います。
 というのも、審査員の方が、
「自分は偏った小説しか読んできませんでした。小説を読む、小説を書くということは、どういうことなのか。 その答えを自分は知らないし、知る必要もないと思っています。 ましてや賞をもらったり、賞を与えたり、そんなことにもはたしてどのくらい意味があるかわからない。 そこにあるのはただ、面白いものを描きたい、面白いものを読みたいという気持ちだけ。 自分が何者なのか、まだわかっていない人たちに問いたい。自分は誰で、どこにいて、何を面白いと思うのか。 よくわからない衝動と格闘して、ジャンルとか売れ筋に忖度しない作品を書き上げてください。 あ、ちなみに内緒ですがラブコメは苦手です」
 とおっしゃっていますので。

 さて以下より、気になった点を上げます。
 注意してほしいのは、必ずしも受け入れたからと言って、面白くなったり、良くなるとは限らないということです。
 もちろん、僕はこれを直せば面白くなると思って書きますけどね。

 僕が特に気になったのは主に三つです。

〇コミュ障は個性だと言っているのに、コミュ障が治っていくストーリーにする違和感。
〇コミュ障という売りをもっと前面にだすべき。主人公のコミュ障を徹底し読者に印象付けるべき。
〇設定がガバガバ

まず、
〇コミュ障は個性だと言っているのに、コミュ障が治っていくストーリーにする違和感。
→もちろん完全には治ってはいないのですが、それにしても劇的に変化しすぎていて、嘘くさく感じてしまうんですよね。
 個性だと言うのなら、直す、改善するを重きに置くより、コミュ障とうまく付き合い、武器にしながら生きていく、というほうがこの作品のストーリーに合っている、説得力がある気がしました。

〇コミュ障という売りをもっと前面にだすべき。主人公のコミュ障を徹底し読者に印象付けるべき。
→ヒロインとかはわりとイメージ通りにかけているのに、主人公だけコミュ障という感じがしないのは、わりと致命的かもしれません。
 コミュ障というイメージをもっと極端にすべきだと思います。
 具体的に言えば、ヒロイン以外の人には目線を合わせることができず、ろくにしゃべることができない。それを徹底させることが必要かと。
 そうすることにより、ギャップができるんですよ。
 ヒロインには普通に話せるという魅力的なギャップが。特別感があってぞくぞくするんです。こんなに話せない人が、ヒロインにはこんなに流ちょうに話せるんだ。ヒロインって素敵だなあ、と。
 思ったのは、サブヒロインである姫路さんには主人公の表情から何を考えているか読めるという超能力を付与すれば特別感が出るんじゃないかと思いました。怪盗時はいっそ無言キャラとして通しても問題ないし、むしろあの人めっちゃすごいのに無言。クール。どんな人なのミステリアスだわ、と観客受けする気がします。そして実はコミュ障なだけなんだよ! という面白みができます。
〇設定がガバガバ
→怪盗という設定をまずまとめてみますね。

●世界観

○ 怪盗指定都市……怪盗を認めている都市。怪盗がエンタメとして機能している。科学技術が発達している。
○ 怪盗
・百人以上の怪盗が存在している。
・芸能人のように人気がある。
・怪盗の正体を掴んだモノには賞金がでる。
・怪盗になる方法は公に知られていない。しかし妖精が現れて怪盗にしてくれるという噂はあるようだ。
・怪盗というのは人心掌握のプロ、という認識がある。
・怪盗をサポートする妖精ロボット。
・怪盗は人々を喜ばせて、町を盛り上げる義務がある。
・怪盗を返り射ちにしてして目立ちたい。金持ちの道楽。
・入場料を払えば観客は近くで、盗人対警察という構図をつくることができる。
→なら、なおさら警察側のメリットも提示すべき。
・怪盗のコスチュームには『認識疎外』の効果がある。
・観客の八割が女性
→いやまあイメージはわかりますけど、そうすると収益めっちゃ減るし、インパクトが足りないのではないでしょうか。老若男女人気にしといたほうがいいのではないか。規模がでかいほうがやりやすいと思うんですけど、そこらへんなぜあえて小さくしようとするのか、意図があるのかしら。
・高レベルになると「巨大ロボ」が出てくる。
→なんでや!!!
・ゲーム難易度はA〜Eまである。
・武器はプレイヤーの意識で自由に出したり、消したりできる。
・あまりにも町に貢献していないと粛清対象になる怪盗の剥奪、悪質な場合殺される可能性もある。
・アイテムはお金を支払いガチャで入手。一回十万円。
・最強アイテム「アリスリング」炎や氷などを発射できる。持ち手のイメージを具現化する。想像力次第で無限の力を発揮するアイテム。
・ガチャにもレベルがある。
・怪盗の任務に人数の制限はない。専用のチームを組んで仕事をしている怪盗も多い。
・怪盗本部。異次元と現実のはざまにある。
・怪盗ランキングの日は会場に怪盗一同が集まる。
・トップ怪盗にはプライベートルームが支給されるらしい。
・アリスリングには使用回数がある。

★怪盗ルール
・正体を知られてはいけない。
・盗みに入る前に予告状を書く。予告状がなければ犯罪になる。
・最後に必ず観客の前に姿を見せて「決め台詞」を言う。

★怪盗バトルロワイヤル
・年に一度行われる。
・ほとんどすべての怪盗が一斉に集まって競い合う。
・怪盗であればだれでも参加資格がある。
・町中に専用の宝石が配置され、隠された宝石を多く見つけ出した方が勝ち。
→怪盗というよりは宝探しゲームですね。
・最後に人気投票がある。
・上位の怪盗ほど決め台詞を言える持ち時間が長い。
→えー。スピーチになっちゃうやん。決め台詞なんてびしっとしたほうがいいんちゃうん。そこは公平な時間でいいんじゃ……。
・町中に大会専用ビー玉サイズの宝石が隠される。
・宝石をもっとも取得した怪盗が優勝。
・優勝した怪盗に決め台詞を言う権利が与えられる。
・サポーターによるレーダーも無効。
・宝石は虹色に光っている。
・宝石は他の怪盗から奪うことも可能。
・警察EXランク……すべてのランクの警察が登場する。
・巨大ロボット登場「巨大怪獣ベヒモス」
・ヘビモスを倒すと宝石が百個獲得。

○ 怪盗お金事情
・ライブの入場料はすべて盗まれる側に入る。→スポンサー料とかのほうが金にならないかね……。
・盗んだ宝物の一パーセントが懐に入る。あとは町の発展費に使われる。
→ここケチィ! なんでや、そこはケチらず、大金与えたほうが、怪盗のモチベ上がると思います。
 それこそ賞金ごとに難易度を上げていけばいいのでは? 高い宝物ほど、大イベントになるようにしていけば、怪盗のレベルや警察のレベルも上がっていくだろうし、集約力と収益も跳ね上がると思います。


43

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2021年05月15日(土)08時30分 金木犀 gGaqjBJ1LM
(3/3)

以下より雑感含めて指摘していきますね。

・ライバル役もっと魅力的にできないか? 銭形とか、ライバル役がいたほうが、怪盗モノの定番を踏襲しているし、読者は「お、わかってるな作者」と思うかも。
・怪盗モノなのに頭脳戦、だまし合い、というよりはバトルモノ。
・都市なのに、「町」だと混乱します。街ではダメなんでしょうか。規模が町レベルだと、「大したことないな。人口少ないならそんなにポピュラーじゃないし、収益にも限界あるんじゃないか?」と思いました。同様に町一番人気、だと大した感じがしません。素直に、都市一、もしくは都市だけじゃなく、世界ランキング一位、みたいにしたほうがしょぼくないと思います。と思ったら全国とかにもなってる。なんや。またもや混乱。
・もっと、怪盗対警察というシンプルな構図にしたほうがいいのではないか。いわば、盗んだモノってこの都市では「賞金」ですよね。賞金なら「盗みを失敗したら警察のお金になる」みたいな代償があったほうがゲームとしても面白いし、警察側の人材育成にもつながるのでは? レベルの高い警察、それを率いるライバルという構図が、見たかった。はい。
・正体がばれたら怪盗がその賞金を支払うシステムとかにしたほうが緊迫感ありますね。
・ライブの仕様的に、観客は何を見て楽しむのかわからない。現地に赴いても、中でなにが行われていて、どんなことをしているのか逐一わからないと楽しめないのではないか。最後に盗人が現れるだけを見にきても楽しいだろうか。いっそテレビ中継にして、妖精を通して怪盗が何をしているのかわかるような仕様にした方がいいのではないか。敵の警察にだけ怪盗がなにをしているのか知られなければ良いので。観客にはすべて見せて、プレイヤーたちはゲーム内で得られる情報の中で戦わせればいいのではないでしょうか。
・いっそのことソードアートオンラインみたいにゲームの中で行われる大会、みたいなくくりにしたほうが設定的に無理は生じないと思いました。
・テレパシーの範囲がわかりづらい。
 それにしても姫咲さん、怪盗と出会ったんだ。凄いな。いったい誰と会ったのだろう?
(いやいや、どう考えてもマスターの事でしょ!?)
→これだと、ほとんど筒抜けですよね。プライバシーもあったもんじゃないので、【会話モード】みたいな機能のオンオフで切り替えられる仕様にするとか、考えてもいいかもしれません。でもコミュ障という設定なので、そこらへんをサポートするに都合が良いというのはあると思うので、そこらへんは兼ね合いかもしれませんね。時々、ずるして、フォトが勝手に切り替えしてくる、みたいな。
・黒をイメージしたオシャレな服である。
→具体的にしたほうがいいかな。タキシード、と一言加えるだけでもいいので。
・(なんと! だったら昨日に食ってしまったらよかったですね。しまった)
→昨日に、はなんか変ですね。に、は余計だと思いました。あと、なんかフォトめっちゃ変態やん(俺は好きです)。
・コミュ障のくせに一時的に克服できるのは都合がよすぎるのではないか。面白さも半減する。
「あの、ごめん。覗くつもりは無かったんだけど」
「いつから、見ていたの?」
 この大ピンチに僕は一時的にコミュ障を克服出来ていた。
→ここは、姫咲さんになんか超能力的ななにかを与えて、主人公の表情で大体何が言いたいかわかる、みたいな設定を入れてもいいかも。主人公のセリフを代弁させるの面白いし、サブキャラクターとしての存在感が増すと思います。男性向けだと、サブヒロインが目立つのはむしろオッケーだと思いますよ。
・人気ランキングの算出理由が不明。
・人気はランキング制となっており、上位に食い込むほど有名度は上がっていく。話題になっているのは、だいたいランキング上位の怪盗だ。
→僕は頭が悪いからなのか、有名度と人気度って一緒じゃないの? どう違いの? と混乱しました。人気度とは別に貢献度ランキングみたいなのあればいいのになあ、と思ったり。
・町一位だったり、都市一位だったり、全国一位だったり。ランキングの表記が違くて混乱しました。
・アメジストが持つ、回復の剣。どうせならかっちょいい名前つければいいのでは? 妖精の剣とかいいじゃないっすか。
・バトルロワイヤル時の決め台詞にフォトが使えない理由として「安全のため」と書いてありますが、いやどんな危険があるんだろう、と謎でした。決め台詞を言うのって危険には見えないので。印象操作とかのアイテムがあるってことですか?
・指名され大勢の人の前で朗読することが、大丈夫と判明するわけですが、ちょっとどうなんだろう。コミュ障というキャラが霞むような……。会話しなければ大丈夫か。でも人前で「朗読する」の緊張せずやり遂げられるのはやはりコミュ障とは言わない気がするなぁ。
・そういえば僕の怪盗時のコスチュームはフォトが勝手に決めたものだけど、これは変更が可能というのを聞いたことがある。
→ここ、コスチュームの描写が全くないので、全然イメージできないです。
・決めセリフ、上位ほど尺があるみたいな書き方だったのに、優勝した人だけが決め台詞を言えるってのは矛盾していると思いました。混乱するので、ここは絞った方が良いと思います。後者のほうがすっきりしてていいっすね。
→どうやら、人気投票上位には最初から決め台詞を言う権利が与えられている、というわけですね。
 で、優勝すればどんな順位でも決め台詞を言うチャンスが与えられると。
 ん。どうだろう。全員に言わせる必要ないし、そこは優勝者の特権としたほうがわかりやすいかもしれません。
・人気ランキング二位に、さすがにダークホースで勝てるとは思えないですね。あまりにも分が悪い賭けなので、ちょっと。
・「一人だけ、怪しい怪盗はいるのだけどね。ただ、証拠が無い」
 それについては僕も同感だ。恐らくアメジストと同じ人物が思い浮かんでいる。さっき話したばかりの『彼』だ。
 でも、なんだろう。重大何かを見落としているような、そんな予感も頭から離れない。
→これすごいテクニックやなと思いました。力づくだけど、これを入れることによりちゃんと伏線にしている。すごい。
 なので、そこはケチをつけたくないんですが。しかし、やっぱ人を疑う理由にするには、薄い気がする。メギドだと思っていたらのちに真犯人が出てくるという伏線だとしても。
・なんだろう。警察の動きに何か違和感だ。具体的にどういうものか分からないが、何かがおかしい予感がした。よく分からない計算された動きを感じる。
→ここはもっと具体的に書くべきだと思います。強引なテクニックは素晴らしいのですが、そこを具体的に書くと良いと思います。
・宝石の発見方法が謎。視覚だけだと限界があるように見えます。
・メギドはランキング二位なので、どう戦うかとか分析しようと思えばできたはずですよね。なぜ主人公たちはしなかったんでしょう。普段から近距離のみ、ってことならわかります。
・サイズは最小だと言うが、どれくらいか。具体的なサイズを知りたかったです。あと盾は普通におっきい方が良いと思います。防御用ですよね普通。
・怪盗は捕まらない前提なんやな……。でも、阻止できれば警察の勝ちっていうシンプルな構図にはできそう。


◇個人的に笑ったところ。気に入ったところ。

・でも『盗む才能』……か。となると、ひょっとしたらとんでもないものを盗んでしまえる可能性もあるのでは? 例えば……女の子の心とか!

→にやり。カリオストロは名作っすよね。

・「コミュ障を治す一番の近道は自信です」

→いいね。

・コミュ障の僕がこんなことができるんて奇跡である。やはりピンチは人を成長させる!
・やはりピンチは人から正常な思考を奪う!
→笑った。

・「怪盗さん。会話のコツはね。『信頼』する事だよ。私を信頼してくれたら怪盗さんも会話できるようになるよ。早く私を信頼してくれたら嬉しいな。その時を待っているからね」

・何気に実況好きですね。切れがあって、めっちゃおもろい。

・「人気を取る一番有効な戦法は『強さ』ではありません。『かっこよさ』です。本来はアイテムよりオシャレなコスチュームにお金を投資した方が有効なのですよ」
→ここは頷きました。なるほど。

・僕は何故かそれが心地よく感じた。無言が心地いいとか、コミュ障で悩んでいたのが馬鹿らしくなる。『無言』も一つのコミュニケーションなのかもしれない。
→親しい人ほどその「無言の時間」が心地良いものですよね。

・「あなたにそんな事を決められたくありませんね。自分の価値は自分で決めますよ」
→そのとおりだぜ。かっこいいじゃないか。

以上です。


色々と書きましたが、新人賞の上に行けば行くほどレベルの高い作品と比較されてしまいます。
現時点ても面白い作品ではありますが、勝ち抜くためにはやはり、問題点を明確にし、改善していくことが求められると思います。
より良い改稿をなさる一助になれば幸いですが、あまりうまく伝えられなかった点もあるかと思います。その際は、本当にすいません。

ところで、林檎さんはプロになったみたいですね。
プロになる人というのはやっぱり一つの感想でどうこうなるものではないと思います。
きっとでんでんむしさんも、ちゃんと信念を貫けば、必ず見てくれる人がいます。
自分を信じて、新人賞にのぞまれてください。

それでは、失礼します。

51

pass
2021年05月13日(木)20時38分 でんでんむし  作者レス
柊木なお様、感想ありがとうございます! かなり長い本作を最後まで読んでいただいて本当に感謝です!

自分は王道の少年漫画やラノベが大好きです。文体もノリと勢いの一人称が好きなのですが、この二つを組み合わせてどうすれば面白く思ってもらえるかたくさん悩んだので、めちゃくちゃ面白いを頂けたのはとても嬉しかったです。

重厚な海外SFや文学作品の世界で育った人から見ればかなり見苦しく見えるんだろうな〜、とも思っていたので、本作で自分が思う面白さが伝わった……ラノベとしての面白さを見出していただけたのというは感激でした!

今回の主人公は自分が初めて書くタイプだったので、かなり手探り状態でした。やはりまだ慣れていないせいか、あまりコミュ障っぽく見えなかったかもしれませんね。コミュ障って人によっては凄く重いテーマだと思うのですが、自分の得意分野とちょっと離れてしまうので、今回はコミュ障をコメディ気味に表現することにしました。それだけだとちょっと寂しいので後半で少しずつ重みとしての面白さを表現できればと思ったのですが、これはかなり難易度が高かったですね。それでも少しでも面白味として評価いただいたのは嬉しかったです。

また、コミュ障って個人的にかなりマイナス要素の強い設定だと思ったので、対比として今回はかなり強い設定の主人公にしてみました。なので、活躍の場を増やすための戦闘シーンに比率が行き過ぎたのかもしれませんね。こういった部分も課題の一つですね。

>それはそれとして、とにかく面白かったです。

自分としては一番嬉しい感想です。楽しんでもらいたいというのが今回の一番の目的だったので、それを頂けたのは幸いでした。

誤字報告は本当にありがとうございました! お見苦しい部分を見せてしまって申し訳ないです。

それでは失礼します。繰り返しになりますが、長い物語を最後まで読んでいただき本当にありがとうございました。

pass
2021年05月12日(水)21時14分 柊木なお  +40点
執筆お疲れ様です。

一気に読みました。
めちゃくちゃ面白かったです。

怪盗の街という見たことがありそうでなさそうな絶妙なコンセプトに始まり、主人公とヒロインの掛け合いや、少年漫画的な王道に引き込まれ、一読者として最後まで楽しませていただきました。設定もよく練られていると思いますし、ノリと勢いで突っ走る文体もジャンルに合っていて、総合的なレベルの高さを見せつけられた感があります。私自身、少しでも学ばせていただきたいところです。

最近の流行には疎いので、新人賞に向けた提案はできなくて申し訳ないのですが、強いて気になった点を上げるとするなら、ストーリーを生かしきれていない部分があると感じたことでしょうか。

「コミュ障の少年が怪盗としての活躍を通じて成長する」
というのが本作の軸だと思いますが、作中だと主人公はかなり饒舌な印象があるので、そもそもコミュ障という感じがしませんでした。

また、どちらかといえば物理的な戦闘などの描写に比重が置かれていて、コミュ障を克服する過程の印象が薄かったことも、少し惜しいように感じます。主人公の欠点を改めて思い出させるようなインパクトのあるプロットがあれば、よりまとまりのある仕上がりになる気がしました。
具体例を挙げるなら、「アメジストと重要な交渉をする際にフォトが不在でフォローを得られず、主人公が無事コミュ障を発揮したせいで作戦が台無しになる」とか、「コミュ障ゆえの対人経験や自信のなさから、フォトの態度や発言を誤解して仲違いする」とか、そんな感じでしょうか。ただ、あまりシリアスにすると作品全体の雰囲気をねじ曲げてしまう気もするので、そこは何らかの工夫が必要かもしれません。

それはそれとして、とにかく面白かったです。久しぶりにラノベを読む楽しさを味わった気がします。最近はずっと海外SFや文学作品ばかり読んでいたので、やっぱり自分が好きなのはキャラクター小説なんだなあと気付かされた次第です。

簡単な感想で申し訳ありませんが、少しでも参考になるところがあれば幸いです。
良い結果が出ることをお祈りしております。
それでは。



以下、誤字報告です。

怪盗のおかげで町はとてつもなく発展した。、むしろ怪盗が町の名物だと思ってもいい。
(読点)

あの状況はスタンナイフだけで突破できた怪盗は僕だけだろう。
(あの状況を?)

なんというか、欠点を全て個性とか言う人って、ダメ人間のイメージがある. 
(句点)

フォトの詐欺のような言葉で姫咲さんは目の光が失っていく。
(目の光を)

奴のチームは全員が少なくとも人気ランキング二十位以内を確保いるらしいです。
(確保して)

力が無いくせに、弱いくせ自分が強いと……
(弱いくせに)
57

pass
2021年05月10日(月)19時21分 でんでんむし  作者レス
金木犀様、こんにちは。

レーベルについてですが……ごめんなさい、まだちょっと決めかねている状態です。ただ、GA文庫も候補には入っています。ううむ……悩む。

質問に答えられず大変申し訳ないです。それではまたよろしくお願いします。

pass
2021年05月10日(月)17時13分 金木犀 gGaqjBJ1LM
こんちゃ……

先日は感想をありがとうございました。

で、5月末ということですが、これはGA文庫でしょうか?

大した感想は書けないとは思うんですが、一応どこに応募されるか聞かせてください。
51

pass
2021年05月05日(水)19時43分 でんでんむし  作者レス
如月千怜様、最後まで読んでいただきありがとうございました!

とても大きな評価をいただいて光栄です! 今、自分は感動で震えております。

後半も失速を感じさせず、面白さを最後まで引っ張ることができたとのことで一安心です。読み手の予想を裏切らなければならない、でも期待を裏切るのはダメ。この針の穴を通すようなバランス調整は本当に難しいので、この部分がうまくいったのはもの凄く嬉しいです。

メギドに関してはこのキャラを魅力的に見せるのは難易度が非常に高く、今の自分の技術力ではかなり挑戦的なキャラでした。特にエンタメを意識した場合、この手のキャラはもっとシンプルな役割の方が読み手とてしては受け入れやすいとは思うものの、結局は自分好みの味付けに走ってしまいました。その部分を受け入れてもらえたのはこの上ない感動でございます。

繰り返しになりますが、最後までお付き合いいただき本当にありがとうございました。如月千怜様の作品も近日中に読ませていただこうと思うので、その時にまたよろしくお願いします。

pass
2021年05月05日(水)13時52分 如月千怜  +50点
どうもでんでんむし様、たった今読了させて頂きました。

かっこつけずに率直に褒めます。最後の最後まで、最高に面白かったです。
この長編の間で出会った作品で一番面白かったと感じるくらい、大変好みな作品でした。
特に面白かったのは第5話以後で、ピンチと逆転のコントラストが大変すばらしく、付け入るスキが一個も見つかりませんでした。(先の方が既に指摘した誤字は除きますが……)

特に予想できない展開だったのは脅迫状の話が出た後、第7話でベヒモスが登場した時「多分彼が制御不能になって暴走するのだろうな」と先の展開を予測していたのですが、まさかの人物が登場してベヒモスを操るという予想を超える最悪な事態になったところです。

個人的に魅力を感じたキャラクターはメギドですね。
直接対決までは徹底的に残念な人物として描写されている中で、いざ対決の時にはこれまでの粗暴さが嘘みたいな知的さを見せてくれました。後のベヒモス戦も含めて最高にかっこよかったです。
こういう一見小物臭いキャラクターを魅力的に描く技術は脱帽します。

最後になりますが、楽しい時間をありがとうございました!
62

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2021年05月04日(火)19時47分 でんでんむし  作者レス
如月千怜様、感想ありがとうございます! とても励みになりました!

特に序盤に「続きを読む手が止まらない」を頂けたのは、自分が意識していた部分なので凄く嬉しかったです。出だしというのはもう本当に難しいもので、どれだけ研究と練習を重ねても明確な手ごたえを得られなかったのですが、そこを見てもらえて褒めていただけたのは感激でした。

主人公とヒロインのコンビを気に入ってもらえて嬉しいです。両者ともやや癖があって嫌われてしまわないか少し心配だったので、ほっとしています。特にフォトを気に入っていただけたのはヒロインが毒舌はちょっとまずいかな〜と不安だったので愛嬌が伝わってくれてよかったです。

怪盗の全ての能力に存在感が含まれるというのは、自分ではお気に入りの使い方だったのでここを受け入れてもらえたのは嬉しかったですね。

気になる部分に関しては、確かに時代や世界観的にも不適切でした。この部分はうまく修正しようと思います。

それではまた続きの感想を楽しみにお待ちしております。お体に気を付けてゆっくりとお楽しみくださいね。

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2021年05月03日(月)21時48分 如月千怜 
どうも如月千怜です。せっかくだから第3話まで読みかけた感想をちょっとだけ書きます。(点数評価はまだ保留です)

まずここまでの時点ですごく面白かったです。
私は18年頃からラ研様を利用し、その時はたくさんの長編を読んでいました。
最近はスケジュールやリアル体力の都合で最後まで作品と向き合えることが少なくなったけど、ここまで「続きを読む手が止まらない」と思ったのはかなり久しぶりです。
ここは間違いなくでんでんむし様の強みだと思います。

キャラクターはあがり症な主人公と良くも悪くも無遠慮なフォトの対比がはっきりしていて、かなり良いバディだと思います。
特にフォトはかなり印象に残るキャラクターです。いい感じにウザかわいい相棒に仕上がっていて、ラ研様で出会った作品のキャラクターでは上位に入る程印象に残るキャラクターでした。

設定周りも細かく作り込まれていて、特にステルス能力強化のシーンはすごいと思いました。
本作の怪盗のシステムである身体能力強化に存在感のなさすらもが適応対象になっているのはかなりいいと思います。ここを強みにして活躍するヒーローはかなり斬新です。
その後第3話で重大すぎる代償が発生するのも、この比類なき長所を将来的に捨てなければならないという覚悟を与える演出になっているところが良いですね。



ただ第3話でちょっぴり気になるシーンもありました。
個人的に現時点で少し気になったのは「そもそも、コミュ障の僕がそんなのを買えるはずがない!」というセリフです。
VRゲームが本格流通しているということは、本作の世界観は我々の世界よりもIT技術が発展していると思います。
電子書籍、ウェブサイト、通販、エトセトラ……などの方法でコミュ障でもエッチな本を調達する手段はいくらでもあるはずなのに、アナログで読む前提で話しを進めているのがちょっと世界観に合っていないなと思いました。
IT技術の進歩に比例してフィルタリング技術も我々の世界進歩している、と言われたら納得できないこともないのですけど……

まあ指摘点は本筋と関係のない話なので、次回作以後に少し意識の中に入れて頂ければ幸いです。
これから先の話も楽しんで読ませていただきますので、よろしくお願いします。
64

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2021年05月03日(月)19時24分 でんでんむし  作者レス
如月千怜様、初めまして。本作を読んでいただきありがとうございます!
無理のない範囲でゆっくりとお楽しみくださいね。
感想、楽しみにお待ちしております。

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2021年05月02日(日)21時18分 如月千怜 
どうもこんにちは。現状ゆっくりこの作品を楽しませて頂いている者です。
近い内に感想を書きたいので、その時またよろしくお願いします。
点数評価はその時につけますので。
57

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2021年02月01日(月)21時54分 でんでんむし  作者レス
ふじたにかなめ様 最後まで読んでいただきありがとうございます!

とても熱意のある感想をもらって猛烈に感動しております! 本当にありがとうございました! 特に自分の武器と弱点を再認識させられる内容でした。

>エンタメらしくハラドキする展開がきちんと用意されていて、グイグイと先を読みたくなるのは、すごいいい感じでした。

この部分は自分が一番意識していたので褒めていただいて嬉しかったです。特に怪盗に興味が無くても引っ張る事が出来たのは大きな収穫でした。少しは自分の技術力も上がってきたかもしれません。

少年漫画的なバトル要素も気に入っていただき嬉しいです。自分も大好きです。ただ、最近はラノベでこの手法はめっきり使われなくなった印象があり、これも古いと思われないように気を付けないといけませんね。……好きなんですけどね。

描写と説明の過不足については確実に自分の弱点ですので、これについても向き合っていかなければなりません。自分なりに頑張ろうと思います。

主人公のコミュ障について、上がり症である部分を強調するのはとてもいい案だと思いました。何気に主人公の性格がコミュ障っぽくないのがネックでして、コミュ障と言えばもっと卑屈なイメージなのですが、あまり卑屈さを強調しすぎたら物語が暗くなってしまうんですよね。流行を考えたらもっと陰キャ率を上げて、卑屈さに振り切った方がウケはいいと思うのですが、自分の得意なスタイルと外れてしまうのが悩みでした。あがり症を強調すれば自分的にはしっくりくる気がします。

主人公と姫咲さんについてはおっしゃる通りに変更しようと思います。実は自分的に姫咲さんは影が薄く見えてしまったんですよね。主人公が惚れている設定を持たせる力技で印象を強くしようとしたのですが、考えてみれば違和感ですね。

主人公のステルスが異能レベルであり得ないというのはかなり痛い所を突かれてしまいましたね。ここもうまく説得力を持たせられるように頑張ります。

犯人についてはフェイクを混ぜていたのでちょっと自信あっただけに見破られてしまって悔しいです。うぬぬ!
しかし考えてみればミステリーの畑で育った(と勝手に思い込んでいてごめんなさい!)ふじたに様にとっては児戯に等しいレベルだったかもしれませぬ。特に以前読ませていただいた作品の黒幕はこちらは全く予想できませんでした。

一話で怪盗指定都市の説明を省く事が出来ればかなり文字数が空くのでありがたいです。序盤はちょうど修正中だったので、しっくりくるかどうか試してみます。

後はもう少しシリアスな部分を取り入れて表現できれば自分的には納得の出来となるかもしれません。自分の良さを消さないように気を付けなければならないので難しい部分ですが……

たくさん褒めていただき、他にも誤字報告や文章の指摘はとても助かりました。お見苦しい文章が多かった本作ですが、最後まで読んでいただいて本当に感謝です!また気が付いたことがあったら遠慮なく言ってくださいね。

それではまた機会があればよろしくお願いします!

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2021年02月01日(月)09時46分 ふじたにかなめ  +30点
(1/2)

最後まで読ませていただきました! 面白かったです!
私の予想で申し訳ないですけど、構成は全然問題なく上手くまとまっていると思うので(冒頭で趣旨を伝えている、山場がある、終わりで冒頭の課題をクリアしている点と、設定の斬新さが判断基準です)、下読みさんにカテエラの判断をされない限り、選考通過はされると思いました。

正直なところ個人的に怪盗自体に元々興味はなかったんですけど、エンタメらしくハラドキする展開がきちんと用意されていて、グイグイと先を読みたくなるのは、すごいいい感じでした。羨ましいくらいうまいですね! ジャンプサンデー系コミックを子供の頃に読んで育ったので、少年誌的なバトル展開も好みでした。
怪盗指定都市という設定に斬新さがあり、内容も理解しやすかったので、10代の読者だけではなく、大人も楽しめる内容になっていると思いました。
特にテンポの良さ、キャラの掛け合いやコメディ部分は、作者様の武器だなぁって感じるほど上手さが突出しているように感じました。

個人的に少し説明の過不足はあったように感じましたが、完成度は高いと思いました。文字数の上限に達していて削れるところはないかとご質問があったので、粗探しのようになってしまいましたが細かい気になった点についてメモをしたので、下記に残しておきますね。あくまで、こういう風に感じた人がいるんだって感じで、受け止めてくださると助かります。

⭐︎ ネタバレがあるので、未読の方は気をつけてください!⭐︎



プロローグ
設定とコミュ障の主人公の紹介。人形のフォト。
私にとっては、情景描写が最低限で、世界観が曖昧な気がしました。
あがり症のコミュ障ではあるんですけど、何が悪いのか自分で理解しているので、重度ではない感じがしました。
主人公は重度だと思っているけど、読んでいる私はそうでもないよね?って感じなので、主人公との認識のズレを感じました。
「重度のコミュ障」ではなく、「重度の上がり症でコミュ障」っていう説明なら、しっくりくる気がしました。

コミュ障の主人公が怪盗をする話で、ヒロインが人形のフォトだと、話の趣旨がよく伝わる冒頭で、とてもいい良かったと思いました。

第一話 怪盗はエンターテイメント
怪盗の説明と、姫咲莉愛(ひめさきりあ)の紹介ですね。

「かくいう、僕もその一人である。」という一言があるため、彼女はヒロインなのかな?って感じる要素になっていると思いました。でも、姫咲さんの紹介は描写ではなく説明で済ませているので、メインのヒロイン扱いではないんですよね。
もし、ヒロインは人形フォトで、彼女は脇キャラ扱い(サブのヒロイン?)なら、主人公の姫咲さんへの気持ちは、「みんなに好かれていて、コミュ力があってすごいなぁ」っていう「尊敬」くらいがいいのでは?って思いました。その後の流れも主人公が彼女の虜になっている態度ではなかったように感じました。

「しかも、今の僕は異常なほど存在感が薄い。」説明ではなく、描写されたほうがよかったと思いました。後々その特性が役立つからです。

姫咲さんとのコミュ障らしいやり取りが書かれていて、主人公の普通に話せない設定が上手く伝わっていて良かったと思います。

ゲームして人形フォトが登場。前にも書きましたが「少女の姿をした」という表現が曖昧なんですよね。まんまリアルな少女を想像すればいいのか、リカちゃんやビスクドール、フランス人形みたいなのを想像すればいいのか分からなかったです。
「幻想的な服装に身を包むその姿」って、もっと具体的に説明がほしかったですねー。
モブならその程度でいいと思うんですけど、特にタイトルに出るくらい主要なキャラなら、作品を読んだ人たちが同じようなイメージを想像できたほうがいいのでは?って思いました。
毒舌な人形、いいですね。二人の台詞でのやり取りは良かったです。

>乙女チックな目をして天井を見上げている一人の美少女が目についた
「目についた」だと、「見て忘れられない」くらいの強い意味もあるので、姫咲さんがメインのヒロインではないなら、「目に留まる」くらいが良いのでは?と思いました。

主人公の視点で見た外見や情景描写が弱い気がしました。
でも、私は応募予定のレーベル(五月末締め切りならGA?)の本を全然読んだことがないので、もし服装や情景描写についてどのくらいの説明で良いのか調べ済みで問題ないならスルーしてくださいね。文体はレーベルによって違うみたいなんですよね。


第二話 最強のコミュ障怪盗とポンコツ毒舌人形

怪盗の詳しい説明がありますね。盗まれる側のメリットが書かれているので、疑問点が理解できて良かったです。読みやすく理解しやすかったのも良かったです。
ただ、一千万円の宝石を盗られたり、警備の人件費がかかったり、被害者のほうがデメリットが大きい気がするんですよね。
知名度が上がっても、何か儲かるわけではない気がするんですよね。

ここを読んで思ったのは、主人公もここで人形に教えてもらうまでは、「ゲームではなくて、エンタメ怪盗の仕組みはよく分からない」っていう状態のほうがよかった気がしました。前の感想にも書きましたが私には合わない書き方になっていましたし、人形フォトを通じて怪盗の仕組みを理解していくほうが、主人公=何も知らない読み手の感覚となるので、物語に馴染みやすいメリットがあると思いました。また、主人公が後半の『中間発表』を知らないという理由にもなると思いました。

さっそく怪盗の仕事が始まって面白くなってきました。
「三日後。僕は現地付近へと足を運んでいた。」のあとに現場の説明がありますけど、文章から情景が想像しにくかったです。

「黒をイメージしたオシャレな服である。」これもちょっと想像がしにくいです。主人公にとって、どのような服がオシャレなんでしょうか?

「強力なステルス能力」すごいですね。

あまり重要ではないと思いますが、宝石がある場所の説明が曖昧だったので、情景が想像しづらかったです。

第一回目の仕事を通して、怪盗の仕組みが分かった気がしました。

第三話 ポンコツ怪盗コンビ、学校へ行く

食べ物を食べているなんて、妙に人間っぽい人形ですね!
死亡フラグ来たー( *´艸`) イイ感じに盛り上がってきましたね! こういう展開好みです。フォトちゃん後出しヒドイですね。面白いです。
ただ、実際に他人に気づかれない程度なら隠密系に特化しているんだーでよかったんですけど、怪盗の知名度までステルス能力が原因だと、いきなり異能的になった印象でした。
あと、物語の本題は「コミュ障」のはずなので、「地味系」で問題を作るよりは、「コミュ障」で問題を作ったほうがいいのでは?って思いました。なので、「決め台詞は怪盗自身が話さないとダメな仕組みでした! バレたら死亡フラグ」的な流れとかはいかがですか――と思ったら、後でそのネタを使っていましたね。じゃあ、異能に説得力を増すためにも、第一話での異様に存在感のない描写があったほうが、唐突感がなくなるかもしれません。
コミュ障は作品の中でいっぱいアピールされているんですけど、存在感のなさが作中でメインで活躍しているにも関わらず、あまり触れられていなかったので、「突然異能系」みたいに感じられたのかもしれません。これは作中で個人的に一番気になりました。

(なんと! だったら昨日に食ってしまったらよかったですね。しまった)
→昨日食ってしまったら、もしくは、昨日のうちに食ってしまったら

姫咲さんが物語に絡んできましたね。面白くなってきました。


長いので、続きます。
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2021年02月01日(月)09時46分 ふじたにかなめ  +30点
続きです。(2/2)

第四話 鬼畜怪盗は変装ができない

性欲に拍手されている( *´艸`)

>よく考えたら、この依頼は放置してもよかったんじゃないだろうか?
なぜここでこういう疑問が浮かんだのか、ちょっとよく分かりませんでした。
姫咲にバレたので、黙っている代わりに相手が望むものを盗まなくてはならなくなったので、やむを得ない状況だったと認識してました。

姫咲さんの屋敷の攻略方法の書き方は、読みやすく理解しやすかったです。

「は、は、は、はい。い、い、異常は……あ、あ、あり、ありま……せんでございます」このお約束な展開、いいですね!!!(テンション高)
パニックなった人形、面白かったです。こういうお約束もいいですね!!!
食べられそうな主人公もいい感じです( ´艸`)

>って、ちょっと待った! なんだこの台詞!?
言ってから気づくなーって読みながら突っ込みを入れてました(笑)

イイ感じに姫咲さんと仲良くなりましたね。

第五話 怪盗大集合

ランキング一位二位の登場。
ランキングを上げるために二位の人と対決することに。
一位の人から、脅迫状について教えてもらう。
人形についての伏線あり。フーム、においますね。


第六話 決め台詞の最終兵器!

決め台詞を姫咲さんに頼む。
主人公の過去話。このタイミングは良かったと思いました。
怪盗のエンターテイメントをゲームと言わなかったのは、ネット上でゲームがあるから、紛らわしくなるからでしょうか。

第七話 怪盗バトルロイヤル

>チーム名は『アント』
にした方がいいんじゃないんですかぁ?」

→不要な改行が入ってます。

ここまで読んで遅まきながら気づいたんですけど、主人公が話せない分、人形フォトが代わりに話してくれるので、良い組み合わせになっていいですね!

殺害予告もいい感じにハラハラして、話が盛り上がっていいですね。
『中間発表』のおかげで、ピンチ感が増して、いい感じに盛り上がってきましたね。後出しなのも人形フォトがポンコツなので自然でした。


第八話
第一位と第二位と主人公の争い。アメジストが仲間になって戦ったそシーンも良かったです!
一位にも認められる主人公、いいですね!

>ルートは避けていたはずだが、それも読んでいたようだ。
→読まれていたようだ。
主語が主人公なので、受け身になると思いました。

>姫咲さんが冷静に非難を誘導していたが
避難

>観客をやらせるわけにはいかねえ!
観客をやられるわけにはいかねぇ!

殺害予告の犯人については、予想どおりでした。容疑者にされていた人に動機が見当たらなかったからと、消去法でした。もうちょっとそれらしい動機があれば、あの人を疑ったかもしれません。

メギド、感じ悪い奴かと思いきや、演技派で、ファンは守ると一本筋の通った考えで、いい奴に見えて来ました。

アリスリング、カッコいい武器ですね。
主人公らしい武器が出来て、カッコよく勝ってよかったです。関節が弱いのと、もっと強い武器があればって主人公が言っていたので、主人公が勝った展開は自然に感じました。

コミュ障は少し良くなったみたいですね。でも、カットされた決め台詞を見たかったです。成長ものなら、あそこが見せ場じゃない?って感じてました。
最後に彼女と対面して、挨拶ができた主人公にちょっと成長を感じました。読後感の良い終わり方でした。

あと、削るところについてですが、
現状で分かりやすいのでお勧めはしないんですが、文字数を削除するなら、冒頭の構成を変える方法もあると思いました。すでに主人公が怪盗になっている状態からのスタートで、それまでの経緯はダイジェスト風に読者に知らせて、コミュ障克服目的でステルス利用して怪盗をしてますって感じの冒頭です。

第一話で教室での怪盗の説明に引っかかった理由は、怪盗がどういうものか描写されていなかったときに説明があったので、どう受け止めればいいのか分かりづらかったからかな?って思いました。
理解できてから読み直すと、特に引っかかるところはなかったんですよね。
あとで主人公が怪盗になったときに主人公を通して詳細な怪盗の説明があるので、第一話のときは怪盗には興味ないって感じで、主人公がクラスメイトの会話の解説をしなくても良かったのでは?って思いました。削れるとしたら、ここでしょうか。
『僕の地元は「怪盗指定都市」で、政府公認の怪盗エンターテイメントが開催されている。今日もその話題をクラスメイトはしている。』
クラスメイトの会話を聞きながら、主人公が思うのは、このくらいでいいかもって思いました。「罪にならない」と説明があると、「じゃあ、どうして?」って説明不足を感じて私みたいに引っかかる人がいるかもって思いました。何も分からないため、バトルロワイヤルみたいに政府が嫌な感じで国を支配していて、一部の人間に対して金持ちからの盗みを許可して、遊興を理由に金持ちにそれを無理強いしている可能性も感じました。続きを読めば、そうではないと分かるんですけどね。深読みごめんなさい。

「ここはとてつもなく科学が発展している町だ。」ですが、他の都市では科学がそれほど発展しておらず、仮想世界のゲームはこの都市でしかできない感じなんでしょうか。科学の発展のおかげで人が集まり、東京みたいに人口が密集しているのでしょうか。読み終わった後でも、全体を通してどういう街並みなのか説明がなく、ちょっとよく分からないです。この文ですが、そういう描写がまだない時点で説明を書くよりは、第一話の先の方で主人公がゲームをするときに入れても大丈夫かなって思いました。それと、現代日本をベースにした世界観だと感じるので、一つの都市だけ科学が発展するのは不自然な気がしたため、「この都市を中心に科学が発展している。」みたいな表現の方がいいと思いました。


自分のことを棚上げして気になる点を書きましたが、あくまで個人の意見ですので、合わない場合は流してくださいね。
読み落としや誤読があったら大変申し訳ないです。
執筆おつかれ様でした。
公募で良い結果が出ることを祈ってます。
ではでは失礼しました。
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2021年01月25日(月)12時14分 でんでんむし  作者レス
十二田明日様、お久しぶりです。今回も感想、ありがとうございます!

今回も自分の文体を誉めていただいて凄く嬉しかったです。なんというか、ちょうど自分を見つめなおしていたタイミングだったのでとても励みになりました。

自分のスタイルは古く、どう流行と向き合っていくのか悩んでいたのですが、今の自分を誉めていただいたのはやはり嬉しかったです。

流行を意識しなければならない思って新人賞の受賞者コメントや編集さんのラジオを覗いてみれば「流行や形式を意識するより自分が面白いと思う物語を全力でぶつけた方が成功しやすい」みたいな言葉をよく耳にして、果たしてどうしたものかと思っていた所です。実際に他の方の重厚なシナリオや文章を見て、同じ土俵で勝負した場合、全く勝てるビジョンが想像できなかったりします。

一方で「いや、そういうのは才能ある人間や若い子に言っているのであって、お前には言っていない」という心の声も聞こえて、自分がどの方向へ足を進めるのかは難しい部分ですね。まあ、この手の書きたいものを書くか、流行りを意識するのかどちらが大事なのか的なのは創作をする人間なら誰もがぶつかる壁なので自分で答えを出すしかありませんね。これに関しては全員の言う事が正解であり、誰もが間違っていないのだと個人的に思います。自分に限っては流行は決して無視できない重要な部分かもしれません。

そんな中で今回、実は飛び上がるほど嬉しかったのはラストを誉めていただいた部分です。前回に指摘いただいた『後半部分のやや重めのシナリオが作風の違和感となっている』というのは自分の中で鬼門となっていたのでその部分を解消できたのは大きな収穫です。実は今回、後半はかなりビクビクしながら書いておりました。今回もちょっと重すぎなかったか? という恐れがありましたが納得していただけてよかったです。むしろ怖がらずに真面目な作風もアリではないかと思えてきました。

こちらのテーマが伝わった部分も嬉しかったです。今回、最後は精神的な成長もテーマにしたくてそれを最後に持ってきたのですが、うまく盛り上がりに繋げられたようで安心しました。

指摘いただいたベヒモスとの戦いについては、怖がりながら書いていた部分やこの辺りで残りページが少ない事に気付いて焦りもあったせいか、ちょっと説明不足だったかもしれませんね。あまりしつこく描写するのも危険だと思っていましたが、自分の場合はもっとはっきり描写したほうがいいかもしれません。

繰り返しになりますが今回も感想、本当にありがとうございました! 十二田明日様も新作があるようで、そちらも読ませていただきます。新人賞、お互いに頑張りましょうね!



pass
2021年01月24日(日)22時04分 十二田明日  +40点
でんでんむし様、お久しぶりです
『最強のコミュ障怪盗とポンコツ毒舌人形』最後まで読ませていただきました。率直に言います。

凄く面白かったです。

個人的には最終話、怪盗バトルロワイヤル優勝後の表彰台へ向かうシーン。ヒロインであるフォトに勇気づけられて、主人公が自分の言葉を伝えようとするところが一番グッときました。
単純な能力ではない、主人公の精神的な成長が現れるシーンは個人的にかなり好きです。
そしてフォトの本体? 本人? と会うエピローグ部分は、非常に爽やかな読後感を得られました。

文章に関しても、前作『神様から最低の役割を与えられた俺』もそうでしたが、非常に軽妙かつコミカルな文体でテンポも良く、サクサク読み進められました。
前作に比べキャラの数も絞られていて、ストーリーも分かりやすかったのが好印象です。

総じてかなり完成度の高い作品だと思いました。

強いて改善点として自分が上げるなら、最後の戦闘でのベヒモスの強度というか、主人公がアリスリングで出した武器の強さが分かりづらかったところでしょうか。
最初に読んだ時、
(何で主人公の攻撃でベヒモスが倒せるんだ?)
と思ってしまいました。
『ランキング1位2位の攻撃を受けてもびくともしない頑丈な敵』が、主人公の『透明なワイヤー』による攻撃では倒せてしまう。これは何でだ? と首をひねってしまいました。
もちろんこれは十二田の読み取り方が拙いだけで、主人公がベヒモスの弱点である関節部を見抜き、そこに攻撃を当てている。『透明』だから当たるという事が後から読み返して分かりました。
この辺りはもう少し直接的に、
1『敵の装甲(腕)は物凄く頑丈』
2『脆い関節部に攻撃を当てないといけない』
3『しかし派手な大技を使うと防御される』
この三つを描写しても良かったのかなと。
これくらい前振りがあった方が、主人公が
4『透明な武器で攻撃すればいい』
という答えを出し、ライトニングを倒す展開がより盛り上がると思われます。
(余談:この展開もいいですね。主人公のステルスという個性が、武器にも活かされてる感じがして。主人公が自分の影の薄さを認められたからこそ、最強の武器が出せる。そして因縁の相手を倒すという展開は、非常に胸熱)


ちなみに十二田はあまり設定に違和感を覚えなかったですし、古いとも思わなかったですね。
一読者の意見として聞いてください。


自分から言えることはこのくらいでしょうか。
自分もまた新作を書き上げ、新人賞に投稿するつもりです。
お互い頑張りましょう。応援しております。

それではm(_ _)m
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2021年01月24日(日)19時42分 でんでんむし  作者レス
GON様 はじめまして。感想ありがとうございます!

頂いた感想についてですが、かなり正確なものではないかと思いました。特に流行のズレという部分について、自分は最近の新人賞の作品をそれなりに読破してきましたが、実の所おっしゃる通りでラブコメを除いた場合、最新の新人賞で今作のようなタイプが受賞したのを見たことありません。やはりやや重厚よりなテーマだったりシリアスな作品が評価されている場合が多いみたいです。コメディよりの軽いスタイルは時代的に受け入れられにくくなっているのかもしれません。

一方で安易に自分の得意なスタイルを変化させてうまくいくものなのか? 最近は誰も書いていないからこそ狙い目なのでは? といった考え方も無しではないかもしれませんが、大問題なのは『古い』と感じさせてしまった部分です。ここは重く受け止めておこうと思います。

そろそろ自分も時代に合わせてスタイルの変更を意識した方がいいかもしれませんね。もう一度自分と作品と向き合ってみます。

誤字や文章の違和感などお見苦しい部分が多かった本作ですが、最後まで読んでいただいて感謝です。誤字報告を含め、本当にありがとうございました!



pass
2021年01月24日(日)15時32分 GON s4vRaNPgqQ +30点
でんでんむし様、はじめまして

最初に、私は小説を投稿していないので感想返しは不要であることをお伝えします。

ざっと通しで読んでみました。精読まではしていませんので、読み落としはあるかと思います。
印象としましては、よくまとまっており、展開や会話のテンポが非常によかったです。
物語の構成もピンチや逆転をうまく演出していて、各キャラクターも魅力がありました。
黒幕もしっかり配置されていて、フォトの正体も読後感がいいものでした。

欠点としましては、冒頭の文章が少しおかしいとか、フォトを「人形」と呼称する点だとか、『怪盗指定都市』の設定に甘さがある、一人称での書き方が「コミュ障」の印象を薄めている、などの問題点はあるのですが、総合点としては高めに評価できます。

ライトノベルの新人賞に応募するとのことですね。
私はおそらくここにいる皆さんよりも年上でライトノベルの流行には疎いのですが、それでも本作は流行からはズレているという印象を持ってしまいます。
「バカとテストと召喚獣」が流行っていた時代であれば流行にマッチしていたと言えますが、一昔前の古さを感じさせてしまうのではないかと危惧しました。
どうなんでしょうね? 最近の受賞作とかはお読みになられていますか?
今はこういうものは流行していますか?
こういう作風のものを受賞させていますでしょうか?

完成度としては高かったと思います。
あとは公募の研究をして、流行に寄せていけば受賞も視野に入ってくるのではないかと思います。

公募に挑戦するのであれば、もう少しシリアス要素を取り入れてもいいのではないかと感じました。(命をかけて戦う、負けたら大切なものを失う、国家間の争いに関係する、など)
あるいは現実世界の拡張系に変更する手もあるかと思います。(現実にありえない設定を、あってもおかしくないと思わせるようなリアルさを持たせるということ)

簡単ですが、以上になります。
個人的な意見ですので納得したら受け入れてください。

それでは良い結果が出ますように。
応援しております。


◆本文で気になった点です。

>ここはとてつもなく科学が発展している町だ。
>怪盗のおかげで町はとてつもなく発展した。

「とてつもなく」は文章が幼く見える気がします。「ここは科学が発展している町だ。」でいいのでは?


◆以下は誤字報告です。

>怪盗のおかげで町はとてつもなく発展した。、むしろ怪盗が町の名物だと思ってもいい。
「、」の消し忘れです。

>まるでで出口の見えない迷路へと迷い込んだ気分だった。
「で」の重複です。
62

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2021年01月23日(土)20時05分 でんでんむし  作者レス
ふじたにかなめ様 感想ありがとうございます。今回も一番に感想を頂いて感謝です!

今回は雛形が無く、手探り状態で執筆していたので早い段階のアドバイスはありがたいです。

世界観の背景や描写、設定の違和感が現段階の大きな弱点かもしれませんね。序盤に世界観の説明は悪手でキャラやストーリーを動かして読み手を惹きつけるのが大事だと言われていますが、自分の場合に限っては逆を強く意識した方がいいタイプかもしれません。設定の違和感が気になってしまっては物語が楽しめませんよね。

思い切って最初からガッツリ説明してもいいかもしれません。もちろん、くどくはならないように注意しながらですが……。説明の優先度やキャラの反応など色々と変更しようと思います。

締切は最大で五月末で考えていますが、多分最後まで使い切ると思います。

ちなみにページ数が限界近くであり、もしよろしければでいいので削る場面があれば教えてくれたらありがたいです。

また些細な事でもいいので何か思いついたことがあれば遠慮なく言ってくださいね。
 

pass
2021年01月23日(土)11時39分 ふじたにかなめ 
すいません、後になって思いついたことがあり、編集して<追記>で書き込もうとしたら、なぜかサイトから編集用のメールが届かなかったので、追加の感想書き込み失礼します。

『怪盗指定都市』について色々と気になった点を前に書きましたけど、
元から「怪盗ゲーム」として政府や自治体が運営もしくは公認しているなら、ここまで引っかからなかったかな?って思いました。
「犯罪が問われない」だと、ちょっと個人的に世界観のつじつま合わせのハードルが高い気がしたんですよね。
でも、「ゲーム」なら、テレビ番組でも放送してますし、比較的受け入れやすい気がしました。
先をまだ読んでいないので、的外れな考えかもしれませんけど、書き漏れのように感じたので書かせていただきました。
何度もごめんなさいね。ではでは、失礼しました。

60

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2021年01月23日(土)00時15分 ふじたにかなめ 
お久しぶりです。以前は感想をありがとうございました。
一話の途中まで読ませていただきました。まだ読んでいる最中ですけど、最後まで読んで一月中に感想を書くのが難しいと思うので、冒頭で気になった点だけ先にお伝えしておきたいと思います。

ちなみに応募の締切っていつですか?
間に合わなかったら本当に申し訳ないです。

気になった点ですが、

・プロローグ

ここは異世界なのか日本なのか、世界観がつかめなかったので、富豪の屋敷の屋上にいると書かれていましたが、どんな建物の屋根なのか想像がしにくかったです。

「僕を見あげる人々」(=観客?)とありましたけど、世界観不明もあって建物周辺の様子が分からないので、都会のように集合住宅の一角で観客が道路を占領しているのか、それとも塀で囲まれた広い敷地の中に洋館みたいな豪邸があり、その門前で密集して観客がいるのかetc、ちょっと光景が想像しづらかったです。

個人的にですが、もうちょっと世界観を伝える情報があったら良かったと思いました。

・第一話 怪盗はエンターテイメント

「この町の名前は『怪盗指定都市』」という設定を主人公が説明してくれまして、とても斬新さは感じられたんですけど、申し訳ないことに置いてけぼりな感じがしました。
受け入れづらいと予想される設定は、冒頭に持っていけば既定の事実として受け入れられやすいですが、現状ですと私に対しては合わない書き方になっているように感じました。

その理由を推測すると、二つあるように思いました。
一つ目ですが、その設定に正直言えば私は戸惑ったんですけど、一方で主人公が同じような反応をせずに、むしろ当然のように受け入れていたので、その部分が共感しづらかったです。なので、私と同じように「こんな法律ありえない」みたいに主人が反応してくれたら、個人的にですが共感しやすくなったかもしれないと思いました。
被害に遭われた方のメリットが書かれていないのに世間に受け入れられていて違和感でしたけど、今は詳しい説明ができなくても、「盗まれて捕まらないなんて、普通ならありえないけど、何故か被害者まで喜んでいる」みたいに私のような読み手に寄り添うような一文があれば個人的によかったと思いました。
以降で主人公が怪盗に選ばれ、詳しい説明が人形から伝わり、話が進むごとに怪盗のシステムが分かってくるような感じでしたので、主人公と私が同じような感覚になれば読みやすさが増すと思いました。あくまで私の場合ですが。

二つ目の推測ですが、そういう斬新な設定が納得しやすくなるような世界観の背景が書かれていない点です。
例えば、石川五右衛門では、権力者からしか盗まない義賊だったのでお上に不満を持つ貧しい庶民に好かれていた気がします。そういう感じで、怪盗が世間に受け入れられた時代の背景や事情が分かれば、受け入れやすかった気がしました。

話は変わりまして、怪盗指定都市についてですが、規模が都市ではなく、国家のほうがよかった気がしました。一つの町だけ科学が発展して、その都市だけ窃盗が罪にならないのは、作品の舞台が現実世界の日本と似たような場合ですと、私の感覚ではすんなり受け入れづらかったです。国内で一つの町だけ生活水準の違いが起きた理由はなんでしょうか。また、現実世界の刑法に詳しくはないんですが、現在の日本では地域によって条例はあっても刑法は変わらないと思いました。私の勘違いだったら申し訳ないです。

他に気になった表現は「人形」でしょうか。
人形と言っても、リカちゃん人形みたいなものから、ビスクドール、フランス人形、フィギュア的なものまであります。なので、人形という言葉が持つ意味や種類が多すぎると思いました。
最初、「人形」「少女的」「とにかく美しい」と書かれていたとき、どうイメージすればいいのか曖昧だったので、もっと具体的な説明があった方がよかった気がしました。例えば、「ぱっと見では小さいだけの本物の人間みたいだけど、関節のつなぎ目から作り物の人形だと分かる」みたいな。

と、自分のことを棚上げして、今まで気になる点を書きましたが、私がただ単に想定読者ではないから気になっただけかもしれないので、本当の想定読者の方は気にならないかもしれません。
あくまで個人の意見ですので、合わなかったら是非流してくださいね。
(ちなみに普段はネットで恋愛小説を読んでます。たまに異世界ファンタジーも読みますけど。)
あと、私の読み落としがありましたら大変申し訳ないです。

文章は読みやすかったです。一読で意味が分かりやすいので羨ましいです。
テンポの良いコミカルな会話のやりとりは、とても良かったです。いいですね!
設定は斬新さを感じたので良かったと思いました。
構成自体も設定や主要なキャラが早々に伝わってきたので、よかったと思いました。

申し訳ないですけど、用事を済ませたら、再びお邪魔させていただきますね。
ではでは、失礼しました。


71

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